腰椎圧迫骨折
腰椎圧迫骨折について
腰椎圧迫骨折は、腰椎の前方にある「椎体」が上下方向から圧迫され、高さが低くなったり、くさび形に変形したりする骨折です。
医学的には「腰椎椎体骨折」と呼ばれることがあります。
主な症状には次のようなものがあります。
・突然の強い腰痛
・寝返りや起き上がりでの痛み
・立ち上がりや歩行時の痛み
・身体を前へ曲げたときの痛み
・背骨を押したり軽くたたいたりしたときの痛み
・腰を伸ばして立ちにくい
・身長の低下
・腰や背中の丸まり
骨粗鬆症がある場合には、尻もちや転倒だけでなく、重い物を持つ、前かがみになる、咳やくしゃみをするなどの軽い負担で骨折することがあります。
明らかなけがを覚えていない場合もあります。
痛みが軽いまま骨折が進行し、後から身長低下や腰の曲がりによって発見されることもあります。
一方、交通事故、高所からの転落、スポーツ事故などの強い外力で起こる腰椎骨折では、椎体の後方や椎弓、靱帯なども損傷し、背骨が不安定になる場合があります。
骨片が脊柱管へ入り込むと、神経が圧迫され、脚のしびれ・麻痺や排尿・排便障害が現れることがあります。
治療方法は、骨折の原因、つぶれ方、神経症状、背骨の安定性、骨粗鬆症の程度などによって異なります。
安定した骨粗鬆症性圧迫骨折では、鎮痛薬、装具、動作指導、リハビリテーションなどの保存療法が基本となります。
高度な変形、強い不安定性、治らない痛み、神経障害などがある場合には、手術を検討します。

腰椎の構造
腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの5個の椎骨で構成されています。
腰椎には、上半身の重さを支えながら、身体を曲げる、反らす、ひねる動作を行う役割があります。
椎体
椎骨の前方にある円柱状の骨です。
身体の重さを支える主要な部分で、圧迫骨折では主にこの椎体がつぶれます。
椎間板
椎体と椎体の間にあるクッション状の組織です。
上下の椎体へ加わる衝撃や荷重を分散します。
椎弓
椎骨の後方にある骨です。
椎弓根、椎弓板、棘突起、横突起、関節突起などで構成されています。
脊柱管
椎体と椎弓に囲まれた神経の通り道です。
腰椎上部には脊髄の末端や円錐部があり、その下には馬尾神経が通っています。
骨折した骨片が脊柱管内へ入り込むと、これらの神経が圧迫される可能性があります。
発生しやすい部位
骨粗鬆症性の椎体骨折は、胸椎から腰椎へ移行する「胸腰椎移行部」に多く発生します。
特に次の椎体に生じやすいとされています。
・第11胸椎
・第12胸椎
・第1腰椎
・第2腰椎
胸椎は肋骨によって支えられていますが、腰椎は比較的動きが大きいため、その境界部分に負担が集中しやすくなります。
第3腰椎以下にも骨折は起こります。
明らかな外傷がない状態で中下位腰椎に骨折がある場合や、通常と異なる骨の壊れ方がある場合には、腫瘍などの病的骨折も検討します。
圧迫骨折と椎体骨折
「圧迫骨折」は一般的に広く使用される名称ですが、椎体骨折にはさまざまな形があります。
くさび状変形
椎体の前方が主に低くなり、横から見るとくさび形になる状態です。
骨粗鬆症性椎体骨折でよくみられます。
魚椎状・両凹型変形
椎体の中央部が上下からへこみ、魚の椎骨のような形になります。
扁平椎・圧潰
椎体全体の高さが大きく低下した状態です。
変形が高度になると、脊柱後弯や不安定性につながります。
破裂骨折
椎体が強い力で粉砕され、骨片が前後左右へ広がる骨折です。
骨片が脊柱管内へ突出する場合があり、単純な圧迫骨折より神経障害や不安定性の危険が高くなります。
交通事故や高所転落などで起こるほか、骨粗鬆症が高度な方に発生する場合もあります。
「圧迫骨折」と説明されていても、椎体後壁の損傷や破裂骨折の要素がないかを確認することが重要です。
