変形性手関節症
変形性手関節症について
変形性手関節症(へんけいせいてかんせつしょう)は、手首を構成する関節の軟骨がすり減り、骨や関節周囲にも変化が起こることで、痛み、腫れ、こわばり、動かしにくさなどを生じる病気です。
手首は、前腕の橈骨・尺骨と、8個の手根骨によって構成される複雑な関節です。
一つの関節だけで動いているわけではなく、複数の小さな関節が連動することで、手首の曲げ伸ばし、左右への傾き、前腕の回旋などを行っています。
健康な関節では、骨の表面を滑らかな関節軟骨が覆っています。
関節軟骨は骨同士の摩擦を減らし、手首へ加わる衝撃を吸収する役割を持っています。
変形性手関節症では、この軟骨が徐々に摩耗して薄くなり、関節の隙間が狭くなります。
進行すると骨同士が接触しやすくなり、骨棘、軟骨下骨の硬化、骨嚢胞、関節の変形などが生じます。
手首の関節症は、明らかな原因なく加齢などを背景に起こる場合もありますが、過去の骨折や靱帯損傷などに続いて発症することがあります。
特に、橈骨遠位端骨折後の変形、舟状骨骨折の偽関節、舟状月状骨間靱帯損傷などは、手根骨の並びや動き方を変化させ、数年から数十年かけて関節症を進行させることがあります。
軽症では、手を使ったときだけ痛む、手首が少し硬いといった症状にとどまります。
進行すると、安静時痛や夜間痛が現れ、手首の可動域や握力が低下し、仕事や家事にも支障をきたします。
治療では、関節の状態と症状に応じて、活動量の調整、装具、薬物療法、注射、リハビリテーションなどを行います。
保存療法で痛みを十分に抑えられず、生活への影響が大きい場合には、傷んだ関節の範囲に応じた手術を検討します。
手関節の構造
手関節は、前腕と手をつなぐ関節です。
主に次の骨によって構成されています。
・前腕の親指側にある橈骨
・前腕の小指側にある尺骨
・手首にある8個の手根骨
手根骨は、前腕側と手のひら側の2列に分かれて並んでいます。
前腕に近い列には、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨があります。
手のひらに近い列には、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨があります。
これらの骨同士は、複数の靱帯によってつながれています。
手首を動かす際には、橈骨と手根骨の間だけでなく、手根骨同士の関節も連動して動きます。
一つの骨折や靱帯損傷によって手根骨の配列が崩れると、特定の関節面へ負担が集中し、軟骨の摩耗が進みやすくなります。
変形性手関節症で起こる変化
関節軟骨の摩耗
骨の表面を覆う関節軟骨が薄くなり、表面が不整になります。
軟骨自体には血流が乏しく、いったん大きく失われると、元の正常な状態へ完全に戻すことは困難です。
関節裂隙の狭小化
X線検査では軟骨そのものは直接写りません。
軟骨が薄くなると、骨と骨の間の隙間が狭く見えるようになります。
骨棘
関節の縁に、骨のとげのような骨棘が形成されます。
骨棘が大きくなると、手首の動きを妨げたり、腱や周囲組織を刺激したりすることがあります。
軟骨下骨硬化
軟骨の下にある骨へ負担が集中し、骨が硬く見えるようになります。
骨嚢胞
関節面の下に、小さな空洞状の変化が形成されることがあります。
滑膜炎
関節を包む滑膜に炎症が起こり、関節液が増えることがあります。
関節が腫れる、熱を持つ、動かすと痛むといった症状の原因になります。
関節の変形・不安定性
手根骨の並びが崩れたり、骨が一部つぶれたりすると、手首の形や動き方が変化します。
進行すると、特定の方向へ手首が傾く、手根骨がずれる、関節が不安定になることがあります。
変形性手関節症の原因
加齢による変化
年齢とともに関節軟骨の水分量や弾力が低下し、繰り返す負担によって徐々に摩耗することがあります。
