オスグッド・シュラッター病

オスグッド・シュラッター病

オスグッド・シュラッター病について

オスグッド・シュラッター病は、成長期の子どもに多くみられる膝のスポーツ障害です。
一般には「オスグッド病」とも呼ばれます。
膝蓋骨の下にある膝蓋腱が、すねの骨である脛骨の「脛骨粗面」を繰り返し引っ張ることで、脛骨粗面の成長軟骨や骨に負担がかかり、痛みや腫れ、骨の突出などが生じます。
成長期の脛骨粗面は、成人の骨と比べて軟骨成分が多く、繰り返す牽引力に対して弱い状態です。
ジャンプ、ダッシュ、キック、急停止、しゃがみ込みなどを繰り返すと、大腿四頭筋の力が膝蓋骨と膝蓋腱を通じて脛骨粗面へ伝わります。
この負担が脛骨粗面の回復する力を上回ると、成長軟骨に炎症や微細な損傷が起こり、オスグッド・シュラッター病を発症します。
小学校高学年から中学生頃に多く、特に急激に身長が伸びる時期と、スポーツ活動が活発になる時期が重なった場合に起こりやすくなります。
サッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上競技など、走る、跳ぶ、蹴る動作を繰り返す競技で多くみられます。
片側の膝だけに症状が出ることもあれば、両側に生じることもあります。
主な症状は、膝蓋骨の少し下にある脛骨粗面の痛み、腫れ、押したときの痛み、骨の出っ張りです。
初期にはスポーツ中や運動後だけ痛みますが、進行すると階段昇降、しゃがみ込み、正座、立ち上がりなどの日常動作でも痛みが出ることがあります。
多くの場合は、成長が終了して脛骨粗面の成長軟骨が骨になると、症状は落ち着いていきます。
ただし、痛みを我慢して高い負荷の運動を続けると、脛骨粗面の一部が分離したり、骨片が残ったりすることがあります。
成長終了後も骨の出っ張りが残り、膝をついたときの痛みやスポーツ時の痛みが続く場合には、成人期に治療が必要となることがあります。

膝伸展機構と脛骨粗面の構造

太ももの前側には、大腿四頭筋という大きな筋肉があります。
大腿四頭筋は、大腿四頭筋腱を介して膝蓋骨につながっています。
膝蓋骨の下側から脛骨粗面までは、膝蓋腱によってつながっています。
大腿四頭筋が収縮すると、その力が大腿四頭筋腱、膝蓋骨、膝蓋腱を通じて脛骨へ伝わり、膝を伸ばすことができます。
この一連の構造を「膝伸展機構」と呼びます。
膝伸展機構は、次のような動作で強く働きます。
・ジャンプの踏み切り
・ジャンプからの着地
・ダッシュ
・急停止
・方向転換
・ボールを蹴る動作
・階段の昇り降り
・椅子からの立ち上がり
・しゃがんだ状態からの立ち上がり
・自転車で強くペダルをこぐ動作
成長期には、脛骨粗面に「骨端核」や「骨端線」と呼ばれる成長に関係する部分があります。
この部分は、骨が成熟した成人と比べて軟骨成分が多く、繰り返す牽引力によって傷つきやすい状態です。
大腿四頭筋が強く収縮するたびに膝蓋腱が脛骨粗面を引っ張り、その負担が繰り返されることで痛みや腫れが生じます。

オスグッド・シュラッター病が起こる仕組み

子どもの身体は、骨、筋肉、腱がすべて同じ速度で成長するわけではありません。
成長期には骨が急速に長くなりますが、筋肉や腱の柔軟性が一時的に追いつかず、太ももの前側が硬くなることがあります。
大腿四頭筋が硬い状態では、膝を曲げたときに膝蓋腱を介して脛骨粗面へ強い牽引力が加わります。
さらに、ジャンプ、ダッシュ、キックなどを繰り返すと、成長軟骨に小さな損傷が繰り返されます。
負荷と回復のバランスが保たれていれば問題にならないこともありますが、練習量が多い、休養が少ない、身体が硬いなどの要因が重なると、修復が追いつかなくなります。
その結果、脛骨粗面に炎症、腫れ、骨や軟骨の分離、骨片の形成などが生じることがあります。

オスグッド・シュラッター病が起こりやすい時期

オスグッド・シュラッター病は、骨が成長している時期に起こります。
一般的には、小学校高学年から中学生頃に多くみられます。
女子は男子よりも身体の成長が早いため、比較的早い年齢で発症することがあります。
男子では、中学生頃に症状が目立つことが多くあります。
ただし、発症する年齢には個人差があります。
暦年齢だけでなく、身長が急激に伸びているか、成長軟骨がどの程度残っているか、スポーツ活動がどの程度あるかなどを含めて判断します。

