膝半月板損傷

膝半月板損傷

膝半月板損傷について

膝半月板損傷は、膝関節の中にある「半月板」が、スポーツや転倒などの外傷、加齢に伴う変化などによって傷ついた状態です。
半月板は、大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨で、膝の内側と外側に一つずつあります。膝に加わる衝撃を吸収し、体重を分散させるとともに、膝関節を安定させる役割を担っています。
ジャンプの着地、急な方向転換、身体の接触などによって、体重がかかった状態で膝を強くひねると、半月板が骨の間に挟まれて損傷することがあります。
若い方ではスポーツ外傷による損傷が多く、前十字靱帯損傷などを伴うこともあります。一方、中高年以降では、半月板そのものに加齢による変性が起こり、立ち上がり、しゃがみ込み、階段昇降などの日常動作をきっかけに損傷することがあります。
主な症状は、膝の内側または外側の痛み、腫れ、引っかかり感、膝に水がたまる、曲げ伸ばしがしにくいなどです。
半月板の一部が関節内へ挟まり込むと、膝が途中から動かなくなる「ロッキング」が起こることがあります。ロッキングによって膝を伸ばせない状態が続く場合には、早期の処置や手術が必要になることがあります。
半月板損傷の治療は、損傷した場所や形、症状、年齢、スポーツ活動、変形性膝関節症の有無などによって異なります。
軽度の損傷では、安静、薬物療法、装具療法、リハビリテーションなどの保存療法によって症状が改善することがあります。
一方、ロッキングがある場合、膝の引っかかりが続く場合、保存療法を行っても症状が改善しない場合には、関節鏡を用いた半月板縫合術や部分切除術を検討します。

半月板の構造と役割

膝関節は、太ももの骨である「大腿骨」、すねの骨である「脛骨」、膝の前にある「膝蓋骨」によって構成されています。
大腿骨と脛骨の間には、内側半月板と外側半月板があります。
上から見ると三日月状またはアルファベットのCに近い形をしており、外側半月板は内側半月板よりも円形に近い形をしています。
半月板の主な役割は、次のとおりです。
・膝に加わる衝撃を吸収する
・体重を関節全体へ分散させる
・大腿骨と脛骨の適合性を高める
・膝関節を安定させる
・関節軟骨への負担を軽減する
・膝の動きを滑らかにする
・関節の位置や動きを感知する
半月板は、膝の曲げ伸ばしに合わせてわずかに動きます。
膝を深く曲げたり、体重をかけた状態でひねったりすると、半月板へ強い圧迫力やねじれの力が加わります。
半月板が損傷すると、衝撃を吸収して体重を分散する機能が低下し、関節軟骨へかかる負担が増えることがあります。

半月板の血流と治りやすさ

半月板は、すべての部分に十分な血流があるわけではありません。
関節包に近い外側の縁には比較的血流がありますが、関節の中央に近い部分にはほとんど血流がありません。
血流の状態によって、半月板は一般的に次のような領域に分けられます。

レッド・レッドゾーン

半月板の最も外側にある、血流が比較的豊富な部分です。
この部分の損傷は、縫合することで治癒が期待できる場合があります。

レッド・ホワイトゾーン

外側の血流がある部分と、中央の血流が乏しい部分との境界です。
年齢、損傷からの期間、断裂の形などによっては、縫合術が選択されることがあります。

ホワイト・ホワイトゾーン

半月板の中央側にある、血流がほとんどない部分です。
損傷した半月板同士が自然に癒合しにくいため、不安定な断片が症状を起こしている場合には、損傷部分のみを切除することがあります。

実際の治療方法は血流だけでなく、損傷形態、半月板の状態、年齢、活動性などを含めて判断します。

内側半月板損傷と外側半月板損傷

内側半月板損傷

内側半月板は膝関節の内側にあり、内側側副靱帯や関節包と比較的強くつながっています。
外側半月板よりも動きが少ないため、膝をひねった際に骨の間へ挟まれ、損傷することがあります。
膝の内側に痛みがあり、しゃがみ込み、正座、方向転換、立ち上がりなどで症状が出ることがあります。
前十字靱帯損傷が長期間放置され、膝くずれを繰り返している場合にも、内側半月板が損傷することがあります。