ただし、X線で関節症が確認されても、必ずしも強い痛みがあるとは限りません。
画像所見だけでなく、症状や生活への影響を合わせて治療方針を判断します。
橈骨遠位端骨折後
橈骨遠位端骨折で関節面に段差が残った場合や、橈骨が短くなった状態で治癒した場合には、手首へ加わる力の分布が変化します。
骨折から数年経過した後に、手首の痛み、可動域制限、握力低下などが現れることがあります。
関節面に及ぶ骨折では、適切に治療されていても、将来的に関節症を生じる可能性があります。
舟状骨骨折・舟状骨偽関節
舟状骨は、手根骨の動きを連携させる重要な骨です。
舟状骨骨折が治癒せず偽関節になると、手根骨の配列が徐々に崩れ、特定の関節へ負担が集中します。
これによって進行する関節症を、SNAC wristと呼ぶことがあります。
SNACは「Scaphoid Nonunion Advanced Collapse」の略で、舟状骨偽関節に伴う進行性の手根骨配列異常を意味します。
舟状月状骨間靱帯損傷
舟状骨と月状骨をつなぐ舟状月状骨間靱帯が断裂すると、2つの骨が別々に動くようになり、手根骨の配列が崩れます。
時間の経過とともに関節軟骨が摩耗し、進行性の手関節症を起こすことがあります。
これをSLAC wristと呼びます。
SLACは「Scapholunate Advanced Collapse」の略です。
転倒や手首の捻挫後に痛みが続いていたものの、当初は靱帯損傷と診断されず、数年後に関節症として発見される場合があります。
手根骨の脱臼・骨折
月状骨周囲脱臼、手根骨骨折などによって関節面や手根骨配列が損傷すると、外傷後関節症へ進行することがあります。
キーンベック病
キーンベック病では、手根骨の一つである月状骨への血流が低下し、骨が壊死・圧潰することがあります。
月状骨の形が崩れると、手根骨全体の配列が変化し、周囲の関節に変形性関節症が進行する場合があります。
手関節の慢性不安定症
複数の靱帯が損傷して手根骨の動きが不安定になると、正常ではない位置で骨同士が接触し、軟骨が傷みやすくなります。
感染後
化膿性手関節炎などによって関節軟骨が損傷すると、感染が治った後も変形や関節症が残ることがあります。
炎症性疾患
関節リウマチ、乾癬性関節炎などの炎症性疾患では、滑膜炎によって軟骨、骨、靱帯が傷つきます。
これらは一般的な変形性関節症とは病態や治療が異なります。
両手首や複数の関節が腫れている場合、朝のこわばりが長く続く場合には、炎症性関節炎を確認する必要があります。
結晶誘発性関節炎
痛風や偽痛風による炎症を繰り返すことで、手関節の軟骨や骨に変化が生じる場合があります。
急に赤く腫れ、安静時にも激しく痛む場合には、通常の変形性関節症とは異なる治療が必要です。
SLAC wristについて
SLAC wristは、舟状月状骨間靱帯の損傷をきっかけとして、手根骨の配列が徐々に崩れ、関節症が進行する状態です。
初期には、舟状骨と橈骨の間の一部に関節症が起こります。
進行すると、橈骨と舟状骨の関節、月状骨と有頭骨の関節へ変化が広がります。
初期には手首を反らす、手をつく、重い物を持つといった動作で痛みが出ます。
進行すると、手首の動きが悪くなり、握力が低下します。
傷んでいる関節の範囲によって、選択できる手術方法が異なります。
SNAC wristについて
SNAC wristは、治癒していない舟状骨骨折を背景として、手根骨の配列が崩れ、関節症が進行する状態です。
舟状骨の偽関節部で骨が動き続けることにより、橈骨と舟状骨、舟状骨と有頭骨などの関節に負担が集中します。
舟状骨骨折を早期に治療し、骨癒合を得ることが、関節症の予防につながります。
すでに関節症が進行している場合には、舟状骨の骨接合だけでは十分に改善しないことがあります。
