ドゥ・ケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

ドゥ・ケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

ドゥ・ケルバン病(狭窄性腱鞘炎)について

ドゥ・ケルバン病は、親指側の手首にある腱と腱鞘の間で摩擦や通過障害が起こり、親指や手首を動かしたときに痛みを生じる病気です。
「ドケルバン病」「ド・ケルバン病」「狭窄性腱鞘炎」と呼ばれることもあります。
親指を広げたり伸ばしたりする腱は、手首の親指側にある狭いトンネル状の腱鞘を通っています。
手や親指を繰り返し使用すると、腱の表面が傷んだり、腱を包む腱鞘が厚くなったりして、腱が滑らかに動きにくくなります。
その結果、親指を動かす、物をつかむ、手首を小指側へ曲げるといった動作で、親指側の手首に痛みが現れます。
妊娠・出産期や更年期の女性に多くみられますが、育児、家事、仕事、スポーツ、スマートフォンの操作などで手や親指を多く使う方にも発症します。
軽症では、手や親指の使い方を調整し、装具などで患部を休ませることで改善が期待できます。
痛みが強い場合や保存療法で改善しない場合には、腱鞘内へのステロイド注射を検討します。
注射後も症状を繰り返す場合や、腱の通過障害が強い場合には、腱鞘を切開して腱が動ける空間を広げる手術が必要になることがあります。

親指を動かす腱と腱鞘の構造

手首の手の甲側には、指や親指を伸ばす腱が通る6つのトンネルがあります。
これらは「伸筋腱コンパートメント」と呼ばれます。
ドゥ・ケルバン病は、その中で最も親指側にある「第1伸筋腱コンパートメント」に起こります。
第1伸筋腱コンパートメントには、主に次の2種類の腱が通っています。

長母指外転筋腱

親指を手のひらから外側へ広げる働きがあります。
赤ちゃんを抱き上げる、コップをつかむ、大きな物を持つといった動作で使用されます。
長母指外転筋腱は1本とは限らず、複数の腱に分かれている場合があります。

短母指伸筋腱

親指を伸ばす働きがあります。
親指を立てる、物を放す、親指を使って画面を操作するといった動作に関係します。

第1伸筋腱コンパートメント

長母指外転筋腱と短母指伸筋腱は、橈骨茎状突起付近にある狭い腱鞘の中を通過します。
腱鞘は腱を骨の近くに保ちながら、滑らかに動かすためのトンネルです。
人によっては、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間に「隔壁」と呼ばれる仕切りがあります。
隔壁があると、特に短母指伸筋腱の通る空間が狭くなり、症状が起こりやすかったり、注射治療が十分に届きにくかったりする場合があります。
手術を行う場合には、この隔壁や複数の腱を見落とさず、すべての狭窄部分を確認することが重要です。

ドゥ・ケルバン病の原因

ドゥ・ケルバン病は、腱と腱鞘へ繰り返し負担が加わることで発症します。
ただし、手の使いすぎだけでなく、ホルモンバランスや身体のむくみなど、複数の要因が関係すると考えられています。

親指・手首の使いすぎ

親指を繰り返し広げる、伸ばす、力を入れて物をつかむと、腱が腱鞘の中を何度も往復します。
摩擦が続くと腱鞘が厚くなり、腱の動きが悪くなります。
特に、親指を広げたまま手首を小指側へ曲げる動作では、第1伸筋腱コンパートメントへ大きな負担がかかります。

育児

赤ちゃんを抱き上げるときに、親指とほかの指を大きく広げ、手首を曲げた状態で支えることがあります。
この動作を授乳、抱っこ、沐浴、着替えなどで繰り返すことで、親指側の手首へ負担が集中します。
赤ちゃんの頭や身体を手首だけで持ち上げるのではなく、前腕や肘、身体全体で支えることが大切です。

妊娠・出産

妊娠・出産期には、ホルモンバランスや体液量の変化によって腱鞘周囲がむくみやすくなります。
出産後は育児による手の負担も加わるため、症状が起こりやすくなります。
両手に発症する場合もあります。