外側半月板損傷

外側半月板は膝関節の外側にあります。
内側半月板よりも動きが大きく、膝の曲げ伸ばしに合わせて移動します。
スポーツ中の方向転換やジャンプの着地、キック動作などによって損傷することがあります。
外側半月板は、もともと通常より大きく厚い「円板状半月板」となっている場合があります。円板状半月板では、軽い外傷や日常動作でも損傷し、膝の外側の痛み、引っかかり、弾発音などが生じることがあります。

半月板損傷の主な損傷形態

半月板損傷は、断裂の方向や形によって分類されます。
損傷の形によって、症状、自然経過、縫合できる可能性、手術方法などが異なります。

縦断裂

半月板の円周に沿って、縦方向に裂ける損傷です。
若い方のスポーツ外傷でみられることがあります。
血流のある辺縁部に生じた新鮮な縦断裂では、半月板縫合術によって修復できる可能性があります。

バケツ柄状断裂

縦断裂が長く広がり、半月板の一部が中央へ移動した状態です。
移動した半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まると、膝を伸ばせなくなるロッキングが起こります。
膝が急に動かなくなった場合には、早めの診察が必要です。

水平断裂

半月板が上下に分かれるように、水平方向へ裂ける損傷です。
中高年以降の変性した半月板に多くみられますが、若い方でも外傷によって生じることがあります。
半月板内に関節液が入り込み、膝の外側などに半月板嚢腫を形成することがあります。

横断裂・放射状断裂

半月板の内側の縁から外側へ向かって、横方向に裂ける損傷です。
断裂が大きくなると、半月板が輪のように体重を分散する機能が低下します。
比較的小さな損傷でも、場所によっては膝関節への負担が大きくなることがあります。

フラップ状断裂

半月板の一部がめくれ上がり、不安定な断片となった状態です。
めくれた部分が関節内へ挟まると、引っかかり感、鋭い痛み、ロッキングなどを生じることがあります。

複合断裂

縦断裂、水平断裂、横断裂などが複数組み合わさった状態です。
加齢による変性が進んだ半月板や、繰り返し負担がかかった膝にみられます。
損傷範囲が広く、組織の質が低下している場合には、縫合による修復が難しいことがあります。

半月板後根断裂

半月板を脛骨へつなぎとめている根元の部分が切れたり、骨から外れたりする損傷です。
特に、内側半月板の後方にある「後根」に生じる損傷が知られています。
中高年の方が、階段、しゃがみ込み、立ち上がりなどを行った際に、膝の後ろで「ブチッ」「パキッ」とした感覚とともに突然痛みを感じることがあります。
半月板後根断裂が生じると、半月板が体重を分散する機能が大きく低下し、関節軟骨への負担が増える可能性があります。
年齢、変形性膝関節症の程度、下肢の形、活動性などによって、保存療法または修復手術を検討します。

円板状半月板損傷

円板状半月板は、半月板が通常よりも大きく、円盤に近い形をしている状態です。
外側半月板に多くみられます。
円板状半月板があるだけで症状がなければ、必ずしも治療が必要とは限りません。
損傷すると、膝の外側の痛み、引っかかり、膝が伸びない、曲げ伸ばしの際に弾けるような音がするなどの症状が現れます。
小児期から症状が出ることもあれば、成人後に初めて症状が現れることもあります。

膝半月板損傷の原因

半月板損傷は、大きく「外傷性断裂」と「変性断裂」に分けられます。

スポーツ中の外傷

若い方では、スポーツ中の外傷によって半月板を損傷することが多くあります。
次のような動作で損傷することがあります。
・ジャンプからの着地
・急な方向転換
・ストップ動作
・膝を深く曲げた状態でのひねり
・相手選手との接触
・キック動作
・スライディング
・膝をついた状態で身体をひねる
・転倒して膝をねじる
サッカー、バスケットボール、バレーボール、ラグビー、アメリカンフットボール、野球、テニス、バドミントン、スキー、柔道などで起こることがあります。

