腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症について

腰部脊柱管狭窄症は、腰椎にある神経の通り道「脊柱管」や、神経根が通る「椎間孔」などが狭くなり、馬尾神経や神経根が圧迫される病気です。
主な症状には、次のようなものがあります。
・臀部から脚にかけての痛み
・脚や足のしびれ
・脚の重だるさ
・歩いていると脚へ力が入りにくくなる
・長い距離を続けて歩けない
・前かがみになると症状が軽くなる
・足の感覚が鈍い
・足が冷たい、ほてるように感じる
・頻尿、残尿感などの排尿症状
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状は「神経性間欠性跛行」です。
歩き始めは問題がなくても、立位や歩行を続けると脚の痛み、しびれ、脱力などが強くなり、歩けなくなります。
その後、椅子へ座る、しゃがむ、腰を前へ曲げるなどの姿勢で休むと症状が軽くなり、再び歩けるようになります。
腰を前へ曲げると脊柱管が広がりやすいため、買い物カートや手押し車を押していると歩きやすい、自転車には比較的長く乗れるという方もいます。
腰痛を伴うこともありますが、腰痛が目立たず、脚の症状だけが現れる場合もあります。
画像上で脊柱管が狭く見えても、症状がなければ腰部脊柱管狭窄症として治療する必要がない場合があります。
診断では、症状の出方、歩行状態、筋力、感覚、腱反射などと、MRIなどの画像所見が一致しているかを確認します。
軽症から中等症では、薬物療法、運動療法、生活動作の調整、神経ブロックなどの保存療法を行います。
歩行障害や筋力低下が進行している場合、保存療法を行っても日常生活への支障が大きい場合には、神経の圧迫を取り除く手術を検討します。
尿が出ない、陰部周辺の感覚が低下した、両脚の麻痺が急速に進んだ場合には、馬尾症候群の可能性があるため緊急受診が必要です。

腰椎と脊柱管の構造

腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの5個の椎骨で構成されています。
腰椎には上半身の重さを支え、身体を前後左右へ動かす役割があります。
椎骨の前方には、体重を支える円柱状の「椎体」があります。
後方には「椎弓」があり、椎体と椎弓に囲まれたトンネル状の空間を脊柱管と呼びます。
腰椎の脊柱管内には、脊髄から分かれた多数の神経が通っています。
成人の脊髄は一般に上位腰椎付近で終わり、その下には神経根が束になって走っています。
この神経の束は、形が馬の尾に似ていることから「馬尾神経」と呼ばれます。
左右の神経根は脊柱管から分かれ、椎間孔を通って臀部や脚へ向かいます。
腰部脊柱管狭窄症では、次の部分が狭くなることがあります。
・脊柱管の中央部
・神経根が通る外側陥凹
・神経が腰椎から出る椎間孔
・椎間孔より外側の部分
狭窄の場所によって、片脚だけに症状が現れる場合と、両脚や会陰部に症状が現れる場合があります。

