母指CM関節症

母指CM関節症

母指CM関節症について

母指CM関節症(ぼしCMかんせつしょう)は、親指の付け根にある「母指CM関節」の軟骨がすり減り、痛み、腫れ、動かしにくさ、変形などが現れる病気です。
CM関節は「手根中手関節」の略で、親指の中手骨と、手首にある大菱形骨との間に位置しています。
母指CM関節は、親指を開く、閉じる、回す、ほかの指と向かい合わせるといった複雑な動きを行う関節です。
物をつまむ、握る、ひねる動作では、母指CM関節に大きな力が加わります。
関節軟骨が傷むと、関節の隙間が狭くなり、骨棘や亜脱臼などが生じます。
初期には、瓶のふたを開ける、鍵を回す、洗濯ばさみをつまむといった動作で、親指の付け根が痛みます。
進行すると、親指の付け根が外側へ張り出し、親指が手のひら側へ入り込むように変形することがあります。さらに、親指の付け根が動きにくくなった分を補うため、親指のMP関節が反り返る変形を伴う場合があります。
治療では、親指への負担の調整、装具、薬物療法、リハビリテーション、関節内注射などを行います。
保存療法で十分に改善せず、日常生活への支障が大きい場合には、手術治療を検討します。

母指CM関節の構造と役割

親指は、ほかの指と向かい合わせる「対立運動」ができるため、つまむ、握る、道具を操作するといった動作に重要です。
この複雑な動きを可能にしているのが、親指の付け根にある母指CM関節です。
母指CM関節は、第1中手骨と大菱形骨によって構成されています。
関節面は鞍のような形をしているため「鞍関節」と呼ばれ、前後・左右への動きや回旋が可能です。
一方で、関節面が比較的小さく、つまみ動作では強い力が集中します。
関節は関節包と複数の靱帯によって支えられています。加齢や繰り返す負担などによって関節軟骨がすり減ったり、靱帯がゆるんだりすると、第1中手骨が本来の位置からずれやすくなります。
この状態が続くと、一部の関節面へ負担が集中し、変形性関節症が進行します。

母指CM関節症で起こる変化

関節軟骨の摩耗

健康な関節では、骨の表面が滑らかな関節軟骨で覆われています。
関節軟骨には、骨同士の摩擦を減らし、衝撃を吸収する働きがあります。
母指CM関節症では軟骨が徐々に薄くなり、表面が不整になります。

関節裂隙の狭小化

X線検査では軟骨そのものは直接写りません。
軟骨が薄くなると、骨と骨の間の隙間が狭く見えるようになります。

骨棘

関節の縁に、骨のとげのような骨棘が形成されます。
骨棘は親指の付け根の硬い出っ張りとして触れることがあります。

軟骨下骨の硬化・骨嚢胞

軟骨の下にある骨へ負担が集中すると、骨が硬く見える軟骨下骨硬化や、小さな空洞状の骨嚢胞が生じることがあります。

亜脱臼

関節を支える靱帯がゆるむと、第1中手骨が大菱形骨からずれる亜脱臼を起こします。
進行すると、親指の付け根が外側へ張り出して見えるようになります。

関節周囲の炎症

関節包や滑膜に炎症が起こると、痛み、腫れ、熱感などが現れます。
症状が強い時期と、比較的落ち着いている時期を繰り返すことがあります。

母指CM関節症の原因

母指CM関節症は、一つの原因だけで発症する病気ではありません。
加齢、体質、関節の形、靱帯のゆるみ、手の使い方など、複数の要因が関係すると考えられています。

加齢による変化

年齢とともに関節軟骨の弾力や水分量が低下し、長年の使用によって軟骨が傷みやすくなります。
一般に中年以降の方に多くみられます。

女性に多い傾向

母指CM関節症は、特に中年以降の女性に多くみられます。
ホルモンバランス、靱帯の柔らかさ、関節の形などが関係している可能性がありますが、詳しい原因は完全には分かっていません。

関節のゆるみ

もともと関節が柔らかい方や、母指CM関節を支える靱帯がゆるい方では、第1中手骨がずれやすくなります。
関節が不安定な状態でつまみ動作を繰り返すと、軟骨へ負担が集中することがあります。

手や親指への繰り返す負担

次のような動作によって、症状が現れたり悪化したりすることがあります。
・瓶やペットボトルのふたを開ける
・鍵やドアノブを回す
・洗濯ばさみをつまむ
・包丁やはさみを使う
・タオルや雑巾を絞る
・スマートフォンを片手で操作する
・筆記用具を強く握る
・針仕事や手芸をする
・工具を握る
・荷物を親指と指で挟んで持つ
手をよく使うことだけが発症原因ではありませんが、炎症が強い時期に負担を続けると症状が長引くことがあります。

