腰椎分離症

腰椎分離症

腰椎分離症について

腰椎分離症は、腰椎の後方にある「関節突起間部」という細い骨の部分に、亀裂や疲労骨折が生じた状態です。
主に、小学校高学年から高校生ごろまでの成長期に発症します。
特に、スポーツで腰を繰り返し反らす、ひねる、着地する動作を行う方に多くみられます。
代表的な症状は、運動時の腰痛です。
初期にはスポーツをしているときだけ痛み、休むと軽くなることがあります。
そのまま運動を続けると、徐々に痛みが強くなり、日常生活、授業中の座位、寝返りなどでも痛むようになる場合があります。
腰を後ろへ反らす動作や、反らしながら左右へひねる動作で、腰の片側または両側に痛みが出ることが特徴です。
初期の腰椎分離症は、骨折部が癒合する可能性があります。
一方、骨折線が広がり、完全に分離した末期になると、長期間スポーツを休んだりコルセットを使用したりしても、骨がつながらないことがあります。
そのため、成長期のスポーツ選手に腰痛が続く場合には、単なる筋肉痛として我慢せず、早めに整形外科を受診することが重要です。

腰椎の構造

腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの5個の椎骨で構成されています。
腰椎には、上半身の重さを支えながら、身体を前後左右へ曲げる、ひねる、衝撃を吸収する役割があります。
椎骨の前方には、円柱状の椎体があります。
椎体と椎体の間には椎間板があり、背骨に加わる衝撃を吸収します。
椎骨の後方には椎弓があり、次のような部分から構成されています。
・椎弓根
・椎弓板
・棘突起
・横突起
・上関節突起
・下関節突起
上下の椎骨は、椎間板と左右の椎間関節によってつながっています。

関節突起間部とは

関節突起間部は、上関節突起と下関節突起の間にある細い骨の部分です。
英語では「pars interarticularis」と呼ばれます。
腰椎を後方へ反らしたり、反らしながらひねったりすると、この関節突起間部へ力が集中します。
成長期の骨は成人の骨と比べて発達途中にあるため、繰り返し負担が加わると、徐々に小さな亀裂が生じることがあります。
このように、一度の大きな事故ではなく、反復する負荷によって起こる骨折を「疲労骨折」と呼びます。
腰椎分離症は、腰椎の疲労骨折の一つです。

発生しやすい部位

腰椎分離症は、第5腰椎に最も多く発生します。
次いで第4腰椎にみられることがあります。
左右どちらか片側だけに発生する場合と、両側に発生する場合があります。
両側の関節突起間部が完全に分離すると、椎体と後方の骨との連続性が失われます。
その結果、上側の椎体が前方へずれる「腰椎分離すべり症」へ進行する可能性があります。

腰椎分離症が起こる仕組み

腰椎分離症は、多くの場合、次のような経過で進行します。
1.腰を反らす、ひねる動作が繰り返される
2.関節突起間部へ小さな負担が蓄積する
3.骨の内部に炎症やむくみが生じる
4.小さな亀裂が形成される
5.亀裂が徐々に広がる
6.完全に骨が分離する
7.一部では椎体が前方へずれる
発症直後の段階では、X線やCTで明らかな骨折線が見えず、MRIで骨のむくみだけが確認されることがあります。
この早い段階で運動負荷を減らし、適切な治療を行うと、骨癒合が期待できる場合があります。
負担をかけ続けると骨折線が広がり、骨が癒合しにくくなります。

病期による分類

腰椎分離症は、骨折の進み具合によって、初期、進行期、末期などに分類されます。

超初期・前分離期

CTやX線では明らかな骨折線が確認できないものの、MRIで関節突起間部の骨髄浮腫が確認される段階です。
腰を反らしたときの痛みがあるにもかかわらず、X線では異常なしと判断されることがあります。
骨癒合の可能性が比較的高い段階です。

初期

関節突起間部に細い亀裂が生じた段階です。
CTでは小さな骨折線が確認され、MRIでは骨折周囲の骨髄浮腫がみられることがあります。
適切に運動を制限し、必要に応じて装具を使用することで、骨癒合が期待できます。

進行期

骨折線が広がり、骨折部の間に隙間が形成された段階です。
初期より骨癒合の可能性は低くなりますが、年齢、骨折部位、片側か両側か、MRI所見などによっては癒合を目指した治療を行います。

