マレットフィンガー(腱性・骨性槌指)
マレットフィンガー(腱性・骨性槌指)について
マレットフィンガーは、指先を伸ばす伸筋腱や、その腱が付着する末節骨が損傷し、指先に最も近い第1関節を自力で伸ばせなくなるけがです。
「マレット指」「槌指(つちゆび)」「マレット変形」と呼ばれることもあります。
指先が木槌のように曲がって垂れ下がることから、マレットフィンガーと呼ばれています。
ボールが指先へ当たる、指先を壁や家具へぶつける、衣服やシーツへ指を引っかけるなど、指先へ曲げる方向の力が加わったときに起こります。
外力によって伸筋腱が切れたものを「腱性マレットフィンガー」、伸筋腱が付着している骨の一部が剥がれるように骨折したものを「骨性マレットフィンガー」と呼びます。
どちらも指先が曲がったままとなり、自分の力では伸ばせません。
反対の手で指先を持ち上げると伸ばせることが、一般的な特徴です。
見た目の腫れや痛みが軽い場合でも、腱断裂や関節内骨折が起きている可能性があります。
単なる突き指と考えて放置すると、指先の曲がりが残ったり、第2関節が反り返るスワンネック変形へ進行したりすることがあります。
治療では、腱性か骨性か、骨片の大きさ、関節のずれ、傷の有無、受傷からの期間などを確認することが重要です。
腱性マレットフィンガーや、関節が安定している一部の骨性マレットフィンガーでは、装具による固定を行います。
大きな骨片、関節の亜脱臼、開放創などがある場合には、手術が必要になることがあります。

指先を伸ばす仕組み
指を動かす筋肉の多くは、前腕や手の中にあります。
筋肉から伸びる腱が指の骨に付着し、骨を引っ張ることで指を曲げ伸ばしします。
手の甲側を通る伸筋腱には、指を伸ばす働きがあります。
伸筋腱は指の背側で複数に分かれ、指先に向かって薄く広がっています。
第1関節を伸ばす腱の末端部分は、末節骨の付け根に付着しています。
この腱は非常に薄く、指先へ強い曲げる力が加わると、腱そのものが切れたり、付着している骨を引き剥がしたりします。
伸筋腱による張力が失われると、第1関節を自分の力で伸ばせなくなり、指先が垂れ下がります。
第1関節とは
示指から小指までの指には、指先側から次の関節があります。
・第1関節であるDIP関節
・第2関節であるPIP関節
・指の付け根にあるMP関節
DIP関節は、末節骨と中節骨によって構成されています。
親指の場合は関節が一つ少なく、指先側の関節をIP関節と呼びます。
親指でも同じような伸筋腱損傷や骨折が起こることがあり、「マレット母指」と呼ばれる場合があります。
マレットフィンガーの種類
腱性マレットフィンガー
腱性マレットフィンガーは、末節骨へ付着する伸筋腱が切れたり、腱が付着部から剥がれたりした状態です。
X線検査では、通常、明らかな骨折を認めません。
指先へボールが当たるような外傷だけでなく、衣服を着る、シーツを整えるなど、比較的軽い力で起こることもあります。
特に、加齢などによって腱が弱くなっている場合には、はっきりした外傷を覚えていないことがあります。
主な特徴は次のとおりです。
・指先が曲がったままになる
・自分の力では第1関節を伸ばせない
・反対の手で支えると伸ばせる
・指先の手の甲側に腫れや痛みがある
・X線では骨折が確認されない
治療では、指先を伸ばした位置に保つ装具を継続して使用することが基本です。
骨性マレットフィンガー
骨性マレットフィンガーは、伸筋腱が付着している末節骨の一部が、腱に引っ張られて剥がれるように骨折した状態です。
骨折部分はDIP関節の関節面を含むため、関節内骨折に分類されます。
骨片が小さく、関節の位置が安定している場合には、装具による治療が可能なことがあります。
一方、骨片が大きい場合や、末節骨が手のひら側へずれて関節が外れかかっている場合には、装具だけでは正常な関節位置を保てない可能性があります。
その場合には手術を検討します。
主な特徴は次のとおりです。
・指先が曲がったままになる
・DIP関節の手の甲側が腫れる
・皮下出血を伴うことがある
・X線で末節骨の骨片が確認される
