痛風
痛風について
痛風は、血液中の尿酸が高い状態が続き、関節やその周囲に尿酸の結晶がたまることで、突然激しい関節炎を起こす病気です。
代表的な症状は、足の親指の付け根に現れる強い痛み、腫れ、赤み、熱感です。夜間や早朝に突然痛み始め、数時間のうちに足を床へつけられないほど悪化することがあります。
「風が当たるだけでも痛い」といわれるように、靴下や布団が軽く触れただけでも、強い痛みを感じる場合があります。この急激な炎症を「痛風発作」または「痛風関節炎」と呼びます。
ただし、痛風が起こるのは足の親指だけではありません。足首、足の甲、膝、手首、肘、手指などにも発症します。アキレス腱や関節の周囲に尿酸結晶がたまり、腱の痛みや硬いしこりとして現れることもあります。
血液中の尿酸値が高い状態を「高尿酸血症」と呼びます。一般的には、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態です。
高尿酸血症があっても、すぐに痛風発作が起こるとは限りません。自覚症状のないまま経過する方もいますが、尿酸値が高い状態が長く続くほど、関節や腱、腎臓などに尿酸結晶がたまりやすくなります。
痛風発作は、数日から1〜2週間ほどで自然に軽くなる場合があります。しかし、痛みがなくなったからといって、身体にたまった尿酸結晶がなくなったわけではありません。
尿酸値を管理せずにいると発作を繰り返し、次第に発作の間隔が短くなったり、複数の関節が腫れたりすることがあります。さらに進行すると、関節の変形や痛風結節、尿路結石、腎障害につながる可能性があります。
そのため痛風では、発作中の痛みを抑えるだけでなく、発作が治まった後も尿酸値を長期的に管理することが大切です。
尿酸がたまる仕組み
尿酸は、プリン体が身体の中で分解された後にできる物質です。
プリン体というと、肉や魚、ビールなどの食品に含まれる成分を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、プリン体は身体の細胞や遺伝情報をつくるためにも必要な成分で、体内でも常に作られています。
古くなった細胞が分解されたときや、身体を動かすためにエネルギーが使われたときにもプリン体が生じ、最終的に尿酸へ変化します。
作られた尿酸の多くは血液中を流れ、腎臓から尿として排泄されます。一部は腸管を通して便の中へ排泄されます。
尿酸が作られる量と、身体の外へ排泄される量のバランスが保たれていれば、血清尿酸値は一定の範囲に保たれます。
一方、尿酸が多く作られたり、腎臓や腸管から十分に排泄できなくなったりすると、血液中の尿酸が増えていきます。
血液中に溶けきれなくなった尿酸は、尿酸一ナトリウムという針状の結晶になります。この結晶が関節軟骨、滑膜、腱、皮下組織などへ少しずつ沈着します。
関節に結晶がたまっていても、普段は何も症状がないことがあります。しかし、何らかのきっかけで結晶が関節内にはがれ落ちると、白血球などの免疫細胞が結晶を異物として認識し、強い炎症を起こします。
これが痛風発作の仕組みです。
痛風の原因
痛風は、食べ過ぎや飲み過ぎだけで起こる病気ではありません。遺伝的な体質、腎機能、体重、薬剤、生活習慣など、複数の要因が関係しています。
尿酸値が上昇する仕組みは、尿酸が十分に排泄されないタイプ、尿酸が多く作られるタイプ、その両方が関係するタイプに分けられます。
日本人の高尿酸血症では、腎臓や腸管から尿酸を十分に排泄できないことが関係しているケースが多くみられます。
遺伝的な体質
尿酸の排泄や再吸収に関わる身体の働きには個人差があります。
同じ食事や生活をしていても、尿酸値が上がりやすい方と、上がりにくい方がいます。
家族に高尿酸血症や痛風の方がいる場合には、尿酸値が上がりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。
痛風は生活習慣だけの問題ではなく、本人の努力不足によって起こる病気でもありません。
肥満・内臓脂肪
肥満や内臓脂肪の増加は、尿酸が作られる量を増やすだけでなく、腎臓からの尿酸排泄を低下させる原因にもなります。