更年期

更年期の女性にも多くみられます。
ホルモンバランスの変化によって腱や腱鞘の状態が変化し、狭窄性腱鞘炎を起こしやすくなると考えられています。

スマートフォン・パソコン操作

親指だけでスマートフォンの画面を長時間操作する、片手で端末を支え続けるといった動作で症状が悪化することがあります。
マウス操作やキーボード入力でも、手首が親指側または小指側へ傾いた状態が続くと負担になります。

仕事・家事

次のような動作を繰り返す仕事や家事で発症することがあります。
・包丁やはさみを使う
・フライパンや鍋を持つ
・タオルや雑巾を絞る
・ペットボトルのふたを開ける
・ドライバーなどの工具を使用する
・荷物をつかんで持ち上げる
・介護や移乗動作を行う
・美容、調理、縫製などで手を使う
・楽器を演奏する
・ゲームのコントローラーを長時間操作する

スポーツ

テニス、バドミントン、ゴルフ、ボウリング、釣り、ウエイトトレーニングなど、道具を握りながら手首を動かすスポーツで発症することがあります。
手首だけでラケットやクラブを操作する、グリップを強く握りすぎるといった動作が負担になります。

外傷後

手首の打撲や捻挫、橈骨遠位端骨折などの後に、腫れや瘢痕によって腱の滑りが悪くなり、症状が現れることがあります。
転倒後から急に親指側の手首が痛む場合には、腱鞘炎だけでなく、舟状骨骨折や橈骨茎状突起骨折なども確認する必要があります。

関節リウマチ・糖尿病など

関節リウマチによる腱鞘の炎症や、糖尿病に伴う腱・腱鞘の変化が発症に関係する場合があります。
複数の指に腱鞘炎がある、両手に繰り返し症状が出る場合には、基礎疾患を確認することがあります。

主な症状

親指側の手首の痛み

最も代表的な症状は、親指側の手首にある橈骨茎状突起付近の痛みです。
最初は特定の動作をしたときだけ痛みますが、進行すると日常生活の軽い動作でも痛むようになります。
さらに症状が強くなると、安静時にうずく、夜間にも痛むといったことがあります。

腫れ・熱感

親指側の手首が腫れ、押すと痛むことがあります。
腱鞘炎が強い場合には、周囲に軽い熱感を伴うことがあります。
大きな腫れ、強い赤み、発熱などがある場合には、感染症や結晶性関節炎など、別の病気を確認する必要があります。

親指を動かすと痛い

親指を広げる、伸ばす、反らす動作で痛みが現れます。
次のような動作で症状が出やすくなります。
・スマートフォンを親指で操作する
・ボタンを留める
・紙をめくる
・洗濯ばさみをつまむ
・赤ちゃんの頭を支える
・大きな物をつかむ
・親指でふたを押し開ける

手首を小指側へ曲げると痛い

親指を握り込んだ状態や、親指を伸ばした状態で手首を小指側へ曲げると、腱が強く引っ張られ、親指側の手首に痛みが出ます。
痛みを確認するために、自分でこの動作を何度も繰り返すと症状が悪化する場合があります。

物を握る・ひねると痛い

物を握りながら手首を動かすと痛みが強くなります。
次のような動作に支障が現れることがあります。
・ペットボトルや瓶のふたを開ける
・ドアノブを回す
・タオルを絞る
・フライパンを持つ
・鍵を回す
・荷物を持ち上げる
・赤ちゃんを抱き上げる
・髪を結ぶ
・文字を書く

