内側側副靱帯(MCL)損傷

内側側副靱帯(MCL)損傷

内側側副靱帯(MCL)損傷について

内側側副靱帯損傷は、膝関節の内側にある「内側側副靱帯」が強く伸ばされたり、部分的または完全に切れたりした状態です。
内側側副靱帯は、英語の「Medial Collateral Ligament」の頭文字からMCLとも呼ばれます。
大腿骨と脛骨を膝の内側でつなぎ、膝が内側へ折れ込むような動きや、外側から加わる力に対して膝関節を安定させる役割があります。
サッカー、ラグビー、バスケットボール、柔道、スキーなどのスポーツ中に、膝の外側から強い力を受けた場合に起こることが多い外傷です。
相手選手との接触がなくても、足が地面に固定された状態で急に方向転換したり、着地時に膝が内側へ入り込んだりすることで損傷することがあります。
症状は、膝の内側の痛み、腫れ、押したときの痛み、歩行時の不安定感などです。
軽度の損傷では、靱帯が引き伸ばされているものの膝の安定性は保たれています。重度の損傷では靱帯が完全に切れ、膝が内側へぐらつくことがあります。
MCLは膝関節の外側にある靱帯と比べて血流が比較的保たれており、単独損傷であれば、完全断裂であっても装具やリハビリテーションによる保存療法で改善することがあります。
一方、前十字靱帯損傷、後十字靱帯損傷、半月板損傷、骨折などを合併している場合や、靱帯が骨から大きく剥がれている場合、保存療法後も強い不安定性が残る場合には、手術が必要になることがあります。
受傷直後の痛みが軽くなり、普通に歩けるようになっても、靱帯の緩みが残っている可能性があります。
自己判断でスポーツへ復帰すると、膝くずれを起こしたり、半月板や関節軟骨を新たに傷つけたりすることがあるため、膝の安定性と筋力を確認しながら段階的に復帰することが大切です。

膝関節と内側側副靱帯の構造

膝関節は、太ももの骨である「大腿骨」、すねの骨である「脛骨」、膝の前方にある「膝蓋骨」によって構成されています。
膝関節を安定させる主な靱帯には、次の4つがあります。
・前十字靱帯
・後十字靱帯
・内側側副靱帯
・外側側副靱帯
前十字靱帯と後十字靱帯は膝関節の中央にあり、すねの骨が前後へずれる動きや、膝の回旋を制御します。
内側側副靱帯と外側側副靱帯は膝関節の両側にあり、膝が左右へ不自然に動くことを防いでいます。
MCLは、大腿骨の内側から脛骨の内側にかけて走行しています。
膝の外側から力が加わり、膝が内側へ折れ込むような「外反」という動きが生じた際に、MCLがその動きを抑えます。
また、膝をひねる動きに対しても、ほかの靱帯や筋肉と協力して膝関節を安定させています。

浅層MCLと深層MCL

MCLは、主に浅い部分にある浅層MCLと、関節に近い深い部分にある深層MCLから構成されています。
浅層MCLは、大腿骨と脛骨を広い範囲でつなぎ、膝が内側へ折れ込む動きを防ぐ中心的な役割を持っています。
深層MCLは関節包や内側半月板とつながっています。
そのため、強い外反力やひねりが加わった場合には、MCLだけでなく、内側半月板や関節包などを同時に損傷することがあります。

後内側支持機構

膝の内側から後方にかけては、MCLのほかにも、後斜靱帯、関節包、腱など複数の組織が膝を支えています。
これらはまとめて「後内側支持機構」または「後内側複合体」と呼ばれることがあります。
強い外力でMCLと後内側支持機構を同時に損傷すると、膝の内側だけでなく、回旋方向の不安定性が残ることがあります。

内側側副靱帯損傷の重症度

MCL損傷は、靱帯の損傷程度と膝の不安定性に応じて、一般的にGrade 1からGrade 3までの3段階に分類されます。

Grade 1:軽度損傷

靱帯の線維が軽く引き伸ばされ、一部に小さな損傷がある状態です。
靱帯としての連続性は保たれており、膝関節の明らかなぐらつきはありません。
膝の内側に限局した痛みや圧痛がありますが、歩行できることも多く、腫れも比較的軽度です。
軽い捻挫と思ってスポーツを続けてしまう場合がありますが、無理に運動すると痛みが長引くことがあります。

Grade 2:中等度損傷・部分断裂

靱帯の線維が部分的に切れ、MCLが緩くなっている状態です。
膝へ外反方向の力を加えると、健側と比較して軽度から中等度のぐらつきがみられます。
膝の内側に強い痛みや腫れが生じ、歩行、階段、方向転換などが難しくなることがあります。
靱帯の一部は保たれているため、適切な装具とリハビリテーションによって治癒が期待できます。