末期・偽関節期

骨折部の周囲が硬くなり、完全に分離している段階です。
骨折部が長期間つながらず、偽関節となっています。
この段階では、運動を休止したりコルセットを装着したりしても、骨癒合を得ることは難しくなります。
ただし、末期分離があっても、痛みなくスポーツや日常生活を続けている方は少なくありません。
末期分離が見つかったからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。

主な原因

腰を繰り返し反らす動作

腰椎を後方へ反らすと、腰椎後方の関節突起間部へ圧力が集中します。
反復することで骨に疲労が蓄積します。

腰を反らしながらひねる動作

腰椎の伸展と回旋が同時に加わると、関節突起間部へねじるような力が加わります。
特に片側へ繰り返しひねる競技では、片側性の分離症が起こることがあります。

ジャンプと着地

着地時には、地面からの衝撃が下肢、骨盤、腰椎へ伝わります。
腰を反らした姿勢で着地すると、関節突起間部への負担が増える場合があります。

急激な練習量の増加

進学、部活動への入部、レギュラー争い、合宿などによって、短期間に練習量が増えた後に発症することがあります。

成長期の身体の変化

身長が急に伸びる時期には、骨の成長に筋肉や腱の柔軟性が追いつかず、太ももや股関節周囲が硬くなることがあります。
股関節や胸椎が十分に動かないと、その動きを腰椎が代わりに担い、腰へ負担が集中する場合があります。

体質・骨の形

関節突起間部の形や厚さ、腰椎と骨盤の配列など、個人の体質的な要因も関係すると考えられています。
同じスポーツや練習を行っていても、すべての方が分離症になるわけではありません。

発症しやすいスポーツ

腰を繰り返し反らす、ひねる、着地する競技で発症しやすくなります。
・野球
・サッカー
・バレーボール
・バスケットボール
・体操
・新体操
・ダンス
・バレエ
・水泳
・飛び込み
・テニス
・バドミントン
・ラグビー
・アメリカンフットボール
・陸上競技
・柔道
・レスリング
・重量挙げ
・ゴルフ
競技名だけで発症リスクが決まるわけではありません。
練習量、フォーム、休養、成長段階、身体の柔軟性などが複合的に関係します。

主な症状

運動時の腰痛

初期には、練習中や練習後だけ腰が痛むことがあります。
休むと軽くなり、翌日には改善することもあるため、受診が遅れる場合があります。

腰を反らすと痛む

腰椎分離症で典型的な症状の一つです。
シュート、スパイク、サーブ、投球、ジャンプ、バク転など、腰を反らす動作で痛みが出ます。

腰を反らしてひねると痛む

斜め後方へ身体を反らす動作で、腰の片側に痛みが現れることがあります。

腰の片側または両側の痛み

骨折が片側にある場合には、同じ側の腰が痛むことがあります。
ただし、痛みの側と画像上の分離部位が必ず一致するとは限りません。

臀部・太ももへの痛み

腰の痛みに加えて、臀部や太ももの後ろへ痛みが広がることがあります。
通常は膝より上にとどまることが多いものの、神経根が圧迫されると、膝より下まで痛みやしびれが出る場合があります。

長時間の立位・座位で痛む

進行すると、スポーツ時だけでなく、授業中、通学、長時間立っているときなどにも痛みが出る場合があります。

腰のこわばり

腰を動かしにくい、身体を反らせない、筋肉が張るなどの症状が現れることがあります。

太ももの裏の硬さ

分離すべり症を伴う場合や痛みが強い場合には、ハムストリングスが緊張し、膝を伸ばしにくくなることがあります。

無症状の場合

過去に生じた末期分離が、別の目的で撮影したX線やCTで偶然見つかることがあります。
痛みや神経症状がなければ、通常は骨をつなげるための治療を行う必要はありません。

腰椎分離すべり症について

腰椎分離すべり症は、両側の関節突起間部が分離し、椎体が下の椎体に対して前方へずれた状態です。
多くは第5腰椎が仙骨に対して前方へずれます。
分離があっても、必ずすべり症へ進行するわけではありません。
すべりは成長期に進行する可能性があり、骨の成長が終了した後は大きく進行しないこともあります。
一方、成人後に椎間板の変性が加わると、腰痛や神経症状が現れる場合があります。