外傷後

親指の付け根の骨折、脱臼、靱帯損傷などによって関節面や安定性が損なわれると、外傷後の母指CM関節症を発症することがあります。
若い方や片側だけに強い症状がある場合には、過去の外傷歴も確認します。

主な症状

親指の付け根の痛み

最も代表的な症状です。
親指と手首の境目付近に痛みが現れます。
初期には特定の動作でのみ痛みますが、進行すると軽い作業でも痛むようになります。

つまむと痛む

親指と示指で物をつまむ動作では、母指CM関節に強い力が加わります。
洗濯ばさみ、硬貨、ボタン、小さな部品、爪切りなどを扱う際に痛みが出ることがあります。

ひねると痛む

瓶のふた、鍵、蛇口、ドアノブなどを回す動作で痛みが強くなります。
親指をひねる動作と強い握りが組み合わさるため、母指CM関節へ大きな負担がかかります。

握ると痛む

包丁、はさみ、ペン、工具、ハンドルなどを握る際に痛みます。
痛みのため、握力やつまむ力が低下したように感じる場合があります。

親指の付け根の腫れ

関節周囲に炎症が起こると、親指の付け根が腫れることがあります。
関節を押した際に強い圧痛がみられる場合があります。

動かしにくさ

親指を大きく開く、手のひらから離す、ほかの指へ向かい合わせる動きが制限されます。
手のひらを広げにくい、コップなどの大きな物をつかみにくいと感じることがあります。

親指の付け根の変形

亜脱臼が進行すると、親指の付け根が外側へ張り出して見えることがあります。
親指が手のひら側へ入り込み、親指と示指の間を十分に広げられなくなる場合があります。

MP関節の反り返り

CM関節が動かしにくくなると、その動きを補うため、親指の第2関節にあたるMP関節が過度に反り返ることがあります。
親指全体がジグザグ状に見える変形につながる場合があります。

クリック音・擦れる感覚

関節面が不整になると、親指を動かした際にクリック音やゴリゴリした感覚が現れることがあります。

安静時痛・夜間痛

進行した関節症や強い滑膜炎では、手を使っていないときにも痛むことがあります。
夜間にうずくような痛みを感じる場合もあります。

しびれについて

母指CM関節症そのものでは、通常、指のしびれは中心的な症状ではありません。
親指、示指、中指などにしびれがある場合には、手根管症候群や頸椎疾患など、神経の病気も確認します。

母指CM関節症の進行

母指CM関節症は、一般的に慢性的に経過します。
初期には、親指を強く使った後に痛む程度でも、徐々に痛む動作が増えることがあります。
一方、X線上の変形が進行していても、炎症が落ち着くことで痛みが軽くなる方もいます。
画像上の変形と痛みの強さは、必ずしも一致しません。
治療方針は、X線の進行度だけでなく、痛みの強さ、親指の可動域、つまむ力、関節の安定性、日常生活への影響、仕事や趣味で必要な動作、保存療法に対する反応などを踏まえて決定します。

画像上の進行度

初期

関節の隙間が比較的保たれていますが、関節のゆるみや軽度の亜脱臼がみられることがあります。
動作時痛はあっても、明らかな骨棘は少ない段階です。

軽度から中等度

関節裂隙が狭くなり、小さな骨棘や軟骨下骨の硬化が現れます。
つまみ動作やひねり動作で痛みが強くなります。

進行期

関節裂隙が大きく狭くなり、骨棘、骨嚢胞、亜脱臼などが明らかになります。
親指の付け根に変形が現れ、可動域やつまみ力が低下します。

高度進行期

母指CM関節だけでなく、大菱形骨と舟状骨の間にあるSTT関節など、周囲の関節にも変形性関節症が広がることがあります。
手術方法を検討する際には、周囲の関節が保たれているかも確認します。

ほかの病気との違い

ドゥ・ケルバン病との違い

ドゥ・ケルバン病は、手首の親指側にある腱鞘の炎症です。
親指を広げる、手首を小指側へ曲げる動作で、橈骨茎状突起付近に痛みが現れます。
母指CM関節症では、より親指の付け根に近い関節を押したり、親指をひねったりすると痛みます。
両方を同時に発症する場合もあります。

