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スポーツ障害とは?原因・症状・治療と再発予防を整形外科医が解説

スポーツ障害とは?原因・症状・治療

スポーツをしていると、多少の疲れや筋肉痛はよくあります。そのため、痛みが出ていても「いつものこと」と考え、そのまま練習を続けてしまう人は少なくありません。

しかし、同じ場所に痛みが残る、動き始めるたびに違和感がある、休んでもすっきりしないといった状態は、身体からの大切なサインです。

スポーツ障害は、日々の練習量、身体の使い方、回復に必要な時間などが重なって起こります。早い段階で原因に気づき、適切に対応することで、症状の長期化を防ぎ、スポーツを続けやすくなります。

スポーツ障害の大切なポイント

スポーツ障害の多くは、同じ部位への負担が繰り返される「オーバーユース」によって起こります。

痛みがなくなっただけでは、競技復帰の準備が整ったとは限りません。

痛みの原因となる組織と動作を確認し、治療、リハビリ、段階的な復帰を組み合わせることが重要です。

スポーツ障害とは?

スポーツ障害とは、走る、跳ぶ、投げる、蹴るなどの同じ動作を繰り返すことで、骨、関節、筋肉、腱、靱帯などに負担が蓄積し、痛みや動きにくさが出る状態です。

はっきりとした受傷の瞬間がないまま始まることも多く、初めは運動後だけ痛み、休むと軽くなるため見過ごされがちです。しかし、無理を続けると運動中にも痛みが出るようになり、さらに進むと日常生活や安静時にも症状が残ることがあります。

スポーツ障害

同じ動作の繰り返しや練習負荷の蓄積によって徐々に起こります。ジャンパー膝、シンスプリント、アキレス腱障害、野球肘、腰椎分離症などが代表的です。

スポーツ外傷

転倒、接触、着地の失敗など、一度の大きな力によって起こります。骨折、捻挫、脱臼、靱帯損傷、肉離れなどが含まれます。実際には、スポーツ障害による組織の弱りを背景に外傷が起こる場合もあります。

スポーツ障害の原因

スポーツ障害の主な原因は、同じ部位に負担が繰り返しかかる「オーバーユース」です。運動によって筋肉、腱、骨などに小さな負担が加わっても、十分な休養があれば身体は修復されます。

ところが、練習量が多すぎる、急に運動強度を上げる、休養が少ない、痛みを我慢して続けるといった状態では、修復よりもダメージの蓄積が上回ります。その結果、腱の変性、骨へのストレス、関節周囲の炎症などが起こりやすくなります。

練習量や強度の急な増加

走行距離、投球数、ジャンプ回数、練習日数などを短期間で増やすと、身体が負荷に適応する前に組織へダメージが蓄積します。大会前の急な追い込みや、休養後の急な練習再開にも注意が必要です。

フォームや動作の問題

着地時に膝が内側へ入る、投球時に肩や肘へ負担が集中する、走るときに身体が大きく左右へぶれるなど、動作の偏りによって特定の部位へ負担が集中します。

筋力・柔軟性・バランスの問題

体幹や股関節周囲の筋力不足、足関節の硬さ、左右差、疲労時の姿勢変化などは、競技動作の中で負担が偏る原因になります。

用具や練習環境

足に合わないシューズ、摩耗した靴、硬い路面、急な競技環境の変化なども身体への負担を増やします。

回復不足

睡眠不足、連日の高強度練習、十分な休養がない状態では、組織の修復が追いつきにくくなります。練習と回復のバランスを考えることが大切です。

スポーツ障害の症状はどのように進む?

スポーツ障害では、症状が少しずつ進行することがあります。すべての人が同じ経過をたどるわけではありませんが、次のような変化がみられた場合は、練習内容を見直すサインです。

運動後だけ痛む

練習中は問題なく動けても、終了後や翌日に痛みや張りが出ます。休むと軽くなるため、そのまま続けてしまいやすい段階です。

運動開始時や特定の動作で痛む

走り始め、ジャンプ、投球、切り返しなどで痛みが出ます。ウォームアップで一時的に軽くなっても、組織の問題がなくなったとは限りません。

運動中も痛みが続く

パフォーマンスが低下し、フォームを変えてかばうようになります。別の部位へ負担が広がることもあります。

日常生活や安静時にも痛む

歩行、階段、立ち上がりなどでも痛みが出たり、夜間や安静時にも症状が残ったりします。早めの診察が必要です。

下肢に起こりやすいスポーツ障害

下肢は、走る、跳ぶ、止まる、踏み込む、方向転換するといった多くのスポーツ動作で大きな負担を受けます。痛みをかばったまま競技を続けると、足だけでなく膝、股関節、腰へ負担が広がることもあります。