脊柱管が狭くなる仕組み

椎間板の膨隆

椎間板の水分量や弾力が低下すると、椎間板の高さが低くなり、後方へ膨らむことがあります。
膨らんだ椎間板が脊柱管や椎間孔を狭くします。

椎間関節の変形

腰椎後方の椎間関節へ負担が集中すると、関節軟骨の摩耗や骨棘の形成が起こります。
椎間関節が大きくなり、脊柱管の外側から神経を圧迫することがあります。

黄色靱帯の肥厚

黄色靱帯は、椎弓同士をつないでいる靱帯です。
加齢や椎間の不安定性によって厚くなり、脊柱管内へたわむことで、神経の通り道を狭くする場合があります。

腰椎すべり症

椎骨が前後方向へずれると、脊柱管や椎間孔が狭くなります。
立位や腰を反らした状態でずれが強くなることがあります。

腰椎側弯・脊柱変形

腰椎が左右へ曲がったり、椎骨が回旋したりすると、片側の椎間孔が狭くなり、神経根が圧迫されることがあります。

先天的に狭い脊柱管

生まれつき脊柱管が狭い方では、比較的軽い加齢性変化でも症状が現れる場合があります。

手術後の変化

過去に腰椎手術を受けた部分や、その上下の椎間に変性が進み、新たな狭窄が起こる場合があります。

狭窄の部位による分類

中心性狭窄

脊柱管の中央部分が狭くなり、馬尾神経がまとめて圧迫されます。
両脚のしびれ、足底の異常感覚、会陰部症状、膀胱・直腸障害などが現れる場合があります。

外側陥凹狭窄

脊柱管の外側で、特定の神経根が圧迫されます。
片側の臀部から脚に、神経根に沿った痛みやしびれが現れやすくなります。

椎間孔狭窄

神経根が腰椎から出る椎間孔が狭くなった状態です。
立位や腰を反らした際に症状が強くなる場合があります。
椎間孔狭窄は、一般的なMRIの断面では分かりにくいことがあり、症状と画像を詳しく確認する必要があります。

症状による分類

腰部脊柱管狭窄症は、症状の出方によって神経根型、馬尾型、混合型に分けられることがあります。

神経根型

特定の神経根が圧迫されるタイプです。
一般に片側の臀部から脚へ、痛みやしびれが現れます。
電気が走る、焼ける、引きつるように痛むと表現されることがあります。

馬尾型

脊柱管中央部で複数の馬尾神経が圧迫されるタイプです。
両脚や足底、会陰部などに症状が現れることがあります。
主な症状には、次のものがあります。
・両脚のしびれ
・脚全体の重だるさ
・足裏の異常感覚
・脚の冷感やほてり
・会陰部のしびれ
・頻尿、残尿感
・排尿に時間がかかる
・性機能の変化
痛みよりも、しびれや感覚異常が目立つことがあります。

混合型

神経根型と馬尾型の両方の症状が現れるタイプです。
片脚の強い痛みに加え、両足のしびれや排尿症状などを伴う場合があります。

主な症状

神経性間欠性跛行

歩行や立位を続けると、脚の痛み、しびれ、重さ、脱力などが強くなり、休むと再び歩けるようになる症状です。
単に立ち止まるだけでは改善しにくく、座る、しゃがむ、前かがみになることで楽になる傾向があります。
歩ける距離は、日や体調によって変化する場合があります。

臀部から脚への痛み

臀部、太もも、ふくらはぎ、足にかけて痛みが現れます。
片側だけに出る場合と、両側に出る場合があります。
神経根型では、左右差がはっきりすることが多くあります。

脚・足のしびれ

ピリピリ、ジンジンするしびれや、皮膚の感覚低下が現れます。
立位や歩行で強くなり、座ると軽くなることがあります。

足底の異常感覚

次のような感覚が現れることがあります。
・砂利や小石の上を歩いている感じ
・足裏に紙や布が張りついている感じ
・靴下を重ねて履いている感じ
・足裏が腫れている感じ
・熱い、冷たい感じ
・床を踏んでいる感覚が分かりにくい

脚の脱力

歩いていると脚に力が入りにくくなり、膝が崩れることがあります。
進行すると、安静時にも筋力低下がみられる場合があります。

下垂足

足首や足趾を上へ持ち上げにくくなり、歩行時につま先が引っかかります。
足を高く持ち上げるような歩き方になったり、足音が大きくなったりすることがあります。

こむら返り

夜間や歩行後に、ふくらはぎの筋肉がつることがあります。
こむら返りだけで腰部脊柱管狭窄症とは診断できませんが、脚のしびれや間欠性跛行を伴う場合には確認が必要です。