主な原因
骨粗鬆症
腰椎圧迫骨折の代表的な原因です。
骨粗鬆症では、骨の量や質が低下し、骨の強度が弱くなっています。
健康な骨では問題にならない程度の力でも、椎体がつぶれることがあります。
次のような軽い動作がきっかけになる場合があります。
・尻もちをつく
・ベッドや椅子から立ち上がる
・重い荷物を持つ
・前かがみになる
・掃除や庭仕事をする
・咳やくしゃみをする
・寝返りをする
きっかけが全く分からないこともあります。
当院ではより鋭敏に骨粗鬆症を検知できるように通常の腰椎と大腿骨近位部に加え、大腿骨頚部の骨密度検査をしております。詳しくはコチラから
強い外傷
交通事故、高所からの転落、スポーツ事故、重量物による圧迫などで、健康な骨にも骨折が起こります。
強い外力では、椎体だけでなく、椎弓、靱帯、椎間板なども損傷する場合があります。
胸部・腹部・骨盤など、ほかの臓器や骨の損傷を合併する可能性もあります。
転移性脊椎腫瘍
がんが腰椎へ転移して骨を破壊すると、軽い力で椎体がつぶれる病的骨折を起こすことがあります。
乳がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、甲状腺がんなど、さまざまながんが脊椎へ転移する可能性があります。
多発性骨髄腫
骨髄に生じる血液のがんで、椎体を含む複数の骨が弱くなることがあります。
腰痛や圧迫骨折が発見のきっかけになる場合があります。
感染症
化膿性脊椎炎や脊椎カリエスによって椎体が破壊され、圧潰する場合があります。
発熱、安静時痛、夜間痛などを伴うことがあります。
ステロイド薬
副腎皮質ステロイド薬を長期間使用すると、骨密度が低下し、椎体骨折の危険が高くなる場合があります。
骨軟化症・内分泌疾患
ビタミンD不足、甲状腺・副甲状腺疾患、性腺機能低下などが、骨の弱さに関係する場合があります。
骨粗鬆症の主なリスク
・閉経後の女性
・高齢者
・過去に軽い外力で骨折したことがある
・身長が以前より低くなった
・背中や腰が丸くなってきた
・家族に大腿骨近位部骨折歴がある
・低体重
・運動量が少ない
・カルシウム、ビタミンD、たんぱく質の摂取不足
・喫煙
・多量の飲酒
・ステロイド薬の長期使用
・関節リウマチ
・糖尿病
・慢性腎臓病
・吸収不良を起こす消化器疾患
・早期閉経
腰椎圧迫骨折を起こした方は、次の椎体骨折や大腿骨近位部骨折などを起こす危険が高くなります。
骨折部だけでなく、全身の骨粗鬆症を評価し、再骨折を防ぐ治療を行うことが重要です。
主な症状
突然の腰痛
転倒、物を持ち上げる動作、前かがみなどをきっかけに、腰へ鋭い痛みが現れます。
動けないほど強く痛む場合もあります。
一方、骨粗鬆症性骨折では、痛みが軽く、単なる腰痛として見過ごされることがあります。
寝返り・起き上がり時の痛み
腰椎圧迫骨折で特に目立つ症状です。
寝た状態から身体を起こすときや、ベッドで向きを変えるときに強く痛みます。
立位・歩行時の痛み
上半身の重さが骨折部へ加わるため、立つ、歩くなどの動作で痛みが強くなることがあります。
横になると軽くなる傾向があります。
前かがみでの痛み
前屈すると椎体前方へ圧力が加わり、痛みが強くなることがあります。
靴下やズボンの着脱、洗顔、床の物を取る動作などが難しくなります。
背骨の限局した圧痛
骨折した椎体周辺を押す、または軽くたたくと痛みが生じることがあります。
痛みを確認するために、本人や家族が強くたたかないでください。
腹部・脇腹への痛み
上位腰椎や胸腰椎移行部の骨折では、腰から脇腹や腹部へ帯状に痛みが広がる場合があります。
腹部臓器の病気との区別が必要になることがあります。
身長の低下
椎体の高さが低下すると、身長が縮むことがあります。