Grade 3:重度損傷・完全断裂

MCLが完全に切れている、または骨の付着部から剥がれている状態です。
膝へ外反方向の力を加えた際に、明らかなぐらつきがみられます。
受傷直後には強い痛みがありますが、靱帯が完全に切れることで、損傷部を押したときの痛みが予想より軽い場合もあります。
歩行時に膝が抜ける、横方向にぐらつく、踏ん張れないといった不安定感が生じます。
Grade 3であっても、MCL単独損傷であれば保存療法で改善することがあります。
ただし、前十字靱帯や後十字靱帯などを合併している場合、靱帯が治りにくい位置で剥がれている場合、強い不安定性が残る場合には手術を検討します。

内側側副靱帯の主な損傷部位

MCLは、大腿骨側、靱帯の中央部、脛骨側のいずれでも損傷する可能性があります。

大腿骨付着部損傷

MCLが大腿骨の内側に付着している部分で損傷します。
比較的多くみられる損傷部位です。
単独損傷であれば、装具とリハビリテーションによって治癒が期待できることがあります。

靱帯中央部損傷

MCLの中央部分が伸びたり切れたりした状態です。
接触による外傷や強い外反力で生じることがあります。
損傷範囲や不安定性によって、治癒までの期間が異なります。

脛骨付着部損傷

MCLが脛骨へ付着する部分で損傷します。
靱帯が骨から剥がれた後、周囲の腱や軟部組織が間に入り込むと、元の位置で治りにくくなることがあります。
強い不安定性がある場合や、靱帯の位置が大きくずれている場合には、手術が必要となることがあります。

剥離骨折

靱帯が切れる代わりに、MCLの付着部の骨が靱帯に引っ張られて剥がれることがあります。
これを剥離骨折と呼びます。
小児や成長期の方では、靱帯よりも骨や成長軟骨の部分が損傷することがあります。
X線検査で骨片の大きさやずれを確認し、治療方法を判断します。

陳旧性MCL損傷

受傷から長期間が経過し、MCLの緩みや膝の不安定性が残った状態です。
日常生活では問題がなくても、方向転換、坂道、スポーツなどで膝くずれを感じることがあります。
慢性的な不安定性が続くと、内側半月板や関節軟骨へ負担がかかる可能性があります。

内側側副靱帯損傷の主な原因

膝の外側からの接触

MCL損傷の代表的な原因です。
相手選手の身体、タックル、ボール、器具などが膝の外側へ当たり、膝が内側へ折れ込むことでMCLが損傷します。
サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、柔道などで起こることがあります。

方向転換・切り返し動作

足の裏が地面についている状態で身体の向きを急に変えると、膝に外反力と回旋力が加わります。
接触がなくても、MCL、前十字靱帯、半月板などを損傷することがあります。

ジャンプからの着地

着地時に膝が内側へ入り、つま先と膝の方向がずれると、MCLへ強い負担がかかります。
バスケットボール、バレーボール、体操などで起こることがあります。

スキー・スノーボード

スキー板やブーツによって足部が固定された状態で転倒すると、膝に大きな外反力や回旋力が加わります。
MCL単独損傷だけでなく、前十字靱帯損傷や半月板損傷を伴うことがあります。

格闘技・柔道

投げ技や組み合いの際に膝の外側から力が加わったり、足が床に残ったまま身体をひねったりすることで損傷します。

交通事故

自動車や自転車の事故で膝の外側を打った場合や、膝を曲げた状態で強い力を受けた場合に損傷することがあります。
交通事故では、MCLだけでなく、十字靱帯、半月板、骨、神経、血管などを同時に損傷する可能性があります。

転倒・日常生活中の外傷

段差を踏み外す、足を滑らせる、膝をひねって転倒するなど、日常生活中にもMCL損傷が起こることがあります。
骨粗鬆症のある方や高齢者では、靱帯損傷だけでなく骨折を伴っていないか確認することが重要です。

主な症状

膝の内側の痛み

最も多い症状です。
大腿骨側、関節の隙間、脛骨側など、損傷した位置に沿って痛みが現れます。
歩行、方向転換、階段昇降などで痛みが強くなることがあります。

押したときの痛み

損傷したMCLに沿って押すと、限局した強い痛みがあります。
どの部分を押したときに痛むかは、損傷部位を推測する手がかりになります。

膝の内側の腫れ

損傷部周囲に腫れやむくみが生じます。
皮下に近い靱帯であるため、膝の内側に局所的な腫れが目立つことがあります。

皮下出血

靱帯や周囲の血管が損傷すると、膝の内側に紫色の皮下出血が現れることがあります。
受傷直後には目立たず、数日かけて範囲が広がる場合もあります。

膝に水がたまる

MCL単独の軽度損傷では、膝関節内に大量の血液や関節液がたまらないこともあります。
膝全体が短時間で大きく腫れた場合には、前十字靱帯損傷、骨折、膝蓋骨脱臼、関節軟骨損傷などの合併を確認します。

