指の側副靱帯損傷

指の側副靱帯損傷

指の側副靱帯損傷について

指の側副靱帯損傷は、指の関節へ横方向の強い力が加わり、関節の両側にある側副靱帯が伸ばされたり、部分的または完全に断裂したりするけがです。
ボールが指先へ当たる、転倒して指をつく、スポーツ中に指を引っかけるなど、一般に「突き指」と呼ばれる外傷によって起こります。
「突き指」は正式な病名ではなく、指先へ力が加わって起こるけがの総称です。
その中には、軽い打撲だけでなく、次のような損傷が含まれます。
・側副靱帯損傷
・掌側板損傷
・骨折、剥離骨折
・関節脱臼
・伸筋腱損傷
・屈筋腱損傷
・関節軟骨損傷
側副靱帯損傷では、関節の左右どちらかに痛み、腫れ、皮下出血が現れます。
軽症では関節の安定性が保たれていますが、完全断裂すると、指を横方向へ動かした際に関節がぐらつくことがあります。
損傷した靱帯が骨の一部を引き剥がす「剥離骨折」を伴う場合もあります。
多くの安定した側副靱帯損傷は、隣の指と一緒に固定するバディテーピングや、短期間の装具療法によって治療できます。
一方、関節の不安定性が強い場合、関節がずれている場合、大きな剥離骨折を伴う場合、親指の尺側側副靱帯が完全に断裂している場合などには、手術が必要になることがあります。
適切な診断を受けずに放置すると、関節の腫れや痛みが長引き、指のこわばり、横方向の不安定性、変形性関節症などにつながる可能性があります。

側副靱帯の構造と役割

指の関節の左右には、関節を横方向から支える側副靱帯があります。
側副靱帯は骨と骨をつなぐ丈夫な線維性組織です。
関節が横方向へ開きすぎることを防ぎ、指をまっすぐ安定させる働きがあります。
示指から小指までには、主に次の関節があります。
・指先に近いDIP関節
・指の中央にあるPIP関節
・指の付け根にあるMP関節
それぞれの関節の両側に、親指側の橈側側副靱帯と、小指側の尺側側副靱帯があります。
側副靱帯には、主に関節を曲げた状態で緊張する部分と、関節を伸ばした状態で関節包とともに安定性を保つ部分があります。
このため、けがをしたときの関節角度や外力の方向によって、損傷する部分や不安定性の現れ方が異なります。

PIP関節の構造

指の側副靱帯損傷は、特に指の中央にあるPIP関節に多く起こります。
PIP関節は、基節骨と中節骨の間にある関節です。
物を握る際に大きく曲がるため、指の機能にとって重要な関節です。
PIP関節は、次の組織によって支えられています。
・左右の側副靱帯
・手のひら側にある掌側板
・手の甲側にある伸筋腱
・関節包
・屈筋腱
側副靱帯は、関節の「左右の壁」のような役割を持ちます。
掌側板は、関節の手のひら側にある丈夫な組織で、関節が反り返りすぎることを防ぎます。
突き指では、一つの組織だけでなく、側副靱帯と掌側板、骨、腱などを同時に損傷する場合があります。

母指MP関節の側副靱帯

親指の付け根にあるMP関節にも、橈側と尺側の側副靱帯があります。
特に重要なのが、示指側にある「尺側側副靱帯」です。
母指MP関節の尺側側副靱帯は、親指と示指で物をつまむ際に、親指の付け根を安定させています。
この靱帯が切れると、つまむ力が弱くなり、親指が横方向へぐらつきます。
急性の母指尺側側副靱帯損傷は、スキー中の転倒などで起こることから「スキーヤー母指」と呼ばれます。
繰り返す負担などによって徐々に靱帯が傷み、慢性的な不安定性を生じるものは「ゲームキーパー母指」と呼ばれることがあります。

側副靱帯損傷の重症度

Grade 1:軽度損傷

靱帯が伸ばされているものの、明らかな断裂はない状態です。
関節の痛みや軽い腫れがありますが、横方向の安定性は保たれています。

Grade 2:部分断裂

靱帯の線維が部分的に切れている状態です。
痛みや腫れが強くなり、横方向の力を加えた際に軽度のゆるみを認めることがあります。
ただし、靱帯の一部はつながっているため、関節が完全に不安定になるとは限りません。