前十字靱帯損傷に伴うもの

前十字靱帯を損傷した際には、半月板損傷を合併することがあります。
受傷時に同時に損傷する場合だけでなく、前十字靱帯損傷による膝くずれを繰り返すことで、後から半月板を損傷することもあります。
前十字靱帯、関節軟骨、半月板の状態をまとめて評価することが重要です。

日常生活中のひねり動作

段差で足を踏み外す、床から立ち上がる、身体の向きを変えるなど、日常的な動作でも半月板を損傷することがあります。
足の裏が床についたまま、膝と身体の向きが異なる方向へ動くと、半月板へねじれの力が加わります。

しゃがみ込み・正座

膝を深く曲げると、半月板の後方へ強い圧力がかかります。
しゃがみ込みや正座を頻繁に行う仕事や生活では、変性した半月板に損傷が生じることがあります。

加齢による変性

年齢とともに半月板の水分量や弾力性が低下すると、組織が傷つきやすくなります。
中高年以降では、明らかな外傷がなくても半月板損傷が生じることがあります。
階段から下りる、椅子から立つ、布団から起き上がるなどの軽い動作をきっかけに痛みが始まる場合もあります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症があると、関節軟骨だけでなく半月板にも変性や摩耗が起こります。
変形性膝関節症に伴う半月板損傷では、半月板の損傷だけが痛みの原因とは限りません。
骨の変形、滑膜炎、軟骨損傷、筋力低下なども含めて評価し、治療方法を判断します。

主な症状

膝の内側・外側の痛み

内側半月板損傷では膝の内側、外側半月板損傷では膝の外側に痛みが出ることがあります。
関節の隙間に沿って、指で押すと痛みを感じる場合があります。
ただし、痛みの場所だけで内側・外側を確定できるとは限りません。

膝を曲げたときの痛み

しゃがみ込み、正座、和式トイレ、低い椅子からの立ち上がりなどで痛みが出ます。
半月板の後方に損傷がある場合には、膝を深く曲げたときに痛みが出やすくなります。

膝を伸ばしたときの痛み

半月板の断片が関節内へ挟まっている場合には、膝を伸ばす途中で痛みや引っかかりが起こります。
完全に伸ばせない状態になることもあります。

階段昇降時の痛み

階段、特に下りる動作で膝に体重がかかると、痛みが生じることがあります。

方向転換時の痛み

足を床につけたまま身体の向きを変えると、膝へねじれが加わり、鋭い痛みが出ることがあります。

引っかかり感

膝を曲げ伸ばししたときに、関節の中で何かが引っかかるように感じることがあります。
半月板の不安定な断片が、骨の間に入り込むことで起こる場合があります。

ロッキング

半月板の一部が大腿骨と脛骨の間に挟まり、膝が一定の角度から動かなくなる状態です。
膝を完全に伸ばせないことが多く、無理に動かそうとすると強い痛みが生じます。
バケツ柄状断裂などで起こることがあります。
真のロッキングがある場合には、関節内へ挟まった半月板を戻す処置や、早期の関節鏡手術が必要になる可能性があります。
自分で強く膝をひねったり、無理に伸ばしたりしないでください。

キャッチング

膝の曲げ伸ばしの途中で一瞬引っかかり、その後また動かせる状態です。
引っかかる際に痛みや音を伴うことがあります。

膝の腫れ・水がたまる

半月板損傷によって関節内に炎症が起こると、関節液が増えて膝に水がたまることがあります。
外傷直後に急激に腫れる場合もあれば、運動の数時間後や翌日に腫れる場合もあります。
スポーツや長時間歩行のたびに、膝の腫れを繰り返す方もいます。

関節内出血

強い外傷や靱帯損傷、骨軟骨損傷などを伴う場合には、関節内に血液がたまることがあります。
受傷後数時間以内に膝が大きく腫れた場合には、前十字靱帯損傷、骨折、膝蓋骨脱臼などの合併も確認します。

膝の音

膝を動かしたときに、クリック音、コツッという音、ゴリゴリした感覚などが生じることがあります。
音だけで痛みや腫れがなければ、必ずしも半月板損傷とは限りません。
痛み、引っかかり、腫れを伴う場合には検査が必要です。

可動域制限

痛みや腫れ、ロッキングなどによって、膝を完全に伸ばせない、深く曲げられないことがあります。
動かさない状態が続くと、関節周囲の組織が硬くなり、膝関節拘縮につながることがあります。