歩行時の痛み

足を地面につけたときや、歩行中に身体を支える際に膝の内側が痛みます。
痛みが強い場合には、足を引きずるような歩き方になります。

膝のぐらつき・不安定感

損傷が強い場合には、膝が横へずれる、内側へ折れ込む、力が抜けるといった感覚が生じます。
特に、方向転換、横歩き、坂道、不整地などで不安定感が目立つことがあります。

膝くずれ

歩行やスポーツ中に膝が突然がくっと崩れることがあります。
MCLだけでなく、前十字靱帯などを合併している可能性があるため、繰り返す場合には詳しい検査が必要です。

膝の曲げ伸ばし制限

痛みや腫れによって膝を完全に伸ばせない、深く曲げられないことがあります。
痛みを避けて動かさない状態が続くと、関節が硬くなることがあります。

方向転換時の痛み

足を床につけたまま身体を回すと、MCLへ外反力や回旋力が加わり、膝の内側に鋭い痛みが出ることがあります。

階段昇降時の痛み

階段を下りる際や、患側の脚で身体を支える際に痛みや不安定感が生じます。

膝の引っかかり

MCL損傷と半月板損傷を合併している場合には、曲げ伸ばしの際に引っかかりを感じることがあります。
膝が一定の角度から動かない場合には、半月板のロッキングなどを確認します。

受傷時の音や感覚

受傷時に「ブチッ」「パキッ」といった音や、膝の内側が裂けるような感覚を覚えることがあります。
音がなかったからといって、靱帯損傷を否定できるわけではありません。

内側側副靱帯損傷に合併する可能性がある損傷

前十字靱帯損傷

膝が内側へ入りながら強くひねられた場合には、MCLと前十字靱帯を同時に損傷することがあります。
受傷時の断裂音、急速な膝の腫れ、膝くずれなどがある場合には、前十字靱帯損傷を確認します。

後十字靱帯損傷

交通事故や強い接触外傷では、MCLと後十字靱帯を同時に損傷することがあります。
複数の靱帯が損傷すると、膝の前後・左右・回旋方向に強い不安定性が生じます。

内側半月板損傷

深層MCLは内側半月板とつながっているため、強い外反力や回旋力によって両方を損傷することがあります。
関節の隙間に沿った痛み、引っかかり、ロッキング、繰り返す水腫などがある場合には、半月板損傷を確認します。

外側半月板損傷

受傷時の膝の位置や回旋方向によっては、外側半月板を損傷することもあります。

関節軟骨損傷

強い衝撃で大腿骨と脛骨がぶつかると、関節軟骨が損傷することがあります。
関節軟骨損傷は、膝の腫れ、痛み、引っかかりなどの原因となります。

骨挫傷

強くひねられた際に、大腿骨や脛骨の内部へ微細な損傷や出血が生じることがあります。
骨挫傷はX線では分かりにくく、MRI検査で確認されます。

骨折・剥離骨折

大腿骨、脛骨、膝蓋骨などの骨折を伴うことがあります。
特に成長期の方や高齢者では、靱帯損傷と思われる外傷でも骨折が隠れている可能性があります。

後内側支持機構損傷

MCLの後方にある靱帯や関節包を損傷すると、外反方向だけでなく回旋方向の不安定性が残ることがあります。

複合靱帯損傷

MCL、前十字靱帯、後十字靱帯など、複数の靱帯が同時に損傷した状態です。
膝関節脱臼を伴うような強い外傷では、血管や神経も損傷している可能性があります。
足が冷たい、色が悪い、脈を触れにくい、しびれがある場合には、緊急の評価が必要です。

内側側副靱帯損傷の経過

急性期

受傷直後から数日程度は、膝の内側に痛み、腫れ、熱感、皮下出血などが生じます。
歩行や膝の曲げ伸ばしが難しくなることがあります。
この時期は、痛みを我慢して膝を強く曲げたり、外反方向へ伸ばしたりしないことが大切です。
必要に応じて装具や松葉杖を使用し、損傷した靱帯を保護します。

修復期

腫れや安静時の痛みが軽くなってくると、膝の曲げ伸ばしや筋力訓練を少しずつ開始します。
MCLへ過度な外反力が加わらないよう、ヒンジ付き装具などを使用することがあります。
痛みが軽くなっても、靱帯の強度が十分に戻っていないことがあります。
自己判断で方向転換、ジャンプ、接触プレーなどを再開しないことが大切です。