分離すべり症の症状

・腰痛
・臀部痛
・太ももの痛み
・脚のしびれ
・足の筋力低下
・ハムストリングスの緊張
・腰が反った姿勢
・立位、歩行のしにくさ
すべりが大きい場合には、腰椎から出る神経根が引き伸ばされたり、椎間孔で圧迫されたりすることがあります。

変性すべり症との違い

分離すべり症

・関節突起間部の分離がある
・多くは成長期に発生した疲労骨折が背景にある
・第5腰椎に多い
・若年者から成人にみられる
・神経根が椎間孔で圧迫される場合がある

変性すべり症

・関節突起間部の分離はない
・椎間板や椎間関節の加齢性変化が原因となる
・中高年に多い
・第4腰椎に多い
・脊柱管狭窄症を伴うことが多い

腰椎椎間板ヘルニアとの違い

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が後方へ突出し、神経根を刺激・圧迫する病気です。

腰椎分離症

・成長期のスポーツ選手に多い
・腰を反らす、ひねると痛みやすい
・腰痛が中心となることが多い
・関節突起間部の疲労骨折である

腰椎椎間板ヘルニア

・前かがみや座位で悪化する場合がある
・臀部から脚にかけての痛みやしびれが目立つ
・咳やくしゃみで脚へ痛みが走ることがある
・椎間板の突出による神経障害である

症状だけで完全に区別することはできません。
両方を同時に発症している場合もあります。

筋肉性腰痛との違い

筋肉や筋膜の疲労でも、運動後に腰痛が生じます。
筋肉性腰痛は、数日間負荷を減らすことで改善する場合があります。
一方、腰椎分離症では、練習を再開すると同じ場所が繰り返し痛み、腰を反らす・ひねる動作で症状が再現される傾向があります。
数日休んでも改善しない、競技復帰するとすぐ再発する場合には、画像検査を検討します。

ほかの病気との違い

椎間関節障害

腰椎後方の椎間関節に炎症や負担が生じると、腰を反らす・ひねる動作で痛みます。
腰椎分離症と症状が似ています。

腰椎終板障害

成長期の椎体終板や椎間板周囲に障害が起こり、前屈・座位などで腰痛が出ることがあります。

仙腸関節障害

骨盤後方の仙腸関節周辺に痛みが現れます。
片脚立ち、走行、方向転換などで痛むことがあります。

椎体骨折・腫瘍・感染症

成長期の腰痛でも、骨折、感染症、腫瘍などが隠れていることがあります。
夜間痛、発熱、体重減少、全身のだるさなどがある場合には注意が必要です。

炎症性疾患

安静にしていると痛み、運動すると軽くなる腰痛や、長く続く朝のこわばりがある場合には、炎症性の脊椎疾患を検討します。

腎臓・尿路疾患

腎盂腎炎や尿路結石でも腰背部痛が起こります。
発熱、血尿、排尿時痛、吐き気などを伴う場合があります。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

主に次の内容を確認します。
・年齢
・行っているスポーツ
・競技レベルと練習時間
・練習量が急に増えていないか
・いつから痛むか
・痛みが始まったきっかけ
・運動中だけか、日常生活でも痛むか
・腰を反らすと痛むか
・身体をひねると痛むか
・片側か両側か
・臀部や脚に症状があるか
・しびれや筋力低下があるか
・夜間や安静時にも痛むか
・発熱や体重減少があるか
・過去にも同じ痛みがあったか

視診

次のような状態を確認します。
・腰椎の反り
・側弯
・骨盤の傾き
・体幹の左右差
・痛みを避ける姿勢
・太ももの筋肉の硬さ
分離すべり症が高度な場合には、腰の反りが強く見えることがあります。

腰椎の動き

前屈、後屈、左右への側屈、回旋などを確認します。
腰を反らす動作で局所的な痛みが再現される場合には、分離症を疑います。
痛みを確認するために何度も強く反らす必要はありません。

片脚後屈テスト

片脚で立ち、腰を後方へ反らしながら身体をひねることで痛みが出るか確認する検査です。
分離症で痛みが再現されることがありますが、椎間関節障害などでも陽性になります。
この検査だけで腰椎分離症を確定することはできません。

