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階段を下りると膝が痛い原因は?痛む場所から考える膝の病気

階段を下りると膝が痛いのはなぜ?

階段を上るときは大丈夫なのに、「下りるときに膝が痛い」という患者さんは少なくありません。

階段を下りる動作では、片脚で体重を支えながら、太ももの筋肉を使ってゆっくり身体を下ろす必要があります。そのため、平地歩行よりも膝に大きな負担がかかります。

ただし、階段で膝が痛むからといって、すべてが変形性膝関節症というわけではありません。

特に重要なのが「膝のどこが痛いのか」です。膝蓋骨(膝のお皿)の周囲なのか、下なのか、上なのか、内側なのかによって、考えられる原因は変わります。

膝蓋骨の周りや奥が痛い:膝蓋大腿痛

膝蓋骨の周囲や、膝蓋骨の奥の方が痛む場合には、膝蓋大腿関節が関係していることがあります。

膝を曲げると、膝蓋骨は大腿骨に押し付けられます。特に階段の上り下りやスクワットでは、膝蓋大腿関節に大きな力がかかります。

膝蓋大腿痛では、階段の上り下り、スクワット、ランニング、ジャンプ、長時間座った後などに、膝蓋骨周囲の痛みが出ることがあります。

若い人やスポーツをしている人にも多く、中高年では膝蓋大腿関節の軟骨変性を伴っている場合もあります。

膝蓋骨のすぐ下が痛い:膝蓋腱症(膝蓋靱帯炎・ジャンパー膝)

膝蓋骨のすぐ下に痛みが集中している場合には、膝蓋腱症が考えられます。一般的には「膝蓋靱帯炎」や「ジャンパー膝」と呼ばれることもあります。

膝蓋腱は、大腿四頭筋の力を膝蓋骨からすねの骨へ伝える重要な組織です。ジャンプや着地、ランニング、急な減速、スクワットなど、膝を伸ばす力を繰り返し使う動作で負担がかかります。

階段を下りるときにも、大腿四頭筋を使って身体が急に落ちないように支えるため、膝蓋腱には負荷がかかります。

「膝の前が痛い」と一括りにされやすいのですが、膝蓋骨の下を押すと痛い、スポーツや運動で痛みが強くなるといった場合には、膝蓋大腿関節だけではなく膝蓋腱も確認することが重要です。

膝蓋骨のすぐ上が痛い:大腿四頭筋腱症(大腿四頭筋腱炎)

反対に、膝蓋骨のすぐ上が痛む場合には大腿四頭筋腱が関係していることがあります。

大腿四頭筋腱は、太ももの前にある大腿四頭筋と膝蓋骨をつなぐ腱です。膝を伸ばしたり、階段やスクワットで身体を支えたりするときに大きな力がかかります。

ランニングやジャンプなどを繰り返すスポーツをしている人だけでなく、運動量が急に増えた場合などにも痛みが出ることがあります。

膝蓋腱症ほど知られていませんが、膝前面痛を診察する際には見逃せない原因の一つです。

膝の内側が痛い場合

階段で膝の内側が痛い場合には、変形性膝関節症、内側半月板損傷、鵞足炎、内側側副靱帯周囲の障害などを考えます。

特に中高年では、変形性膝関節症と半月板変性が同時に存在することも珍しくありません。

MRIで半月板損傷が見つかったからといって、必ずしも半月板だけが痛みの原因とは限りません。画像と実際に痛む場所、診察所見を合わせて考えることが重要です。

膝の外側や後ろが痛むこともある

膝の外側であれば外側半月板や腸脛靱帯周囲など、膝の後ろであれば関節水腫、ベーカー嚢腫、ハムストリング腱などが関係している場合があります。

「階段で痛い」という症状だけでは診断することはできません。

どこが痛むのか、腫れているのか、引っかかりがあるのか、膝が伸びきるのかなどを確認することが重要です。

なぜ特に「下り」で痛みやすいのか?

階段を下りるときには、大腿四頭筋が伸ばされながら力を発揮する「遠心性収縮」が必要になります。簡単にいうと、身体が一気に下へ落ちないように、太ももの筋肉でブレーキをかけながら身体を支えています。

そのため、膝蓋大腿関節だけでなく、膝蓋腱や大腿四頭筋腱を含む膝を伸ばすための仕組み全体に負荷がかかります。

また、大腿四頭筋や臀筋の筋力が低下していると身体を十分に支えられず、膝への負担が集中しやすくなります。

治療では痛い場所だけでなく、大腿四頭筋、臀筋、股関節の動き、足関節の柔軟性、片脚でのバランス、階段を下りるときのフォームまで評価することがあります。

痛む場所を確認することが大切です

同じ「膝の前の痛み」でも、原因は一つではありません。

膝蓋骨の周囲・奥が痛い → 膝蓋大腿関節

膝蓋骨のすぐ下が痛い → 膝蓋腱

膝蓋骨のすぐ上が痛い → 大腿四頭筋腱

このように、数cm痛む場所が違うだけでも、考えられる病気が変わることがあります。

もちろん実際には複数の問題が同時に存在することもあるため、痛む場所だけで自己判断するのではなく、診察や画像検査と合わせて評価することが大切です。

TGOCにおける膝痛の考え方

高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックでは、まず痛みの場所や動作、腫れ、可動域などを診察し、必要に応じてレントゲン、超音波、MRIなどで評価します。

特に膝蓋腱や大腿四頭筋腱など、身体の表面に近い腱については、超音波検査によって腱の状態を確認できる場合があります。

変形性膝関節症があっても、実際には筋力低下や膝蓋大腿関節、半月板、膝蓋腱、大腿四頭筋腱などが痛みに関係している場合があります。

そのため、画像だけで治療を決めるのではなく、「どこが痛いのか」「どの動作で痛いのか」を確認し、実際の動作も含めて原因を考えることが大切です。

状態に応じて、薬物療法、リハビリテーション、注射治療、体外衝撃波治療などを組み合わせます。

まとめ

階段を下りるときの膝痛には、膝蓋大腿関節、膝蓋腱、大腿四頭筋腱、変形性膝関節症、半月板など、さまざまな原因があります。

特に膝の前側が痛む場合には、すべてを「膝のお皿の痛み」と考えるのではなく、膝蓋骨の周囲なのか、下なのか、上なのかを確認することが重要です。

膝蓋骨の周囲や奥なら膝蓋大腿関節、下なら膝蓋腱症、上なら大腿四頭筋腱症が関係していることがあります。

痛みが続く場合には、「年齢のせい」「使いすぎ」とだけ考えず、一度どこに問題があるのか確認することをおすすめします。

文責:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫

<参考文献>
・Willy RW, et al. Patellofemoral Pain: Clinical Practice Guidelines. J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(9):CPG1-CPG95. doi:10.2519/jospt.2019.0302.

・Malliaras P, Cook J, Purdam C, Rio E. Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(11):887-898. doi:10.2519/jospt.2015.5987.

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