力が入りにくい

痛みのために十分に力を入れられず、握力が低下したように感じることがあります。
物を落とす、赤ちゃんを抱くことが不安になるといった影響が出る場合があります。

引っかかり・きしむ感覚

腱の滑りが悪くなると、親指を動かした際に引っかかる、きしむ、こすれるような感覚が現れることがあります。
腱が動く際に音や振動を感じる場合もあります。

痛みが前腕へ広がる

痛みが親指側の手首から前腕へ広がることがあります。
一方、親指や手の甲にしびれを伴う場合には、橈骨神経浅枝の障害なども確認します。

ドゥ・ケルバン病の経過

軽症では、親指や手首の負担を減らすことで、数週間から数か月かけて改善することがあります。
妊娠・出産に伴って発症した場合には、むくみやホルモンバランスが変化することで症状が軽くなる場合があります。
ただし、育児による負担が続くと、症状が長引くこともあります。
痛みを我慢して同じ動作を続けると、腱鞘の肥厚や腱表面の損傷が進み、腱の通過障害が強くなることがあります。
装具や注射によって一時的に改善しても、手の使い方や負担が変わらなければ再発する場合があります。
注射を行っても症状を繰り返す場合や、隔壁による強い狭窄がある場合には、手術治療を検討します。

ほかの病気との違い

母指CM関節症との違い

母指CM関節症は、親指の付け根にあるCM関節の軟骨がすり減り、痛みや変形を生じる病気です。
瓶のふたを開ける、鍵を回す、物をつまむといった動作で痛みが現れます。
ドゥ・ケルバン病よりも、親指の付け根の手のひら側に近い部分が痛む傾向があります。
親指の骨を押し込みながらひねると痛みが再現されることがあります。
X線検査では、関節の隙間の狭小化、骨棘、亜脱臼などを確認します。
両方を同時に発症する場合もあります。

舟状骨骨折との違い

舟状骨骨折は、転倒して手をついた後などに起こる手首の骨折です。
親指側の手首に痛みが現れ、ドゥ・ケルバン病と似ることがあります。
親指を立てたときに手首へできるくぼみを押すと強く痛む場合には、舟状骨骨折を疑います。
受傷直後のX線で骨折が見えにくいことがあるため、外傷後の痛みでは注意が必要です。

橈骨茎状突起骨折との違い

転倒や強い打撲後に親指側の手首が腫れ、骨を押すと強く痛む場合には、橈骨茎状突起骨折の可能性があります。
外傷歴、腫れ、皮下出血、X線検査などから判断します。

交差症候群との違い

交差症候群は、手首より少し肘側の手の甲に痛みや腫れを生じる腱鞘炎です。
手首や親指を繰り返し動かすスポーツ、ボート競技、スキーなどで起こることがあります。
ドゥ・ケルバン病よりも数センチ肘側が痛み、手首を動かすときしむ感覚を伴うことがあります。

橈骨神経浅枝障害との違い

橈骨神経浅枝が手首周辺で刺激されると、親指側の手の甲に痛みやしびれが現れます。
ドゥ・ケルバン病は動作時痛と腱鞘部の圧痛が中心で、通常、明らかなしびれはありません。
両方を同時に発症する場合もあります。

手関節炎との違い

関節リウマチや変形性手関節症などでも、手首の痛みや腫れが現れます。
手首全体が腫れる、複数の関節が痛む、朝のこわばりが長く続く場合には、血液検査や画像検査を検討します。

感染性腱鞘炎との違い

傷や注射などをきっかけに細菌感染を起こすと、強い赤み、腫れ、熱感、安静時痛、発熱などが現れることがあります。
感染が疑われる場合には、通常のドゥ・ケルバン病とは異なり、抗菌薬や外科的処置が必要です。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

痛む場所、症状が始まった時期、負担となっている動作などを確認します。
主に次のような点についてお伺いします。
・親指を動かすと痛むか
・手首を小指側へ曲げると痛むか
・物を握る、ひねると痛むか
・赤ちゃんを抱き上げると痛むか
・スマートフォンを長時間使用しているか
・仕事や家事で親指を繰り返し使うか
・妊娠中または出産後であるか
・更年期に該当するか
・転倒や打撲などの外傷があったか
・親指や手の甲にしびれがあるか
・安静時や夜間にも痛むか
・これまでに装具や注射治療を受けたか
・糖尿病、関節リウマチなどがあるか