回復期

膝の可動域、筋力、バランス、歩行が改善した後、ジョギング、ダッシュ、切り返しなどへ段階的に進めます。
受傷前のスポーツへ戻るには、痛みがないことだけでなく、膝のぐらつきがなく、左右の筋力差が改善していることが必要です。

慢性期

適切に治癒しなかった場合には、膝の内側の痛みや外反方向の不安定性が残ることがあります。
膝くずれを繰り返すと、半月板や関節軟骨に負担がかかり、将来的な変形性膝関節症につながる可能性があります。

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査

問診

受傷時の状況、痛みの場所、膝の腫れ方、不安定感などを確認します。
主に次のような点をお伺いします。
・いつ、どのように受傷したか
・膝の外側から力を受けたか
・足が地面に固定された状態で身体をひねったか
・ジャンプの着地や方向転換で受傷したか
・受傷時の膝は伸びていたか、曲がっていたか
・受傷時に音や断裂感があったか
・受傷後どのくらいで膝が腫れたか
・膝の内側のどの部分が痛むか
・歩行できるか
・膝がぐらつく、抜ける感じがあるか
・膝を完全に伸ばせるか
・膝をどこまで曲げられるか
・膝の引っかかりやロッキングがあるか
・過去に膝をけがしたことがあるか
・スポーツの種目、ポジション、活動頻度
・仕事や日常生活で膝へどの程度負担がかかるか
・しびれや足の冷たさがないか
スポーツをしている方では、競技レベル、復帰時期、今後の目標についても確認します。

視診

膝の腫れ、皮下出血、変形、脚の向きなどを確認します。
膝全体が腫れているのか、MCLに沿った局所的な腫れなのかを確認します。
歩行できる場合には、足を引きずっていないか、膝が内側へ入っていないかなども観察します。

触診

MCLの大腿骨付着部、靱帯中央部、関節裂隙、脛骨付着部などを慎重に触り、痛みの場所を確認します。
内側半月板、鵞足部、骨の突出部などにも圧痛がないかを確認します。
痛みの場所から、MCL損傷とほかの病気を区別します。

外反ストレステスト

膝の外側から内側へ力を加え、膝関節の内側がどの程度開くかを確認する検査です。
反対側の膝と比較し、痛みやぐらつきの程度を評価します。
膝を軽く曲げた状態で内側が開く場合には、主にMCL損傷が疑われます。
膝を伸ばした状態でも大きく開く場合には、MCLだけでなく、十字靱帯や関節包など複数の組織を損傷している可能性があります。
受傷直後は痛みや筋肉の緊張によって正確な評価が難しいことがあります。状態に応じて、日を改めて再評価することがあります。

靱帯・半月板の徒手検査

前十字靱帯、後十字靱帯、外側側副靱帯などに損傷がないかを確認します。
半月板損傷を疑う場合には、膝を曲げ伸ばししながら回旋を加える検査などを行います。
痛みが強い場合には、無理に検査を行わず、画像検査と組み合わせて判断します。

神経・血流の確認

強い外傷や複合靱帯損傷が疑われる場合には、足の感覚、運動、色、温度、脈拍などを確認します。
主に次の点を評価します。
・足や足趾にしびれがないか
・足首や足趾を動かせるか
・足が冷たくないか
・皮膚の色が悪くないか
・足背や足首付近の脈を触れられるか
・爪を押した後に色が戻るか
神経や血管の損傷が疑われる場合には、速やかな専門的治療が必要です。

X線検査

MCLは軟部組織であるため、通常のX線検査では靱帯そのものは写りません。
X線検査では、主に次のような状態を確認します。
・大腿骨や脛骨の骨折
・靱帯付着部の剥離骨折
・成長軟骨の損傷
・関節の位置関係
・変形性膝関節症
・骨棘や石灰化
・そのほかの骨の異常
小児や成長期の方では、MCL損傷に似た症状でも、骨端線損傷を起こしていることがあります。
高齢者では、軽い転倒でも脛骨高原骨折などを生じる場合があります。

ストレスX線検査

膝へ一定の外反方向の力を加えながらX線撮影を行い、内側の関節がどの程度開くかを評価することがあります。
健側と比較することで、MCLの緩みを客観的に評価できます。
急性期に強い痛みがある場合には、必要性を慎重に判断します。