関節症の範囲を確認し、部分固定術や近位手根列切除術などを検討します。
主な症状
手首の痛み
最も代表的な症状です。
痛みの場所は、傷んでいる関節によって異なります。
手首の中央、手の甲側、親指側、小指側などに痛みが現れることがあります。
初期には手を使った後だけ痛み、休むと軽くなることがあります。
進行すると、軽い家事や事務作業でも痛みが現れます。
動かし始めの痛み・こわばり
しばらく手を休めた後に動かし始めると、手首がこわばり、痛むことがあります。
少し動かすと軽くなる場合もあります。
手首の可動域制限
手首を反らす、曲げる、親指側・小指側へ傾ける動きが悪くなります。
次のような動作が難しくなることがあります。
・手のひらを床や机につく
・顔や髪を洗う
・服のボタンやファスナーを扱う
・物を持ち上げる
・ドアノブを回す
・スポーツでラケットやクラブを振る
手首の腫れ
関節内に炎症が起こると、手首が腫れることがあります。
症状が強くなったり軽くなったりを繰り返す場合があります。
握力低下
手首の痛みや不安定性により、十分な力で物を握れなくなります。
瓶のふたを開ける、工具を使う、重い物を持つといった動作が難しくなります。
引っかかり・クリック音
骨棘や関節面の不整、手根骨の不安定性などによって、手首を動かした際に引っかかりや音を感じることがあります。
音だけで治療が必要とは限りませんが、痛みや動かしにくさを伴う場合には評価が必要です。
手首の変形
進行すると手根骨の配列が崩れ、手首の形が変化することがあります。
橈骨遠位端骨折後では、過去の骨折変形が外見上も確認できる場合があります。
安静時痛・夜間痛
進行した関節症や強い滑膜炎では、手を使っていないときにも痛むことがあります。
夜間に痛みで目が覚める場合もあります。
急激な強い安静時痛、赤み、発熱を伴う場合には、感染や結晶誘発性関節炎を除外する必要があります。
しびれ
変形性手関節症そのものでは、通常、しびれは中心的な症状ではありません。
腫れ、滑膜炎、骨の変形などによって正中神経が圧迫されると、手根管症候群を合併することがあります。
親指、示指、中指、環指の親指側にしびれがある場合には、神経の状態も確認します。
変形性手関節症の経過
変形性手関節症は、基本的には慢性的に経過します。
画像上の変化がゆっくり進行していても、症状は一定とは限りません。
手を多く使った時期に痛みや腫れが強くなり、負担を減らすと軽くなることがあります。
X線で関節症が進んでいても、日常生活への支障が少ない方もいます。
反対に、画像上の変化が軽度でも、仕事やスポーツで手首に大きな負担がかかる方では、強い症状が現れる場合があります。
治療は画像の重症度だけではなく、痛み、可動域、握力、仕事や生活への影響を踏まえて決定します。
関節軟骨を完全に元の状態へ戻す治療はありませんが、負担の調整、装具、薬物療法、リハビリテーションなどによって症状を抑え、手の機能を維持できることがあります。
ほかの病気との違い
TFCC損傷との違い
TFCC損傷では、手首の小指側に痛みが現れます。
前腕をひねる、手首を小指側へ傾ける、手をつく動作で痛むことが特徴です。
変形性手関節症でも小指側が痛むことがありますが、X線では関節裂隙の狭小化や骨棘などを確認できる場合があります。
TFCC損傷と関節症を同時に発症している場合もあります。
ドゥ・ケルバン病との違い
ドゥ・ケルバン病では、親指側の手首にある腱鞘が炎症を起こします。
親指を広げる、動かす、手首を小指側へ曲げると痛みます。
変形性手関節症では関節内部の痛みや可動域制限が中心です。
母指CM関節症との違い
母指CM関節症では、親指の付け根にある関節の軟骨がすり減ります。