触診

腰椎後方、筋肉、仙腸関節などを触り、圧痛の場所を確認します。

柔軟性の評価

次のような部位の柔軟性を確認します。
・ハムストリングス
・大腿四頭筋
・腸腰筋
・臀部の筋肉
・股関節
・胸椎・胸郭
股関節や胸椎の動きが小さいと、競技動作で腰椎へ負担が集中する場合があります。

神経学的検査

脚の痛みやしびれがある場合には、次の項目を確認します。
・脚の筋力
・皮膚感覚
・膝蓋腱反射
・アキレス腱反射
・つま先歩き
・かかと歩き
・下肢伸展挙上テスト
単純な分離症では、明らかな神経学的異常がみられないことが一般的です。
筋力低下や感覚障害がある場合には、分離すべり症や椎間板ヘルニアなどを確認します。

X線検査

腰椎X線では、関節突起間部の分離や椎体のずれを確認します。
一般に次の方向から撮影します。
・正面像
・側面像
・必要に応じた斜位像
側面像では、椎体の前方へのずれを確認できます。
斜位像では、関節突起間部の分離が見える場合があります。
ただし、発症初期の小さな疲労骨折は、X線に写らないことがあります。
X線で異常がないという理由だけで、初期の腰椎分離症を否定することはできません。
成長期の腰痛では、放射線被ばくを考慮し、必要性を判断して撮影します。

MRI検査

MRIは、初期の腰椎分離症を発見するうえで重要な検査です。
骨折線が形成される前や、X線・CTで明らかな亀裂が見えない段階でも、関節突起間部の骨髄浮腫を確認できる場合があります。
MRIでは次の項目を評価します。
・関節突起間部の骨髄浮腫
・疲労骨折の活動性
・左右どちらに病変があるか
・複数の腰椎に病変がないか
・椎間板ヘルニア
・神経圧迫
・腫瘍、感染症などの病変
MRIは放射線を使用しません。
成長期の患者さまで初期分離が疑われる場合に適しています。
一方、骨折線の細かな形や骨硬化の程度は、CTのほうが分かりやすい場合があります。

CT検査

CTは、関節突起間部の骨折線や骨の形を詳しく確認する検査です。
主に次の項目を評価します。
・骨折線の有無
・骨折線の広がり
・初期、進行期、末期の判定
・骨折部周囲の骨硬化
・骨癒合の状態
・片側性か両側性か
・手術計画
CTは骨の評価に優れていますが、X線より放射線被ばくが多くなります。
成長期では、必要な範囲に限定して撮影するなど、被ばくを抑える工夫が必要です。
治療中に何度もCTを撮影するかどうかは、症状、病期、治療目標などを踏まえて判断します。

MRIとCTの役割の違い

MRI

・初期の骨ストレス反応を見つけやすい
・骨髄浮腫を評価できる
・放射線を使用しない
・椎間板や神経も評価できる

CT

・骨折線を詳しく確認できる
・病期を判定しやすい
・骨硬化や偽関節を評価できる
・骨癒合や手術計画の確認に役立つ
両方を組み合わせることで、骨折の活動性と骨の形を詳しく評価できます。

MRI・CT検査が必要な場合

当院では、診察、X線検査、身体所見をもとに腰椎分離症の可能性を評価します。
初期の腰椎分離症が疑われる場合や、骨折線の状態を詳しく確認する必要がある場合には、MRI検査やCT検査を検討します。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
成長期の患者さまでは、放射線被ばくにも配慮し、必要性を確認したうえで検査を行います。

腰椎分離症に対する治療

治療方針は、次の要素によって異なります。
・年齢
・初期、進行期、末期のどの段階か
・片側か両側か
・MRIで骨髄浮腫があるか
・骨癒合を目指せる状態か
・痛みの強さ
・競技種目と活動レベル
・すべり症や神経症状があるか
治療には、大きく分けて次の二つの考え方があります。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う治療

骨癒合を目指す治療

初期から一部の進行期で、骨折部がつながる可能性がある場合に行います。

痛みと機能の改善を目指す治療

末期分離、骨癒合が困難な状態、成人の陳旧性分離などで行います。
骨がつながらなくても、適切なコンディショニングによって痛みなく生活・スポーツを続けられる場合があります。