超音波検査

超音波検査では、MCLの腫れ、線維の乱れ、断裂、周囲の血腫などを確認できる場合があります。
主に次のような状態を評価します。
・MCLの肥厚や腫れ
・靱帯線維の連続性
・部分断裂または完全断裂
・大腿骨側、中央部、脛骨側の損傷位置
・靱帯周囲の血腫
・関節液の貯留
・内側半月板周囲の状態
・鵞足部の炎症
・骨表面の剥離
診察室で膝を動かしたり、軽く外反方向の力を加えたりしながら、靱帯の動きをリアルタイムに確認できることが特徴です。
一方、膝関節の深部にある前十字靱帯や半月板、骨挫傷などを超音波だけで十分に評価することはできません。
合併損傷が疑われる場合には、MRI検査が必要です。

MRI検査

MRI検査では、MCLの損傷部位、損傷範囲、断裂の程度などを詳しく評価できます。
同時に、次のような合併損傷も確認します。
・前十字靱帯損傷
・後十字靱帯損傷
・半月板損傷
・関節軟骨損傷
・骨挫傷
・剥離骨折
・後内側支持機構損傷
・関節包損傷
・関節内出血
すべての軽度MCL損傷にMRI検査が必要となるわけではありません。
強い不安定性がある場合、膝が大きく腫れている場合、半月板や十字靱帯の損傷が疑われる場合、保存療法を行っても症状が改善しない場合などに検討します。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。

CT検査

MCL損傷の診断に通常CT検査が必要となることは多くありません。
剥離骨折、脛骨高原骨折、関節内骨折などが疑われ、骨の形や骨片の位置を詳しく確認する必要がある場合に検討します。
CT検査が必要と判断した場合には、対応可能な提携医療機関をご案内します。

内側側副靱帯損傷と区別が必要な病気

膝の内側の痛みは、MCL損傷以外の病気でも生じます。
主に次のような病気や損傷との鑑別が必要です。
・内側半月板損傷
・変形性膝関節症
・鵞足炎
・内側滑膜ひだ障害
・前十字靱帯損傷
・後十字靱帯損傷
・膝蓋骨脱臼
・膝蓋大腿関節症
・脛骨高原骨折
・大腿骨内顆骨壊死
・骨挫傷
・疲労骨折
・関節軟骨損傷
・痛風
・偽痛風
・感染性関節炎
・腰や股関節から生じる関連痛
痛みの場所、受傷状況、膝の不安定性、腫れ方、画像検査などを組み合わせて診断します。

受傷直後・受診までの対応

スポーツや作業を中止する

痛みを我慢して運動を続けると、MCLの損傷が広がったり、半月板や関節軟骨を傷つけたりする可能性があります。
受傷した時点で競技や作業を中止し、膝を保護してください。

膝を保護する

膝が内側へ折れ込む動きや、急な方向転換を避けます。
歩行時に痛みや不安定感が強い場合には、無理に体重をかけず、杖や松葉杖を使用します。

冷却する

受傷直後に腫れや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てます。
皮膚へ直接保冷剤を当てたり、長時間冷やし続けたりしないでください。

軽く圧迫する

弾性包帯やサポーターで軽く圧迫すると、腫れを抑えられる場合があります。
強く締めすぎて、しびれ、冷感、皮膚の色の変化がある場合には、すぐに緩めてください。

脚を高くする

横になる際には、枕やクッションを使って脚を心臓より少し高い位置に保つと、腫れの軽減につながります。

無理に膝を伸ばさない・ひねらない

受傷直後に自分で膝を強く伸ばしたり、内側や外側へひねったりしないでください。
他人に膝を引っ張ってもらうことも避けてください。

強くもまない

受傷直後に強くマッサージすると、出血や腫れが悪化することがあります。
急性期は損傷部を保護し、診断を受けてから適切なケアを行います。

内側側副靱帯損傷に対する治療

治療方法は、次のような点を考慮して決定します。
・損傷の重症度
・損傷した部位
・膝の不安定性
・受傷からの期間
・前十字靱帯や半月板などの合併損傷
・骨折の有無
・年齢
・スポーツや仕事の内容
・患者さんが希望する活動レベル
MCL単独損傷では、Grade 3の完全断裂であっても、装具療法とリハビリテーションによって治癒を目指せることがあります。
一方、複数の靱帯を損傷している場合や、靱帯が治りにくい位置で剥がれている場合には、早期に専門医療機関での評価が必要です。

活動量の調整

痛みや不安定感を引き起こす動作を一時的に控えます。
特に次のような動作には注意が必要です。
・急な方向転換
・横方向への移動
・ジャンプや着地
・接触プレー
・足を固定した状態で身体をひねる動作
・深いしゃがみ込み
・重い物を持った状態での歩行
・痛みを我慢したランニング
膝の状態を確認しながら、段階的に活動量を戻します。