つまむ、瓶のふたを開ける、鍵を回すといった親指に力を入れる動作で痛みが現れます。
変形性手関節症と母指CM関節症を同時に発症することもあります。
キーンベック病との違い
キーンベック病では、月状骨への血流が低下し、骨の硬化や圧潰が起こります。
手首中央の痛みや可動域制限が現れ、進行すると変形性手関節症を伴うことがあります。
X線、CT、MRIなどで月状骨の状態を確認します。
関節リウマチとの違い
関節リウマチでは、免疫反応によって滑膜炎が起こります。
左右両方の手首や複数の手指関節が腫れ、朝のこわばりが長く続くことがあります。
変形性関節症とは治療が異なり、抗リウマチ薬などによる全身的な治療が必要です。
痛風・偽痛風との違い
痛風や偽痛風では、急に手首が赤く腫れ、激しく痛むことがあります。
変形性手関節症がある方に、結晶誘発性関節炎が重なって起こる場合もあります。
必要に応じて関節液検査や血液検査を行います。
感染性手関節炎との違い
感染性手関節炎では、細菌感染によって関節に膿がたまり、急速に関節が破壊される可能性があります。
強い安静時痛、赤み、熱感、発熱、傷や注射後の腫れなどがある場合には、緊急の治療が必要です。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
問診
痛みが始まった時期、過去の外傷、生活への影響などを確認します。
主に次のような点についてお伺いします。
・いつから痛みがあるか
・手首のどの部分が痛むか
・転倒や捻挫、骨折の経験があるか
・過去に手首の手術を受けたことがあるか
・手をつくと痛むか
・物を持つ、握ると痛むか
・手首を動かすと引っかかりや音があるか
・安静時や夜間にも痛むか
・手首の腫れを繰り返しているか
・仕事やスポーツで手首をよく使うか
・朝のこわばりがあるか
・ほかの関節にも痛みや腫れがあるか
・発熱、赤み、熱感があるか
・指にしびれや筋力低下があるか
・これまでに装具、注射、リハビリを受けたか
視診・触診
手首の腫れ、変形、骨の突出、皮膚の赤みなどを確認します。
橈骨手根関節、手根中央関節、舟状月状骨間、遠位橈尺関節などを触診し、痛みの場所を確認します。
腱鞘炎やガングリオンなど、関節以外に痛みの原因がないかも評価します。
関節可動域検査
手首の次の動きを左右で比較します。
・手の甲側へ反らす背屈
・手のひら側へ曲げる掌屈
・親指側へ傾ける橈屈
・小指側へ傾ける尺屈
・手のひらを上へ向ける回外
・手のひらを下へ向ける回内
痛みが強い場合には、無理に限界まで動かしません。
握力・つまみ力検査
左右の握力やつまむ力を比較します。
痛みによる筋力低下なのか、腱や神経の障害を伴っているのかを確認します。
関節安定性検査
舟状月状骨間靱帯や遠位橈尺関節などに不安定性がないかを確認します。
骨を動かした際に痛み、異常な動き、クリックなどが現れるかを評価します。
強い炎症や急性外傷がある場合には、無理に検査しません。
神経学的検査
親指から小指までの感覚、親指や指を動かす力などを確認します。
手根管症候群などを合併していないかを評価します。
X線検査
X線検査は、変形性手関節症の診断と進行度の評価において中心となる検査です。
主に次の所見を確認します。
・関節裂隙の狭小化・消失
・骨棘
・軟骨下骨硬化
・骨嚢胞
・手根骨の配列異常
・舟状骨偽関節
・月状骨の圧潰
・橈骨遠位端骨折後の変形
・遠位橈尺関節の変形
・関節内遊離体
・過去の骨折や脱臼
正面、側面、斜位など、複数の方向から撮影します。
靱帯損傷や不安定性が疑われる場合には、手を握った状態や特定の姿勢で撮影し、手根骨の間隔や動きを確認することがあります。
X線所見と痛みの強さは、必ずしも一致しません。
CT検査
CT検査では、骨の形や関節面をX線より詳しく確認できます。