膝くずれ・不安定感

半月板損傷による痛みや引っかかりによって、膝の力が急に抜けるように感じることがあります。
前十字靱帯損傷などを合併している場合にも、膝くずれが起こります。

運動後の重だるさ

スポーツ中は動けても、運動後や翌日に膝が腫れたり、重く感じたりすることがあります。
症状を繰り返す場合には、運動を続けながら様子を見るのではなく、膝の状態を確認することが大切です。

半月板損傷に伴う可能性がある損傷・病気

前十字靱帯損傷

ジャンプ着地や方向転換で膝をひねった場合には、前十字靱帯と半月板を同時に損傷することがあります。
膝くずれを繰り返す場合には、半月板だけでなく前十字靱帯の評価が必要です。

後十字靱帯損傷

膝を曲げた状態ですねの前側を強く打った場合などには、後十字靱帯を損傷することがあります。
交通事故やスポーツ外傷では、半月板損傷と合併する可能性があります。

内側側副靱帯損傷

膝の外側から力が加わった場合には、内側側副靱帯、内側半月板、前十字靱帯などを同時に損傷することがあります。

関節軟骨損傷

半月板を損傷した際の強い外力によって、大腿骨や脛骨の関節軟骨が傷つくことがあります。
また、半月板の機能が低下した状態が続くと、関節軟骨への負担が増える可能性があります。

骨挫傷

膝を強くひねった際に、大腿骨や脛骨の内部へ出血や微細な損傷が起こることがあります。
X線検査では分かりにくく、MRI検査で確認されます。

変形性膝関節症

半月板損傷や半月板切除によって、膝関節の荷重を分散する機能が低下すると、関節軟骨への負担が増える可能性があります。
特に半月板を広い範囲で失った場合には、将来的な変形性膝関節症との関係を考える必要があります。

半月板嚢腫

水平断裂などから関節液が半月板の外側へ入り込み、袋状の腫れを形成することがあります。
膝の関節裂隙付近にしこりや腫れを感じる場合があります。

ベーカー嚢腫

膝関節内の炎症によって関節液が増えると、膝の裏側に袋状の腫れが生じることがあります。
半月板損傷だけでなく、変形性膝関節症などでもみられます。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

痛みが始まった状況、痛みの場所、腫れや引っかかりの有無などを確認します。
主に次のような点をお伺いします。
・いつから膝が痛むか
・スポーツや転倒など、明らかなきっかけがあったか
・受傷時に膝をひねったか
・受傷時に音や断裂感があったか
・受傷後、膝がどのくらいの時間で腫れたか
・膝の内側と外側のどちらが痛むか
・膝を曲げると痛むか
・膝を伸ばすと痛むか
・正座やしゃがみ込みができるか
・階段の昇り降りで痛むか
・膝が引っかかることがあるか
・膝が動かなくなったことがあるか
・膝に水がたまったことがあるか
・膝くずれがあるか
・過去に膝をけがしたことがあるか
・スポーツの種目、ポジション、活動頻度
・仕事や日常生活で膝を深く曲げることが多いか
・変形性膝関節症を指摘されたことがあるか
スポーツをしている方では、受傷時の動作を詳しく確認し、競技復帰の目標についてもお伺いします。

視診・触診

膝の腫れ、熱感、皮下出血、変形などを確認します。
内側と外側の関節裂隙を触り、半月板がある位置に圧痛がないかを確認します。
膝に水がたまっていないか、膝の裏や関節裂隙付近に嚢腫がないかも確認します。

身体検査

膝の曲げ伸ばしができる範囲、痛みが出る角度、関節の安定性などを評価します。
半月板損傷が疑われる場合には、膝を曲げ伸ばししながら回旋を加える検査や、体重をかけて身体をひねる検査などを行うことがあります。
主に次のような点を確認します。
・膝が完全に伸びるか
・膝をどこまで曲げられるか
・関節裂隙に圧痛があるか
・ひねり動作で痛みや音が出るか
・ロッキングや引っかかりがあるか
・膝に水がたまっているか
・前十字靱帯や後十字靱帯が不安定でないか
・内側側副靱帯や外側側副靱帯に損傷がないか
・太ももの筋力が低下していないか
・歩行や片脚立ちが安定しているか
痛みが強い時期に無理に検査を行うと症状が悪化することがあるため、状態に合わせて慎重に評価します。