高尿酸血症のある方では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などを合併していることも少なくありません。
体重を適正な範囲へ近づけることは大切ですが、断食や極端な食事制限によって急激に減量すると、尿酸値が変動し、痛風発作を起こすことがあります。
減量する場合には、食事を大幅に減らすのではなく、無理のないペースで進めます。
飲酒
アルコールは、酒の種類にかかわらず、尿酸値や痛風発作に影響します。
ビールにはプリン体が含まれていますが、焼酎やウイスキーであれば痛風にならないというわけではありません。
アルコールが体内で分解される過程では尿酸が作られやすくなり、同時に腎臓からの尿酸排泄も妨げられます。大量の飲酒によって脱水が起こることも、発作の原因になります。
「プリン体ゼロ」や「糖質ゼロ」と表示されている酒でも、アルコールを大量に摂取すれば、尿酸値や発作へ影響します。
プリン体を多く含む食品
レバーなどの内臓類、魚の干物、煮干し、一部の魚介類などには、プリン体が多く含まれています。
これらを頻繁に大量摂取すると、尿酸値が上がりやすくなります。
ただし、プリン体を含む食品をすべて禁止する必要はありません。特定の食品だけを極端に避けると、栄養のバランスが崩れることがあります。
食べる頻度や量を調整し、過食を避けることが大切です。
肉や魚のスープ、鍋の汁、煮汁などには、食材から溶け出したプリン体が含まれています。濃いスープや煮汁をすべて飲む習慣がある場合には、量を控えましょう。
果糖を多く含む飲料
清涼飲料水、加糖飲料、エナジードリンクなどに多く含まれる果糖は、体内で尿酸が作られる過程に影響します。
日常的な水分補給として、糖分の多い飲み物を大量に飲むことは避けましょう。
果物にはビタミンや食物繊維も含まれているため、すべて控える必要はありません。ただし、ジュースは果物そのものより短時間で多くの糖分を摂取しやすいため、飲み過ぎに注意が必要です。
脱水・激しい運動
身体の水分が不足すると、血液中の尿酸濃度が上がり、腎臓からの尿酸排泄も低下します。
暑い場所での作業、激しい運動、発熱、下痢、嘔吐、長時間の飲酒などは、脱水を起こす原因になります。
適度な運動は、体重や生活習慣病の管理に役立ちます。一方、普段行っていない高強度の運動や、大量に汗をかく運動を急に行うと、尿酸値が一時的に上昇することがあります。
運動中や運動後には、適切に水分を補給することが大切です。
腎機能や薬剤の影響
尿酸の多くは腎臓から排泄されます。慢性腎臓病などによって腎機能が低下すると、尿酸を十分に排泄できず、尿酸値が上昇しやすくなります。
一部の利尿薬、低用量アスピリン、免疫抑制薬、結核治療薬、抗がん薬なども尿酸値へ影響することがあります。
薬が原因として疑われても、自己判断で中止してはいけません。治療に必要な薬である場合が多いため、処方した医師と相談して調整します。
痛風発作の主な症状
痛風発作では、一つの関節に突然、強い痛みと腫れが現れることが一般的です。
夜間や早朝に痛みで目が覚め、数時間のうちに症状が急激に強くなることがあります。前日まで普通に歩けていたにもかかわらず、翌朝には足を床へつけられなくなる方もいます。
炎症を起こした関節は赤く腫れ、触れると熱く感じます。皮膚が張り、光沢があるように見えることもあります。
関節を動かしたときだけでなく、靴下や布団が軽く触れただけでも強く痛むことがあります。
足の関節に発作が起こると、患部へ体重をかけられず、歩くことが難しくなります。
炎症が強い場合には、微熱や発熱、だるさを伴うこともあります。ただし、発熱を伴う関節炎では、感染性関節炎や蜂窩織炎との区別が重要です。
以前に痛風と診断された方でも、今回の症状が必ず痛風とは限りません。
痛風発作が起こりやすい部位
最も起こりやすいのは、母趾の付け根にある母趾中足趾節関節です。
この部位に起こる典型的な発作は「ポダグラ」と呼ばれることがあります。
母趾の付け根は体温が比較的低く、歩行で繰り返し負担を受けるため、尿酸結晶がたまりやすいと考えられています。
外反母趾や強剛母趾でも同じ場所が痛みますが、痛風では短時間で関節全体が赤く腫れ、触れただけでも強く痛むことが特徴です。