Grade 3:完全断裂

靱帯が完全に切れている状態です。
靱帯が骨から剥がれ、骨片を伴う場合もあります。
関節を横方向へ動かすと大きく開き、硬い抵抗が感じられないことがあります。
完全断裂であっても保存療法が可能な部位はありますが、関節の不安定性、靱帯断端の位置、骨折の状態などによっては手術が必要です。

剥離骨折

靱帯へ強い力が加わると、靱帯そのものが切れる代わりに、靱帯が付着している骨の一部が引き剥がされることがあります。
これを剥離骨折と呼びます。
小さな骨片で関節が安定している場合には、側副靱帯損傷に準じて保存療法を行うことがあります。
一方、次のような場合には専門的な評価が必要です。
・骨片が大きい
・骨片が大きくずれている
・関節面を広く含んでいる
・関節が亜脱臼している
・指に回旋変形がある
・骨片が関節内に挟まっている
・保存療法で関節の位置を保てない

主な原因

ボールによる突き指

バスケットボール、バレーボール、野球、ハンドボールなどで、指先へボールが当たった際に起こります。
指先からまっすぐ力が加わるだけでなく、指が横へ曲げられることで側副靱帯が損傷します。

指を引っかける

衣服、相手選手、ネット、器具などへ指を引っかけ、指が横方向へ曲がった際に起こります。

転倒

転倒時に指先や手をつき、指が横へ倒れたり反り返ったりすることで損傷します。

格闘技・接触スポーツ

柔道、ラグビー、アメリカンフットボール、バスケットボールなどで、相手や衣服に指を引っかけて発症することがあります。

スキー・スノーボード

ストックを握ったまま転倒し、親指が手のひらから離れる方向へ強く開くと、母指MP関節の尺側側副靱帯を損傷します。

仕事・日常生活での外傷

重い物を持った際に指が引っかかる、ドアや家具へ指をぶつける、ペットのリードに指を巻き込まれるなどの事故でも発症します。

主な症状

関節の片側の痛み

側副靱帯損傷では、損傷した靱帯に一致して、関節の左右どちらかに痛みが現れます。
関節全体が腫れていると、痛む場所がはっきりしないこともあります。

腫れ

受傷後、関節周囲が腫れます。
PIP関節では腫れが長期間残りやすく、けがが治った後も以前より関節が太く見えることがあります。

皮下出血

靱帯や関節包から出血し、青紫色の皮下出血が現れる場合があります。

指を曲げ伸ばしすると痛む

関節を曲げたり伸ばしたりすると、傷んだ靱帯が引っ張られて痛みます。
腫れによって可動域が狭くなり、指を十分に曲げ伸ばしできない場合があります。

横方向の不安定感

完全断裂や高度の部分断裂では、指を横へ動かした際にぐらつくことがあります。
物をつかんだときに力が逃げる、指が外れそうに感じる場合もあります。

握りにくさ

PIP関節を十分に曲げられず、物を握りにくくなります。
痛みによって力を入れられないこともあります。

指の変形

脱臼や骨折を伴う場合には、指が明らかに曲がったり、関節がずれたりします。
指を軽く曲げた際に、指先がほかの指と重なる場合には、回旋変形が疑われます。

親指でつまみにくい

母指MP関節の尺側側副靱帯を損傷すると、親指と示指で物をつまむ際に痛みや不安定感が現れます。
紙をつまむ、鍵を回す、ふたを開けるなどの動作が難しくなります。

「突き指の悪化」とは

骨折や脱臼を見逃している

見た目の変形が少なくても、剥離骨折や関節内骨折を伴うことがあります。
脱臼が自然に戻っている場合でも、靱帯や掌側板が大きく傷ついている可能性があります。

完全断裂による不安定性が残っている

靱帯が完全に切れていると、痛みが軽くなっても関節のぐらつきが残る場合があります。
不安定な状態で手を使い続けると、関節軟骨へ負担がかかり、慢性的な痛みや変形性関節症につながることがあります。