複数の椎体骨折がある場合には、数センチ以上低くなることがあります。
腰背部の丸まり
椎体前方がつぶれると、腰椎や胸腰椎移行部の後弯が強くなります。
複数の椎体骨折によって、背中から腰が丸くなることがあります。
腹部の突出
背骨が丸まり、体幹が短くなることで、お腹が前へ出たように見えることがあります。
神経症状
単純な骨粗鬆症性圧迫骨折では、神経症状を伴わないことが多くあります。
しかし、骨片が脊柱管へ突出した場合や、骨折後に椎体のつぶれが進んだ場合には、次の症状が現れる可能性があります。
・臀部から脚の痛み
・脚や足のしびれ
・脚の筋力低下
・足首や足趾の動かしにくさ
・歩行障害
・両脚の麻痺
・排尿・排便障害
神経症状がある場合には、単純な圧迫骨折として経過をみず、早急な画像検査が必要です。
痛みが少ない圧迫骨折
骨粗鬆症性椎体骨折では、骨折していても痛みがほとんどない場合があります。
「いつの間にか骨折」と表現されることもあります。
次のような変化が発見の手がかりになります。
・身長が低くなった
・背中や腰が丸くなった
・以前より姿勢が前かがみになった
・服の丈が合わなくなった
・肋骨と骨盤の間が狭くなった
・腹部が前へ出てきた
痛みがない骨折でも、次の骨折を起こす危険が高くなるため、骨粗鬆症の評価が必要です。
骨折後に起こり得る問題
椎体圧潰の進行
骨折直後は変形が軽くても、立位や動作による荷重で椎体が徐々につぶれる場合があります。
後弯変形
椎体前方の圧潰が進むと、背骨が前方へ曲がる後弯変形が生じます。
慢性腰痛
骨折部が癒合した後も、変形、筋疲労、椎間関節への負担などによって腰痛が残ることがあります。
偽関節・遷延治癒
骨折部が十分に安定せず、椎体内部に動きが残る状態です。
寝返りや起き上がりで強い痛みが長期間続くことがあります。
椎体内部に液体や空気のような隙間が形成される場合もあります。
遅発性神経障害
骨折直後には神経症状がなくても、椎体の圧潰や後方への骨片突出が進み、数週間から数か月後に脚のしびれ・麻痺が現れる場合があります。
呼吸機能の低下
複数の椎体骨折によって体幹が強く丸まると、胸郭が広がりにくくなり、呼吸機能が低下する場合があります。
消化器症状
後弯と体幹短縮によって腹部が圧迫され、食欲低下、食後の膨満感、逆流症状などが現れることがあります。
日常生活能力の低下
痛みによって歩行や外出が減ると、筋力・体力が低下し、転倒や次の骨折につながる可能性があります。
急性腰痛症との違い
ぎっくり腰などの急性腰痛症でも、寝返りや起き上がりで強い腰痛が起こります。
症状だけで腰椎圧迫骨折と完全に区別することはできません。
次のような場合には圧迫骨折を疑います。
・高齢者である
・骨粗鬆症がある
・軽い転倒や尻もち後に発症した
・軽い物を持った後に発症した
・ステロイド薬を長期間使用している
・背骨に限局した強い圧痛がある
・身長低下や後弯がある
・安静にしても改善しにくい
・過去にも椎体骨折を起こしている
骨粗鬆症性椎体骨折は、受傷直後のX線で変形が目立たない場合があります。
骨折が疑われる場合には、時間をおいたX線やMRIなどを検討します。
腰椎椎間板ヘルニアとの違い
腰椎圧迫骨折
・腰の局所的な痛みが中心
・寝返り、起き上がり、立位で強く痛む
・骨粗鬆症や外傷と関係することが多い
・神経症状を伴わないことも多い
腰椎椎間板ヘルニア
・臀部から脚にかけての痛みやしびれが目立つ
・神経根に沿った感覚低下がある
・足首や足趾の筋力が低下する場合がある
・咳やくしゃみで脚へ痛みが走ることがある
圧迫骨折でも骨片が神経を圧迫すれば、脚の症状が現れることがあります。
腫瘍性骨折との違い
骨粗鬆症性骨折は、動作時に痛みが強く、横になると軽くなる傾向があります。