X線検査

半月板は軟部組織であるため、通常のX線検査には直接写りません。
X線検査では、半月板損傷そのものではなく、次のような骨や関節の異常を確認します。
・骨折の有無
・変形性膝関節症の有無
・関節の隙間
・骨棘の有無
・O脚やX脚の程度
・離断性骨軟骨炎
・関節内の遊離体
・膝蓋骨の位置
・骨の変形や腫瘍性病変
中高年以降では、半月板損傷だけでなく変形性膝関節症を伴っていることが多いため、体重をかけた状態でX線撮影を行うことがあります。
X線検査で変形がある場合でも、痛みの原因がすべて骨の変形によるものとは限りません。症状や身体所見と合わせて判断します。

超音波検査

超音波検査では、膝関節内の水のたまり、滑膜炎、半月板周囲の嚢腫、靱帯、腱などを確認できます。
主に次のような状態の評価に役立ちます。
・関節液の貯留
・滑膜の腫れ
・半月板嚢腫
・ベーカー嚢腫
・内側側副靱帯損傷
・膝蓋腱や大腿四頭筋腱の状態
・鵞足部の炎症
・膝周囲の軟部組織の腫れ
超音波検査は、診察室で膝を動かしながらリアルタイムに評価できる点が特徴です。
ただし、関節の奥にある半月板全体を超音波だけで詳しく評価することは困難です。
半月板損傷の位置や形を確認する中心的な画像検査はMRIです。

MRI検査

MRI検査は、半月板損傷を評価するうえで重要な検査です。
半月板の損傷部位、断裂の方向、範囲、半月板の移動などを確認できます。
同時に、次のような状態も評価します。
・前十字靱帯損傷
・後十字靱帯損傷
・側副靱帯損傷
・関節軟骨損傷
・骨挫傷
・離断性骨軟骨炎
・骨壊死
・関節内の遊離体
・滑膜炎
・半月板嚢腫
MRIで半月板の異常が見つかっても、それが必ずしも現在の痛みの原因とは限りません。
特に中高年以降では、症状がなくても半月板に変性や断裂が写る場合があります。
そのため、MRI画像だけで治療方針を決めるのではなく、痛みの場所、身体検査、日常生活への影響などを含めて判断します。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

関節液検査

膝が強く腫れ、関節液が多くたまっている場合には、注射器を用いて関節液を採取することがあります。
関節液の色、濁り、性状などを確認し、必要に応じて詳しい検査を行います。
次のような病気との鑑別に役立ちます。
・感染性関節炎
・痛風
・偽痛風
・関節リウマチ
・関節内出血
半月板損傷と思われる症状でも、強い腫れ、赤み、発熱などがある場合には、感染症などを除外することが重要です。

血液検査

半月板損傷は、血液検査によって診断する病気ではありません。
膝の腫れや炎症が強く、関節リウマチ、痛風、感染症などが疑われる場合に血液検査を行うことがあります。

膝半月板損傷と区別が必要な病気

膝の痛みや引っかかりは、半月板損傷以外の病気でも起こります。
主に次のような病気との鑑別が必要です。
・変形性膝関節症
・前十字靱帯損傷
・後十字靱帯損傷
・内側側副靱帯損傷
・膝蓋骨脱臼
・膝蓋大腿関節症
・離断性骨軟骨炎
・関節軟骨損傷
・大腿骨内顆骨壊死
・脛骨高原骨折
・膝蓋骨骨折
・鵞足炎
・膝蓋腱炎
・腸脛靱帯炎
・関節リウマチ
・痛風
・偽痛風
・感染性関節炎
・腰や股関節から生じる関連痛
痛みが出た状況、年齢、腫れ方、身体所見、画像検査などを組み合わせて診断します。