足首や足の甲に発症すると、広い範囲が腫れ、体重をかけられなくなることがあります。足関節捻挫、骨折、腱鞘炎などと似た症状を示します。
膝に発症した場合には、膝全体が腫れ、多量の関節液がたまることがあります。偽痛風や感染性関節炎でも同じような症状が現れるため、関節液検査が必要になる場合があります。
尿酸結晶は関節内だけでなく、アキレス腱やその付着部にも沈着します。アキレス腱周囲の痛みや腫れ、硬いしこり、靴に当たる痛みとして現れることがあります。
高尿酸血症が長期間続くと、肘、手指、手首などにも発作や痛風結節が現れることがあります。
痛風の進行と経過
尿酸値が高くても、まだ発作や痛風結節が起きていない状態を「無症候性高尿酸血症」と呼びます。
症状がなくても、関節や腱には少しずつ尿酸結晶が沈着している可能性があります。
初めての痛風発作では、母趾の付け根など一つの関節だけが腫れることが多く、数日から1〜2週間ほどで痛みが治まることがあります。
発作が治まってから次の発作まで、症状のない時期を「間欠期」と呼びます。
この時期は痛みがないため、治療の必要性を感じにくくなります。しかし、尿酸値が高いままであれば、症状のない間にも結晶の蓄積は続きます。
尿酸値を管理せずにいると、発作を繰り返すようになります。初めは数年に一度だった発作が、次第に年に数回起こるようになり、発作の間隔が短くなることがあります。
さらに進行すると、発作がない時期にも関節の痛みや腫れが残り、関節軟骨や骨が傷んで変形する「慢性痛風性関節炎」へ進行する可能性があります。
痛風結節について
高尿酸血症が長く続くと、尿酸結晶が皮下組織、関節周囲、腱などにかたまりとなってたまります。
この硬いしこりを「痛風結節」と呼びます。
痛風結節は、耳、肘、手指、足趾、母趾の付け根、足の甲、アキレス腱などにできやすい傾向があります。
通常は硬く、痛みがないこともありますが、炎症を起こすと赤く腫れて痛みます。
結節が大きくなると、靴に当たる、関節を動かしにくい、腱や神経が圧迫されるといった問題が生じます。
皮膚が薄くなり、白色や黄白色のチョーク状の内容物が外へ出ることもあります。ご自身で針を刺したり、内容物を押し出したりすると感染する危険があるため、触らずに受診してください。
尿酸値を目標範囲まで下げた状態を続けると、痛風結節は少しずつ小さくなる可能性があります。ただし、大きな結節が縮小するまでには長い期間がかかります。
尿路結石・腎臓との関係
高尿酸血症がある方では、尿中に尿酸が増えたり、尿が酸性に傾いたりすることで、尿酸結石ができることがあります。
尿路結石では、脇腹から背中にかけて突然強く痛み、下腹部や鼠径部まで痛みが広がることがあります。血尿、吐き気、嘔吐を伴う場合もあります。
発熱を伴う尿路結石は、尿路感染症を合併している可能性があります。重症化することがあるため、速やかな受診が必要です。
腎機能が低下すると尿酸を十分に排泄できず、尿酸値が上がりやすくなります。一方、尿酸結晶や尿路結石も、腎臓や尿路へ負担をかけます。
そのため痛風では、血清尿酸値だけでなく、腎機能や尿検査の結果も定期的に確認することが大切です。
他の病気との違い
痛風発作による関節の痛みや腫れは、ほかの病気でも起こります。
特に重要なのが、関節内に細菌が入り込む感染性関節炎です。
感染性関節炎でも、関節の強い痛み、腫れ、赤み、熱感、発熱が現れます。短期間で関節を破壊し、細菌が全身へ広がる可能性があるため、早急な治療が必要です。
高熱や悪寒がある、全身状態が悪い、皮膚に傷や膿がある、関節注射や手術後に腫れた、人工関節が入っているといった場合には、感染を慎重に調べます。
痛風の既往がある方でも、感染性関節炎を発症することがあります。また、関節液から尿酸結晶が見つかっても、細菌感染を同時に起こしている可能性は残ります。
偽痛風は、尿酸とは異なるピロリン酸カルシウムという結晶が関節にたまり、急性関節炎を起こす病気です。
膝、手首、肩、足首などに多く、症状だけで痛風と区別することが難しい場合があります。関節液を顕微鏡で調べ、結晶の種類を確認することで診断します。
外反母趾や強剛母趾でも母趾の付け根が痛みますが、一般的には歩行や靴の圧迫によって痛み、徐々に症状が進みます。痛風では、短時間で急激な腫れと痛みが現れます。