視診・触診

親指側の手首に腫れ、赤み、変形などがないかを確認します。
橈骨茎状突起付近の第1伸筋腱コンパートメントを触診し、圧痛、腱鞘の厚み、腱の引っかかりなどを調べます。
母指CM関節、舟状骨、橈骨茎状突起、手関節なども触診し、別の病気がないかを確認します。

親指・手首の動きの確認

親指を広げる、伸ばす、曲げる動きと、手首の曲げ伸ばしや左右への動きを確認します。
親指を広げる動作に抵抗を加えた際に、親指側の手首へ痛みが現れるかを評価します。
強い痛みがある場合には、無理に繰り返し動かしません。

Finkelsteinテスト

検査する側の親指を医師が持ち、手首を小指側へゆっくり動かして、第1伸筋腱コンパートメントの痛みが再現されるかを確認します。
ドゥ・ケルバン病の診断に用いられる代表的な検査です。

Eichhoffテスト・Finkelsteinテスト変法

親指を手のひらの中へ入れて握り、手首を小指側へ曲げた際に痛みが現れるかを確認します。
一般にはFinkelsteinテストとして知られていることもありますが、正確にはEichhoffテストまたはFinkelsteinテスト変法に相当します。
この方法は、健康な方でも強く行うと痛みが出ることがあります。
痛みを確かめるために自宅で何度も強く行わないでください。

WHATテスト

親指を伸ばし、手首を軽く曲げた状態で親指を持ち上げる力を加え、痛みが再現されるかを確認することがあります。
一つの徒手検査だけで診断せず、痛みの場所、圧痛、超音波所見などを組み合わせて判断します。

X線検査

腱や腱鞘はX線には直接写りません。
次のような場合にX線検査を行います。
・転倒や打撲後に発症した
・骨を押すと強く痛む
・母指CM関節症が疑われる
・舟状骨骨折や橈骨茎状突起骨折が疑われる
・手首の変形や関節炎がある
・保存療法で改善しない
・石灰沈着などを確認する必要がある
ドゥ・ケルバン病ではX線に異常がみられないことも多くあります。

超音波検査

超音波検査では、長母指外転筋腱、短母指伸筋腱、腱鞘などを直接観察できます。
次のような状態を評価します。
・腱鞘の肥厚
・腱周囲の液体貯留
・腱の腫れや変性
・腱の滑走状態
・炎症に伴う血流増加
・第1コンパートメント内の隔壁
・長母指外転筋腱の本数
・腱の部分損傷
・ガングリオンなどの腫瘤
・橈骨神経浅枝との位置関係
親指や手首を動かしながら、腱が腱鞘内を滑る様子を確認することもできます。
ステロイド注射を行う場合には、腱、腱鞘、隔壁、神経、血管、針先などを確認しながら行います。
隔壁がある場合には、一方の区画だけへ薬液が入っても、もう一方の狭窄が残る可能性があります。
超音波検査は、注射する位置や手術が必要となる可能性を検討するうえでも役立ちます。

MRI検査

典型的なドゥ・ケルバン病では、問診、身体検査、超音波検査などで診断できることが多く、MRI検査は必須ではありません。
次のような場合にMRI検査を検討します。
・痛みの原因がはっきりしない
・腱の大きな損傷が疑われる
・腫瘤が疑われる
・舟状骨などの骨障害が疑われる
・保存療法を行っても改善しない
・症状と診察所見が一致しない
・手術前に周囲組織を詳しく確認する必要がある
当院にはMRI装置は設置しておりません。
MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

ドゥ・ケルバン病に対する治療

治療方法は、痛みの強さ、発症からの期間、腱鞘の狭窄や隔壁の状態、仕事・育児への影響などによって決定します。
多くの場合、親指と手首の負担を減らす保存療法から開始します。
装具や注射などを行っても改善しない場合や、症状を繰り返す場合には手術を検討します。