固定せず使い続けている

受傷直後から強い握り動作やスポーツを続けると、靱帯の治癒が妨げられる可能性があります。

長期間固定しすぎている

PIP関節は、長期間動かさないと非常に硬くなりやすい関節です。
骨折や強い不安定性がないにもかかわらず、自己判断で長く固定すると、関節包や腱が硬くなり、指を曲げ伸ばしできなくなることがあります。

腫れを放置している

強い腫れが続くと、関節や腱の動きが悪くなり、瘢痕や癒着が形成されやすくなります。

合併損傷がある

側副靱帯だけでなく、掌側板、伸筋腱、屈筋腱、関節軟骨などを同時に損傷している場合があります。

放置した場合に起こり得る問題

慢性的な関節不安定性

靱帯が十分に治らず、関節が横方向へぐらつく状態が残ることがあります。

関節拘縮

腫れ、痛み、固定、瘢痕などによって、関節を曲げ伸ばしできなくなります。
特にPIP関節では、わずかなけがでもこわばりが長引くことがあります。

指の横曲がり

片側の側副靱帯が十分に機能しないと、指が損傷側と反対方向へ傾く場合があります。

変形性関節症

不安定性や関節軟骨損傷が長く続くと、関節裂隙の狭小化、骨棘、痛みなどが生じることがあります。

ボタンホール変形

PIP関節の手の甲側にある伸筋腱中央索を損傷していた場合、時間の経過とともにPIP関節が曲がり、DIP関節が反り返るボタンホール変形へ進行することがあります。
側副靱帯損傷と症状が似ているため、突き指後にPIP関節を伸ばしにくい場合には注意が必要です。

ほかのけがとの違い

掌側板損傷との違い

掌側板損傷は、PIP関節が強く反り返った際に起こります。
関節の手のひら側に痛みや腫れが現れます。
側副靱帯損傷では、関節の左右どちらかに痛みが強く出る傾向があります。
両方を同時に損傷する場合もあります。

PIP関節脱臼との違い

脱臼では、関節面が正常な位置から外れます。
明らかな変形を伴う場合がありますが、受傷時に脱臼して自然に戻ることもあります。
脱臼後には側副靱帯や掌側板などが損傷しているため、関節が戻った後も評価が必要です。

中央索損傷との違い

中央索損傷では、PIP関節を自力で伸ばしにくくなります。
受傷直後は腫れや痛みだけで、変形が目立たないことがあります。
放置するとボタンホール変形へ進行する可能性があります。

マレットフィンガーとの違い

マレットフィンガーでは、指先に最も近いDIP関節を自力で伸ばせなくなります。
側副靱帯損傷とは、主に傷んでいる部位と動かせない関節が異なります。

骨折との違い

骨折でも関節の片側に痛みや腫れが現れます。
症状だけで靱帯損傷と骨折を完全に区別することはできないため、X線検査が重要です。

ばね指との違い

ばね指では、指の付け根の手のひら側に痛みや引っかかりが現れます。
側副靱帯損傷は、外傷後に関節の側面が痛むことが一般的です。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

受傷した状況や症状の経過を確認します。
主に次のような点を確認します。
・いつ、どのように指をけがしたか
・ボールが当たったか
・指が横へ曲がったか、反り返ったか
・受傷時に関節が外れたように見えたか
・自分や周囲の人が指を引っ張って戻したか
・どの関節のどちら側が痛むか
・指を曲げ伸ばしできるか
・横方向のぐらつきを感じるか
・しびれや指先の色の変化があるか
・傷や出血があるか
・受傷後に固定やテーピングを行ったか
・スポーツや仕事を続けていたか
・過去にも同じ関節をけがしたことがあるか

視診

関節の腫れ、皮下出血、変形、傷などを確認します。
両手の同じ指を比較し、関節の太さや方向が異なっていないかを評価します。

触診

関節の左右にある側副靱帯を触り、痛みの場所を確認します。
掌側板、伸筋腱、骨折しやすい部分なども触診し、合併損傷を確認します。

関節可動域検査

患者さま自身の力で、指をどこまで曲げ伸ばしできるかを確認します。
外から補助して動かせる範囲も確認し、痛みによる制限なのか、関節や腱が硬くなっているのかを評価します。