ばね母指との違い

ばね母指では、親指の付け根の手のひら側に痛みやしこりが現れます。
親指を曲げ伸ばしすると引っかかりやばね現象が生じます。
母指CM関節症では、つまむ、ひねる動作による関節痛が中心です。

母指MP関節靱帯損傷との違い

親指のMP関節を横方向へ強く曲げた後に痛みや不安定感がある場合には、側副靱帯損傷が疑われます。
スポーツ外傷や転倒などをきっかけに発症します。
母指CM関節症とは痛む関節の位置が異なります。

STT関節症との違い

舟状骨、大菱形骨、小菱形骨で構成されるSTT関節にも変形性関節症が起こることがあります。
手首の親指側の痛みが中心となり、母指CM関節症と同時に発症する場合もあります。
X線検査などで、どの関節に変形があるかを確認します。

舟状骨骨折・偽関節との違い

転倒後に親指側の手首が痛む場合には、舟状骨骨折の可能性があります。
舟状骨骨折は初回のX線で確認しにくい場合があるため、外傷後の痛みでは注意が必要です。

関節リウマチとの違い

関節リウマチでは、左右の手指や手首の複数関節に腫れや痛みが現れます。
朝のこわばりが長時間続く場合や、ほかの関節にも症状がある場合には、血液検査などを検討します。

手根管症候群との違い

手根管症候群では、親指、示指、中指、環指の一部にしびれが現れます。
母指球筋が弱くなると、親指とほかの指を向かい合わせにくくなることがあります。
母指CM関節症と手根管症候群を同時に発症する場合もあります。

ガングリオンとの違い

親指の付け根付近にガングリオンができると、しこりや動作時痛が現れることがあります。
超音波検査などで、液体を含むしこりと関節の変形を区別します。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

症状の始まり方、痛む動作、生活への影響などを確認します。
主に次のような点をお伺いします。
・いつから痛みがあるか
・親指のどの部分が痛むか
・瓶のふたや鍵を回すと痛むか
・物をつまむと痛むか
・包丁、はさみ、ペンなどを握ると痛むか
・親指を開きにくいか
・安静時や夜間にも痛むか
・親指の付け根が変形してきたか
・指にしびれがあるか
・転倒や親指の外傷歴があるか
・ほかの指や手首にも痛みがあるか
・装具、薬、注射などの治療歴があるか

視診・触診

親指の付け根の腫れ、骨性の隆起、亜脱臼、親指全体の変形などを確認します。
CM関節を押した際の圧痛や、周囲の腱・関節にも痛みがないかを調べます。
MP関節が反り返っていないか、親指と示指の間を十分に広げられるかも確認します。

関節可動域検査

親指を手のひらから垂直方向へ開く、示指から離すように横へ開く、小指の付け根へ向かい合わせる、手のひら側へ戻すなどの動きを確認し、左右を比較します。
痛みが強い場合には、無理に限界まで動かしません。

つまみ力・握力の検査

親指と示指でつまむ力や、手全体で握る力を確認します。
痛みのため力を入れられないのか、親指の変形や筋力低下が関係しているのかを評価します。

疼痛誘発検査

第1中手骨を大菱形骨へ向かって軽く押しながら回し、普段と同じ痛みや擦れる感覚が現れるかを確認することがあります。
この検査だけで診断するのではなく、痛みの位置やX線所見などと合わせて判断します。
自宅で強く何度も行うと、関節の炎症が悪化する可能性があります。

X線検査

X線検査は、母指CM関節症の診断において中心となる検査です。
次のような変化を確認します。
・関節裂隙の狭小化
・骨棘
・軟骨下骨硬化
・骨嚢胞
・第1中手骨の亜脱臼
・大菱形骨の変形
・STT関節など周囲の関節症
・過去の骨折や外傷後変形
症状の強さとX線所見は、必ずしも一致しません。

超音波検査

超音波検査では、関節や周囲の軟部組織を観察できます。
次のような状態の評価に役立つ場合があります。
・関節液の貯留
・滑膜炎
・骨棘
・関節の動的な不安定性
・ドゥ・ケルバン病などの腱鞘炎
・ガングリオン
・関節内注射を行う際の周囲組織
ただし、関節軟骨の摩耗や骨全体の配列を評価する中心的な検査はX線です。

CT検査

CT検査では、関節面や骨棘、亜脱臼、周囲の関節症などを詳しく確認できます。
過去の骨折や外傷後変形が疑われる場合、複数の関節に変形がある場合、X線だけでは関節症の範囲を判断しにくい場合、手術方法を検討している場合などに行います。
CT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