足首の痛風では、足関節捻挫や骨折と似た症状が現れます。明らかなけががないまま急に赤く腫れた場合には、痛風や感染症などを考えます。
皮膚や皮下組織に細菌感染が起こる蜂窩織炎でも、赤み、腫れ、熱感、痛みが広がります。皮膚の傷、膿、赤い範囲の拡大、発熱などがある場合には、感染症の可能性を確認します。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
問診・触診
痛みが始まった時期や、どのくらいの速さで症状が強くなったか、どの関節が腫れているかを確認します。
また、次のような内容を詳しくお伺いします。
・夜間や早朝に突然発症したか
・過去にも同じような発作があったか
・発熱や悪寒、全身のだるさがあるか
・最近、けがや手術、関節注射を受けたか
・皮膚に傷や感染がないか
・飲酒量や食事量が増えていないか
・発熱、下痢、嘔吐、運動などによる脱水がなかったか
・尿路結石を起こしたことがあるか
・腎臓病、高血圧、糖尿病などがあるか
・現在服用している薬
・尿酸降下薬を中断していないか
・家族に高尿酸血症や痛風の方がいるか
・耳、肘、手指、足趾などにしこりがないか
患部を触診し、腫れ、赤み、熱感、圧痛、関節液のたまり、関節の動きなどを確認します。
耳、肘、手指、足趾、アキレス腱などに痛風結節がないかも調べます。
血液検査
血液検査では、血清尿酸値に加え、白血球数やCRPなどの炎症反応、腎機能、肝機能、血糖値、脂質などを確認します。
痛風発作中には炎症反応が上昇することがありますが、感染性関節炎でも同じように高くなるため、血液検査だけで両者を区別することはできません。
また、発作中の血清尿酸値は、普段より低くなることがあります。
尿酸値が正常範囲であっても、症状から痛風が疑われる場合には、発作が治まった後に改めて測定します。
尿酸降下薬を使用している方では、尿酸値が治療目標に達しているか、薬による肝機能や腎機能への影響がないかを定期的に確認します。
関節液検査
関節が大きく腫れている場合には、関節へ針を刺して関節液を採取することがあります。
関節液を顕微鏡で観察し、針状の尿酸一ナトリウム結晶が確認されれば、痛風の診断に役立ちます。
同時に、関節液中の白血球や細菌の有無を調べ、必要に応じて培養検査を行います。
特に、初めての発作、発熱を伴う発作、免疫機能が低下している方の関節炎では、感染性関節炎を除外することが重要です。
X線検査
発症して間もない痛風では、X線検査で明らかな異常がみられないことがあります。
X線検査では、骨折や脱臼、変形性関節症、石灰化、慢性痛風による骨の侵食や関節破壊などを確認します。
痛風が長期間続いている場合には、関節の近くに縁のはっきりした骨の欠損がみられることがあります。
超音波検査
超音波検査では、関節液、滑膜の腫れ、痛風結節、腱への尿酸結晶の沈着などを確認できます。
関節軟骨の表面に尿酸結晶が付着すると、軟骨に沿って明るい線が見えることがあります。これは「ダブルコントゥアーサイン」と呼ばれ、尿酸結晶の沈着を示唆する所見です。
アキレス腱や足趾の関節など、複数の部位を診察室で確認できることも超音波検査の特徴です。
ただし、超音波所見だけで痛風を確定できるとは限りません。病気の段階や結晶の量によっては、明らかな所見がみられないこともあります。
関節液の採取や関節内注射を行う際には、必要に応じて超音波で関節や針先の位置を確認します。
CT・MRI検査
デュアルエナジーCTという検査では、尿酸結晶を周囲の組織と区別して表示できます。
関節液を採取しにくい場所や、複数の部位への結晶沈着を調べたい場合に役立ちます。ただし、初期の痛風では結晶が少なく、異常が確認できないことがあります。
通常のCT検査では、痛風結節の位置や大きさ、骨の侵食、尿路結石などを詳しく確認できます。
MRI検査では、滑膜炎、骨の内部、腱、靱帯などの状態を確認できます。ただし、MRI検査だけで痛風とほかの炎症性疾患を確実に区別できるわけではありません。
感染症、骨髄炎、疲労骨折、腫瘍、腱断裂など、別の病気が疑われる場合にMRI検査を検討します。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。