腰痛

腰痛を伴う場合がありますが、脚の症状ほど強くないこともあります。
腰痛がなくても腰部脊柱管狭窄症は否定できません。

会陰部の異常感覚

肛門周囲、陰部、臀部の内側などに、しびれ、ほてり、感覚低下が現れる場合があります。
馬尾神経への圧迫が関係している可能性があります。

排尿障害

馬尾型では、次のような排尿症状が現れることがあります。
・頻尿
・尿意が急に強くなる
・尿が出始めるまで時間がかかる
・尿の勢いが弱い
・排尿後も尿が残っている感じがする
・尿意を感じにくい
・尿が漏れる
・尿を出せない
高齢者では前立腺肥大症、過活動膀胱、糖尿病などでも似た症状が現れます。
排尿症状がすべて腰部脊柱管狭窄症によるものとは限りません。

排便・性機能の変化

便意を感じにくい、排便しにくい、便を漏らすなどの症状が現れる場合があります。
勃起や射精など、性機能に変化が現れることもあります。

姿勢による症状の変化

腰を反らすと脊柱管や椎間孔が狭くなり、神経への圧迫が強くなる傾向があります。
そのため、次のような状況で症状が出ることがあります。
・まっすぐ立ち続ける
・上を向いて作業する
・洗濯物を高い場所へ干す
・腰を反らして歩く
・下り坂を歩く
・仰向けで脚を伸ばして寝る
一方、腰を前へ曲げると脊柱管が広がりやすくなります。
次のような姿勢では、症状が軽くなることがあります。
・椅子へ座る
・しゃがむ
・買い物カートを押す
・手押し車を押す
・自転車に乗る
・上り坂を歩く
ただし、すべての方に同じ特徴が現れるとは限りません。

腰椎椎間板ヘルニアとの違い

腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症は、どちらも腰の神経を圧迫し、脚の痛みやしびれを起こします。

腰椎椎間板ヘルニア

・比較的若い世代にも多い
・急に発症する場合がある
・片脚の強い坐骨神経痛が中心になりやすい
・前かがみや座位で悪化する場合がある
・咳やくしゃみで痛みが強くなることがある

腰部脊柱管狭窄症

・中高年以降に多い
・徐々に進行することが多い
・立位や歩行で悪化しやすい
・座位や前かがみで軽くなりやすい
・両脚や会陰部の症状を伴う場合がある

両者が同時に存在することもあります。
症状だけで完全に区別することはできないため、診察と画像検査を組み合わせます。

血管性間欠性跛行との違い

脚の動脈が狭くなる閉塞性動脈硬化症でも、歩くと脚が痛み、休むと再び歩けるようになる「血管性間欠性跛行」が現れます。

神経性間欠性跛行の特徴

・立位や腰を反らす姿勢で悪化しやすい
・座る、しゃがむ、前かがみで改善しやすい
・自転車には比較的乗れる
・臀部、太もも、脚のしびれを伴う
・歩ける距離が日によって変わることがある

血管性間欠性跛行の特徴

・一定の距離や運動量で症状が出やすい
・立ち止まるだけでも改善しやすい
・ふくらはぎの筋肉痛が中心となることが多い
・足の脈が弱い
・足が冷たい
・皮膚の色や傷の治りに変化がある

両方を合併している場合もあります。
足の脈、皮膚温、足関節上腕血圧比などを確認し、血流障害を除外します。

他の病気との違い

腰椎変性すべり症

椎骨が前方へずれ、脊柱管が狭くなる病気です。
腰部脊柱管狭窄症の原因の一つとなります。
立位や前後屈のX線で不安定性を評価します。

腰椎分離すべり症

成長期に生じた腰椎分離を背景として椎骨がずれ、神経が圧迫される病気です。

変形性股関節症

鼠径部や太ももに痛みが現れ、歩行が難しくなります。
股関節を動かした際の痛みや可動域制限を確認します。

膝関節疾患

変形性膝関節症などでも、歩行距離が短くなります。
関節そのものの圧痛や腫れ、可動域を確認します。

深殿部症候群

臀部で坐骨神経が刺激され、臀部から脚に痛みやしびれが現れます。
長時間座ると悪化する傾向があります。

糖尿病性末梢神経障害

左右の足先から対称的にしびれや感覚低下が現れます。
歩行姿勢による症状変化が乏しいことがあります。

頚椎・胸椎の脊髄症

頚髄や胸髄が圧迫されると、両脚のしびれ、突っ張り、歩行障害が現れます。
腱反射が強い、手も不器用になった、体幹に感覚の境目がある場合には、頚椎・胸椎の病変を確認します。