MRI検査

典型的な母指CM関節症では、MRI検査が必要になることは多くありません。
次のような場合に検討します。
・X線所見と症状が一致しない
・靱帯、腱、軟骨などの詳しい評価が必要である
・不顕性骨折や骨壊死が疑われる
・腫瘍や感染症との区別が必要である
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

血液検査

母指CM関節症そのものを血液検査だけで診断することはできません。
複数の関節が腫れている、朝のこわばりが長く続く、急に関節が赤く腫れた、発熱を伴うなどの場合には、関節リウマチ、感染症、結晶誘発性関節炎などを確認するため、必要に応じて血液検査を行います。

母指CM関節症に対する治療

治療の目的は、痛みと炎症を軽減し、親指の機能を保ち、日常生活への影響を減らすことです。
形成された骨棘や失われた関節軟骨を、薬やマッサージだけで完全に元の状態へ戻すことはできません。
X線で変形が確認されても、痛みや生活への支障が少なければ、すぐに手術を行う必要はありません。
まずは保存療法を行い、症状の変化をみます。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックにおいては下記の治療を提案しています。

親指への負担を調整する

痛みを生じる強いつまみ、握り、ひねり動作を一時的に減らします。
日常生活では、次のような工夫を行います。
・瓶やペットボトルには開栓補助具を使う
・鍵に大きな持ち手を付ける
・洗濯ばさみは弱い力で開けられるものを使う
・包丁や工具の柄を太くする
・重い物は両手で持つ
・荷物を親指と指だけでつままない
・スマートフォンは両手で操作する
・筆記用具へ太いグリップを付ける
・連続作業の途中で休憩を取る
手を完全に使わない必要はありません。
痛みを我慢して同じ動作を繰り返さないことが大切です。

装具療法

母指CM関節を支える装具を使用します。
親指の付け根を安定させながら、指先や手首をある程度動かせる装具が一般的です。
症状が強い時期、家事や仕事など負担の大きい動作を行うとき、就寝時などに使用することがあります。
装具を長時間強く締めすぎると、皮膚障害、しびれ、関節のこわばりなどを起こす場合があります。
指先が冷たい、白い、青紫色になる場合には装具を外してください。

冷却・温熱

使用後に腫れや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤を短時間当てると痛みが軽くなることがあります。
慢性的なこわばりが中心で、赤みや熱感がない場合には、入浴などで温めると動かしやすくなることがあります。
急激な赤み、強い熱感、発熱がある場合には、自己判断で温めず受診してください。

外用薬・鎮痛薬

痛みに対して、塗り薬、貼り薬、内服の消炎鎮痛薬などを使用することがあります。
薬の種類は、胃腸、腎臓、心臓の状態や、ほかに服用している薬などを考慮して選択します。
薬物療法は痛みを軽減するためのものであり、関節の亜脱臼や変形を修復する治療ではありません。

リハビリテーション

母指CM関節を安定させる筋肉の使い方や、関節へ負担をかけにくい動作を練習します。
痛みが強くない範囲で、親指と示指の間を広げる運動や、親指をほかの指へ向かい合わせる運動などを行います。
関節を強く押し込む、反動をつける、痛みを我慢して大きく動かすといった方法は避けます。
進行した変形を、力を加えて元の位置へ戻そうとしないでください。

関節内ステロイド注射

装具、活動量の調整、薬物療法などで十分に改善しない場合には、母指CM関節内へステロイドと局所麻酔薬などを注射することがあります。
滑膜炎を抑え、一時的な痛みの軽減を目指します。
注射によって失われた軟骨が再生したり、亜脱臼が元へ戻ったりするわけではありません。
効果が一時的で、再び痛みが現れることもあります。
注射には、感染、出血、皮下出血、皮膚の色調変化、皮下脂肪の萎縮、腱・神経損傷、一時的な痛みの増加、糖尿病患者さんの一時的な血糖上昇などのリスクがあります。
短期間に何度も繰り返すことは避け、症状と治療歴を踏まえて慎重に判断します。

体外衝撃波治療

慢性的な痛みが続く場合には、体外衝撃波治療を検討することがあります。
当院では数多くの母指CM関節症に対して治療を行っております。
治療中や治療後に一時的な痛み、赤み、皮下出血などが生じることがあります。
すべての母指CM関節症に同じ効果が得られるわけではありません。
体外衝撃波治療は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法