腱機能検査

DIP関節、PIP関節、MP関節を個別に動かし、伸筋腱と屈筋腱が正常に働いているかを確認します。

側方ストレス検査

関節を支えながら横方向へ慎重に力を加え、側副靱帯の安定性を確認します。
反対側の同じ指と比較し、関節の開き方や、最後に硬い抵抗が感じられるかを評価します。
急性期で痛みや腫れが強い場合には、無理に検査しないことがあります。
自宅で関節を横へ何度も曲げ、ぐらつきを確認しないでください。

回旋変形の確認

指を軽く握っていただき、指先が自然に手のひらの一定方向へ向かうかを確認します。
指先が隣の指へ重なる場合には、骨折や関節の回旋変形が疑われます。

X線検査

側副靱帯は通常のX線には直接写りません。
X線検査では、次の状態を確認します。
・剥離骨折
・関節内骨折
・脱臼、亜脱臼
・関節面の段差
・指の軸や回旋の異常
・古い骨折や変形性関節症
・親指MP関節の骨片
必要に応じて複数の方向から撮影します。
親指MP関節の不安定性を評価する際には、専門医の判断でストレス撮影を行うことがあります。
強く関節を開く検査であるため、骨折の有無や痛みを確認しながら慎重に行います。

超音波検査

超音波検査では、側副靱帯や周囲の組織を観察できる場合があります。
次のような評価に役立ちます。
・側副靱帯の腫れ、部分断裂、完全断裂
・靱帯断端の位置
・剥離骨片
・関節液や血腫
・腱損傷
・関節を動かした際の不安定性
・親指尺側側副靱帯の断端の位置
親指の尺側側副靱帯損傷では、切れた靱帯の上に組織が入り込み、靱帯断端が元の位置へ戻れないことがあります。
これをStener lesion(ステナー病変)と呼び、保存療法では治りにくいため手術が検討されます。

MRI検査

MRIでは、側副靱帯、掌側板、腱、関節軟骨などを詳しく評価できます。
次のような場合に検討します。
・診察だけでは部分断裂と完全断裂を判断しにくい
・関節の不安定性が強い
・親指のStener lesionが疑われる
・痛みが長引いている
・複数の組織の損傷が疑われる
・手術方法を検討している
典型的な軽症例では、MRIが必須とは限りません。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

CT検査

骨折片が複数ある場合、関節面の段差や回旋変形を詳しく確認したい場合などに検討します。
CT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

受傷直後の対応

指輪を外す

指が腫れる前に、同じ手の指輪を外します。
腫れた後に指輪が外れなくなると、血流障害を起こす危険があります。

冷却する

タオルで包んだ保冷剤などを、短時間ずつ患部へ当てます。
氷や保冷剤を皮膚へ直接当てないでください。

手を高くする

手を心臓より高い位置に保つと、腫れを軽減できる場合があります。

変形を自分で戻さない

指が明らかに曲がっている場合でも、自分で引っ張ったり、ひねって戻したりしないでください。
骨折、腱、神経、血管の損傷を悪化させる可能性があります。

仮固定する

指がまっすぐで血流・感覚に問題がなければ、隣の指と軽く固定して保護します。
ただし、強く締めすぎないでください。
明らかな変形、傷、しびれ、色の変化がある場合には、無理にテーピングせず早めに受診してください。

指の側副靱帯損傷に対する治療

治療方法は、損傷した関節、部分断裂か完全断裂か、関節の安定性、骨折や脱臼の有無によって異なります。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックにおいては、診察と検査結果をもとに下記の治療を提案しています。

軽度・安定したPIP関節損傷

関節が安定している軽度の損傷では、バディテーピングを行うことがあります。
傷んだ指を隣の指と一緒に固定し、横方向の力から保護しながら、曲げ伸ばしを可能にする方法です。
PIP関節は長期間固定すると硬くなりやすいため、医師やリハビリテーション担当者の指示に従い、適切な時期から動かします。

中等度の損傷

部分断裂、腫れが強い場合、動かすと不安定な場合には、専用の装具で一定期間保護することがあります。
症状が落ち着いた後、バディテーピングへ変更し、段階的に動かします。

完全断裂

完全断裂でも、関節の位置が保たれ、適切な固定で安定性を得られる場合には保存療法を行うことがあります。
一方、関節が大きく開く、骨片がずれている、関節が亜脱臼している場合などは手術を検討します。