オスグッド・シュラッター病の進行と経過

症状は、脛骨粗面へ加わる負担の強さや期間によって変化します。
すべての方が同じ経過をたどるわけではありませんが、早い段階で負荷を調整することが大切です。

初期

初期には、運動中または運動後に脛骨粗面が痛みます。
運動を始めた直後に痛みがあっても、身体が温まると一時的に痛みが軽くなることがあります。
スポーツ中は動けるため、そのまま練習を続けてしまう方も少なくありません。
運動後や翌朝に痛みが戻ることがあります。
脛骨粗面を押すと痛みがありますが、腫れや骨の突出は目立たないこともあります。

進行期

症状が進むと、運動中にも痛みが続くようになります。
ジャンプ、ダッシュ、キック、急停止などで強い痛みが出て、競技動作に支障が生じます。
脛骨粗面の腫れや出っ張りが目立ち、押したときの痛みも強くなります。
階段、しゃがみ込み、立ち上がり、正座などの日常動作でも痛むことがあります。
運動後に足を引きずる、翌日まで痛みが残る場合には、脛骨粗面へ加わる負荷が強すぎる可能性があります。

重症期

安静時にも痛みがある、普通に歩いても痛む、明らかに足を引きずるなどの症状が現れることがあります。
脛骨粗面の骨や軟骨が部分的に分離し、骨片が形成される場合があります。
膝を伸ばす動作で強い痛みが出たり、スポーツを継続できなくなったりします。
この時期には、一定期間スポーツ活動を休止し、装具などで患部を保護することがあります。

回復期

運動量を調整し、柔軟性や筋力、動作を改善すると、少しずつ痛みが軽減していきます。
日常生活での痛みがなくなり、軽いランニング、ジャンプ、競技練習へと段階的に戻していきます。
痛みが軽くなった直後に以前と同じ練習量へ戻すと、症状を繰り返すことがあります。
運動後や翌日の状態を確認しながら、負荷を少しずつ増やすことが大切です。

成長終了後

成長軟骨が閉じると、多くの場合は痛みが改善します。
ただし、脛骨粗面の骨の出っ張り自体は、痛みがなくなった後も残ることがあります。
膝を床についた際の圧迫痛、スポーツ中の痛み、正座のしにくさなどが成人後まで残る場合があります。
脛骨粗面に遊離した骨片が残り、保存療法でも痛みが改善しない場合には、手術を検討することがあります。

オスグッド・シュラッター病の主な原因

ジャンプ動作の繰り返し

ジャンプの踏み切りでは、大腿四頭筋が強く収縮します。
ジャンプからの着地では、身体を支えるために大腿四頭筋が伸ばされながら力を発揮します。
これらの動作を繰り返すと、膝蓋腱を介して脛骨粗面へ強い牽引力が加わります。

ダッシュ・急停止

走る、加速する、急に止まる動作では、大腿四頭筋が繰り返し強く働きます。
走り込みやダッシュ練習が急に増えた際に、症状が現れることがあります。

キック動作

サッカーなどでボールを蹴る際には、大腿四頭筋が膝を強く伸ばします。
繰り返すキック動作によって、脛骨粗面へ負担がかかります。

急激な身長の伸び

成長期に身長が急激に伸びると、筋肉や腱が相対的に硬くなりやすくなります。
以前と同じ練習量でも、成長期には身体へかかる負担が増えることがあります。

練習量の急な増加

新しい部活動を始めた、学年が上がって練習量が増えた、合宿や大会が続いたなど、短期間で負荷が増えると発症しやすくなります。
練習時間だけでなく、ジャンプ、ダッシュ、キックの回数や、休養日の変化も関係します。

複数チーム・複数競技への参加

学校の部活動、クラブチーム、スクール、自主練習などを同時に行っている場合、本人や指導者が把握している以上の運動量になっていることがあります。
一週間全体の運動量と休養日を確認することが重要です。

休養不足

毎日高い負荷の練習を行い、脛骨粗面が回復する時間が不足すると、痛みが長引くことがあります。

大腿四頭筋の柔軟性低下

太ももの前側が硬いと、膝を曲げた際に膝蓋腱が強く引っ張られます。
成長期には大腿四頭筋の硬さが目立つことがあります。

ハムストリングス・ふくらはぎの柔軟性低下

太ももの後ろ側やふくらはぎが硬い場合、走る、しゃがむ、着地するといった動きが制限され、膝へ負担が集中することがあります。

股関節・体幹の筋力不足

お尻や体幹の筋力が不足していると、ジャンプや着地、方向転換の際に身体を安定させにくくなります。
膝が内側へ入る、上半身が大きく傾くなどの動きがあると、膝伸展機構へ負担が集中することがあります。