化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍

感染によって強い腰痛、発熱、神経症状などが現れます。
糖尿病、透析、免疫抑制状態、最近の感染症や手術などがある場合には注意が必要です。

脊椎腫瘍・転移性脊椎腫瘍

安静時や夜間にも強い痛みがある、体重減少がある、がんの既往がある場合には詳しい検査が必要です。

骨粗鬆症性椎体骨折

高齢者では、軽い転倒や物を持ち上げた動作で腰椎を骨折することがあります。
寝返りや起き上がりで強い腰痛がある場合には骨折を確認します。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

症状の特徴と神経障害の有無を確認します。
主に次のような点について確認します。
・いつから症状があるか
・片脚か両脚か
・どの部分が痛む、しびれるか
・何分、何メートル歩くと症状が出るか
・座る、しゃがむと改善するか
・自転車には乗れるか
・立っているだけでも症状が出るか
・足へ力が入りにくいか
・つまずきや転倒が増えたか
・会陰部のしびれがあるか
・頻尿、残尿感、尿漏れがあるか
・便通や性機能に変化があるか
・発熱、夜間痛、体重減少があるか
・糖尿病、血管疾患、がんなどの既往があるか

姿勢・歩行の確認

立位で腰椎の弯曲、側弯、体幹の傾きなどを確認します。
歩行では、次の状態を評価します。
・通常歩行
・つま先歩き
・かかと歩き
・片脚立ち
・足を引きずっていないか
・歩幅
・方向転換
・前かがみで歩くと改善するか
必要に応じて、実際に歩いて症状が出るまでの時間や距離を確認します。

筋力検査

股関節、膝、足首、足趾などの筋力を左右で比較します。
特に次のような筋力低下を確認します。
・膝を伸ばす力
・足首を上げる力
・足の親指を上げる力
・足首を下へ踏み込む力

感覚検査

太もも、すね、足の甲、足裏などの触覚や痛覚を確認します。
馬尾症状が疑われる場合には、会陰部や肛門周囲の感覚も確認します。

腱反射

膝蓋腱反射やアキレス腱反射を確認します。
神経根が圧迫されると、対応する反射が弱くなる場合があります。
ただし、高齢者や糖尿病性神経障害では、狭窄症がなくても反射が弱いことがあります。

下肢伸展挙上テスト

腰椎椎間板ヘルニアとの区別などを目的に行います。
腰部脊柱管狭窄症では、椎間板ヘルニアほど典型的な神経痛が再現されない場合があります。

足の血流評価

閉塞性動脈硬化症との区別のため、足背動脈・後脛骨動脈の脈、皮膚温、色調などを確認します。
必要に応じて足関節上腕血圧比や血管超音波検査などを行います。

残尿測定

排尿障害がある場合には、排尿後に膀胱内へ残っている尿量を超音波で測定することがあります。
泌尿器科疾患との区別も必要です。

X線検査

X線では、神経そのものや脊柱管内の軟部組織を詳しく見ることはできません。
主に次の状態を確認します。
・椎間板の高さの低下
・骨棘
・椎間関節の変形
・腰椎すべり症
・腰椎分離症
・側弯
・腰椎の前弯
・椎体骨折
・腫瘍を疑う骨変化
立位で撮影することで、身体の重さが加わった状態での配列を確認できます。

前屈・後屈X線

腰を前後へ曲げた状態で撮影し、椎骨のずれや不安定性を確認します。
手術で固定術を併用する必要があるかを判断する材料になります。

MRI検査

MRIは、腰部脊柱管狭窄症の診断において中心となる検査です。
次のような状態を評価します。
・脊柱管の狭窄
・馬尾神経の圧迫
・神経根の圧迫
・椎間板の膨隆やヘルニア
・黄色靱帯の肥厚
・椎間関節の変形
・外側陥凹や椎間孔の狭窄
・腫瘍、感染などの病変
仰向けで撮影する一般的なMRIでは、立位や腰を反らした際の動的な狭窄が十分に表れない場合があります。
そのため、MRI画像だけで診断せず、症状や診察所見と合わせて判断します。
画像上で狭窄が強くても症状が軽い場合や、狭窄が軽く見えても症状が強い場合があります。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