ジャンパー膝、オスグッド病、腸脛靱帯炎などが代表的です。サッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上競技など、ジャンプやダッシュを繰り返す競技で多くみられます。

すね・下腿

シンスプリントや疲労骨折がみられます。ランニング量の増加、硬い路面、足部や股関節の使い方などが関係します。疲労骨折は初期のレントゲンで分かりにくいこともあります。

足首・足

アキレス腱障害、足底腱膜炎、中足骨疲労骨折などがあります。足部の形、シューズ、着地や蹴り出しの動作も確認する必要があります。

股関節・鼠径部

キック、切り返し、開脚などを繰り返す競技では、鼠径部痛や股関節周囲の筋腱障害が起こることがあります。腰や骨盤の動きが関係している場合もあります。

上肢と体幹に起こりやすいスポーツ障害

投げる、打つ、ラケットを振る、身体を反らす、ひねるといった動作では、肩、肘、手首、腰へ繰り返し負担がかかります。痛みがある状態でフォームを変えて続けると、症状が長引き、競技復帰まで時間がかかることがあります。

投球障害肩、腱板障害、インピンジメントなどがあります。肩だけでなく、肩甲骨、胸郭、股関節、体幹からの力の伝わり方も評価します。

野球肘、テニス肘などが代表的です。成長期の野球肘では、内側だけでなく外側や後方の障害が隠れていることもあり、痛む場所を確認することが重要です。

手首・手

ラケット競技、体操、ウエイトトレーニングなどでは、手首や手指の腱、靱帯、関節に負担がかかることがあります。

腰・体幹

腰椎分離症やスポーツによる腰痛がみられます。腰を反らす、ひねる動作が多い競技では、腰椎へ負担が集中します。休むと軽くなっても、練習再開で繰り返す場合は早めの評価が必要です。

成長期のスポーツ障害

成長期は、骨や軟骨が発達途中であり、大人と同じ練習をしていても、膝、かかと、肘、腰などに痛みが出やすい時期です。身長が急に伸びる時期は、骨の成長に筋肉や腱の柔軟性が追いつきにくく、腱が骨につく部分や成長軟骨へ負担が集中します。

オスグッド病、シーバー病、野球肘、腰椎分離症は成長期に多いスポーツ障害です。痛みを単なる「成長痛」と決めつけると、治療や休養のタイミングを逃すことがあります。歩き方や投げ方が変わった、練習後にも痛みが残る、以前より動きが悪くなったといった変化に気づくことが大切です。

成長期では特に注意してください

痛みを我慢して練習を続けると、成長軟骨や骨への負担が増えることがあります。保護者や指導者が「動き方がいつもと違う」「片脚をかばっている」と感じた場合も、早めの受診を考えてください。

整形外科を受診する目安

軽い筋肉痛であれば、数日の休養で改善することもあります。一方、次のような症状がある場合は、整形外科で原因を確認してください。

痛みが1週間以上続く

休養や練習量の調整をしても、同じ場所の痛みが続く場合です。

同じ動作で毎回痛む

走る、跳ぶ、投げるなど、特定の競技動作で繰り返し症状が出る場合です。

腫れ・熱感・可動域制限がある

関節が腫れる、曲げ伸ばしにくい、左右差が目立つ場合は評価が必要です。

体重をかけられない、力が入らない

疲労骨折、靱帯損傷、筋腱損傷などを確認する必要があります。

安静時や夜間にも痛む

運動時だけでなく、日常生活や睡眠にも影響する場合は早めに受診してください。

しびれ、感覚低下、変形がある

神経障害や大きな外傷の可能性があります。競技を中止し、速やかに受診してください。

スポーツ障害の診断

スポーツ障害の診断では、痛む場所だけを見るのでは不十分です。競技種目、ポジション、練習頻度、最近増やした動作、シューズや路面、痛みが出るタイミングなどを確認します。