スポーツ・運動の一時休止

骨癒合を目指す場合には、原因となった運動を一時的に休止します。
特に次の動作を避けます。
・腰を大きく反らす
・腰を反らしてひねる
・繰り返すジャンプと着地
・投球、スパイク、サーブ
・バク転などの強い後屈動作
・重い重量を持ったスクワットやデッドリフト
・痛みを我慢した練習
日常生活のすべての動作を禁止するわけではありません。
痛みを悪化させない範囲で、通学や軽い歩行などは継続します。
競技から離れる期間は、病期、症状、画像所見、競技内容によって異なります。
自己判断で数日休んだだけで復帰せず、診察と画像所見を踏まえて決定します。

コルセット・装具療法

初期分離症などで骨癒合を目指す場合には、腰椎の伸展や回旋を制限するコルセットを使用することがあります。
装具の目的は次のとおりです。
・骨折部への負担を減らす
・腰を反らす動作を制限する
・痛みを軽減する
・骨癒合しやすい環境をつくる
装具の種類や装着期間は、病期と治療方針によって異なります。
一般的な柔らかい腰痛ベルトでは、腰椎の伸展や回旋を十分に制限できない場合があります。
成長によって装具が合わなくなった場合や、皮膚に傷ができた場合には調整が必要です。
末期分離に対して長期間装具を使用しても、分離部の骨癒合は通常期待できません。
痛みの軽減を目的として、活動時に短期間使用する場合があります。

薬物療法

痛みの程度に応じて、次のような薬を使用する場合があります。
・アセトアミノフェン
・消炎鎮痛薬
・外用薬
薬は痛みを軽減するためのものであり、骨折部を直接つなげる治療ではありません。
鎮痛薬で痛みを隠しながら、原因となる練習を続けることは避けてください。
消炎鎮痛薬では、胃腸障害、腎機能障害、喘息、ほかの薬との重複などに注意します。

体外衝撃波治療

骨癒合を早める目的や慢性的な痛みが続く場合には、体外衝撃波治療を検討することがあります。
治療中や治療後に一時的な痛み、赤み、皮下出血などが生じることがあります。
すべての腰椎分離症に同じ効果が得られるわけではありません。
体外衝撃波治療は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

リハビリテーション

腰椎分離症のリハビリテーションでは、腰だけでなく、胸椎、胸郭、骨盤、股関節、下肢を含めて身体の使い方を評価します。

急性期・骨癒合を目指す時期

骨折部へ負担をかけない範囲で、次のような内容を行います。
・痛みのない範囲での日常動作
・腹部を安定させる軽い運動
・股関節周囲の柔軟性改善
・ハムストリングスのストレッチ
・大腿四頭筋のストレッチ
・腸腰筋のストレッチ
・胸椎・胸郭の柔軟性改善
・下肢筋力の維持
腰を強く反らすストレッチや、骨折部に負担が集中する運動は避けます。

痛みが落ち着いた時期

次のような運動を段階的に行います。
・腹筋群の持久力訓練
・多裂筋など体幹後面の機能訓練
・臀筋群の筋力訓練
・股関節周囲筋の筋力訓練
・片脚立ちやバランス訓練
・スクワットや着地動作の練習
・胸椎を使った回旋練習
・競技フォームの修正
腹筋を強くすれば分離症が治るというものではありません。
体幹を安定させながら、股関節と胸椎を適切に動かし、腰椎へ負担が集中しない身体の使い方を身につけることが重要です。

ストレッチの注意点

成長期には、次の筋肉が硬くなることがあります。
・ハムストリングス
・大腿四頭筋
・腸腰筋
・臀筋群
・下腿三頭筋
特に腸腰筋や大腿四頭筋が硬いと、股関節を伸ばす動作で骨盤が前へ傾き、腰が反りやすくなる場合があります。
ただし、ストレッチの際に腰を強く反らすと、分離部へ負担がかかります。
腰椎を安定させ、股関節を中心に伸ばす方法で行います。