CT検査

CTは、骨の形を詳しく確認できる検査です。
次のような場合に検討します。
・骨棘や椎間関節の形を詳しく調べる
・外側陥凹や椎間孔周囲の骨性狭窄を評価する
・骨折や腰椎分離症が疑われる
・手術方法を検討する
・MRIを受けられない
・骨腫瘍などが疑われる
CT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

腰部脊柱管狭窄症に対する治療

治療方法は、MRI上の狭さだけではなく、歩行能力、痛み・しびれ、筋力低下、排尿症状、日常生活への影響などを踏まえて決定します。

保存療法が検討される場合

・痛みやしびれが中心である
・筋力低下が軽い、またはない
・症状が急速に進行していない
・排尿・排便障害がない
・日常生活をある程度維持できる
・薬物療法やリハビリテーションを安全に行える

手術を早めに検討する場合

・歩ける距離が著しく短い
・日常生活への支障が大きい
・脚の筋力低下が進行している
・下垂足がある
・転倒を繰り返している
・保存療法で十分に改善しない
・膀胱・直腸障害がある
・馬尾症候群が疑われる

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う保存療法

活動量の調整

症状を強くする動作を一時的に減らします。
特に次のような動作は調整します。
・長時間立ち続ける
・腰を反らした姿勢を続ける
・下り坂を長く歩く
・重い物を持つ
・身体をひねりながら荷物を持つ
・痛みを我慢した長距離歩行
一方、長期間動かずにいると、脚と体幹の筋力、心肺機能、バランス能力が低下します。
歩行が難しい場合には、前かがみを保ちやすい歩行器、手押し車、自転車型の運動器具などを活用し、可能な範囲で運動を続けます。

薬物療法

消炎鎮痛薬
腰痛や脚の痛みを軽減するために使用します。
胃腸障害、腎機能障害、血圧上昇、むくみなどに注意が必要です。
アセトアミノフェン
痛みを軽減する目的で使用します。
肝機能障害や、ほかの薬との成分重複に注意します。
神経障害性疼痛に対する薬
焼ける、電気が走るなどの神経痛に対して使用することがあります。
眠気、ふらつき、むくみなどが起こる場合があり、特に高齢者では転倒に注意します。
プロスタグランジンE1誘導体製剤
日本では、神経周囲の血流を改善する目的で、リマプロストなどの薬が使用されることがあります。
症状のタイプや重症度によって効果には個人差があります。
出血しやすくなる場合があるため、抗凝固薬・抗血小板薬などとの併用を確認します。
筋緊張を和らげる薬
腰背部の筋肉が強く緊張している場合に使用することがあります。
眠気やふらつきに注意します。
薬物療法で症状が軽くなっても、狭くなった脊柱管そのものが広がるわけではありません。
筋力低下や排尿障害が進んでいないかを継続して確認します。

リハビリテーション・運動療法

運動療法には、痛みを軽減するだけでなく、歩行能力や日常生活機能を維持する目的があります。
主な内容には、次のようなものがあります。
・腰を過度に反らさない姿勢の練習
・体幹筋の機能改善
・股関節周囲筋・下肢筋力訓練
・股関節の柔軟性改善
・バランス訓練
・歩行訓練
・自転車運動
・転倒予防
・家事や仕事動作の調整
腰を少し曲げた姿勢で行える自転車運動は、歩行より症状が出にくい場合があります。
ただし、すべての方に前屈運動が適するわけではありません。
骨粗鬆症性椎体骨折、股関節疾患、強い腰痛などがある場合には運動内容を調整します。
運動中に次の変化がある場合には中止し、医療機関へ相談してください。
・脚の力が急に入りにくくなる
・足を引きずるようになる
・会陰部がしびれる
・尿意や排尿に変化が出る
・痛みやしびれが長時間強くなる