CT検査やデュアルエナジーCTが必要と判断した場合にも、対応可能な医療機関をご案内します。
痛風発作に対する治療
痛風の治療は、現在起きている発作の炎症を抑える治療と、尿酸値を長期的に下げる治療に分けて考えます。
発作を抑える薬は、現在の痛みや腫れを軽減するために使用します。一方、尿酸降下薬は、身体にたまった結晶を時間をかけて減らし、次の発作を防ぐための薬です。
それぞれ目的が異なるため、発作が治まった後にも、必要な治療を継続することが大切です。
患部の安静・冷却
発作が起きている関節には、できるだけ負担をかけないようにします。
足の関節に発作がある場合には、長時間の歩行、立ち仕事、ランニングなどを避けます。
横になるときに患部を心臓より少し高い位置へ置くと、腫れが軽くなることがあります。
タオルで包んだ保冷剤などで短時間冷やすと、痛みや熱感が和らぐ場合があります。
患部を強くもんだり、無理に曲げ伸ばししたり、熱い湯で長時間温めたりすると、炎症が強くなることがあるため避けましょう。
薬物療法
痛風発作に対しては、非ステロイド性消炎鎮痛薬、コルヒチン、ステロイド薬などを使用します。
どの薬を選ぶかは、発症してからの時間、炎症の程度、腎機能、胃腸の状態、心疾患、糖尿病、併用薬などによって異なります。
非ステロイド性消炎鎮痛薬は、炎症と痛みを抑えるために使用します。ただし、腎機能低下、胃・十二指腸潰瘍、心疾患、抗凝固薬の使用などがある方では、使用できないことがあります。
コルヒチンは、尿酸結晶によって起こる炎症反応を抑える薬です。発作の早い段階で使用するほど効果が期待しやすくなります。
副作用として下痢、腹痛、吐き気などが現れることがあります。腎機能や肝機能が低下している方、特定の薬を服用している方では、重い副作用を起こす可能性があるため注意が必要です。
以前処方された薬を自己判断でまとめて服用せず、指示された量と回数を守ってください。
非ステロイド性消炎鎮痛薬やコルヒチンを使用できない場合、炎症が非常に強い場合などには、ステロイド薬を使用することがあります。
関節液の穿刺・関節内注射
関節に多量の関節液がたまっている場合には、関節液を抜くことで関節内の圧力が下がり、痛みが軽くなることがあります。
採取した関節液を調べることで、尿酸結晶や細菌の有無も確認できます。
感染性関節炎が否定的で、一つの関節に強い炎症がある場合には、関節内へステロイド薬を注射することがあります。
関節内注射は、現在起きている炎症を抑えるための治療です。尿酸値を下げたり、身体にたまった結晶をすべて取り除いたりする治療ではありません。
尿酸降下療法
尿酸降下療法は、血清尿酸値を長期間にわたって下げ、関節や腱に沈着している尿酸結晶を少しずつ減らす治療です。
尿酸降下薬は、現在起きている激痛をすぐに止めるための薬ではありません。
痛風発作を繰り返している方、痛風結節がある方、慢性痛風性関節炎がある方、尿路結石や腎障害を伴う方などでは、尿酸降下療法を検討します。
一般的には、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に保つことを目標とします。
痛風結節が多い方や慢性痛風では、病状に応じて、さらに低い値を目標とする場合があります。
尿酸値が目標に達しても、身体にたまった結晶が十分に減るまでには、数か月から数年かかることがあります。
痛みがなくなったからといって薬を中止すると、尿酸値が再び上昇し、結晶の蓄積が始まります。
尿酸降下薬を服用する際の注意
尿酸降下薬には、身体で尿酸が作られるのを抑える薬と、腎臓から尿酸を排泄しやすくする薬があります。
腎機能、肝機能、尿路結石の有無、ほかに服用している薬などを考慮して選択します。
通常は少ない量から始め、血清尿酸値や副作用を確認しながら徐々に調整します。
尿酸値が変化すると、関節にたまっている結晶が動き、治療を始めてしばらくの間は、一時的に発作が起こりやすくなることがあります。
これは、尿酸降下薬が効いていないという意味ではありません。発作予防のため、少量のコルヒチンなどを一定期間併用することがあります。
すでに尿酸降下薬を服用している方は、発作が起きたからといって自己判断で中止しないでください。急に中断すると尿酸値が変動し、発作が長引く可能性があります。