腫瘍性骨折では、安静時や夜間にも強い痛みが続く場合があります。
次のような場合には、腫瘍を含めた詳しい検査が必要です。
・がんの既往がある
・明らかな外傷がない
・安静時や夜間にも強く痛む
・痛みが日ごとに悪化する
・原因不明の体重減少がある
・食欲や全身状態が低下している
・複数の骨に痛みがある
・通常と異なる場所や形の骨折である
感染症との違い
化膿性脊椎炎などでも、椎体が破壊されて腰痛や変形を起こすことがあります。
次の症状がある場合には注意が必要です。
・発熱、悪寒
・安静時や夜間の強い痛み
・糖尿病
・透析
・免疫抑制薬の使用
・最近の手術や感染症
・脚の麻痺
・全身の強い倦怠感
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックでは、受傷状況、骨粗鬆症のリスク、痛みの出方、神経症状の有無を確認し、X線検査や骨密度検査などを組み合わせて評価します。
骨折直後はX線で分かりにくいこともあるため、新鮮骨折、神経圧迫、腫瘍、感染症などが疑われる場合にはMRIやCTを検討します。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
問診
主に次の内容を確認します。
・いつから痛むか
・転倒、尻もち、交通事故などがあったか
・物を持つ、前かがみなどのきっかけがあったか
・腰のどこが痛むか
・寝返りや起き上がりで痛むか
・横になると軽くなるか
・脚の痛み、しびれ、筋力低下があるか
・排尿・排便に変化があるか
・骨粗鬆症を指摘されているか
・過去に骨折したことがあるか
・身長が低下しているか
・ステロイド薬を使用しているか
・がんや感染症の既往があるか
・発熱、夜間痛、体重減少があるか
視診
立位や座位で次の状態を確認します。
・腰や背中の丸まり
・身体の傾き
・痛みを避ける姿勢
・皮下出血や腫れ
・歩行状態
触診・叩打痛
背骨を軽く触れ、限局した圧痛があるかを確認します。
必要に応じて、背骨を軽くたたいたときの痛みを確認します。
強い痛みがある場合には、無理に繰り返しません。
神経学的検査
次の項目を確認します。
・脚の筋力
・皮膚感覚
・膝蓋腱反射
・アキレス腱反射
・つま先歩き、かかと歩き
・歩行状態
・会陰部の感覚
・排尿・排便機能
腹部の診察
強い外傷や下位肋骨・骨盤の損傷、内臓疾患が疑われる場合には、腹部の圧痛や出血の徴候も確認します。
X線検査
腰椎圧迫骨折の基本的な画像検査です。
主に次の項目を評価します。
・骨折している椎体
・椎体の高さ
・くさび状変形
・後弯変形
・複数の椎体骨折
・腰椎の配列
・骨粗鬆症を疑う骨の状態
・すべりや側弯
受傷直後の骨粗鬆症性骨折では、X線上の椎体変形がわずかで、骨折が分かりにくいことがあります。
過去の画像と比較する、立位と臥位で変形を比較する、一定期間後に再撮影するなどの方法が役立つ場合があります。
X線で異常が目立たなくても、症状が強い場合にはMRIを検討します。
MRI検査
MRIは、新しい骨折か古い骨折かを判断するうえで重要です。
新鮮骨折では、椎体内部に骨髄浮腫と呼ばれる変化がみられます。
主に次の項目を評価します。
・新鮮骨折の有無
・複数の骨折のうち、現在痛みの原因となる椎体
・椎体後壁や骨片による神経圧迫
・脊髄円錐・馬尾神経の圧迫
・椎間板や靱帯の損傷
・腫瘍性骨折
・感染症
・骨折部の治癒状態
X線で骨折がはっきりしなくても、MRIで新鮮骨折が確認される場合があります。
CT検査
CTでは、骨の形や骨片を詳しく確認できます。
主に次の項目を評価します。
・椎体の粉砕
・椎体後壁の損傷
・脊柱管内へ突出した骨片
・椎弓根、椎弓、関節突起などの骨折
・骨折の安定性