薬物療法

痛みや炎症を軽減するため、消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、外用薬などを使用します。
年齢、胃腸・腎臓・心臓の状態、服用中の薬などを確認して処方します。
薬物療法は痛みを軽減するためのものであり、断裂した靱帯を直接つなぎ直す治療ではありません。

装具療法

MCL損傷では、膝が内側へ折れ込む動きを制限するため、ヒンジ付き膝装具を使用することがあります。
装具によって外反方向の負担を抑えながら、膝の曲げ伸ばしを行えることが特徴です。
損傷程度に応じて、装具を使用する期間や膝を曲げられる角度を調整します。
装具がずれた状態で使用すると、靱帯を十分に保護できなかったり、皮膚を圧迫したりすることがあります。
装着方法やベルトの締め方を確認し、指示された期間を守って使用してください。

松葉杖・杖

歩行時の痛みや不安定感が強い場合には、松葉杖を使用して患側への荷重を減らします。
損傷の程度や痛みに応じて、まったく体重をかけない状態から、部分的に体重をかける状態、通常歩行へと段階的に進めます。
自己判断で急に松葉杖を外さず、歩き方と膝の安定性を確認します。

固定療法

受傷直後に痛みや不安定性が強い場合には、短期間、膝を固定することがあります。
ただし、長期間まったく動かさない状態が続くと、膝関節拘縮や筋力低下が起こりやすくなります。
可能な範囲で早期から膝を動かす機能的治療を行います。

関節液の穿刺・排液

膝関節内に多くの液体や血液がたまり、強い腫れや張りがある場合には、関節液を抜くことがあります。
MCL単独損傷で大量の関節内出血がある場合は多くないため、急激な腫れがある場合には前十字靱帯損傷、骨折、膝蓋骨脱臼などの合併を確認します。

注射療法について

急性のMCL損傷に対して、靱帯へステロイドを直接注射することは一般的な治療ではありません。
ステロイドには強い抗炎症作用がありますが、組織修復への影響も考慮する必要があります。
膝関節内の炎症や、MCLとは別の痛みの原因を伴っている場合には、診察と画像評価を行い、注射の必要性を慎重に判断します。

体外衝撃波治療

体外衝撃波治療は、急性MCL損傷の標準的な治療ではありません。
靱帯付着部周囲の慢性的な痛みや、石灰化を伴う痛みなどが残っている場合に、状態に応じて検討することがあります。
断裂したMCLを直接修復する治療ではなく、すべての方に適応となるわけではありません。
体外衝撃波治療は、保険適用外の自費診療となります。

体外衝撃波治療について詳しくはコチラ

PRP療法

PRP療法は、患者さんご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、損傷部周囲などへ注入する治療です。
MCL損傷に対して検討される場合がありますが、適応や効果には個人差があり、標準的な装具療法やリハビリテーションの代わりとなるものではありません。
PRP療法によって、すべての靱帯損傷が早く治癒することや、完全に元の状態へ戻ることが保証されるわけではありません。
損傷部位、重症度、受傷からの期間、膝の不安定性などを評価したうえで適応を判断します。
PRP療法は保険適用外の自費診療です。

PRP療法について詳しくはコチラ

理学療法・リハビリテーション

MCL損傷では、靱帯を保護しながら、膝の可動域と筋力をできるだけ維持することが重要です。
長期間動かさないと、膝が硬くなり、太ももの筋力が低下します。
一方で、治癒が不十分な時期に外反力や回旋力を加えると、靱帯が伸びた状態で治る可能性があります。
損傷の程度と治癒段階に合わせて、リハビリテーションを進めます。
腫れと痛みの管理
受傷初期には、活動量の調整、冷却、圧迫、挙上などによって、痛みと腫れを管理します。
装具を使用し、膝が内側へ折れ込む動きを防ぎます。
関節可動域訓練
痛みのない範囲で膝をゆっくり曲げ伸ばしします。
膝が完全に伸びない状態が続くと、歩行時の負担が増えるため、膝を伸ばす動きを保つことが重要です。
外反方向へ強く伸ばしたり、反動をつけたりしないようにします。
大腿四頭筋の筋力訓練
太ももの前側にある大腿四頭筋を鍛え、膝関節を安定させます。
初期には、膝を大きく動かさずに筋肉へ力を入れる運動など、MCLへの負担が少ない方法から始めます。
ハムストリングスの筋力訓練
太ももの後ろ側にあるハムストリングスを鍛え、膝の安定性を高めます。
MCLの損傷部位や痛みの状態によって運動方法を調整します。
股関節・体幹の筋力訓練
お尻の筋肉や体幹の筋力が低下すると、着地や方向転換の際に膝が内側へ入りやすくなります。
股関節と体幹を含めて筋力を整え、膝へかかる外反力を軽減します。
バランス訓練
片脚立ちや重心移動などを行い、膝関節の位置を感知して安定させる能力を高めます。
初期には両脚で行い、状態に応じて片脚や不安定な場所での訓練へ進めます。
歩行訓練
痛みを避けて足を引きずる歩き方や、膝を曲げたまま歩く状態を改善します。
必要に応じて装具や松葉杖を使用し、正しい荷重方法を練習します。
スクワット動作の指導
膝を曲げた際に、膝が内側へ入らず、つま先と膝の方向がそろうように指導します。
初期には浅い角度から始め、痛みや腫れ、不安定感がないことを確認しながら深さを調整します。
ランニング訓練
歩行と筋力が改善した後、直線での軽いジョギングから開始します。
痛み、腫れ、ぐらつきがなければ、速度と距離を段階的に増やします。
方向転換・切り返し訓練
直線走行が安定した後に、緩やかな方向転換から始めます。
急な切り返し、横方向への動き、接触プレーは、靱帯の安定性を確認してから段階的に行います。
ジャンプ・着地訓練
両脚での小さなジャンプから始め、片脚着地、連続ジャンプ、競技特有の動作へ進めます。
着地時に膝が内側へ入らないよう、股関節、膝、足部の位置を確認します。
競技別トレーニング
サッカー、ラグビー、バスケットボール、スキーなど、競技に必要な動作を段階的に練習します。
ダッシュ、キック、切り返し、接触動作などを行い、翌日に痛みや腫れが増えないか確認します。