PRP療法は、患者さんご自身の血液を採取し、血小板を多く含む成分を抽出して、母指CM関節内へ注入する治療です。
長期間の保存療法を行っても症状が改善しない母指CM関節症に対して、検討することがあります。
PRP療法の効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。
注射後には、一時的に痛みや腫れが強くなることがあります。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。

PRP療法について詳しくはコチラ

手術治療・専門医療機関への紹介

一定期間の保存療法で改善しない、強い痛みや安静時痛・夜間痛が続く、つまむ・握る・ひねる動作が困難、仕事や家事への支障が大きい、亜脱臼や変形が進行している、親指を十分に開けない、MP関節の反り返りが強い、装具や注射の効果が不十分である場合には、手術治療を検討します。
手術が必要と判断した場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関へご紹介します。

自宅でのセルフケア

補助具を利用する

瓶やふたには開栓補助具を使用し、鍵には太いカバーを付けます。
洗濯ばさみは力の弱いものを選び、包丁や工具、筆記具の柄には太いグリップを付けると、親指へかかる負担を減らせます。

持ち方を工夫する

重い物は両手で持ち、買い物袋を親指と指だけで挟まないようにします。
スマートフォンは片手で長時間操作せず、両手やスタンドを使用します。

痛みが強い時期は保護する

痛みが強い時期には装具で母指CM関節を保護します。
装具は強く締めすぎず、指先の色、冷たさ、しびれなどを確認してください。

痛みのない範囲で動かす

症状が落ち着いている時期には、痛みのない範囲で親指をゆっくり開いたり、ほかの指へ向かい合わせたりします。
痛みを我慢して大きく動かしたり、反動をつけたりしないでください。

避けたほうがよいこと

親指の付け根を強く揉む、痛みを確認するため何度も関節をひねる、変形した親指を力で元の位置へ戻す、装具を強く締めすぎるといった行為は避けてください。

次のような症状がある場合には早めに受診してください

・親指の付け根が痛む
・親指の付け根を押すと痛い
・瓶やペットボトルのふたを開けると痛い
・鍵やドアノブを回すと痛い
・洗濯ばさみや小さな物をつまむと痛い
・包丁、はさみ、ペンなどを握ると痛い
・親指を大きく開きにくい
・つまむ力が弱くなった
・親指の付け根が出っ張ってきた
・親指のMP関節が反り返ってきた
・装具や市販薬で十分に改善しない
・数週間以上痛みが続いている

速やかな受診が必要な症状

次のような場合には、骨折、感染、靱帯損傷、炎症性関節炎などの可能性があります。
・転倒や外傷後から強く痛む
・親指や手首が大きく腫れている
・親指が明らかに変形している
・親指をほとんど動かせない
・関節が急に赤く熱を持った
・安静時にも激しく痛む
・発熱や悪寒を伴っている
・傷や咬み傷の後から腫れてきた
・親指、示指、中指などに強いしびれがある
・指先が白い、青紫色になっている
・指先が冷たい、感覚が低下している
・複数の関節が左右対称に腫れている
・朝のこわばりが長時間続く
外傷後の変形、強い腫れ、指先の血流・感覚異常がある場合には、親指を無理に動かさず、速やかに医療機関を受診してください。

母指CM関節症でお悩みの方へ

母指CM関節症では、親指の付け根の痛み、腫れ、つまみ力の低下、動かしにくさ、変形などが生じます。
特に、瓶のふたを開ける、鍵を回す、洗濯ばさみをつまむ、包丁やはさみを使うなど、日常の動作で痛みが現れやすくなります。
親指の付け根が痛くても、ドゥ・ケルバン病、ばね母指、STT関節症、舟状骨骨折、関節リウマチ、手根管症候群、ガングリオンなど、別の病気が原因となっていることがあります。
当院では、痛みの位置、関節の腫れや変形、可動域、つまみ力などを確認し、X線検査や超音波検査を用いて評価します。
必要に応じてCT、MRI、血液検査などを行い、腱鞘炎、ガングリオン、骨折、そのほかの関節疾患との区別を行います。CT・MRI検査が必要な場合には、提携医療機関をご案内します。
治療では、親指への負担の調整、装具、薬物療法、リハビリテーション、症状に応じた関節内注射、体外衝撃波治療、PRP療法などを検討します。
保存療法で改善しない場合や変形が進行している場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関で手術治療を検討します。
親指の付け根の痛みが数週間以上続く、つまむ・握る・ひねる動作が難しい、変形が進んできたなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