・手術計画
・骨癒合の状態
交通事故や高所転落などの強い外傷、破裂骨折、神経症状が疑われる場合には、CTが重要です。
骨密度検査
軽い外力で腰椎圧迫骨折を起こした場合には、骨粗鬆症を評価します。
骨密度検査には、主にDXA法が用いられます。
腰椎に高度な変形、骨棘、圧迫骨折などがあると、腰椎骨密度が実際より高く測定される場合があります。
そのため、大腿骨近位部などの測定結果も合わせて評価します。
骨密度だけでなく、年齢、既存骨折、転倒歴、薬剤、基礎疾患などを含めて骨折リスクを判断します。
血液・尿検査
次の目的で行うことがあります。
・カルシウム、リンなどの骨代謝評価
・ビタミンD不足の評価
・腎機能、肝機能の確認
・甲状腺・副甲状腺疾患の評価
・炎症や感染症の確認
・多発性骨髄腫などの確認
・骨粗鬆症治療薬を安全に使用できるかの確認
すべての患者さまに同じ検査が必要なわけではありません。
腰椎圧迫骨折の治療
治療の目的は次のとおりです。
・骨折部の痛みを軽減する
・骨折部を安定させる
・椎体圧潰や変形の進行を抑える
・安全に離床・歩行できるようにする
・筋力・体力低下を防ぐ
・神経障害を予防・治療する
・次の骨折を防ぐ
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックにおいては、骨折の安定性、神経症状、骨粗鬆症の程度を確認したうえで、下記の治療を提案しています。
保存療法
神経障害や強い不安定性がない骨粗鬆症性腰椎圧迫骨折では、保存療法が基本となります。
主な内容は次のとおりです。
・鎮痛薬
・必要に応じた装具
・短期間の負担調整
・安全な寝返り・起き上がり
・早期の離床・歩行
・リハビリテーション
・骨粗鬆症治療
・転倒予防
安静について
痛みが非常に強い初期には、一時的に楽な姿勢で休みます。
ただし、長期間のベッド上安静は避けます。
長く横になり続けると、次のような問題が起こる可能性があります。
・脚と体幹の筋力低下
・骨密度低下
・血栓症
・肺炎
・便秘
・食欲低下
・褥瘡
・認知機能の低下
・転倒リスクの増加
痛みと骨折の安定性を確認し、装具や歩行器などを利用しながら、可能な範囲で離床を進めます。
外傷性骨折や不安定骨折では、離床時期が異なるため医師の指示に従います。
装具療法
骨折部の動きを抑え、起き上がりや歩行時の痛みを軽減する目的で装具を使用することがあります。
主な装具には次のものがあります。
・軟性コルセット
・硬性コルセット
・胸腰仙椎装具
・体幹ギプス
骨折の高さ、変形、体格、皮膚状態などに応じて選択します。
装具には、次のような目的があります。
・体幹運動を制限する
・腰椎の過度な前屈を防ぐ
・骨折部への負担を減らす
・痛みを軽減する
・離床・歩行を安全にする
装具によって、すべての骨折の癒合が早まることが確立しているわけではありません。
痛み、骨折の安定性、全身状態を考慮して使用します。
装具使用時の注意点
・指示された場面で装着する
・自己判断で強く締めすぎない
・呼吸や食事を妨げないようにする
・皮膚の赤みや傷を確認する
・装具がずれた状態で使用しない
・痛みが減っても自己判断で中止しない
・長期間の使用による筋力低下に注意する
赤みが長時間消えない、水ぶくれや傷ができた、呼吸や食事が苦しい場合には調整が必要です。
動作時の注意
前屈を避ける
骨折初期に腰を深く丸めると、椎体前方への圧力が増える可能性があります。
次の動作に注意します。
・床の物を拾う
・深くお辞儀をする
・洗顔で前かがみになる
・低い椅子へ座る
・靴下を無理に履く
・布団から勢いよく起きる
必要に応じて、長い柄の道具、靴べら、リーチャーなどを利用します。
ひねりながら物を持たない