手術後のリハビリテーション

手術後は、修復または再建した靱帯を保護するため、装具や松葉杖を使用します。
膝へかけられる体重や曲げられる角度を、手術方法と治癒状況に合わせて調整します。
可動域訓練、筋力訓練、バランス訓練、歩行訓練を段階的に行います。
スポーツ復帰までは数か月以上のリハビリテーションが必要になることがあります。

スポーツ・仕事への復帰

復帰時期は、損傷の重症度、合併損傷、治療方法、競技内容などによって異なります。
軽度損傷では比較的早く復帰できる場合がありますが、完全断裂や複合靱帯損傷では数か月以上かかることがあります。
復帰は期間だけで決めず、次のような点を確認します。
・膝の内側に痛みや圧痛がない
・膝に腫れや熱感がない
・膝を十分に曲げ伸ばしできる
・歩行や階段昇降で痛みがない
・外反方向のぐらつきが改善している
・患側の筋力が健側に近づいている
・片脚立ちが安定している
・片脚で安全に着地できる
・ジョギングやダッシュで症状がない
・方向転換で膝が抜けない
・競技練習後に痛みや腫れが増えない
・医師や理学療法士から復帰を許可されている
接触競技へ復帰する際には、一定期間、装具の使用を検討することがあります。

内側側副靱帯損傷後に起こる可能性がある問題

慢性的な膝の不安定性

MCLが伸びた状態で治ると、膝が外反方向へぐらつくことがあります。
方向転換、横移動、接触動作などで膝くずれを感じる場合があります。

膝関節拘縮

痛みや固定によって膝を長期間動かさないと、膝の曲げ伸ばしが難しくなることがあります。
特に膝が完全に伸びない状態が残ると、歩行やスポーツに影響します。

筋力低下

受傷後に活動量が低下すると、太ももやお尻の筋力が落ちます。
筋力低下によって膝がさらに不安定になることがあります。

半月板・関節軟骨への二次的な損傷

膝の不安定性が残った状態でスポーツを続けると、半月板や関節軟骨へ繰り返し負担がかかる可能性があります。

変形性膝関節症

慢性的な外反不安定性や半月板損傷、関節軟骨損傷などがあると、長期的には変形性膝関節症につながる可能性があります。

MCL周囲の石灰化・骨化

損傷したMCLの大腿骨付着部周囲に石灰化や骨化が生じることがあります。
膝の内側の慢性的な痛みや可動域制限の原因になる場合があります。

慢性的な内側部痛

靱帯が安定していても、瘢痕組織、周囲の筋膜、鵞足部、神経などの影響によって、膝の内側に痛みが残ることがあります。
痛みの原因を再評価し、リハビリテーションや治療方法を検討します。

自宅での注意点・セルフケア

装具を正しく使用する

装具は指示された位置と締め方で装着してください。
ずれた状態や緩すぎる状態では、MCLを十分に保護できません。
強く締めすぎて、しびれ、冷感、皮膚の色の変化がある場合には、いったん緩めて医療機関へ相談してください。

