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2. フレッシュPRPとは?

私がフレッシュPRPを選択する理由

血小板の中には、成長因子を含むα顆粒のほかに、ミトコンドリアやエクソソームなども含まれています。

こうした成分は、PRPの働きを考えるうえで重要な可能性があります。私は、採血後に作製してその日のうちに投与するフレッシュPRPには、血小板そのものやさまざまな構成成分を保った状態で届けやすいという利点があると考えています。

血小板に含まれるミトコンドリア

ミトコンドリアは、細胞が活動するために必要なエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を作る構造です。例えるなら、街を動かす発電所のような存在です。

血小板には細胞核がありませんが、ミトコンドリアは含まれています。血小板が形を変えたり、さまざまな物質を放出したりするためにもエネルギーが必要だからです。

近年は、ミトコンドリアやミトコンドリア由来の成分が関節炎や軟骨障害へどのような影響を与えるかについて研究が進められています。ただし、人に対する治療効果については、まだ研究途中の部分があります。

血小板由来のエクソソーム

エクソソームは、細胞から放出される非常に小さな袋状の構造です。内部には、たんぱく質、脂質、メッセンジャーRNA、マイクロRNAなどが含まれ、ほかの細胞へ情報を伝える役割を持つと考えられています。

血小板が活性化すると、成長因子だけでなく、エクソソームを含む細胞外小胞も放出されます。血小板由来のエクソソームが軟骨細胞などへどのような作用を持つかについても研究されています。

ただし、PRP治療と、培養上清などから作られる一般的なエクソソーム製剤は同じものではありません。由来、作製方法、品質管理、含まれる成分が異なります。

フレッシュPRPを選択する理由

ミトコンドリアや細胞外小胞などは、加工や保存の方法によって構造や機能が変化する可能性があります。

凍結、乾燥、長期保存などによって、どの成分がどの程度保たれるかは、製品や加工方法によって異なります。そのため、フレッシュPRPと加工された製品を単純に同じものとして扱うことはできません。

私は、採血した血液からPRPを作製し、その日のうちに投与することで、血小板や血しょう中の成分をできるだけ自然な状態で患部へ届けたいと考えています。これが、私がフレッシュPRPを選択する理由の一つです。

フレッシュPRP作製キットは何を基準に選ぶ?

フレッシュPRPを作製するキットにはさまざまな種類があります。特定のキットがすべての治療で最も優れているとは限りません。

ただし、採取した血液の中に含まれる血小板以上の量を作り出すことはできません。最終的に投与できる血小板総数は、次の式で考えられます。

投与できる血小板総数 = 採血前の血小板濃度 × 採血量 × 回収率

血小板の回収率が重要

血小板の回収率とは、採取した血液に含まれていた血小板のうち、何%をPRPとして回収できたかを示す数字です。

治療効果は血小板総数だけで決まるわけではありませんが、血小板総数が多いほど、血小板内に含まれる成長因子の総量も増える傾向があります。

同じ採血量であれば、血小板をより多く回収できるキットの方が、採血した血液を無駄にしにくいと考えられます。高価なキットであっても、必ず回収率が高いとは限りません。

採血量と回収率の比較

A社のキット:20mL採血・回収率70%

採取した血液に含まれる血小板の70%を回収できると仮定します。

B社のキット:40mL採血・回収率35%

採血量は2倍ですが、回収率は半分です。

採血量が多ければよいとは限らない

同じ患者さんであれば、このA社とB社のキットから得られる血小板総数は計算上同じになります。

つまり、採血量が多いからといって、必ず多くの血小板を投与できるとは限りません。採血量と回収率を一緒に見る必要があります。

回収率を知るには測定が必要

回収率を知るためには、PRP作製前後の血小板数を測定する必要があります。

作製前の血液に含まれる血小板数と、作製後のPRPに含まれる血小板濃度、PRP量を測定することで、濃縮倍率、回収率、血小板総数を確認できます。

当院では血小板の数をしっかり計測し、血小板数を確認しています。

キットに書かれている平均値だけでは、目の前の患者さんから作製したPRPが同じ結果になっているとは限りません。私は、実際にどのくらい血小板が含まれているかを確認することが大切だと考えています。

※ 上記PLTが血小板の事です。

キット選択で確認したい項目

PRPキットを選ぶときは、回収率だけでなく、ほかの要素も確認する必要があります。

  • 血小板の回収率
  • 採血量と最終的なPRP量
  • 血小板を活性化するかどうか
  • 白血球をどの程度含めるか
  • 赤血球をどの程度減らせるか
  • 1回遠心法か2回遠心法か
  • 治療部位に合った量を作製できるか
  • 作製後の血小板数を測定できるか

患者さんの病態に応じた使い分け

関節内、腱、靱帯など、治療する部位によって適したPRPの性質は異なる可能性があります。

私は、患者さんの病態に応じて白血球量や活性化方法などを調整でき、血小板の回収率が高く、作製後の内容を確認できる方法を選ぶようにしています。

PRPのMARSPILL分類とは?

PRPには、作製されたPRPの中身と作り方を共通の方法で記録するための分類があります。その一つがMARSPILL分類です。

MARSPILLは、作製方法、活性化、赤血球、遠心回数、血小板数、画像ガイド、白血球濃度、光活性化という項目の頭文字から作られています。

同じ「PRP治療」という名前でも中身や作り方が異なるため、分類を用いて内容を明確にすると、研究結果や治療方法を比較しやすくなります。

実際に分類する際には、PRP中の血小板、白血球、赤血球などを正確に数える必要があるため、血球計数装置による測定が推奨されます。

記号項目意味・分類区分の例
M作製方法(Method)手作業か、装置による作製か手作業(H)/装置・機械(M)
A活性化(Activation)活性化の有無や方法あり(A+)/なし(A−)
R赤血球(Red blood cells)赤血球の混入度多い(RBC-R)/少ない(RBC-P)
Sスピン回数(Spin)遠心分離の回数1回(Sp1)/2回(Sp2)
P血小板数(Platelet number)全血と比べた血小板濃度PL 2–3/PL 4–6/PL 6–8/PL 8–10
I画像ガイド(Image guided)画像を確認して投与したかあり(G+)/なし(G−)
L白血球濃度(Leukocyte concentration)白血球の混入度多い(Lc-R)/少ない(Lc-P)
L光活性化(Light activation)光による活性化の有無あり/なし

光活性化について

光活性化は、特定の光を当てて血小板やPRPへ刺激を与える方法です。

日本国内では一般的なPRP治療として広く行われている方法ではありません。どの活性化方法を使うかは、治療部位や目的、作製するPRPの性質に合わせて考える必要があります。

まとめ

フレッシュPRPの特徴は、採血後に作製し、その日のうちに血小板や血しょう中の成分を患部へ投与できる点です。

PRPキットを比較するときは、価格や採血量だけでなく、血小板の回収率、最終的な血小板総数、白血球や赤血球の量、活性化方法、遠心回数などを確認することが大切です。

私は、作製後の血小板数を測定し、患者さんの病態や治療部位に応じてPRPの内容を調整できる方法を重視しています。

ただし、フレッシュPRPがすべての病気でほかの方法より優れていると確定しているわけではありません。治療効果には個人差があり、病気の種類、重症度、投与方法、リハビリなどを含めて判断する必要があります。

PRP療法について詳しくはコチラをご覧ください。

文責:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