診察では、圧痛、腫れ、関節の動き、筋力、柔軟性、左右差を調べます。さらに、歩行、ランニング、着地、片脚動作、投球フォームなど、実際に症状へつながる動作を確認します。

必要に応じてレントゲン、超音波検査、MRIなどを行います。超音波検査は、腱、靱帯、筋肉、関節周囲を動かしながら確認できる点が特徴です。疲労骨折や腰椎分離症など、初期のレントゲンで分かりにくい病気が疑われる場合には、MRIなどを追加します。

スポーツ障害の治療

スポーツ障害の治療では、痛みを一時的に下げるだけでなく、負担が集中した理由を見直すことが重要です。完全に運動を中止する必要がある場合もありますが、症状や病気によっては、患部への負担を減らしながら別のトレーニングを続けることもできます。

運動量と負荷の調整

痛みを起こす動作、練習量、強度、頻度を調整します。単に「休む・休まない」の二択ではなく、組織の状態に合わせて許容できる負荷を決めます。

痛みや炎症への対応

必要に応じて薬物療法、アイシング、装具、テーピング、物理療法などを行います。症状の時期や病気によって適した方法は異なります。

リハビリテーション

関節の動き、柔軟性、筋力、バランス、体幹機能を改善します。その後、ランニング、ジャンプ、切り返し、投球など、競技に必要な動作へ段階的に進めます。

原因部位への治療

腱や筋腱付着部の慢性的な障害では体外衝撃波治療、腱・靱帯などの損傷や変性ではPRP療法、痛みの発生部位によっては超音波を用いた注射治療などを検討する場合があります。すべてのスポーツ障害に適応する治療ではなく、診断と病状に応じて判断します。

痛みがなくなれば、すぐ競技へ戻ってよい?

痛みが軽くなったことは大切ですが、それだけで競技復帰の準備が整ったとは限りません。安静にしていれば痛みがなくても、ダッシュ、ジャンプ、着地、切り返し、投球などで症状が再び出ることがあります。

競技復帰では、関節可動域、筋力、左右差、バランス、ジャンプや着地の質、競技特有の動作、練習後の反応などを確認します。競技やけがの内容によっては、心理的な不安や再受傷への恐怖も確認が必要です。

軽い練習から始め、部分参加、通常練習、試合復帰へと段階的に負荷を上げることで、再発や別の部位の障害を防ぎやすくなります。

着地動作はトレーニングで改善できる?

ジャンプや着地、急停止、方向転換を行う競技では、着地時の姿勢が重要です。膝が内側へ入る、股関節や膝が十分に曲がらない、上半身が大きく傾く、硬い着地になるといった動きは、膝へ負担が集中する原因になります。

着地動作の評価方法の一つに、Landing Error Scoring System(LESS)があります。30cmの台から前方へ着地してすぐに垂直ジャンプを行い、正面と側面から撮影した動画をもとに、着地時のエラーを評価する方法です。点数が低いほど、着地動作が良好と考えます。

2026年の研究:神経筋トレーニングは着地動作を改善

2026年にScientific Reportsで公開されたシステマティックレビュー・メタ解析では、運動プログラムがアスリートのLESSスコアを改善するかが検討されました。

対象となったのは24研究、合計1,153人で、平均年齢は15歳、参加者の51.8%が女性でした。サッカー選手が最も多く、バスケットボール、バレーボール、ラグビー、クリケットなど複数の競技が含まれていました。

統合型神経筋トレーニング

筋力、バランス、プライオメトリクス、敏捷性、柔軟性などを組み合わせたプログラムです。ランダム化比較試験の統合結果では、対照群と比べてLESSのエラーが平均2.40個減少しました。エビデンスの確実性は「中等度」と評価されました。

SportsMetrics™

段階的なジャンプトレーニング、着地技術、動作の再学習を重視するプログラムです。統合結果ではLESSのエラーが平均2.99個減少し、研究間の結果も比較的一貫していました。エビデンスの確実性は「中等度」でした。

FIFA 11+

実施しやすいウォームアッププログラムですが、LESSへの統合効果は統計学的に明確ではなく、研究結果のばらつきも大きいものでした。単なるウォームアップとして行うだけでなく、フォームへのフィードバックや段階的な負荷設定が必要な可能性があります。