・骨片の大きさによって関節が不安定になる
・末節骨が手のひら側へ亜脱臼する場合がある
骨性マレットフィンガーでは、骨折の有無だけでなく、関節が正しい位置に保たれているかを確認することが重要です。
開放性マレットフィンガー
刃物、機械、ガラスなどで指の手の甲側を切り、伸筋腱が直接切断される場合があります。
また、爪の周囲に傷があり、骨折部が外部とつながっている場合には、開放骨折の可能性があります。
次のような所見がある場合には、早急な処置が必要です。
・指の手の甲側に深い傷がある
・爪がはがれている
・爪の下に大量の出血がある
・傷から骨や腱が見えている
・傷から液体や血液が出続けている
・指先の感覚が低下している
・指先の色が白い、青紫色になっている
開放性損傷では、感染予防のための洗浄、抗菌薬、腱縫合、骨折固定などが必要になる場合があります。
小児のマレットフィンガー
成長期の子どもでは、成人とは異なり、末節骨の成長軟骨を含む骨折が起こることがあります。
特に爪の付け根が傷つき、成長軟骨部の骨折を伴うものは、開放骨折として扱う必要がある場合があります。
このような外傷は、Seymour骨折と呼ばれます。
Seymour骨折では、爪が爪の根元から浮いている、爪の付け根から出血している、指先が曲がっているといった所見が現れます。
適切な治療が遅れると、感染、骨髄炎、爪の変形、指の成長障害などにつながる可能性があります。
子どもの指先外傷では、単純な突き指や爪の傷と自己判断せず、早めに整形外科を受診してください。
マレットフィンガーの原因
ボールによる突き指
野球、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなどで、伸ばした指先へボールが当たると発症します。
ボールによって指先が急激に曲げられ、伸筋腱または末節骨が損傷します。
指先を物へぶつける
壁、ドア、家具などへ指先をぶつけた際にも起こります。
強い痛みがなくても、指先を自力で伸ばせない場合にはマレットフィンガーを疑います。
衣服や寝具への引っかかり
衣服を着替える、ポケットへ手を入れる、シーツを整えるなどの動作中に、指先だけが引っかかって急に曲がることがあります。
軽い力でも腱性マレットフィンガーを起こす場合があります。
転倒・スポーツ外傷
転倒時に指先を地面へ突いた場合や、相手選手や器具へ指先が引っかかった場合にも起こります。
切創
包丁、ガラス、機械などでDIP関節付近の手の甲側を切ると、伸筋腱が直接切断される場合があります。
主な症状
指先が垂れ下がる
最も特徴的な症状です。
第1関節から先が曲がり、木槌のような形になります。
自力で指先を伸ばせない
指全体を伸ばそうとしても、第1関節だけが曲がったまま残ります。
指先へ力が入りにくく、机などへ指を置いたときにも先端が垂れる場合があります。
反対の手で持ち上げると伸びる
腱や骨の損傷直後では、関節そのものが固まっていなければ、反対の手で指先を支えるとまっすぐ伸ばせます。
これを他動伸展が可能な状態といいます。
長期間放置して関節が硬くなると、反対の手を使っても十分に伸ばせなくなることがあります。
第1関節の痛み・腫れ
DIP関節の手の甲側に、痛み、腫れ、圧痛が現れます。
骨性マレットフィンガーでは、皮下出血が目立つ場合があります。
一方、腱性では痛みや腫れが軽く、指先の曲がりだけが目立つこともあります。
指先の使いにくさ
指先が伸びないため、次のような動作に支障が出る場合があります。
・キーボードを打つ
・ペンや箸を持つ
・ポケットへ手を入れる
・手袋を着ける
・衣服のボタンを留める
・小さな物をつまむ
・球技を行う
指先の引っかかり
曲がった指先が衣服、ポケット、寝具などへ引っかかりやすくなります。
繰り返し引っかけることで、損傷部へさらに負担が加わることがあります。
スワンネック変形
マレットフィンガーを治療せずに放置すると、指先を伸ばす腱のバランスが崩れることがあります。
DIP関節が曲がったままとなる一方で、PIP関節を伸ばす力が相対的に強くなり、第2関節が反り返る場合があります。