受傷直後・受診までの対応

スポーツや作業を中止する

痛みがある状態でスポーツや作業を続けると、損傷した半月板がさらに広がったり、関節軟骨を傷つけたりする可能性があります。
無理に動き続けず、膝を休ませます。

膝へかかる負担を減らす

歩行時の痛みが強い場合には、患側へ無理に体重をかけないようにします。
必要に応じて杖や松葉杖を使用します。

冷却する

受傷直後に腫れや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てます。
皮膚へ直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないでください。

膝を軽く圧迫する

弾性包帯やサポーターで軽く圧迫すると、腫れを抑えられる場合があります。
強く締めすぎて、足がしびれる、冷たくなる、色が変わる場合には、すぐに緩めてください。

脚を高くする

横になる際には、枕やクッションを使用して脚を心臓より少し高い位置へ置くと、腫れの軽減につながります。

ロッキングした膝を無理に伸ばさない

膝が動かなくなっている場合に、自分で強くひねったり、他人に引っ張ってもらったりしないでください。
半月板や関節軟骨の損傷が悪化する可能性があります。
痛みの少ない角度で膝を支え、速やかに医療機関を受診してください。

膝半月板損傷に対する治療

治療方法は、次のような点を考慮して決定します。
・損傷した場所
・断裂の形
・断裂の大きさ
・半月板の血流
・損傷からの期間
・ロッキングの有無
・痛みや腫れの程度
・年齢
・スポーツや仕事の内容
・変形性膝関節症の有無
・前十字靱帯損傷などの合併
・患者さんが希望する活動レベル
MRIで半月板損傷が確認されたからといって、すべての方に手術が必要になるわけではありません。
症状が軽く、ロッキングや強い引っかかりがない場合には、まず保存療法を行うことがあります。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックにおいては下記の治療を提案しています。

活動量の調整

痛みを引き起こす動作やスポーツを一時的に控えます。
特に次のような動作は、半月板へ負担がかかりやすいため注意します。
・深いしゃがみ込み
・正座
・急な方向転換
・ジャンプ着地
・膝をひねる動作
・重い物を持った状態での屈伸
・痛みを我慢したランニング
症状が改善した後は、状態を確認しながら段階的に活動量を戻します。

薬物療法

痛みや炎症を軽減するため、消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、外用薬などを使用します。
年齢、胃腸・腎臓の状態、服用中の薬などを確認し、使用する薬を決定します。
薬物療法は痛みを軽減するものであり、断裂した半月板そのものを縫い合わせる治療ではありません。

関節液の穿刺・排液

膝に水が多くたまり、腫れや張りによって曲げ伸ばしが難しい場合には、関節液を抜くことがあります。
関節液を抜くことで、膝の張りや痛みが軽減する場合があります。
必要に応じて、採取した関節液の検査を行います。

ヒアルロン酸注射

半月板損傷に伴って関節内に炎症がある場合や、変形性膝関節症を合併している場合には、ヒアルロン酸注射を検討することがあります。
関節の動きを滑らかにし、痛みや炎症を軽減することを目的として行います。
ヒアルロン酸注射によって、断裂した半月板そのものが元どおりにつながるわけではありません。

ステロイド注射

関節内の炎症が強く、腫れや痛みが強い場合には、状態に応じてステロイド注射を検討することがあります。
一時的な抗炎症効果が期待できますが、頻回に繰り返すことは推奨されません。
感染症が疑われる場合には使用できません。
糖尿病などの持病がある方では、全身状態を確認したうえで判断します。

体外衝撃波治療

膝周囲の腱付着部や軟部組織に慢性的な痛みがある場合には、体外衝撃波治療を検討することがあります。
体外衝撃波治療は、断裂した半月板そのものを修復する治療ではありません。
痛みの原因が半月板だけでなく、膝周囲の腱や軟部組織にもある場合に、診察や画像検査を行ったうえで適応を判断します。
体外衝撃波治療は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法

患者さんご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、膝関節内などへ注入する治療です。
膝関節内の炎症や痛みの軽減を目的として検討することがあります。
PRP療法によって、すべての半月板断裂が元どおりに修復されるわけではありません。
損傷形態、変形性膝関節症の有無、年齢、症状などを確認したうえで、適応を判断します。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。