薬を開始した後に、広い範囲の発疹、発熱、口の中のただれ、目の充血などが現れた場合には、重い薬疹の可能性があります。速やかに処方した医療機関へ連絡してください。
食事・飲酒・生活習慣の見直し
生活習慣を整えることは、高尿酸血症だけでなく、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの改善にもつながります。
ただし、発作を繰り返している方や痛風結節がある方では、食事だけで尿酸値を十分に下げることが難しい場合があります。
薬物療法が必要な状態で、食事療法だけに頼って治療を遅らせないことが大切です。
食事では、特定の食品だけを禁止するより、過食を避け、全体の量とバランスを整えます。
肥満がある場合には、断食や極端な糖質制限ではなく、無理のないペースで体重を減らします。
飲酒量を見直し、短時間での大量飲酒を避けましょう。発作中の飲酒は控えてください。
心臓や腎臓の病気などで水分制限を受けていない場合には、水や無糖のお茶などをこまめに飲み、脱水を防ぎます。
清涼飲料水やエナジードリンクなど、糖分の多い飲料を日常的な水分補給として大量に飲むことは避けましょう。
発作がない時期には、ウォーキング、自転車、水泳などの有酸素運動を無理のない範囲で行います。
自宅でのセルフケア
痛風発作が起きたときには、患部を休ませ、短時間冷やし、できるだけ高い位置へ置きます。
日常生活では、次の点に注意してください。
・痛みを我慢して歩かない
・発作中は運動を控える
・患部を強くもまない
・関節を無理に曲げ伸ばししない
・熱い湯へ長時間入らない
・発作中の飲酒を控える
・脱水を避ける
・処方薬を指示どおり服用する
・尿酸降下薬を自己判断で中止しない
・以前処方された薬をまとめて飲まない
・発熱や全身状態の悪化を放置しない
患部を冷やす場合には、保冷剤をタオルで包み、短時間ずつ使用します。皮膚へ直接当てたり、感覚がなくなるほど長時間冷やしたりしないでください。
発作が治まった後も尿酸値を確認し、必要な治療を続けることが大切です。
痛風でお悩みの方へ
関節の急な痛みや腫れは、痛風だけでなく、感染性関節炎、偽痛風、蜂窩織炎、骨折などによっても起こります。
特に、次のような症状がある場合には、早めにご相談ください。
・母趾の付け根が突然激しく痛くなった
・足首や足の甲が急に赤く腫れた
・夜間や早朝に関節痛が始まった
・関節が熱を持ち、触れるだけでも痛む
・同じような発作を繰り返している
・健康診断で尿酸値が高いと指摘された
・発作後に尿酸値の治療を受けていない
・尿酸降下薬を中断している
・耳、肘、手指、足趾に硬いしこりがある
・アキレス腱周囲に硬い腫れがある
・尿路結石を繰り返している
・腎機能の低下を指摘されている
・発作の間隔が短くなっている
・複数の関節が腫れるようになった
・発作が治まっても痛みや腫れが残る
また、次のような症状がある場合には、感染性関節炎、蜂窩織炎、重い尿路感染症などの可能性があります。
・高熱や強い悪寒がある
・全身状態が悪い
・関節の痛みや腫れが急速に悪化している
・皮膚に傷、膿、潰瘍がある
・関節注射や手術の後から腫れている
・人工関節のある関節が急に腫れた
・体重をかけてまったく歩けない
・脇腹や背中に激しい痛みがある
・発熱を伴う血尿や排尿痛がある
・尿が出にくい
・痛風結節から液体や膿が出ている
このような場合には、「いつもの痛風だろう」と自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
当院では、問診、身体検査、血液検査、X線検査、超音波検査などを行い、痛風だけでなく、感染性関節炎、偽痛風、骨折、変形性関節症などの可能性も含めて評価します。
必要に応じて関節液を採取し、尿酸結晶や細菌の有無を確認します。
痛風発作の治療だけでなく、尿酸値の管理、生活習慣の見直し、関節機能を維持するためのリハビリテーションまで含め、症状、腎機能、合併症、生活状況に合わせた治療をご提案します。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