この状態をスワンネック変形と呼びます。
スワンネック変形では、次のような形になります。
・DIP関節は曲がる
・PIP関節は反り返る
・指全体の曲げ伸ばしが難しくなる
進行すると、物を握る、つまむなどの機能に影響します。
早期にマレットフィンガーを診断し、適切な固定を行うことが、変形の予防につながります。
慢性マレットフィンガー
受傷から時間が経過し、指先の垂れ下がりが残った状態を慢性マレットフィンガーと呼びます。
受傷から数週間以上経過していても、関節が反対の手でまっすぐ伸ばせる状態であれば、装具治療を試みる場合があります。
一方、長期間経過して関節が硬くなっている場合、スワンネック変形が進んでいる場合、強い痛みや関節症がある場合には、装具だけでは十分に改善しないことがあります。
慢性例の治療は、次の点を考慮して決定します。
・受傷からの期間
・指先がどの程度垂れているか
・反対の手でまっすぐ伸ばせるか
・PIP関節に反り返りがあるか
・痛みがあるか
・変形性関節症を伴っているか
・生活や仕事への支障
見た目にわずかな曲がりが残っていても、痛みがなく指の機能が保たれている場合には、手術を行わず経過をみることがあります。
ほかの病気・けがとの違い
単純な突き指との違い
「突き指」は病名ではなく、指先へ力が加わって起こるけがの総称です。
突き指には、骨折、脱臼、靱帯損傷、腱断裂などが含まれます。
指先を自力で伸ばせない場合には、単なる打撲ではなく、マレットフィンガーの可能性があります。
マレット指とヘバーデン結節との違い
ヘバーデン結節は、DIP関節に起こる変形性関節症です。
徐々に痛み、腫れ、骨性のコブ、関節変形などが現れます。
マレットフィンガーは、外傷をきっかけに急に指先を伸ばせなくなることが一般的です。
ヘバーデン結節がある指では、弱い外力でも腱性マレットフィンガーを起こす場合があります。
中央索損傷との違い
PIP関節の手の甲側にある伸筋腱の中央索が損傷すると、第2関節を自力で伸ばしにくくなります。
放置すると、PIP関節が曲がり、DIP関節が反り返るボタンホール変形を起こす場合があります。
マレットフィンガーとは、伸ばせない関節と変形の方向が異なります。
屈筋腱損傷との違い
指の手のひら側にある屈筋腱が切れると、指先を自力で曲げられなくなります。
特に深指屈筋腱が切れると、DIP関節を曲げられません。
マレットフィンガーでは、DIP関節を曲げることはできますが、伸ばせません。
DIP関節脱臼との違い
DIP関節が脱臼すると、指先が大きく変形し、強い痛みや腫れが現れることがあります。
X線検査で関節の位置を確認します。
脱臼を自分で引っ張って戻そうとしないでください。
末節骨骨折との違い
指先を強く挟んだり打ったりすると、末節骨の先端や中央部分を骨折することがあります。
マレットフィンガーの骨折は、伸筋腱付着部である末節骨基部の手の甲側に起こります。
感染症との違い
爪周囲炎、ひょう疽、化膿性関節炎などでも、指先に痛み、腫れ、赤みが現れます。
強い熱感、安静時痛、膿、発熱がある場合には感染症を疑います。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
問診
受傷状況、受傷からの期間、傷の有無などを確認します。
主に次のような点について確認します。
・いつ受傷したか
・ボールや物が指先へ当たったか
・指先をどの方向へ曲げたか
・受傷直後から指先を伸ばせなかったか
・傷や出血があるか
・爪の下に出血があるか
・爪が浮いたり、はがれたりしていないか
・反対の手を使うと指先を伸ばせるか
・受傷後に装具やテーピングを使用したか
・固定中に第1関節を曲げたことがあるか
・以前から指の変形や関節症があるか
・しびれや指先の色の変化があるか
視診
指先の垂れ下がり、腫れ、皮下出血、傷、爪の状態などを確認します。
指の変形がDIP関節を中心としているか、PIP関節にも変形があるかを評価します。
自動伸展の確認
患者さま自身の力で指を伸ばしていただき、DIP関節を伸ばせるか確認します。