保存療法

活動量・動作の調整

痛みを引き起こす親指や手首の動作を、一時的に減らします。
手をまったく使わないようにする必要はありませんが、強い痛みを我慢して同じ動作を繰り返さないことが重要です。
次のような工夫によって負担を軽減できます。
・親指だけでスマートフォンを操作しない
・スマートフォンを両手で持つ
・音声入力やスタンドを利用する
・重い物を片手で持たない
・物を持つときに手首を曲げない
・袋の持ち手を指先だけで持たない
・タオルを強く絞らない
・瓶やペットボトルの開閉補助具を使用する
・作業の途中で休憩を取る
・痛みのある手で赤ちゃんの頭だけを支えない

育児動作の調整

赤ちゃんを抱き上げる際は、親指とほかの指を大きく広げて持ち上げるのではなく、手のひらや前腕を赤ちゃんの身体の下へ入れます。
手首を曲げた状態で持ち上げず、肘と身体を近づけ、腕全体で支えます。
授乳クッションなどを使用し、手首だけで赤ちゃんの体重を支え続けないようにします。
左右の手を交代することも大切ですが、両手に症状がある場合には無理に交代せず、抱き方や周囲の支援を見直します。

装具療法

親指と手首を固定する「母指スパイカ装具」を使用することがあります。
手首だけのサポーターでは、親指を動かす腱への負担を十分に減らせない場合があります。
装具では、手首を中間位に近い位置で保ち、親指の付け根の動きを適度に制限します。
就寝中や、症状を悪化させる作業中に使用することがあります。
長時間強く固定すると、親指や手首がこわばったり、筋力が低下したりする場合があります。
皮膚の赤み、圧迫、しびれなどが出ないよう、症状と生活に合った装具を使用します。

冷却

使用後に腫れや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てると、痛みが軽くなることがあります。
皮膚へ直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないよう注意します。
冷却だけで腱鞘の狭窄がなくなるわけではありません。

薬物療法

痛みや炎症に対して、消炎鎮痛薬や外用薬を使用することがあります。
妊娠中や授乳中の場合には、使用できる薬に制限があるため、自己判断で市販薬を使用せず、医師や薬剤師へ相談してください。
薬物療法は症状を軽減するためのものであり、親指や手首への負担が続くと再発することがあります。

腱鞘内ステロイド注射

装具や活動量の調整で十分に改善しない場合や、痛みによって育児・仕事へ大きな支障がある場合には、腱鞘内へステロイドと局所麻酔薬などを注射することがあります。
ステロイドによって腱鞘周囲の炎症や腫れを抑え、腱が通る空間を確保することを目的とします。
注射後に症状が改善しても、腱鞘の構造や負担となる動作が変わらなければ再発する場合があります。
第1伸筋腱コンパートメント内に隔壁がある場合には、薬液が一方の区画にしか入らず、十分な効果が得られないことがあります。
当院では必要に応じて、超音波で腱、腱鞘、隔壁、橈骨神経浅枝、血管、針先を確認しながら注射を行います。
注射には、感染、皮膚の色調変化、皮下脂肪の萎縮、腱損傷、神経損傷などのリスクがあります。
ステロイド注射を短期間に繰り返すと、腱を傷める可能性があります。
注射の回数と間隔は、症状、超音波所見、過去の治療歴などを確認して慎重に判断します。

PRP療法について

ドゥ・ケルバン病に対するPRP療法は、長期的な症状に対しては検討することがあります。
装具、動作調整、ステロイド注射、手術など、効果と安全性がより確立している治療を優先します。

PRP療法について詳しくはコチラ

体外衝撃波治療について

体外衝撃波治療も、長期的な症状に対しては検討することがあります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

リハビリテーション

リハビリテーションでは、炎症を悪化させずに親指と手首の動きを保ち、再発につながる動作を見直します。

痛みを悪化させる動作の確認

育児、家事、仕事、スポーツなどで、親指と手首に負担がかかる場面を確認します。
同じ作業であっても、手首の角度、物の持ち方、握る力、休憩の取り方によって負担は変わります。

親指・手首の可動域訓練

強い炎症が落ち着いた後、痛みが出ない範囲で親指と手首をゆっくり動かします。
固定によって関節が硬くならないようにすることが目的です。
痛みを我慢して親指を強く曲げ込んだり、手首を小指側へ引っ張ったりするストレッチは避けます。