バディテーピング

バディテーピングは、傷んだ指を隣の健康な指と一緒に固定する方法です。
隣の指が支柱となり、横方向の力から傷んだ関節を守ります。
完全に動きを止めるのではなく、ある程度曲げ伸ばしできることが特徴です。
一般には、傷んだ関節を直接覆わないよう、関節の上下にテープを巻きます。
指同士がこすれないよう、間に薄いガーゼなどを挟むことがあります。
ただし、損傷部位や方向によって固定する隣の指や位置が異なるため、最初は医療機関で指導を受けてください。
・強く締めすぎない
・関節の上へ厚く巻かない
・皮膚を毎日確認する
・汗や水分でぬれたら交換する
・指が白い、青紫色、冷たい場合は外す
・しびれや脈打つ痛みがあれば外す
・自己判断で長期間続けない

装具療法

関節の不安定性や合併損傷に応じて、指の曲げ伸ばしを一定範囲に制限する装具を使用します。
掌側板損傷を伴う場合には、関節が反り返りすぎないようにする装具が必要になることがあります。
中央索損傷が疑われる場合には、PIP関節を伸ばした状態で固定するなど、側副靱帯損傷とは異なる固定が必要です。
損傷を正確に診断せず、市販の装具を長期間使用することは避けてください。

薬物療法

痛みや腫れに対して、外用薬や消炎鎮痛薬を使用することがあります。
薬物療法は痛みを軽減するものであり、切れた靱帯やずれた関節を元へ戻す治療ではありません。
痛み止めで症状を抑えながら、スポーツや重作業を続けることは避けます。

注射治療について

急性の側副靱帯断裂に対するステロイド注射やハイドロリリースは、一般的な標準治療ではありません。
ステロイドによって痛みが軽くなっても、靱帯の不安定性や剥離骨折が治るわけではありません。
外傷後は、まず骨折、脱臼、靱帯の安定性を評価し、必要な固定やリハビリテーションを行います。

PRP療法

PRP療法は、患者さんご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、損傷部周囲へ注入する治療です。
保存療法を行っても痛みが長引く一部の靱帯損傷などで検討する場合があります。
ただし、急性の完全断裂、大きな剥離骨折、脱臼や亜脱臼をPRPだけで治すものではありません。
損傷部位、関節の安定性、受傷からの期間などを確認したうえで適応を慎重に判断します。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。

PRP療法について詳しくはコチラ

リハビリテーション

腫れの管理

手を高く保ち、固定されていない関節をゆっくり動かします。
腫れが長引くと可動域の回復が遅れるため、早期から管理します。

関節可動域訓練

関節の安定性が確認され、医師から許可された後に、痛みの少ない範囲で曲げ伸ばしします。
PIP関節では、長く固定しすぎないことが重要です。
一方、受傷直後から痛みを我慢して強く曲げ伸ばしすると、損傷部を悪化させる可能性があります。

腱滑走運動

指を伸ばした状態、軽く曲げた状態、握った状態などへ段階的に動かし、屈筋腱と伸筋腱の滑りを保ちます。

筋力訓練

靱帯の治癒と安定性を確認した後に、柔らかいボールなどを用いて軽い握力訓練を始めます。
強いつまみ、重い物を持つ、横方向へ負荷を加える運動は、許可が出てから再開します。

スポーツ復帰

復帰時期は、損傷の程度、競技、関節の安定性によって異なります。
復帰前には、次の点を確認します。
・関節の強い圧痛がない
・腫れが落ち着いている
・必要な範囲まで曲げ伸ばしできる
・横方向の不安定性がない
・握力やつまみ力が回復している
・競技動作で痛みが出ない
復帰後しばらくは、バディテーピングなどで保護する場合があります。

母指MP関節側副靱帯損傷の治療

部分断裂

関節の安定性が保たれている部分断裂では、親指を含めた母指スパイカ型の装具やギプスで固定します。
治癒が確認された後、可動域訓練と筋力訓練を段階的に行います。

完全断裂

関節が明らかに不安定な完全断裂では、手術が必要になる場合があります。
特にStener lesionでは、切れた靱帯と付着部の間へ母指内転筋腱膜が入り込み、靱帯が骨へ接触できないため、自然に治りにくい状態です。