身体をひねりながら持ち上げると、骨折部へ複雑な力が加わります。
足の向きを変えて、身体全体で方向転換します。
重量物を避ける
骨折が安定するまで、重い荷物の運搬を控えます。
復帰時期は骨折の状態や仕事の内容によって異なります。
寝返り・起き上がり
背骨を大きくひねらず、肩と骨盤を一緒に動かす「ログロール」を利用します。
寝返り
1.両膝を軽く曲げる
2.肩と骨盤を同時に動かす
3.身体を一つの丸太のように横向きへ動かす
4.腰だけを強くひねらない
起き上がり
1.横向きになる
2.両脚をベッドの外へ下ろす
3.腕でベッドを押しながら上半身を起こす
4.腰を丸めずに座位になる
5.手すりや歩行器を使って立つ
痛みやふらつきが強い場合には、家族や医療・介護職の介助を受けます。
薬物療法
アセトアミノフェン
痛みを軽減する目的で使用します。
肝機能障害や、風邪薬などとの成分重複に注意します。
消炎鎮痛薬
痛みや炎症を軽減するために使用する場合があります。
高齢者では次の副作用に注意します。
・胃潰瘍、消化管出血
・腎機能障害
・血圧上昇
・むくみ
・心血管系への影響
・喘息症状
必要な場合には、できるだけ少ない有効量を短期間使用します。
オピオイド鎮痛薬
強い痛みに対して短期間使用することがあります。
眠気、ふらつき、吐き気、便秘、せん妄、呼吸抑制などに注意します。
高齢者では転倒の原因になる可能性があります。
リハビリテーション
リハビリテーションは、骨折部を無理に動かして治すものではありません。
安全に日常生活へ戻り、廃用症候群や転倒を防ぐことが目的です。
急性期
・安全な寝返り・起き上がり
・装具の着脱
・座位、立位練習
・歩行器や杖を用いた歩行
・呼吸運動
・足首の運動
・血栓予防
・痛みの少ない姿勢の指導
痛みが落ち着いた時期
・脚の筋力訓練
・臀筋の筋力訓練
・体幹筋の機能改善
・背筋の持久力訓練
・バランス訓練
・歩行距離の拡大
・階段昇降
・転倒予防
・家事・仕事動作の練習
痛みが強い時期には、背筋運動を仰向けや座位など、背骨へ大きな荷重が加わらない姿勢から始める場合があります。
避ける運動
骨折初期や骨粗鬆症が高度な場合には、次の運動を自己判断で行わないでください。
・勢いをつけた前屈運動
・腹筋運動で上体を深く起こす
・つま先へ手を伸ばすストレッチ
・強い体幹回旋
・重い重量を持った筋力トレーニング
・ジャンプや着地
・強い衝撃を伴う運動
骨粗鬆症治療
骨粗鬆症性腰椎圧迫骨折では、骨折部の治療と同時に、次の骨折を防ぐ治療が必要です。
骨粗鬆症治療薬には、次のような種類があります。
・骨吸収を抑える薬
・骨形成を促進する薬
・骨吸収抑制と骨形成促進の両方に作用する薬
・活性型ビタミンD製剤
・カルシウム製剤
使用する薬は、年齢、性別、骨密度、骨折歴、腎機能、歯科治療、ほかの病気などを考慮して選択します。
椎体骨折を起こした方は再骨折リスクが高いため、骨密度の数値だけでなく、骨折歴を重視して治療方針を決定します。
薬を自己判断で中止すると、薬の種類によっては骨折リスクが高くなることがあります。
休薬や変更は医師へ相談してください。
体外衝撃波治療・PRP療法について
腰椎圧迫骨折では、骨折の安定性、神経症状、骨粗鬆症の治療を優先して判断します。
体外衝撃波治療やPRP療法は、すべての腰椎圧迫骨折に行う標準治療ではありません。
適応があるかどうかは、症状、画像所見、骨折からの期間、全身状態を確認して慎重に判断します。
体外衝撃波治療
骨折の治癒遅延が疑われる場合や、骨折後の慢性的な痛みが続く場合には、状態に応じて体外衝撃波治療を検討することがあります。
ただし、急性期の腰椎圧迫骨折に対する標準的な第一選択治療ではありません。
骨折の形、不安定性、神経症状、骨粗鬆症の状態を確認したうえで、適応を慎重に判断します。