腱滑走運動

長母指外転筋腱と短母指伸筋腱を、痛みが強くならない範囲で滑らかに動かす運動を行うことがあります。
親指を軽く広げる、伸ばす動作から始めます。
引っかかりや鋭い痛みが出る場合には中止します。

筋力トレーニング

痛みが落ち着き、日常動作で症状が出にくくなってから、親指や手首の筋力を段階的に回復させます。
最初から強いゴムバンドや重いダンベルを使用する必要はありません。
軽い抵抗から始め、運動後や翌日に痛みが強くならないことを確認します。

肩・肘を含めた動作練習

荷物や赤ちゃんを手首だけで持つと、親指側へ負担が集中します。
肩、肘、前腕を使い、対象物を身体へ近づけて持つ練習を行います。
育児や介護では、環境や補助具の調整も重要です。

手術治療・専門医療機関への紹介

次のような場合には、腱鞘切開術を検討します。
・装具や活動量の調整で改善しない
・ステロイド注射を行っても改善しない
・注射後に何度も再発する
・親指や手首を動かすたびに強く痛む
・腱の引っかかりや通過障害が強い
・隔壁による狭窄が疑われる
・仕事、育児、日常生活に大きな支障がある
・長期間症状が続いている
手術を含めた専門的な治療が必要と判断した場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関へご紹介します。

自宅でのセルフケア

親指側の手首に痛みがある場合には、痛みを引き起こす動作を繰り返さないことが重要です。
日常生活では、次の点を意識しましょう。
・スマートフォンを両手で持つ
・親指だけで長時間画面を操作しない
・重い物を両手で持つ
・荷物を身体の近くで持つ
・親指と示指だけで袋を持たない
・タオルを強く絞らない
・手首を曲げた状態で赤ちゃんを抱かない
・授乳クッションなどを使用する
・作業中に休憩を取る
・痛む部分を強く揉まない
・Finkelsteinテストを何度も行わない
・市販の装具を強く締めすぎない
装具を使用する場合には、手首だけでなく親指の付け根を適度に固定できるものを選びます。
装具の使用によってしびれ、皮膚の赤み、指の冷たさなどが出た場合には、使用を中止してください。
妊娠中や授乳中に薬を使用する場合には、自己判断せず医師や薬剤師へ相談してください。

ドゥ・ケルバン病でお悩みの方へ

次のような症状がある場合には、ドゥ・ケルバン病の可能性があります。
・親指側の手首が痛む
・親指を広げる、伸ばすと痛む
・手首を小指側へ曲げると痛む
・物を握る、ひねると痛む
・ペットボトルのふたを開けにくい
・赤ちゃんを抱き上げると痛む
・スマートフォン操作で痛む
・親指側の手首が腫れている
・手に力が入りにくい
・装具や安静で改善しない
・症状が数週間以上続いている
次のような症状がある場合には、骨折、神経障害、感染症など、ほかの病気が隠れている可能性があります。
・転倒や打撲後から強く痛む
・親指側の骨を押すと激しく痛む
・手首が大きく腫れている
・皮下出血や変形がある
・親指や手の甲にしびれがある
・指が動かしにくい
・手が冷たい、白い、青紫色になっている
・手首が赤く熱を持っている
・安静にしていても激しく痛む
・発熱や悪寒を伴っている
・傷や注射部位から膿が出ている
転倒後の強い痛み、変形、手指の血流や感覚の異常がある場合には、手首を無理に動かさず、速やかに医療機関を受診してください。
当院では、問診、身体検査、X線検査、超音波検査などによって、長母指外転筋腱、短母指伸筋腱、腱鞘、隔壁、周囲の神経や骨・関節の状態を評価します。
MRI検査や手術を含めた専門的な治療が必要な場合には、提携医療機関や手外科・上肢外科を専門とする医療機関と連携して対応します。
装具療法、薬物療法、超音波ガイド下腱鞘内注射、生活・育児動作の指導、リハビリテーションなど、症状と生活状況に合わせた治療をご提案します。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