足関節の動きの制限

足首が十分に曲がらないと、しゃがみ込みや着地時に膝へ負担が集中することがあります。

硬いグラウンドや床

硬い体育館、人工芝、アスファルトなどでジャンプやランニングを繰り返すと、下肢へ加わる衝撃が大きくなることがあります。

靴の問題

靴底がすり減っている、クッション性が低下している、足に合っていないなどの場合には、膝へかかる負担が増える可能性があります。

オスグッド・シュラッター病が多いスポーツ

オスグッド・シュラッター病は、次のような競技で多くみられます。
・サッカー
・バスケットボール
・バレーボール
・陸上競技
・バドミントン
・テニス
・ハンドボール
・ラグビー
・野球
・ソフトボール
・体操
・ダンス
・剣道
・空手
・卓球
競技名だけで発症するわけではなく、練習量、成長時期、身体の柔軟性、動作などが重なって発症します。

主な症状

脛骨粗面の痛み

膝蓋骨の少し下にある、脛骨粗面の限局した痛みが代表的な症状です。
広い範囲が痛むというより、指一本で示せるような場所に痛みが出ることが多くあります。

押したときの痛み

脛骨粗面を指で押すと強く痛みます。
膝蓋腱の中央や膝蓋骨の下端が痛む場合には、膝蓋腱炎など別の病気も確認します。

脛骨粗面の腫れ

脛骨粗面の周囲が腫れ、熱感を伴うことがあります。
運動後に腫れが強くなる場合があります。

骨の出っ張り

症状が進むと、脛骨粗面が反対側よりも大きく突出して見えることがあります。
両側に発症している場合には、両方の膝が突出することもあります。
痛みが改善した後も、骨の出っ張りは残る場合があります。

ジャンプ時の痛み

ジャンプの踏み切りや着地で痛みが出ます。
連続ジャンプや片脚ジャンプで、症状が強くなることがあります。

ダッシュ時の痛み

走り始め、全力疾走、坂道、急停止などで痛みます。
ゆっくり走ると痛みが少なくても、スプリントで強く痛む場合があります。

キック時の痛み

ボールを強く蹴る動作で痛みが出ます。
軸足側に痛みが出ることも、ボールを蹴る側に痛みが出ることもあります。

階段昇降時の痛み

階段を上るときや下りるときに、大腿四頭筋が働くことで脛骨粗面が痛みます。

しゃがみ込み・立ち上がり時の痛み

膝を深く曲げると大腿四頭筋が伸ばされ、脛骨粗面への牽引力が増えます。
しゃがんだ状態から立ち上がる際にも痛みが出ます。

正座・膝をついたときの痛み

突出した脛骨粗面が床に当たることで、強い圧迫痛が生じることがあります。
学校生活、部活動、武道などで膝をつく動作が難しくなる場合があります。

運動後・翌日の痛み

運動中には動けても、練習後や翌朝に痛みが強くなることがあります。
運動後に足を引きずる場合や、翌日の学校生活にも影響が出る場合には、負荷を減らす必要があります。

太ももの張り・硬さ

大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性が低下し、太ももに強い張りを感じることがあります。

片側または両側の症状

片側だけに発症することも、両側に発症することもあります。
両側に症状があっても、痛みの強さや発症時期が左右で異なる場合があります。

オスグッド・シュラッター病に伴う可能性がある状態

脛骨粗面の骨片形成

成長軟骨への負担が繰り返されることで、脛骨粗面の一部が分離し、骨片として残ることがあります。
骨片が母床と癒合する場合もあれば、遊離した状態で残る場合もあります。

脛骨粗面の突出

痛みが改善しても、脛骨粗面の出っ張りが残ることがあります。
日常生活では問題がなくても、膝をついたときに痛む場合があります。

膝蓋腱の肥厚・炎症

脛骨粗面だけでなく、膝蓋腱の付着部にも炎症や肥厚が生じることがあります。

滑液包炎

突出した脛骨粗面と皮膚の間、または膝蓋腱周囲の滑液包に炎症が起こり、腫れや圧迫痛が生じることがあります。

成人期に残る痛み

成長終了後も遊離骨片や突出した骨によって、膝をついたときやスポーツ時の痛みが続くことがあります。
保存療法で改善しない場合には、手術が検討されることがあります。

脛骨粗面裂離骨折

オスグッド・シュラッター病とは異なり、ジャンプやダッシュの際に強い力が加わり、脛骨粗面が大きく剥がれる急性の骨折です。
突然の激痛、腫れ、歩行困難、膝を伸ばせないなどの症状が現れます。
緊急の評価や手術が必要となることがあります。