PRP療法について詳しくはコチラ

装具療法

膝の安定性を高め、負担を軽減するために、サポーターや膝装具を使用することがあります。
前十字靱帯損傷などによる不安定性を伴う場合には、状態に合った装具を検討します。
装具だけで半月板の断裂が修復されるわけではありませんが、痛みを軽減し、安全に日常生活やリハビリテーションを行うために役立つ場合があります。

理学療法・リハビリテーション

半月板損傷では、痛みや腫れによって膝を動かさなくなると、太ももの筋力低下や関節のこわばりが生じます。
膝を支える筋力、股関節や体幹の使い方、着地や方向転換の動作などを改善することで、膝へかかる負担を軽減します。
・腫れと痛みの管理
急性期には、活動量の調整、冷却、圧迫、挙上などによって、膝の腫れと痛みを管理します。
膝に水がたまったまま無理に運動すると、太ももの筋肉が働きにくくなることがあります。
・関節可動域訓練
痛みのない範囲で、膝をゆっくり曲げ伸ばしします。
膝が完全に伸びない状態が続くと、歩行時の負担が増えるため、膝を伸ばす動きを保つことが大切です。
ロッキングが疑われる場合には、無理に膝を伸ばしません。
・筋力トレーニング
太ももの前側にある大腿四頭筋、後ろ側のハムストリングス、お尻の筋肉、体幹の筋肉などを鍛えます。
初期には、膝への負担が少ない姿勢で行う運動から始めます。
痛みや腫れの状態に合わせて、スクワットや片脚運動などへ段階的に進めます。
・バランス訓練
片脚立ちや重心移動の練習を行い、膝関節を安定させる能力を高めます。
転倒の危険がある場合には、手すりや支持物を使用します。
・姿勢・歩行指導
歩行時に膝が内側へ入る、身体が左右へ傾く、つま先と膝の方向が合っていないなどの動きを確認します。
膝へねじれが加わりにくい立ち方や歩き方を指導します。
・着地・方向転換動作の指導
スポーツを行う方では、ジャンプ着地、減速、切り返し動作などを確認します。
膝が内側へ入る動作や、身体が不安定なまま方向転換する動作を改善し、再受傷を予防します。
・競技別トレーニング
ランニング、ジャンプ、ダッシュ、方向転換、ボール動作などを、競技に合わせて段階的に行います。
痛みがないことだけでなく、筋力、バランス、動作の安定性などを確認して復帰を判断します。

手術後のリハビリテーション

手術後のリハビリテーションは、半月板部分切除術と半月板縫合術で異なります。

半月板部分切除術後

切除範囲や膝の状態によりますが、比較的早い段階から膝の曲げ伸ばしや荷重を開始できる場合があります。
腫れや痛みを確認しながら、歩行、筋力訓練、バランス訓練などを進めます。

半月板縫合術後

縫合した部分を保護するため、一定期間、松葉杖や装具を使用することがあります。
膝へかけられる体重や、膝を曲げられる角度が制限されることもあります。
制限期間は、損傷部位、縫合方法、同時に行った手術などによって異なります。
自己判断で膝を深く曲げたり、早期にスポーツを再開したりすると、縫合部へ負担がかかる可能性があります。

スポーツ復帰

スポーツ復帰までの期間は、損傷形態、手術方法、競技内容、筋力などによって異なります。
一般的には、半月板部分切除術ではおおむね2~3か月、半月板縫合術では4~6か月程度が一つの目安となります。
ただし、半月板後根修復術、前十字靱帯再建術を同時に行った場合、競技レベルが高い場合などは、さらに長い期間が必要になることがあります。
復帰は期間だけで決めず、次のような点を確認します。
・膝に痛みや腫れがない
・膝を十分に曲げ伸ばしできる
・左右の筋力差が改善している
・片脚で安定して着地できる
・ダッシュや方向転換を安全に行える
・競技動作後に膝が腫れない
・医師や理学療法士から許可されている
段階的に練習量を増やし、いきなり試合や高強度の練習へ復帰しないことが大切です。

自宅でのセルフケア

痛みや腫れが強い時期

スポーツや長時間歩行を控え、膝を休ませます。
膝が腫れて熱を持っている場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てます。
膝を強くもんだり、無理に曲げ伸ばししたりしないでください。