次のような場合に検討します。
・関節面の変形を詳しく確認したい
・舟状骨偽関節が疑われる
・過去の骨折変形を評価したい
・手根骨の骨癒合や骨嚢胞を確認したい
・部分固定術などの手術方法を検討している
・X線だけでは関節症の範囲を判断しにくい
CT検査が必要と判断した場合には、対応可能な提携医療機関をご案内します。
超音波検査
超音波検査では、関節周囲の滑膜、腱、神経、ガングリオンなどを観察できます。
次のような状態の評価に役立ちます。
・関節液の貯留
・滑膜炎
・伸筋腱・屈筋腱の腱鞘炎
・腱の摩耗や断裂
・ガングリオン
・正中神経の圧迫
・手首を動かした際の腱や関節の状態
変形性手関節症の骨全体や関節面の状態を評価する中心的な検査はX線やCTです。
超音波検査だけで、関節軟骨の障害範囲や手根骨配列を完全に評価することはできません。
関節内注射を行う場合には、必要に応じて関節、腱、神経、血管、針先を確認しながら行います。
MRI検査
MRI検査では、関節軟骨、骨内部、靱帯、TFCC、腱、滑膜などを詳しく確認できます。
次のような場合に検討します。
・X線で明らかな異常がないが痛みが続く
・舟状月状骨間靱帯などの損傷が疑われる
・キーンベック病が疑われる
・TFCC損傷や軟骨損傷が疑われる
・不顕性骨折や骨壊死を確認したい
・腫瘍、感染症などとの鑑別が必要である
・手術前に関節症の範囲を詳しく確認したい
MRIで軟骨や靱帯の変化が確認されても、それが必ず痛みの原因とは限りません。
診察所見やX線所見などと合わせて判断します。
当院にはMRI装置は設置しておりません。
MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
血液検査
一般的な変形性手関節症では、血液検査に特徴的な異常が出るとは限りません。
次のような場合には、血液検査を検討します。
・両手首や複数の関節が腫れている
・朝のこわばりが長く続く
・関節リウマチなどが疑われる
・急に赤く腫れている
・痛風、偽痛風が疑われる
・発熱や感染症の疑いがある
炎症反応、尿酸値、関節リウマチに関係する項目などを、症状に応じて確認します。
必要に応じて、リウマチ科や内科と連携します。
関節液検査
手首が急激に赤く腫れ、感染症や痛風・偽痛風が疑われる場合には、関節液を採取することがあります。
採取した液体について、細胞数、細菌培養、結晶などを調べます。
変形性手関節症に対する治療
治療方法は、関節症が起きている場所と範囲、痛み、可動域、仕事・生活への影響などによって決定します。
X線で関節症が確認されても、症状が軽ければ直ちに手術を行う必要はありません。
まず、活動量の調整、装具、薬物療法、リハビリテーションなどの保存療法を行います。
保存療法
活動量・動作の調整
痛みを生じる動作や、手首へ大きな負担をかける作業を一時的に減らします。
次のような動作で症状が強くなる場合があります。
・手のひらをついて身体を支える
・重い物を片手で持つ
・強く握りながら手首を動かす
・工具を使って手首を繰り返しひねる
・ラケット、クラブ、バットを強く振る
・腕立て伏せやプランクをする
・手首を限界まで反らす
・長時間同じ姿勢で手首を使う
手をまったく使わないようにするのではなく、痛みの出る負荷を減らしながら、必要な動きを維持することが大切です。
装具療法
手首を安定させるサポーターや装具を使用します。
装具によって痛みのある関節の動きを減らし、日常生活や作業時の負担を軽減します。
症状が強い時期や、負担の大きい作業時に使用することがあります。
長期間常に固定すると、手首のこわばりや筋力低下が進む可能性があります。
使用時間や固定する角度は、症状と生活に合わせて調整します。