オスグッド・シュラッター病と区別が必要な病気

膝蓋骨の下や脛骨粗面の痛みは、オスグッド・シュラッター病以外の病気でも生じます。
主に次のような病気との鑑別が必要です。
・膝蓋腱炎
・シンディング・ラーセン・ヨハンソン病
・膝蓋大腿疼痛症候群
・膝蓋下脂肪体障害
・半月板損傷
・離断性骨軟骨炎
・膝関節靱帯損傷
・膝蓋骨脱臼
・脛骨粗面裂離骨折
・脛骨高原骨折
・疲労骨折
・感染性骨髄炎
・感染性関節炎
・骨や軟部組織の腫瘍
・腰や股関節から生じる関連痛
痛みの場所、発症時期、外傷の有無、成長段階、身体検査、画像検査を組み合わせて判断します。

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病との違い

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病は、膝蓋骨の下端に繰り返し負担がかかる成長期のスポーツ障害です。
オスグッド・シュラッター病では、膝蓋腱が付着する脛骨粗面に痛みがあります。
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病では、脛骨粗面よりも上にある膝蓋骨下端に痛みがあります。
痛む場所、触診、X線検査、超音波検査などで区別します。

膝蓋腱炎との違い

膝蓋腱炎では、膝蓋骨下端から膝蓋腱中央部に痛みが出ることが多くあります。
オスグッド・シュラッター病では、膝蓋腱が脛骨へ付着する脛骨粗面に痛みがあります。
複数の病態が同時に起きている場合もあるため、痛みの場所を詳しく確認します。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

痛みが始まった時期、スポーツの内容、成長の状況などを確認します。
主に次のような点をお伺いします。
・いつから膝が痛むか
・急に痛くなったか、徐々に痛くなったか
・転倒や衝突などの外傷があったか
・膝蓋骨の下のどの部分が痛むか
・脛骨粗面を押すと痛むか
・ジャンプや着地で痛むか
・ダッシュや急停止で痛むか
・キック動作で痛むか
・階段の昇り降りで痛むか
・正座やしゃがみ込みができるか
・歩行時にも痛むか
・安静時や夜間にも痛むか
・痛みで足を引きずることがあるか
・運動後や翌日に痛みが残るか
・身長が最近急に伸びていないか
・最近、練習量や練習内容が変わったか
・学校、クラブ、スクールなど複数の活動をしていないか
・一週間に何日休養日があるか
・スポーツの種目、ポジション、競技レベル
・大会や競技復帰の予定
・過去にも同じ場所が痛くなったことがあるか
・両側に症状があるか
・学校生活や日常生活へ支障があるか
お子さま本人だけでなく、保護者の方や指導者が把握している練習量も確認することがあります。

視診

脛骨粗面の腫れ、骨の突出、皮膚の赤み、左右差などを確認します。
立位での脚の向き、O脚・X脚、足部の形なども確認します。
歩行時に足を引きずっていないか、膝を曲げたまま歩いていないかも観察します。

触診

脛骨粗面、膝蓋腱、膝蓋骨下端、関節裂隙などを触り、痛みの場所を確認します。
脛骨粗面の腫れ、熱感、骨の突出、圧痛の範囲などを左右で比較します。
脛骨粗面以外に痛みがある場合には、膝蓋腱炎、半月板損傷など別の病気も確認します。

身体検査

膝の曲げ伸ばし、筋力、柔軟性、動作時の痛みなどを評価します。
主に次のような点を確認します。
・膝を自力で完全に伸ばせるか
・脚を伸ばしたまま持ち上げられるか
・膝をどこまで曲げられるか
・膝を伸ばす力
・大腿四頭筋の柔軟性
・ハムストリングスの柔軟性
・ふくらはぎの柔軟性
・足関節の動き
・股関節や体幹の筋力
・両脚スクワットで痛むか
・片脚スクワットで痛むか
・ジャンプや着地で痛むか
・膝が内側へ入り込んでいないか
・左右の筋力や動作に差がないか
痛みが強い場合には、無理にジャンプや片脚運動を行いません。