深く膝を曲げすぎない

正座、深いしゃがみ込み、和式トイレ、低い姿勢での作業などは、半月板の後方へ負担がかかります。
症状がある時期には、椅子や洋式の生活を取り入れます。

ひねり動作を避ける

足の裏を床につけたまま、身体だけを回す動作は膝へ強いねじれを加えます。
方向を変える際には、足を小刻みに動かし、身体とつま先の向きをそろえます。

痛みがない範囲で膝を動かす

膝をまったく動かさない状態が続くと、筋力低下や関節拘縮につながることがあります。
ロッキングがなく、医師から運動を止められていなければ、痛みのない範囲でゆっくり曲げ伸ばしします。

無理な筋力トレーニングを行わない

深いスクワット、重い負荷をかけたレッグプレス、反動をつけた運動などは、半月板へ負担をかけることがあります。
膝の状態に合わせて、医師や理学療法士の指導のもとで行ってください。

運動後の状態を確認する

運動中に痛みがなくても、数時間後や翌日に膝が腫れる場合があります。
運動後に痛みや腫れが増える場合には、運動量が多すぎる可能性があります。
運動の強度や時間を調整してください。

次のような症状がある場合には早めに受診してください

・膝をひねってから痛みが続いている
・膝の内側または外側を押すと痛い
・しゃがみ込みや正座ができない
・階段の昇り降りで膝が痛む
・膝を曲げ伸ばしすると引っかかる
・膝が完全に伸びない
・膝に繰り返し水がたまる
・運動後に毎回膝が腫れる
・方向転換で鋭い痛みが出る
・膝が抜ける、がくっとする
・数週間休んでも症状が改善しない
・スポーツや仕事へ支障が出ている

速やかな受診が必要な症状

次のような場合には、半月板が関節内へ挟まっている場合や、骨折、靱帯損傷、感染症などが隠れている可能性があります。
・膝がロッキングして動かない
・膝をまったく伸ばせない
・転倒や外傷後に体重をかけられない
・受傷後、短時間で膝が大きく腫れた
・膝が明らかに変形している
・膝が赤く腫れ、強い熱を持っている
・発熱を伴っている
・激しい痛みが急に生じた
・足がしびれる、冷たい
・ふくらはぎが急に腫れた
ロッキングした膝を自分で強く伸ばしたり、無理にひねったりしないでください。
痛みの少ない角度で膝を支え、速やかに医療機関を受診してください。

膝の痛みや引っかかりでお悩みの方へ

膝半月板損傷では、膝の痛みだけでなく、腫れ、引っかかり、ロッキング、可動域制限などが生じることがあります。
若い方ではスポーツ中の外傷が多く、中高年以降では加齢によって変性した半月板が、日常的な動作で損傷することがあります。
半月板損傷と思っていても、前十字靱帯損傷、関節軟骨損傷、骨挫傷、変形性膝関節症、骨壊死、痛風、偽痛風など、別の病気を伴っていることがあります。
一方、MRI検査で半月板断裂が見つかっても、その断裂が必ずしも痛みの原因とは限りません。
画像だけで判断せず、受傷状況、痛みの場所、膝の動き、引っかかりや腫れの有無、生活への影響などを総合的に評価することが大切です。
ロッキングがなく症状が軽い場合には、活動量の調整、薬物療法、装具療法、リハビリテーションなどによって改善することがあります。
ロッキングを繰り返す場合、膝が伸びない場合、保存療法を行っても症状が続く場合には、関節鏡手術が必要になる可能性があります。
当院では、問診、触診、徒手検査、X線検査、超音波検査などによって、半月板損傷だけでなく、靱帯、関節軟骨、膝周囲の腱や軟部組織などを含めて膝の状態を評価します。
症状に応じて、薬物療法、関節液の穿刺、注射療法、装具療法、リハビリテーション、セルフケア指導などを行います。
MRI検査が必要と判断した場合には提携医療機関をご案内します。
半月板縫合術、半月板部分切除術、前十字靱帯再建術などの手術が必要と判断した場合には、膝関節鏡手術に対応している医療機関へご紹介します。
膝をひねった後から痛みが続く、膝に水がたまる、曲げ伸ばしで引っかかる、膝を完全に伸ばせないなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