膝が内側へ入る動きを避ける

立ち上がり、階段、スクワットなどでは、膝が内側へ入り込まないようにします。
膝とつま先をおおむね同じ方向へ向けます。

足を固定したまま身体をひねらない

方向を変える際には、足を小刻みに動かし、足と身体を一緒に回します。
足の裏が床についたまま身体だけをひねると、MCLへ負担がかかります。

深くしゃがみすぎない

受傷初期には、深いしゃがみ込み、正座、低い椅子からの立ち上がりなどを避けます。
膝の治癒状態に合わせて、少しずつ動作範囲を広げます。

痛みを我慢して運動しない

運動中に鋭い痛み、不安定感、膝くずれがある場合には中止してください。
運動後や翌日に痛みや腫れが増える場合には、運動量が多すぎる可能性があります。

膝を動かさなさすぎない

必要以上に長期間安静にすると、膝の拘縮や筋力低下につながります。
医師や理学療法士から許可された範囲で、膝の曲げ伸ばしや筋力訓練を行います。

強いストレッチをしない

膝の内側を伸ばすような強いストレッチや、他人に膝を押してもらう方法は避けます。
靱帯が伸びた状態で治癒する可能性があります。

復帰を急がない

痛みがなくなっても、靱帯の強度や筋力が十分に戻っていないことがあります。
ジョギング、ダッシュ、方向転換、接触プレーの順に段階的に復帰します。

再発予防

MCL損傷を完全に防ぐことは難しいものの、次のような取り組みが再受傷予防に役立つことがあります。
・運動前に十分なウォーミングアップを行う
・太もも、お尻、体幹の筋力を整える
・着地時に膝が内側へ入らないようにする
・切り返し動作のフォームを練習する
・疲労が強い状態で無理に運動を続けない
・競技や路面に合った靴を使用する
・スキー用具などを適切に調整する
・過去に損傷がある場合は装具の使用を検討する
・痛みや腫れがある状態で競技を続けない

次のような症状がある場合には早めに受診してください

・膝の外側から衝撃を受けた後、内側が痛む
・膝をひねってから内側の痛みが続いている
・MCLに沿って押すと強く痛む
・膝の内側が腫れている
・歩行や階段で痛む
・膝が横方向へぐらつく
・方向転換で膝が抜ける
・膝を完全に伸ばせない
・膝を深く曲げられない
・膝に水がたまっている
・スポーツへ復帰すると痛みや腫れを繰り返す
・数週間経過しても症状が改善しない
・仕事や日常生活へ支障が出ている

速やかな受診が必要な症状

次のような場合には、複数の靱帯損傷、骨折、膝関節脱臼、神経・血管損傷などが隠れている可能性があります。
・膝が明らかに変形している
・膝が大きく外れた後、自然に戻った
・受傷後、短時間で膝全体が大きく腫れた
・体重をまったくかけられない
・膝が強くぐらつき、立てない
・膝が途中から動かない
・足や足趾に強いしびれがある
・足首や足趾を動かせない
・足が冷たい
・足の色が白い、青紫色になっている
・足の脈を触れにくい
・強い痛みが急激に悪化している
・膝が赤く腫れ、発熱を伴っている
膝が変形している場合には、自分で元へ戻そうとしないでください。
痛みの少ない位置で脚を支え、速やかに医療機関を受診してください。

膝の内側の痛みや不安定感でお悩みの方へ

内側側副靱帯損傷は、スポーツ中の接触、方向転換、ジャンプの着地、転倒などによって起こります。
膝の内側の痛みや腫れが主な症状ですが、損傷が強い場合には、膝が内側へ折れ込むような不安定感や膝くずれが生じます。
MCL損傷と思っていても、前十字靱帯損傷、半月板損傷、関節軟骨損傷、骨挫傷、剥離骨折などを伴っていることがあります。
受傷後に歩ける場合や、数日で痛みが軽くなった場合でも、膝の緩みや合併損傷が残っている可能性があります。
特に、受傷時に断裂音がした、膝が短時間で大きく腫れた、膝くずれがある、膝を完全に伸ばせない場合には、早めの検査が必要です。
当院では、受傷状況の確認、触診、外反ストレステスト、靱帯・半月板の徒手検査、X線検査、超音波検査などによって、MCLの損傷部位と膝の不安定性を評価します。
超音波検査では、MCLの腫れや線維の連続性、周囲の血腫などをリアルタイムに確認します。
症状に応じて、薬物療法、装具療法、松葉杖の指導、リハビリテーション、セルフケア指導などを行います。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
複合靱帯損傷、治癒しにくい剥離損傷、慢性的な不安定性などにより手術が必要と判断した場合には、膝靱帯手術に対応している医療機関へご紹介します。
膝の内側の痛みが続いている、膝がぐらつく、スポーツへ復帰すると症状を繰り返すなどのお悩みがある方は、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