スポーツ復帰

スポーツ復帰は、単に一定期間休んだことだけで決めません。
一般に次の項目を確認します。
・日常生活で痛みがない
・腰を動かしても強い痛みがない
・圧痛が改善している
・ジョギングで痛みが出ない
・ジャンプ、着地で痛みがない
・競技動作を低い強度で行える
・体幹と股関節を適切に使える
・筋力と柔軟性が回復している
・必要に応じて画像で治癒過程を確認している
復帰は段階的に行います。
1.軽い歩行・自転車運動
2.ジョギング
3.ダッシュや方向転換
4.軽いジャンプ
5.競技の基本動作
6.部分的な練習参加
7.通常練習
8.試合復帰
途中で腰痛が再発した場合には、一段階前へ戻します。
画像上で骨癒合が得られていても、身体の使い方や筋力・柔軟性が改善していなければ、再発や反対側の分離が起こる可能性があります。
一方、末期分離で骨癒合していなくても、痛みがなく、十分なコンディショニングができていれば、スポーツ復帰を検討できる場合があります。

再発・反対側の発症

片側の分離症があると、反対側の関節突起間部へ負担が集中する場合があります。
治療後に競技へ急いで復帰すると、同じ場所の再発や反対側の新たな疲労骨折が起こる可能性があります。
復帰後も次の点を確認します。
・練習量を急に増やさない
・週の中に休養日を設ける
・腰痛を我慢して続けない
・成長期の身体の硬さを確認する
・投球、着地、キックなどのフォームを調整する
・体幹だけでなく股関節と胸椎を使う
・睡眠と栄養を確保する

末期分離症の治療

末期分離では、骨をつなげることより、痛みを抑え、競技や日常生活に必要な機能を回復することを目標とします。
主な治療は次のとおりです。
・痛みを悪化させる動作の調整
・体幹筋機能の改善
・股関節、胸椎の柔軟性改善
・競技フォームの修正
・鎮痛薬
・一時的なコルセット
・必要に応じた局所注射
末期分離が画像に残っていても、痛みなく生活できる方は多くいます。
画像上の分離をなくすことだけを治療目標にする必要はありません。

分離部ブロック

分離部が痛みの原因か判断しにくい場合には、分離部周囲へ局所麻酔薬などを注射することがあります。
注射後に腰痛が大きく軽減した場合には、分離部が痛みの原因となっている可能性があります。
注射には、出血、感染、薬剤アレルギー、神経損傷などのリスクがあります。
注射で分離部が骨癒合するわけではありません。

手術治療

腰椎分離症の多くは、手術を行わずに治療します。
次のような場合に手術を検討することがあります。
・適切な保存療法を行っても強い腰痛が続く
・日常生活やスポーツへの支障が大きい
・分離部が痛みの原因であることが明確である
・神経根圧迫による脚の痛みや筋力低下がある
・分離すべり症が進行している
・高度のすべりがある
・腰椎の不安定性が強い

体外衝撃波治療・PRP療法について

体外衝撃波治療は、骨癒合を早める目的や、慢性的な痛みが続く場合に検討することがあります。
ただし、すべての腰椎分離症に同じ効果が得られるわけではなく、病期、年齢、痛みの原因、スポーツ活動などを踏まえて適応を判断します。
PRP療法は、患者さんご自身の血液を採取し、血小板を多く含む成分を抽出して注入する治療です。
腰椎分離症に対しては、骨癒合を保証する治療ではなく、標準的な第一選択治療でもありません。
成長期の疲労骨折では、まず運動制限、装具療法、リハビリテーション、画像評価を基本とし、PRP療法の適応は慎重に判断します。
体外衝撃波治療とPRP療法は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法について詳しくはコチラ

整体・強い矯正について

初期の腰椎分離症は、骨に亀裂が入った疲労骨折です。
腰を強く反らす、ひねる、勢いをつけて矯正する施術によって、骨折が進行する可能性があります。
成長期の腰痛で腰を反らすと痛む場合には、強い矯正を受ける前に整形外科を受診してください。
末期分離でも、強い力を加えることで症状が悪化する場合があります。
マッサージによって周囲の筋緊張が一時的に軽くなることはありますが、分離した骨をつなげる治療ではありません。