治療中や治療後に一時的な痛み、赤み、皮下出血などが生じることがあります。
体外衝撃波治療について詳しくはコチラをご覧ください。
PRP療法
PRP療法は、患者さんご自身の血液を採取し、血小板を多く含む成分を抽出して注入する自費診療の治療です。
腰椎圧迫骨折の急性期治療として、すべての方に行う標準治療ではありません。
圧迫骨折では、まず骨折の安定性、神経症状、骨粗鬆症の治療、装具療法、リハビリテーションを優先して判断します。
適応が考えられる場合でも、効果には個人差があり、骨折した椎体の高さを元に戻す治療ではありません。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。
PRP療法について詳しくはコチラをご覧ください。
栄養
骨の修復と筋力維持のため、十分な栄養を確保します。
特に次の栄養素が重要です。
・たんぱく質
・カルシウム
・ビタミンD
・ビタミンK
・マグネシウムなど
食事量が少ない高齢者では、骨の治癒だけでなく筋力や免疫機能も低下しやすくなります。
腎臓病などで食事制限がある方は、医師や管理栄養士へ相談します。
転倒予防
次の骨折を防ぐためには、骨を強くする治療と転倒対策の両方が必要です。
・床の物や電気コードを片づける
・滑りやすいマットを除く
・夜間の廊下やトイレを明るくする
・浴室、階段に手すりを設置する
・滑りにくい靴を選ぶ
・必要に応じて杖や歩行器を使用する
・視力や眼鏡を確認する
・眠気やふらつきを起こす薬を見直す
・飲酒後の転倒に注意する
・脚の筋力とバランスを保つ
専門医療機関への紹介が必要な場合
圧迫骨折の中には、保存療法だけでは対応が難しいものがあります。
手術が必要な場合
骨折部の不安定性が強い場合、椎体圧潰が進行している場合、偽関節による痛みが続く場合、骨片による神経圧迫がある場合には、椎体形成術や脊椎固定術などを検討します。
当院で専門的な手術治療が必要と判断した場合には、脊椎脊髄外科に対応している医療機関へご紹介します。
整体・強い矯正について
腰椎圧迫骨折が疑われる状態で、腰を強く押す、ひねる、反らすなどの施術を受けると、骨折の変形や神経症状が悪化する可能性があります。
特に次のような場合には、整体や強いマッサージより先に整形外科を受診してください。
・高齢者の急な腰痛
・転倒や尻もち後の腰痛
・骨粗鬆症がある
・ステロイド薬を使用している
・寝返りや起き上がりで激しく痛む
・背骨を押すと強く痛む
・身長が低下している
・脚のしびれや筋力低下がある
・がんの既往がある
骨折した椎体を手で押して元の高さへ戻すことはできません。
治癒までの期間
痛みは数週間で徐々に軽減することが多くありますが、骨折の安定化や骨癒合にはさらに時間がかかります。
年齢、骨粗鬆症の程度、骨折の形、椎体圧潰、栄養状態、喫煙、活動量などによって経過は異なります。
一般に、数週間から数か月かけて治療とリハビリテーションを行います。
痛みが軽くなったからといって、骨が完全に治ったとは限りません。
自己判断で装具を外す、重い物を持つ、強い前屈運動を再開することは避けてください。
一方、長期間動かずにいると筋力・体力が低下するため、画像や症状を確認しながら活動を段階的に増やします。
仕事への復帰
復帰時期は、骨折の安定性、症状、仕事内容によって異なります。
デスクワーク
座位が長い場合には、背もたれを利用し、定期的に立ち上がります。
低い椅子や深い前かがみを避けます。
立ち仕事
長時間立ち続けず、休憩を入れます。
必要に応じて装具や杖を使用します。
重量物作業
骨折が安定するまでは制限が必要です。
持ち上げ作業を再開する場合には、腰を丸めず、膝と股関節を使います。