研究結果の注意点

LESSの改善は、着地動作にみられるエラーが減ったことを示します。しかし、この研究では実際の前十字靱帯損傷の発生数を追跡していないため、「LESSが改善すれば前十字靱帯損傷が確実に減る」と証明されたわけではありません。また、LESSだけで競技復帰の可否を判断することもできません。

スポーツ障害を予防するために

スポーツ障害の予防では、ストレッチだけ、筋力トレーニングだけといった一つの方法に頼るのではなく、競技の特徴と本人の問題に合わせて複数の要素を組み合わせることが大切です。

練習量を急に増やさない

距離、時間、回数、重さ、練習日数を一度に増やさず、身体の反応を見ながら段階的に上げます。

筋力・バランス・着地をまとめて練習する

2026年の研究では、プライオメトリクスだけでなく、筋力、バランス、体幹、敏捷性などを組み合わせたトレーニングが着地動作の改善につながりました。

フォームへのフィードバックを受ける

自分では気づきにくい膝の入り方、体幹の傾き、左右差などを、動画や専門家の指導で確認します。

十分な期間を確保する

研究では、少なくとも6週間、週2〜3回程度の段階的な神経筋トレーニングが実践上の目安として提案されています。ただし、年齢、競技、身体機能に合わせた調整が必要です。

休養と用具を見直す

睡眠、休養日、シューズの状態、練習環境も含めて負担を調整します。痛みが続く状態で練習を重ねないことが大切です。

TGOCにおけるスポーツ障害の考え方

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックでは、まず痛みが出ている組織と、そこへ負担が集中した原因を見極めます。痛い場所だけに治療を行っても、フォームや身体機能の問題が残っていれば再発しやすいためです。

診察、レントゲン、超音波検査、必要に応じたMRIなどにより、骨、関節、筋肉、腱、靱帯の状態を確認します。さらに、関節可動域、筋力、柔軟性、バランス、姿勢、歩行、ランニング、着地、切り返し、投球などを評価し、痛みにつながる動作を探します。

その結果に応じて、薬物療法、装具、物理療法、リハビリテーションを基本に、必要な場合は超音波を用いた注射治療、体外衝撃波治療、PRP療法などを組み合わせます。体外衝撃波治療やPRP療法はすべてのスポーツ障害に行うものではなく、障害された組織、症状の期間、これまでの治療経過、競技復帰までの目標などを確認したうえで検討します。

また、治療によって痛みを軽くするだけでなく、リハビリテーションによって動作を再構築し、競技練習へ段階的に戻すところまでを治療の一部と考えています。評価、治療、競技復帰、再発予防を一つの流れとして行うことが、長くスポーツを続けるために重要です。

TGOCのスポーツ障害治療

1.痛みの発生部位と障害された組織を確認する

2.筋力、柔軟性、バランス、フォームなど負担の原因を評価する

3.治療とリハビリを組み合わせ、段階的な競技復帰を目指す

4.動作を見直し、再発予防につなげる

まとめ

スポーツ障害は、同じ動作を繰り返すことで、骨、関節、筋肉、腱、靱帯などに負担が蓄積して起こります。主な原因はオーバーユースですが、練習量の急な増加、フォーム、筋力や柔軟性の不足、左右差、用具、練習環境、回復不足などが重なっています。

初めは運動後だけの軽い痛みでも、無理を続けると運動中や日常生活にも症状が出るようになります。違和感が続く場合は、痛みを我慢して練習するのではなく、早めに原因を確認することが大切です。

治療では、負荷の調整、痛みへの対応、リハビリテーションを基本に、病状に応じて体外衝撃波治療、PRP療法、注射治療などを組み合わせます。痛みがなくなっただけで終わりにせず、筋力、バランス、競技動作を確認しながら段階的に復帰することで、再発を防ぎやすくなります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラをご覧ください。

PRP療法について詳しくはコチラをご覧ください。

文責:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫

<参考文献>
・Maleki AA, Minoonejad H, Mousavi SH. Exercise interventions improve Landing Error Scoring System scores in athletes: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2026. Article in Press. doi:10.1038/s41598-026-63393-3.