自宅・学校生活での注意点

・痛みを我慢して部活動を続けない
・体育や部活動の制限を学校と共有する
・腰を反らす、ひねる運動を自己判断で行わない
・処方された装具を指示どおり使用する
・装具を着けたまま痛みを我慢して競技しない
・長時間同じ姿勢を続けない
・重い荷物を片側だけで持たない
・急に筋力トレーニングを増やさない
・睡眠と食事を十分に取る
・痛みの変化を記録する
・脚のしびれや筋力低下を見逃さない
学校や指導者には、腰椎分離症が疲労骨折であり、初期には運動制限が必要になることを伝えます。
「痛みに耐えて練習すれば強くなる」というものではありません。

栄養と休養

骨の修復には、十分なエネルギーと栄養が必要です。
特に次の不足に注意します。
・総エネルギー
・たんぱく質
・カルシウム
・ビタミンD
・鉄など
体重制限の強い競技や、食事量が少ない選手では、骨の回復が遅れる可能性があります。
月経不順、極端な体重減少、繰り返す疲労骨折などがある場合には、スポーツによるエネルギー不足についても評価します。

腰椎分離症でお悩みの方へ

次のような症状がある場合には、腰椎分離症の可能性があります。
・小学生、中学生、高校生で腰痛がある
・スポーツ中や練習後に腰が痛む
・腰を反らすと痛い
・身体を反らしてひねると痛い
・ジャンプや着地で痛む
・投球、キック、スパイクで痛む
・腰の片側だけが繰り返し痛む
・数日休むと軽くなるが、復帰すると再発する
・練習量が増えてから腰痛が始まった
・X線で異常なしと言われたものの痛みが続く
次のような場合には、早めに整形外科やスポーツ整形外科を受診してください。
・腰痛が1~2週間以上続いている
・スポーツを休んでも改善しない
・腰を反らすと毎回痛む
・日常生活や授業中にも痛む
・臀部や脚へ痛みが広がる
・腰痛を繰り返している
・左右の脚にしびれがある
・足へ力が入りにくい
・画像で分離やすべりを指摘された
・身長が急に伸びている時期である
次のような症状がある場合には、分離症以外の重い病気や神経障害を含めて、速やかな評価が必要です。
・強い夜間痛がある
・安静にしていても強く痛む
・発熱、悪寒がある
・原因不明の体重減少がある
・脚の筋力低下が進行している
・足を引きずる
・両脚がしびれる
・尿が出にくい、尿を出せない
・尿や便を漏らす
・肛門や陰部周囲の感覚が低下した
・転倒や事故後に強い痛みが出た
診察では、競技内容、練習量、成長時期、腰痛が出る動作、脚の症状などを確認します。
腰を反らす・ひねる動作で痛みが再現される場合には、腰椎分離症を疑います。
初期の腰椎分離症はX線に写らないことがあるため、成長期のスポーツ選手で症状が続く場合にはMRIを検討します。
MRIでは骨のむくみや活動性を確認し、CTでは骨折線の形と病期を評価します。
初期から一部の進行期では、スポーツ活動の一時休止、装具療法、リハビリテーションによって骨癒合を目指します。
末期分離では骨癒合が難しいため、体幹、股関節、胸椎の機能改善と競技動作の修正によって、痛みなく活動できる状態を目指します。
保存療法を行っても強い痛みが続く場合、分離すべり症や神経圧迫を伴う場合には、分離部修復術や脊椎固定術などを検討します。
成長期の腰痛を「筋肉痛」「身体が硬いだけ」と自己判断せず、早い段階で疲労骨折を発見することが、骨癒合と安全な競技復帰につながります。

当院での診療について

当院では、成長期のスポーツ選手の腰痛に対して、競技内容、練習量、成長時期、腰痛が出る動作、脚の症状などを確認します。
腰を反らす・ひねる動作で痛みが再現される場合には、腰椎分離症を疑い、X線検査や必要に応じたMRI・CT検査を検討します。
初期から一部の進行期では、スポーツ活動の一時休止、装具療法、リハビリテーションによって骨癒合を目指します。
末期分離では、骨癒合だけを目的とせず、体幹、股関節、胸椎の機能改善と競技動作の修正によって、痛みなく活動できる状態を目指します。
保存療法を行っても強い痛みが続く場合、分離すべり症や神経圧迫を伴う場合には、脊椎手術に対応している医療機関へご紹介します。
成長期の腰痛を「筋肉痛」だけで済ませず、早期に疲労骨折を確認することが、安全な競技復帰につながります。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