装具を強く締めすぎると、手指の腫れ、しびれ、皮膚障害、血流障害などを起こすことがあります。
冷却・温熱
使用後に手首が腫れ、熱を持っている場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てると、痛みが軽くなることがあります。
慢性的なこわばりが中心で熱感がない場合には、入浴などで温めると動かしやすくなることがあります。
赤みや強い腫れ、感染の疑いがある場合には、自己判断で温めず医療機関を受診してください。
薬物療法
痛みや炎症に対して、消炎鎮痛薬や外用薬を使用します。
薬の種類は、胃腸・腎臓・心血管系の状態や、ほかに服用している薬を確認して選択します。
薬物療法は痛みを軽減するためのものであり、失われた関節軟骨や手根骨の配列を元へ戻す治療ではありません。
関節内ステロイド注射
装具や薬物療法で十分に改善しない場合には、痛みの原因となっている関節へステロイドと局所麻酔薬などを注射することがあります。
ステロイドによって滑膜炎を抑え、痛みを軽減することを目的とします。
一定期間症状が軽くなる場合がありますが、効果は一時的であることも多く、関節症そのものを治す治療ではありません。
注射には、感染、出血、皮膚や皮下脂肪の萎縮、腱・神経損傷、血糖値上昇などのリスクがあります。
必要に応じて、超音波で関節、神経、腱、血管、針先を確認しながら行います。
短期間に何度も注射を繰り返すことは、軟骨や周囲組織への影響を考慮して慎重に判断します。
PRP療法について
変形性手関節症に対するPRP療法は、有効なケースも存在しています。
PRP療法によって、失われた関節軟骨、骨折後の変形、靱帯断裂による手根骨配列異常を元へ戻すことはできません。
PRP療法について詳しくはコチラ
リハビリテーション
変形性手関節症のリハビリテーションでは、痛みを悪化させずに可動域と筋力を維持し、日常生活で手首へ加わる負担を減らします。
関節可動域訓練
痛みが強くない範囲で、手首の曲げ伸ばしや左右への動きを行います。
無理に限界まで動かす、反対の手で強く押す、反動をつけるといった方法は避けます。
痛みや腫れが強い時期には、可動域訓練の量を減らします。
前腕の回旋運動
手のひらを上・下へ返す運動を行います。
遠位橈尺関節にも関節症や不安定性がある場合には、回旋運動で痛みが出ることがあります。
症状に応じて範囲と回数を調整します。
握力・前腕筋力の訓練
痛みが落ち着いてから、柔らかいボールなどを使用し、軽い負荷から握力を回復させます。
手首を安定させる前腕筋群も段階的に鍛えます。
強く握りすぎる、重いダンベルを使用する、翌日まで痛みが残るような運動は避けます。
装具の調整
仕事や家事で必要な動きを妨げすぎず、痛みのある方向の動きを制限できる装具を検討します。
市販品で十分な場合もありますが、変形や症状によっては個別に作製した装具が適することがあります。
生活・仕事動作の指導
手首へ集中している負担を、肘、肩、両手、体幹へ分散させます。
次のような工夫を行います。
・重い物を両手で持つ
・荷物を身体へ近づけて持つ
・太い柄の道具を使用する
・電動工具や開栓補助具を利用する
・作業台や椅子の高さを調整する
・手首を曲げたまま力を入れない
・連続作業の途中に休憩を入れる
・手をつかずに立ち上がれる環境を整える
手術治療・専門医療機関への紹介
次のような場合には手術を検討します。
・十分な保存療法を行っても強い痛みが続く
・安静時痛や夜間痛が続いている
・手首の可動域が著しく低下している
・握力が低下し、物を持てない
・仕事や家事に大きな支障がある
・手根骨の不安定性が進行している
・骨折後変形が症状の原因になっている
・舟状骨偽関節や靱帯損傷を伴っている
・関節内遊離体や骨棘による引っかかりがある