杖・歩行器・シルバーカー

杖や歩行器は、歩行時の転倒を予防し、移動できる距離を延ばすために使用します。
前腕を歩行器へ置くことで軽い前かがみ姿勢となり、症状が軽くなる場合があります。
歩行補助具を使うことは、病気が急激に悪化したことを意味するものではありません。
安全に活動量を保つための道具として活用します。

コルセット・装具

腰部コルセットを使用すると、腰の動きが安定し、活動時の痛みが軽くなる場合があります。
脊柱管を根本的に広げる治療ではありません。
長期間常に使用すると体幹筋の活動が低下する可能性があるため、使用時間や目的を確認します。

神経根ブロック・硬膜外ブロック

薬物療法で改善しない強い脚の痛みに対して、神経根ブロックや硬膜外ブロックを行うことがあります。
局所麻酔薬や副腎皮質ステロイド薬などを、神経根や硬膜外腔へ注射します。
主な目的は次のとおりです。
・神経周囲の炎症を抑える
・痛みを一時的に軽減する
・症状の原因となる神経を確認する
・リハビリテーションを行いやすくする
注射によって狭くなった脊柱管が広がるわけではありません。
効果が一時的な場合や、十分な効果が得られない場合もあります。
主なリスクには次のようなものがあります。
・出血、血腫
・感染
・神経損傷
・硬膜穿刺、頭痛
・薬剤アレルギー
・血糖値の上昇
・一時的な脚の脱力
・排尿しにくさ
・まれな重い神経合併症
抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合には、自己判断で中止せず医師へ伝えてください。

自費診療について

体外衝撃波治療やPRP療法は、狭くなった脊柱管を広げたり、神経の圧迫を直接取り除いたりする治療ではありません。
腰部脊柱管狭窄症そのものに対する標準的な第一選択治療ではなく、併存する筋肉・腱・靱帯・関節由来の痛みなどを診察したうえで、適応を慎重に判断します。
自費診療を行っている間も、筋力低下、歩行障害、会陰部のしびれ、排尿・排便障害などが進行していないかを確認することが重要です。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法について詳しくはコチラ

手術治療

保存療法を行っても歩行や日常生活への支障が大きい場合、筋力低下や下垂足が進行している場合には、手術を検討します。
手術では、骨や黄色靱帯などを処置して神経の圧迫を取り除く「除圧術」が行われます。
腰椎すべり症、不安定性、脊柱変形などを伴う場合には、除圧術と脊椎固定術を組み合わせることがあります。
手術方法は、狭窄の位置、腰椎の安定性、年齢、骨の状態、全身状態、生活への影響などを踏まえて決定します。
尿が出ない、会陰部の感覚が低下した、両脚の麻痺が急速に進行した場合には、緊急手術が必要になる可能性があります。
当院で手術が必要と判断した場合には、脊椎手術に対応している医療機関へご紹介します。

手術後のリハビリテーション

早期離床

全身状態と神経症状を確認し、医師の許可後に座位、立位、歩行を開始します。

歩行訓練

歩行器や杖を利用し、安全を確認しながら距離を延ばします。
手術前から歩行障害が強い場合には、筋力とバランスの回復に時間がかかることがあります。

筋力・バランス訓練

体幹、股関節、膝、足首などの筋力を段階的に回復させます。
感覚低下が残っている場合には、足元を確認する方法や転倒予防も練習します。

日常生活動作

起き上がり、立ち上がり、階段、着替え、入浴などの動作を練習します。
固定術を行った場合には、骨がつくまで重量物や強いひねりを制限することがあります。

排尿機能の確認

手術前から排尿障害がある場合には、尿意、排尿量、残尿量などを継続して確認します。
必要に応じて泌尿器科と連携します。

自宅でのセルフケア

・長時間立ち続けない
・腰を強く反らした姿勢を続けない
・歩行中は必要に応じて休憩する
・前かがみで使える歩行器やカートを活用する
・自転車など症状が出にくい運動を利用する
・長期間寝たきりにならない
・脚と体幹の筋力を維持する
・床の物や段差を減らして転倒を防ぐ
・必要に応じて杖を使用する
・荷物は身体へ近づけて持つ
・身体をひねりながら持ち上げない
・薬による眠気、ふらつきに注意する
・排尿・排便の変化を記録する
・歩ける距離や転倒回数を記録する