介護・抱き上げ作業
腰への負担が大きいため、福祉用具や複数人介助を利用します。
自宅での注意点
・処方された装具を正しく使用する
・長期間寝たきりにならない
・痛みに応じて短い歩行を行う
・腰を深く丸めない
・ひねりながら物を持たない
・重い物を持たない
・低い場所での作業を避ける
・床の物は道具を使って取る
・椅子やベッドの高さを調整する
・薬による眠気やふらつきに注意する
・食事と水分を確保する
・便秘を予防する
・皮膚の装具トラブルを確認する
・転倒しやすい場所を整える
・骨粗鬆症治療を継続する
・脚の筋力と排尿状態を確認する
早めに受診すべき症状
次のような場合には、整形外科を受診してください。
・転倒や尻もち後から腰が痛む
・軽い動作の後に強い腰痛が出た
・寝返りや起き上がりで激しく痛む
・腰を押すと限局して痛む
・高齢者で急な腰痛が出た
・骨粗鬆症がある
・過去に椎体骨折を起こしている
・ステロイド薬を長期間使用している
・数日たっても痛みが改善しない
・身長が低下した
・腰や背中の丸まりが進んだ
・装具を使用しても痛みが強い
・痛みが一度軽くなった後に再び悪化した
次のような場合には、腫瘍や感染症を含めた詳しい評価が必要です。
・安静時や夜間にも強く痛む
・発熱や悪寒がある
・原因不明の体重減少がある
・がんの既往がある
・透析を受けている
・免疫機能が低下している
・痛みが日ごとに悪化している
直ちに救急受診すべき症状
次の症状がある場合には、骨片による神経圧迫や不安定な脊椎骨折の可能性があります。
直ちに救急受診してください。
・両脚または片脚へ急に力が入らなくなった
・立てない、歩けない
・脚のしびれが急速に広がっている
・足首や足趾を動かせない
・尿を出せない
・急に尿や便を漏らすようになった
・尿意や便意が分からなくなった
・肛門、陰部、太ももの内側がしびれる
・交通事故や高所転落後に強い腰痛がある
・意識障害、冷汗、血圧低下などを伴う
・強い腹痛や胸痛を伴う
強い外傷の後は、無理に起こしたり歩かせたりせず、救急要請を検討してください。
診察では、受傷状況、骨粗鬆症のリスク、痛みの特徴、背骨の圧痛、脚の筋力・感覚、排尿・排便機能などを確認します。
X線では椎体の高さや変形を評価しますが、骨折直後には異常が分かりにくい場合があります。
MRIでは新鮮骨折、神経圧迫、腫瘍や感染症を評価し、CTでは椎体後壁、骨片、破裂骨折、骨折の安定性を詳しく確認します。
安定した骨粗鬆症性腰椎圧迫骨折では、鎮痛薬、必要に応じた装具、動作指導、早期離床、リハビリテーションなどの保存療法を行います。
同時に骨密度や血液検査などで骨粗鬆症を評価し、次の骨折を防ぐ治療を開始します。
骨折部の不安定性、進行する椎体圧潰、偽関節、神経障害、保存療法で改善しない強い痛みなどがある場合には、椎体形成術や脊椎固定術などを専門医療機関で検討します。
腰椎圧迫骨折でお悩みの方へ
腰椎圧迫骨折は、単なる腰痛として見逃されることがあります。
特に高齢の方、骨粗鬆症がある方、ステロイド薬を使用している方、転倒後から寝返りや起き上がりで強く痛む方では、早めの評価が大切です。
診察では、痛みの場所、背骨の圧痛、脚の筋力・感覚、排尿・排便機能などを確認します。
X線で椎体の高さや変形を確認し、必要に応じてMRIやCTで新鮮骨折、神経圧迫、腫瘍や感染症を評価します。
安定した骨粗鬆症性腰椎圧迫骨折では、鎮痛薬、装具、動作指導、早期離床、リハビリテーション、骨粗鬆症治療を行います。
不安定な骨折、進行する変形、神経障害、保存療法で改善しない強い痛みがある場合には、専門医療機関での手術治療を検討します。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