・神経や腱への障害が起きている
手術方法は、関節症が起きている場所と範囲、残っている関節軟骨、年齢、職業、必要な可動域などによって異なります。
手術を含めた専門的な治療が必要と判断した場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関へご紹介します。
手術後のリハビリテーション
手術後の固定期間と運動開始時期は、行った手術によって大きく異なります。
関節鏡手術では比較的早く動かせる場合がありますが、部分固定術、全固定術、骨切り術などでは、骨癒合を待つ必要があります。
手術後は、次のような順序でリハビリテーションを進めます。
・腫れと傷の管理
・指、肘、肩の運動
・許可された範囲での手首運動
・前腕の回旋運動
・握力と前腕筋力の回復
・日常生活動作の練習
・仕事やスポーツへの段階的復帰
骨が十分に癒合する前に重い物を持つ、手をつく、強くひねると、固定部のずれや金属の破損につながる可能性があります。
手術を行った医療機関の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
手首の痛みがある場合には、痛みを引き起こす負荷を減らします。
日常生活では、次の点を意識しましょう。
・重い物は両手で持つ
・荷物を身体に近づけて持つ
・手首を曲げたまま力を入れない
・床や椅子から手をついて立ち上がらない
・腕立て伏せやプランクを控える
・瓶やペットボトルには開栓補助具を使う
・工具は太い柄や電動式を利用する
・痛みが強い日は作業量を減らす
・市販のサポーターを締めすぎない
・痛みを確認するために何度も手首を動かさない
・強く揉んだり、骨を押したりしない
・医師の許可なく強い筋力トレーニングを行わない
装具を使用して指が冷たい、白い、青紫色になる、しびれが強くなる場合には使用を中止してください。
手首が急に赤く腫れた場合や、安静時にも激しく痛む場合には、単なる関節症の悪化と自己判断せず受診してください。
変形性手関節症でお悩みの方へ
次のような症状がある場合には、変形性手関節症の可能性があります。
・手首を動かすと痛む
・手をついて立ち上がると痛む
・重い物を持つと痛む
・手首の動きが反対側より悪い
・手首が腫れることを繰り返す
・握力が低下した
・手首を動かすと引っかかりや音がある
・以前に手首の骨折や捻挫をしたことがある
・舟状骨骨折が治っていないと言われたことがある
・数週間以上痛みが続いている
・装具や市販薬で十分に改善しない
特に、次のような症状がある場合には、感染、骨折、神経・血管障害などの可能性があります。
・手首が急に赤く大きく腫れた
・安静にしていても激しく痛む
・発熱や悪寒がある
・転倒後から強い痛みがある
・手首が変形している
・指に強いしびれがある
・指を動かせない
・手や指が冷たい
・指が白い、青紫色になっている
・傷や注射部位から液体や膿が出ている
外傷後の変形、強い腫れ、神経・血流の異常がある場合には、手首を無理に動かさず、速やかに医療機関を受診してください。
当院では、問診、触診、可動域・握力・関節安定性の評価、X線検査、超音波検査などによって、関節症の場所と原因を確認します。
超音波検査では、関節液、滑膜炎、腱障害、神経圧迫、ガングリオンなど、関節周囲の状態を評価します。
CT検査、MRI検査、関節鏡、手術を含めた専門的な評価が必要な場合には、提携医療機関や手外科・上肢外科を専門とする医療機関と連携して対応します。
活動量の調整、装具療法、薬物療法、必要に応じた超音波ガイド下注射、リハビリテーションなど、関節症の範囲と生活状況に合わせた治療をご提案します。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