腰部脊柱管狭窄症を疑う症状

次のような症状がある場合には、腰部脊柱管狭窄症の可能性があります。
・立っていると臀部や脚が痛くなる
・歩くと脚がしびれ、休むとまた歩ける
・座る、しゃがむと症状が軽くなる
・買い物カートを押すと歩きやすい
・自転車には比較的長く乗れる
・脚が重く、長距離を歩けない
・足裏に砂利を踏んでいるような感覚がある
・脚が冷たい、ほてるように感じる
・足へ力が入りにくい
・つまずきや転倒が増えた
・頻尿や残尿感がある
・MRIで脊柱管が狭いと指摘された

早めに受診すべき症状

次のような場合には、早めに整形外科・脊椎脊髄外科を受診してください。
・歩ける距離が徐々に短くなっている
・脚の筋力が低下している
・足首や足の親指が上がりにくい
・下垂足がある
・転倒を繰り返している
・杖や歩行器が必要になった
・保存療法を行っても生活への支障が大きい
・会陰部のしびれがある
・排尿しにくい、残尿感が強い
・尿漏れや便通の変化がある
・発熱や強い夜間痛がある
・がんや感染症の既往がある

直ちに救急受診すべき症状

次のような症状がある場合には、馬尾症候群など重い神経障害の可能性があります。
直ちに救急受診してください。
・尿を出せない
・急に尿を漏らすようになった
・尿意を感じなくなった
・便を漏らすようになった
・肛門、陰部、太ももの内側の感覚が低下した
・両脚へ急に力が入らなくなった
・急に立てない、歩けなくなった
・片脚または両脚の麻痺が急速に進んでいる

腰部脊柱管狭窄症でお悩みの方へ

診察では、間欠性跛行の特徴、歩行状態、筋力、感覚、腱反射、会陰部症状、排尿・排便機能などを確認します。
X線検査では腰椎すべり症や不安定性、側弯、骨折などを評価します。
MRIでは、脊柱管、外側陥凹、椎間孔などの狭窄と、馬尾神経・神経根への圧迫を確認します。
歩行時の脚の症状がある場合には、閉塞性動脈硬化症との区別も重要です。
軽症から中等症では、薬物療法、運動療法、活動量の調整、歩行補助具、神経ブロックなどの保存療法を行います。
保存療法で改善せず、歩行や日常生活への支障が大きい場合には、神経の圧迫を取り除く除圧術を検討します。
腰椎すべり症、不安定性、脊柱変形などを伴う場合には、除圧術と固定術を組み合わせることがあります。
画像上の脊柱管の狭さだけで治療を決めず、歩行能力、筋力、排尿症状、生活への影響を含めて治療方針を相談することが重要です。
当院では、間欠性跛行の特徴、歩行状態、筋力、感覚、腱反射、足の血流、会陰部症状、排尿・排便機能などを確認します。
X線検査では、腰椎すべり症、不安定性、側弯、椎間板の高さ、骨棘、椎体骨折などを評価します。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
症状に応じて、薬物療法、活動量の調整、コルセット、歩行補助具、リハビリテーション、神経ブロックなどを行います。
歩行障害や筋力低下が進行している場合、排尿・排便障害がある場合、保存療法で生活機能が改善しない場合には、脊椎手術に対応している医療機関へ速やかにご紹介します。
画像上の狭窄だけで治療を決めず、歩ける距離、筋力、転倒の有無、排尿症状、生活への影響を含めて治療方針を相談することが大切です。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