歩行・スポーツ動作の評価

歩行、ランニング、スクワット、ジャンプ、着地、キックなどを、症状に応じて確認します。
動作時に膝へ負担が集中していないか、股関節や足関節を十分に使えているかを評価します。
競技映像や練習内容を参考にすることもあります。

X線検査

オスグッド・シュラッター病は、症状と身体検査によって診断できることも多く、すべての方にX線検査が必要となるわけではありません。
症状が強い場合、外傷がある場合、骨折やほかの病気との鑑別が必要な場合などにX線検査を行います。
主に次の点を確認します。
・脛骨粗面の形
・脛骨粗面の骨端核
・骨や軟骨の分離
・遊離骨片の有無
・脛骨粗面の突出
・軟部組織の腫れ
・脛骨粗面裂離骨折
・膝蓋骨や脛骨の異常
・骨腫瘍などの異常
成長段階によっては、脛骨粗面が複数の骨片に見えることがあります。
画像所見だけでなく、痛みの場所や症状と合わせて判断します。

超音波検査

超音波検査では、脛骨粗面、膝蓋腱、周囲の軟部組織をリアルタイムに評価できます。
主に次のような状態を確認します。
・脛骨粗面の骨表面の不整
・骨片の有無
・成長軟骨周囲の変化
・膝蓋腱付着部の肥厚
・膝蓋腱の線維構造
・膝蓋腱周囲の炎症
・滑液包の腫れ
・周囲の血流増加
・膝蓋腱部分断裂の有無
超音波検査は放射線被ばくがなく、反対側と比較しながら評価できる点が特徴です。
一方、骨の内部や膝関節内の病気をすべて超音波だけで評価することはできません。

MRI検査

MRI検査では、脛骨粗面の成長軟骨、骨髄、膝蓋腱、膝関節内などを詳しく評価できます。
次のような場合に検討します。
・症状が強い
・安静時や夜間にも痛む
・適切な治療を行っても改善しない
・脛骨粗面裂離骨折が疑われる
・膝蓋腱部分断裂が疑われる
・離断性骨軟骨炎や半月板損傷が疑われる
・感染症や腫瘍など、別の病気を除外する必要がある
・手術を検討している
すべてのオスグッド・シュラッター病にMRI検査が必要となるわけではありません。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

CT検査

通常のオスグッド・シュラッター病でCT検査が必要となることは多くありません。
成長終了後に遊離骨片が残っている場合や、手術方法を検討する場合に、骨片の位置や大きさを詳しく確認する目的で行うことがあります。
CT検査が必要と判断した場合には、対応可能な提携医療機関をご案内します。

オスグッド・シュラッター病に対する治療

オスグッド・シュラッター病の治療では、脛骨粗面へ加わる負担を減らしながら、スポーツや日常生活に必要な筋力と柔軟性を整えることが大切です。
すべてのスポーツ活動を長期間禁止するのではなく、痛みの程度、歩き方、運動後の状態などを確認して活動量を調整します。
治療方法は、症状の強さ、画像所見、成長段階、競技内容、練習量、今後の目標などによって異なります。

運動量の調整

痛みを引き起こす動作や練習量を減らします。
調整する内容には、次のようなものがあります。
・ジャンプの回数
・ダッシュの本数
・キック練習の回数
・練習時間
・練習日数
・試合への出場時間
・坂道や階段でのトレーニング
・深いスクワット
・ランジ運動
・体育や部活動の内容
・自主練習の量
・複数チームでの活動量
運動中の痛みだけでなく、運動後や翌日の痛み、歩き方の変化なども確認します。

スポーツを続けられる場合

痛みが軽度で、足を引きずらず、運動後に短時間で症状が落ち着く場合には、活動量を調整しながらスポーツを継続できることがあります。
ただし、痛みを我慢して通常どおりの練習を続けることを意味するものではありません。
ジャンプやダッシュの回数を減らす、練習の一部を別メニューに変更するなどの調整が必要です。

スポーツの休止が必要な場合

次のような場合には、一時的にジャンプ、ダッシュ、キックなどを休止することがあります。
・歩行でも痛む
・足を引きずっている
・安静時にも痛む
・練習後の痛みが翌日まで強く残る
・脛骨粗面の腫れが強い
・痛みで正しいフォームを保てない
・骨片の分離が疑われる
・脛骨粗面裂離骨折の危険がある
・日常生活や学校生活へ影響している
休止期間は、症状や画像所見によって異なります。

冷却

運動後に痛みや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てます。
皮膚へ直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないでください。
冷却は痛みや熱感を一時的に軽減する方法であり、原因となる負荷そのものを解決する治療ではありません。