マレットフィンガーでは、DIP関節に伸展不足が残ります。
強い痛みがある場合や骨折が疑われる場合には、何度も繰り返し検査しません。
他動伸展の確認
医師が指先を支え、DIP関節をまっすぐ伸ばせるかを確認します。
反対の力で伸ばせる場合には、装具による治療が可能なことがあります。
長期間経過して関節が硬くなっている場合には、完全に伸びないことがあります。
腱機能の確認
DIP関節だけでなく、PIP関節、MP関節の伸筋腱・屈筋腱機能も確認します。
中央索損傷、屈筋腱損傷、そのほかの腱損傷を伴っていないかを評価します。
神経・血流の確認
指先の感覚、色、温度、毛細血管再充満などを確認します。
切創や強い外傷がある場合には、神経・血管損傷を伴っている可能性があります。
X線検査
マレットフィンガーでは、腱性と骨性を区別するためにX線検査が重要です。
正面像と側面像など、複数の方向から撮影します。
主に次の点を確認します。
・末節骨基部の骨折の有無
・骨片の大きさ
・骨片のずれ
・DIP関節面に占める骨片の範囲
・末節骨の手のひら側への亜脱臼
・そのほかの骨折や脱臼
・変形性関節症の有無
・古い骨折や変形
骨片が小さくても、関節の位置が保たれているかを確認する必要があります。
超音波検査
超音波検査では、伸筋腱の状態を動かしながら確認できる場合があります。
次のような評価に役立ちます。
・伸筋腱の断裂
・腱付着部の損傷
・腱の連続性
・周囲の腫れや血腫
・小さな骨片
・慢性例における腱の状態
ただし、骨片の大きさや関節の亜脱臼を評価する基本的な検査はX線です。
CT検査
骨性マレットフィンガーで骨片が複数ある場合や、関節面の状態を詳しく確認する必要がある場合には、CT検査を検討します。
すべての症例で必要となる検査ではありません。
CT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
MRI検査
典型的なマレットフィンガーでは、MRI検査が必要になることは多くありません。
診断が明らかでない場合、腫瘍や感染、複雑な腱損傷などが疑われる場合に検討します。
当院にはMRI装置は設置しておりません。MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。
受傷直後の対応
指先を無理に動かさない
指先が曲がっていても、自分で何度も曲げ伸ばしして確認しないでください。
損傷した腱や骨片がさらに離れる可能性があります。
指を引っ張らない
突き指だからといって、指を強く引っ張ってはいけません。
腱断裂、骨折、脱臼を悪化させる可能性があります。
指先を伸ばした位置で保護する
可能であれば、DIP関節をまっすぐに保った状態で仮固定します。
ただし、無理に反らしすぎたり、強く締めつけたりしないでください。
冷却・挙上
タオルで包んだ保冷剤などを短時間当て、手を心臓より高い位置に保つと、腫れや痛みの軽減につながります。
指輪を外す
同じ手に指輪を着けている場合には、腫れが強くなる前に外します。
傷を清潔に保つ
出血がある場合には、清潔なガーゼで軽く圧迫します。
傷を水で洗える状態であれば、流水で汚れを落とします。
傷から骨が見える場合や出血が止まらない場合には、速やかに医療機関を受診してください。
マレットフィンガーに対する治療
治療方法は、腱性か骨性か、骨片の大きさ、関節の亜脱臼、傷の有無、受傷からの期間などによって決定します。
多くのマレットフィンガーでは、装具による保存療法を行います。
骨性で関節が不安定な場合、開放性損傷、装具で正しい位置を保てない場合などには、手術を検討します。
装具による保存療法
DIP関節を伸ばした状態で固定する
装具を使用し、DIP関節をまっすぐ、または医師が指示した軽い伸展位に保ちます。
一般的には、DIP関節のみを固定し、PIP関節は動かせるようにします。
固定角度が強すぎると、皮膚への圧迫や血流障害を起こす可能性があります。
自己判断で指先を強く反らさないでください。