手術

急性期には、切れた靱帯を骨へ縫い付ける修復術や、剥離骨折の固定などを行います。
受傷から長期間経過し、靱帯を直接修復できない場合には、別の腱などを用いた靱帯再建術を検討します。
関節症が進行している場合には、関節固定術が選択されることもあります。

手術治療・専門医療機関への紹介

次のような場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関で手術を検討します。
・関節の不安定性が強い
・完全断裂で関節を安定させられない
・大きくずれた剥離骨折がある
・関節面を広く含む骨折がある
・関節が亜脱臼している
・指に回旋変形がある
・靱帯や骨片が関節内に挟まっている
・開放創を伴っている
・保存療法を行っても不安定性や強い痛みが残る
・慢性不安定性によって日常生活へ支障がある
当院で手術が必要と判断した場合には、手外科・上肢外科の手術に対応している医療機関へご紹介します。

自宅での注意点

指をけがした後は、次の行為を避けてください。
・突き指した指を強く引っ張る
・自分で脱臼を戻そうとする
・関節を横へ何度も曲げて確認する
・痛みを我慢して握力訓練をする
・強く揉む
・長期間自己流で固定する
・テープを強く巻く
・痛み止めを飲んでスポーツを続ける
・変形した指を力でまっすぐにする
PIP関節は腫れやこわばりが長く残りやすいため、見た目がすぐに元へ戻らない場合があります。
痛みや腫れが軽くなっても、関節を十分に曲げ伸ばしできない場合や、ぐらつきがある場合には再評価が必要です。

次のような症状がある場合には早めに受診してください

・突き指後に関節の片側が痛む
・指の中央の関節が腫れている
・関節の左右に皮下出血がある
・指を横へ動かすと痛む
・物を握ると痛む
・指を十分に曲げ伸ばしできない
・関節が横方向へぐらつく
・突き指から数週間たっても腫れが引かない
・関節が以前より太くなった
・指が横へ曲がってきた
・親指と示指で物をつまみにくい
・親指の付け根が不安定に感じる

速やかな受診が必要な症状

次のような場合には、骨折、脱臼、腱断裂、神経・血管損傷などの可能性があります。
・指が明らかに変形している
・指先が隣の指へ重なっている
・関節が外れているように見える
・自力で指を曲げられない、または伸ばせない
・反対の手を使っても関節を動かせない
・指に傷や出血がある
・骨や腱が見えている
・指先に強いしびれや感覚低下がある
・指先が白い、青紫色になっている
・指先が冷たい
・腫れや痛みが急速に強くなっている
・関節が赤く熱を持ち、発熱を伴っている
指の変形、回旋異常、傷、血流・感覚異常がある場合には、自分で引っ張ったり戻したりせず、速やかに整形外科を受診してください。

指の側副靱帯損傷でお悩みの方へ

指の側副靱帯損傷は、一般に「突き指」と呼ばれる外傷の中に含まれますが、軽い打撲だけとは限りません。
剥離骨折、関節内骨折、脱臼、掌側板損傷、伸筋腱損傷などを伴う場合があり、見た目だけで重症度を判断することは困難です。
診察では、痛む場所、関節可動域、腱機能、側方安定性、回旋変形、神経・血流などを確認します。
X線検査によって、剥離骨折、関節内骨折、脱臼、亜脱臼などを評価します。
必要に応じて超音波やMRIを行い、側副靱帯の断裂、掌側板、腱、親指のStener lesionなどを確認します。
安定したPIP関節側副靱帯損傷では、バディテーピングなどで保護しながら、適切な時期から指を動かします。
強い不安定性、大きな剥離骨折、関節のずれ、母指尺側側副靱帯の完全断裂などがある場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関で手術を含めた治療を検討します。
当院では、問診、視診、触診、関節可動域検査、腱機能検査、X線検査、超音波検査などによって、指の靱帯だけでなく、骨、関節、掌側板、腱、神経・血流を含めて評価します。
MRIやCTが必要と判断した場合には提携医療機関をご案内します。
突き指後の腫れや痛みが続く、指を曲げ伸ばししにくい、関節がぐらつく、指が変形しているなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