薬物療法

痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、外用薬などを使用することがあります。
年齢、体格、持病、服用中の薬などを確認して処方します。
薬によって痛みが軽くなっても、高い負荷の練習を無理に続けないことが大切です。
薬物療法は痛みを軽減するものであり、分離した骨片を直接元へ戻す治療ではありません。

オスグッドバンド・膝蓋腱ストラップ

膝蓋腱を軽く圧迫し、脛骨粗面へ伝わる牽引力を調整するバンドを使用することがあります。
運動時の痛みが一時的に軽減する場合があります。
バンドだけで病気が治るわけではなく、運動量の調整やリハビリテーションと組み合わせて使用します。
強く締めすぎると、しびれ、皮膚の圧迫、血流低下などが生じることがあります。

膝当て・保護パッド

脛骨粗面の突出により、膝をついた際に痛む場合には、保護パッドや膝当てを使用することがあります。
武道、バレーボール、床での作業などで、突出部への直接的な圧迫を防ぎます。

装具療法

痛みが強い場合や、骨片の癒合を期待する場合などに、膝を保護する装具を使用することがあります。
必要以上に長期間固定すると、筋力低下や膝関節の硬さが生じることがあります。
装具の種類や使用期間は、症状と画像所見を確認して判断します。

体外衝撃波治療

オスグッド・シュラッター病に対する体外衝撃波治療は、成長期のすべての方に行う標準的な治療ではありません。
成長軟骨が残っている場合には、照射部位や出力について慎重な判断が必要です。
成長終了後も脛骨粗面の付着部痛が残っている場合などに、状態に応じて検討することがあります。
体外衝撃波治療によって、遊離骨片や骨の突出が消失するわけではありません。
適応については診察と画像検査を行ったうえで判断します。
体外衝撃波治療は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法

PRP療法は、患者さんご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、損傷部周囲へ注入する治療です。
オスグッド・シュラッター病に対する標準的な治療ではなく、特に成長期の方では適応を慎重に判断する必要があります。
PRP療法によって、分離した骨片が必ず癒合することや、突出した骨が元に戻ることを保証するものではありません。
まずは運動量の調整、装具、リハビリテーションなどの保存療法を行います。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。

PRP療法について詳しくはコチラ

理学療法・リハビリテーション

オスグッド・シュラッター病では、痛む場所だけでなく、太もも、股関節、足関節、体幹の状態を確認することが大切です。
当院では、理学療法士が成長段階、柔軟性、筋力、スポーツ動作などを評価し、一人ひとりに合わせたリハビリテーションを行います。
痛みと運動量の評価
運動中、運動直後、翌日の痛みを確認します。
学校の体育、部活動、クラブチーム、自主練習を含めた一週間全体の運動量を整理します。
本人だけでなく、保護者や指導者と情報を共有することも大切です。
大腿四頭筋のストレッチ
太ももの前側にある大腿四頭筋の柔軟性を改善します。
膝を曲げて足首を持つストレッチなどを行います。
強く膝を曲げすぎると脛骨粗面が痛むことがあるため、痛みのない範囲で行います。
腰を反らしたり、脚が外側へ開いたりしないように注意します。
ハムストリングスのストレッチ
太ももの後ろ側にあるハムストリングスの柔軟性を整えます。
膝だけでなく、骨盤や腰の位置にも注意して行います。
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎが硬いと足首が曲がりにくくなり、しゃがみ込みや着地時に膝へ負担が集中することがあります。
膝を伸ばした状態と、軽く曲げた状態の両方でストレッチを行うことがあります。
足関節可動域訓練
足首を十分に曲げられるようにし、着地やスクワット時の衝撃を下肢全体で吸収できる状態を目指します。
大腿四頭筋の筋力訓練
痛みが強い時期には、膝を大きく動かさずに太ももへ力を入れる運動から始めます。
症状が落ち着いた後は、浅いスクワットなどへ段階的に進めます。
深い角度や高い負荷で痛みが出る場合には、運動の範囲を調整します。
股関節・体幹の筋力訓練
お尻や体幹の筋肉を鍛え、ランニング、ジャンプ、着地時に身体を安定させます。
膝だけに負担が集中しない身体の使い方を目指します。
スクワット動作の指導
股関節、膝、足関節をバランスよく曲げます。
膝が内側へ入りすぎないか、かかとが浮いていないか、左右どちらかに体重が偏っていないかを確認します。
ランニングフォームの指導
歩幅、身体の傾き、着地位置などを確認し、膝へ過度な負担がかからない走り方を練習します。
ジャンプ・着地訓練
痛みや筋力が改善した後、両脚での小さなジャンプから始めます。
その後、連続ジャンプ、片脚ジャンプ、競技特有のジャンプへ段階的に進めます。
着地時には、股関節、膝、足関節を使って衝撃を吸収します。
キック動作の指導
サッカーなどでは、キック時の軸足、体幹、股関節の使い方を確認します。
膝だけで強く蹴るのではなく、身体全体を使った動作を練習します。
競技別トレーニング
競技に必要なランニング、ダッシュ、ジャンプ、キック、方向転換などを段階的に再開します。
一度にすべての練習へ戻るのではなく、負担の少ないメニューから増やします。