一般に6~8週間連続して固定する
腱や骨が治癒するまで、装具を昼夜を問わず継続して装着します。
治療期間は、腱性・骨性、受傷からの期間、年齢、画像所見などによって異なります。
重要なのは、決められた連続固定期間中にDIP関節を一度も曲げないことです。
装具を外す際も第1関節を曲げない
皮膚を洗う、装具を交換する場合にも、DIP関節をまっすぐ保つ必要があります。
反対の手で指先を支えるか、指の手のひら側を机などの平らな面につけたまま、装具を交換します。
装具を外した状態で指先が一度でも垂れ下がると、治り始めた腱が再び離れ、固定期間を最初から延長しなければならない場合があります。
装具交換の方法は、診察時に具体的な指導を受けてください。
PIP関節は動かす
DIP関節の固定中も、医師から禁止されていなければ、PIP関節やMP関節を曲げ伸ばしします。
指全体を固定すると、関節のこわばりや腱の癒着が起こる可能性があります。
ただし、PIP関節を動かす際にも、DIP関節が装具内で曲がらないように注意します。
固定終了後も段階的に装具を外す
連続固定が終了しても、すぐに装具を完全に外すとは限りません。
診察で指先を伸ばす力や骨癒合を確認した後、日中の装着時間を徐々に減らし、一定期間は夜間や作業時のみ装具を使用する場合があります。
自己判断で固定を終了しないでください。
装具使用中の注意点
皮膚の状態を確認する
長期間装具を使用すると、汗、蒸れ、圧迫によって皮膚トラブルが起こることがあります。
次の点を確認します。
・皮膚が赤くなっていないか
・水ぶくれや傷ができていないか
・皮膚が白くふやけていないか
・悪臭や液体のにじみがないか
・装具の縁が皮膚へ食い込んでいないか
皮膚を洗った後は、十分に乾かしてから装具を装着します。
その間もDIP関節は伸ばしたまま保ちます。
テープを強く巻きすぎない
テープや装具を強く締めすぎると、血流障害や神経圧迫を起こす可能性があります。
次の症状がある場合には、締めつけを確認してください。
・指先が冷たい
・指先が白い、青紫色になる
・しびれが強くなる
・脈打つような痛みがある
・指先の腫れが増える
色の変化や強いしびれが続く場合には、速やかに医療機関へ相談してください。
装具を勝手に加工しない
装具の角度を自分で変える、切る、削ると、固定が不十分になったり皮膚を傷つけたりする可能性があります。
合わない場合には医療機関で調整を受けてください。
指先へ衝撃を加えない
装具を着けていても、球技、重い物を持つ作業、転倒リスクのある運動などは控えます。
装具だけで強い衝撃を完全に防げるわけではありません。
薬物療法・注射について
薬物療法について
痛みや腫れに対して、消炎鎮痛薬や外用薬を使用することがあります。
薬物療法は痛みを軽減するためのものであり、切れた腱やずれた骨片を元の位置へ戻す治療ではありません。
痛みが軽くなっても、指示された固定を継続する必要があります。
注射・マッサージについて
ステロイド注射、ハイドロリリース、PRP療法などは、急性のマレットフィンガーに対する一般的な標準治療ではありません。
切れた伸筋腱や関節内骨折を、注射だけで安定させることはできません。
また、損傷部を強く揉んだり、指先を繰り返し曲げ伸ばししたりすると、治癒を妨げる可能性があります。
手術治療・専門医療機関への紹介
次のような場合には、手術治療を検討します。
・大きな骨片を伴う骨性マレットフィンガー
・末節骨が手のひら側へ亜脱臼している
・装具で関節を正しい位置に保てない
・開放骨折や深い傷がある
・伸筋腱が切創によって切断されている
・小児の成長軟骨損傷やSeymour骨折が疑われる
・装具治療を適切に継続できない
・保存療法後も大きな伸展不足が残る
・慢性化し、スワンネック変形が進行している
・痛みを伴う変形性関節症がある
手術の必要性は、骨片の大きさだけではなく、関節の安定性、亜脱臼の有無、傷、年齢、受傷からの期間などを総合して判断します。
当院で手術が必要と判断した場合には、手外科・上肢外科の手術に対応している医療機関へご紹介します。