スポーツ復帰

スポーツへの復帰は、一定の日数が経過したことだけで判断しません。
主に次のような点を確認します。
・日常生活で痛みがない
・歩行時に足を引きずらない
・階段昇降で強い痛みがない
・脛骨粗面を押した際の痛みが軽くなっている
・膝を十分に曲げ伸ばしできる
・大腿四頭筋や下肢の柔軟性が改善している
・両脚スクワットを行える
・片脚スクワットを安定して行える
・軽いジョギングで痛みがない
・ダッシュやジャンプで強い痛みがない
・競技練習後や翌日に症状が大きく悪化しない
・正しいフォームを保てる
・医師や理学療法士から復帰を許可されている
最初は練習時間、ジャンプ回数、キック回数、出場時間などを制限して再開します。

手術後のリハビリテーション

手術後は、膝蓋腱や骨の修復状態を確認しながら、膝の曲げ伸ばし、筋力訓練、歩行訓練を段階的に行います。
手術内容によっては、一定期間、膝を曲げる角度や脚へかける体重が制限されます。
スポーツ復帰には数か月以上かかることがあります。

オスグッド・シュラッター病後に起こる可能性がある問題

脛骨粗面の突出が残る

痛みがなくなった後も、脛骨粗面の骨の出っ張りが残る場合があります。
病気が悪化しているとは限りませんが、膝をつく動作で圧迫痛が生じることがあります。

遊離骨片が残る

分離した骨片が母床と癒合せず、成長終了後も残ることがあります。
骨片が膝蓋腱や周囲組織を刺激し、痛みの原因となる場合があります。

成人後の膝前面痛

成長終了後も、運動時や膝をついた際の痛みが続くことがあります。
骨片、骨の突出、膝蓋腱の変性、滑液包炎など、痛みの原因を確認します。

膝蓋腱の障害

脛骨粗面への負担が長期間続くと、膝蓋腱付着部の肥厚や変性が残ることがあります。

大腿四頭筋の筋力低下

痛みを避けて運動量が減ると、太ももの筋力が低下します。
痛みが軽くなっても筋力が戻っていない状態で競技へ復帰すると、症状を繰り返すことがあります。

反対側やほかの関節への負担

痛い側をかばうことで、反対側の膝、股関節、足首、腰などへ負担がかかることがあります。

自宅での注意点・セルフケア

痛みを我慢して練習を続けない

身体が温まって痛みが軽くなっても、脛骨粗面への負担がなくなったわけではありません。
運動後や翌日に痛みが強くなる場合には、練習量を減らしてください。

足を引きずっている場合は休む

痛みをかばって歩き方が変わっている状態では、運動を続けないようにします。
フォームが崩れた状態での練習は、ほかの部位のけがにもつながります。

一週間全体の運動量を確認する

学校の体育、部活動、クラブ、スクール、自主練習をすべて含めて考えます。
同じ日に複数の練習が重なっていないか、休養日が確保されているかを確認します。

翌日の症状を確認する

練習中の痛みが軽くても、翌朝の痛みが強い場合には、前日の負荷が大きすぎた可能性があります。

ストレッチを強く行いすぎない

大腿四頭筋のストレッチは大切ですが、膝を強く曲げて脛骨粗面に痛みが出る場合には、無理に続けないでください。

脛骨粗面を強くもまない

痛む出っ張りを強く押したり、もんだりすると、症状が悪化することがあります。

膝を直接床につけない

脛骨粗面が突出している場合には、床へ直接膝をつかず、膝当てやクッションを使用します。

急に練習量を戻さない

痛みが軽くなっても、一度に通常の練習量へ戻さないようにします。
ランニング、ダッシュ、ジャンプ、試合形式の順に、負荷を段階的に増やします。

靴を確認する

靴底のすり減り、クッション性、サイズなどを確認します。
競技や足に合った靴を使用します。

成長を定期的に確認する

身長が急に伸びている時期には、身体の柔軟性や練習量を見直します。
成長期には、今まで問題なくできていた練習でも負担が大きくなることがあります。

再発予防

オスグッド・シュラッター病の再発予防には、次のような取り組みが大切です。
・練習量を急に増やさない
・一週間に休養日を設ける
・大会が続く時期は練習量を調整する