治療後に指先の曲がりが残ることについて
適切に装具治療や手術を行っても、指先にわずかな伸展不足が残ることがあります。
見た目が完全に左右同じにならなくても、痛みが少なく、日常生活に支障なく使える状態を治療目標とする場合があります。
治療結果は、次の要因によって異なります。
・受傷から治療開始までの期間
・腱性か骨性か
・骨片の大きさとずれ
・関節の亜脱臼
・固定を継続できたか
・固定中にDIP関節を曲げたか
・皮膚トラブルの有無
・関節症や腱の変性
・年齢や基礎疾患
指先にわずかな曲がりが残っていても、自己判断で装具を長期間使い続けるのではなく、診察で状態を確認してください。
スポーツ・仕事への復帰
復帰時期は、損傷の種類、固定期間、骨癒合、仕事内容や競技内容によって異なります。
軽い事務作業などは、装具で指先を保護したまま行える場合があります。
一方、球技、格闘技、手を使う重労働などでは、指先への再受傷を防ぐ必要があります。
復帰前には、次の点を確認します。
・指先を自力で伸ばせる
・骨性の場合は骨癒合が確認されている
・強い腫れや圧痛がない
・装具を外す許可が出ている
・必要な握力・つまみ力が回復している
・競技動作で痛みが出ない
復帰後もしばらくは、医師の指示に応じて装具やテーピングで保護する場合があります。
自宅での注意点
マレットフィンガーが疑われる場合や治療中は、次の点に注意してください。
・突き指した指を引っ張らない
・指先を何度も曲げ伸ばししない
・曲がった指を勢いよく伸ばさない
・装具を自己判断で外さない
・装具交換中もDIP関節を曲げない
・装具の角度を自分で変えない
・テープを強く巻きすぎない
・皮膚を濡れたまま装具で覆わない
・指先へ衝撃を加えない
・固定終了を自己判断しない
・損傷部を強く揉まない
・傷や爪の出血を放置しない
次のような症状がある場合には早めに受診してください
次のような症状がある場合には、マレットフィンガーの可能性があります。
・突き指後から指先が曲がっている
・第1関節を自力で伸ばせない
・反対の手で支えると指先が伸びる
・DIP関節の手の甲側が腫れている
・指先に痛みや皮下出血がある
・ボールが指先へ当たった
・衣服やシーツへ指先を引っかけた
・痛みは軽いが指先だけ垂れている
・突き指として様子をみていたが変形が残っている
・装具治療中に指先が再び曲がってきた
速やかな受診が必要な症状
次のような場合には、早めの受診が必要です。
・爪がはがれている
・爪の付け根から出血している
・指に深い傷がある
・傷から骨や腱が見える
・指先が大きく変形している
・指先を反対の手でも伸ばせない
・指先のしびれや感覚低下がある
・指先が冷たい
・指先が白い、青紫色になっている
・腫れや痛みが急速に強くなっている
・傷や鋼線周囲から膿が出ている
・発熱を伴っている
・子どもの爪の付け根が浮き、指先が曲がっている
マレットフィンガーでお悩みの方へ
診察では、指先の変形、腫れ、傷、爪の状態、自動伸展と他動伸展、神経・血流などを確認します。
X線検査によって腱性と骨性を区別し、骨片の大きさ、関節の亜脱臼、そのほかの骨折や脱臼を評価します。
腱性マレットフィンガーや、関節が安定した一部の骨性マレットフィンガーでは、DIP関節を伸ばした位置で装具固定を行います。
装具治療では、決められた連続固定期間中にDIP関節を一度も曲げないことが重要です。
大きな骨片、関節の亜脱臼、開放創、小児の成長軟骨損傷などがある場合には、手外科・上肢外科を専門とする医療機関で手術を含めた治療を検討します。
当院では、問診、視診、自動伸展・他動伸展の確認、腱機能検査、神経・血流の確認、X線検査、超音波検査などによって、腱性か骨性か、関節の安定性、傷や爪の状態を含めて評価します。
MRIやCTが必要と判断した場合には提携医療機関をご案内します。
突き指後から指先を自力で伸ばせない、指先が垂れ下がっている、爪の付け根に傷や出血があるなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