・大腿四頭筋の柔軟性を保つ
・ハムストリングスやふくらはぎの柔軟性を保つ
・股関節と体幹の筋力を整える
・足関節の動きを保つ
・ジャンプや着地のフォームを見直す
・膝が内側へ入りすぎないようにする
・痛みがある状態で高負荷練習を続けない
・学校、チーム、家庭で運動量を共有する
・競技復帰後もストレッチと筋力訓練を続ける

次のような症状がある場合には早めに受診してください

・膝蓋骨の下にある骨の出っ張りが痛む
・脛骨粗面を押すと強く痛む
・脛骨粗面が腫れている
・ジャンプや着地で痛む
・ダッシュや急停止で痛む
・ボールを蹴ると痛む
・階段の昇り降りで痛む
・しゃがみ込みや立ち上がりで痛む
・正座や膝をつく動作ができない
・運動後や翌日まで痛みが残る
・痛みで足を引きずっている
・運動量を減らしても改善しない
・数週間以上痛みが続いている
・学校生活やスポーツへ支障が出ている
・成長終了後も痛みが続いている

速やかな受診が必要な症状

次のような場合には、脛骨粗面裂離骨折、膝蓋腱断裂、感染症、腫瘍など、通常のオスグッド・シュラッター病とは異なる状態が隠れている可能性があります。
・ジャンプやダッシュの際に突然激痛が生じた
・受傷時に「ブチッ」「バキッ」という音がした
・膝を自力で伸ばせない
・脚を伸ばしたまま持ち上げられない
・体重をかけて歩けない
・膝の下が急に大きく腫れた
・脛骨粗面の形が急に変わった
・安静にしていても強く痛む
・夜間に強い痛みが続く
・膝の下が赤く腫れている
・発熱を伴っている
・傷や出血がある
・足がしびれる、冷たい
・痛みが急激に悪化している
急な強い痛みがある場合には、自分で膝を強く曲げ伸ばしせず、脚を支えて速やかに医療機関を受診してください。

成長期の膝の痛みでお悩みの方へ

オスグッド・シュラッター病は、成長期に起こる代表的な膝のスポーツ障害です。
成長期の脛骨粗面へ、大腿四頭筋と膝蓋腱から繰り返し牽引力が加わることで発症します。
初期にはスポーツ中や運動後だけ痛むため、成長痛だと思ってそのまま運動を続けてしまうことがあります。
しかし、オスグッド・シュラッター病は、一般的にいわれる単なる成長痛とは異なり、脛骨粗面の成長軟骨や骨に負担がかかっている状態です。
痛みを我慢して高い負荷の運動を続けると、骨片が分離し、成長終了後まで症状が残る可能性があります。
一方で、すべてのスポーツを長期間禁止する必要があるとは限りません。
痛みの強さ、歩き方、運動後や翌日の状態を確認し、ジャンプやダッシュなどの高負荷動作を調整しながら、できる運動を継続します。
治療では、患部の痛みを抑えるだけでなく、大腿四頭筋の柔軟性、股関節や体幹の筋力、足関節の動き、ジャンプや着地フォームなどを評価することが大切です。
また、脛骨粗面が痛む場合でも、膝蓋腱炎、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病、脛骨粗面裂離骨折、感染症など、別の病気が隠れていることがあります。
突然の激痛、歩行困難、膝を自力で伸ばせない症状がある場合には、速やかな検査が必要です。
当院では、問診、触診、身体検査、動作評価、X線検査、超音波検査などによって、脛骨粗面の状態だけでなく、膝蓋腱、筋肉、柔軟性、身体の使い方などを含めて評価します。
超音波検査では、脛骨粗面の骨表面、膝蓋腱の付着部、骨片、周囲の炎症などをリアルタイムに確認します。
症状に応じて、運動量の調整、薬物療法、バンドや装具、リハビリテーション、セルフケア指導などを行います。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
成長終了後も遊離骨片や骨の突出による痛みが続き、手術が必要と判断した場合には、小児整形外科、スポーツ整形外科、膝関節手術に対応している医療機関へご紹介します。
ジャンプやダッシュで膝の下が痛む、脛骨粗面が腫れている、運動後に足を引きずるなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