急性腰痛症(ぎっくり腰)

急性腰痛症(ぎっくり腰)

急性腰痛症(ぎっくり腰)について

急性腰痛症は、突然または短期間のうちに発症する強い腰痛の総称です。
一般には「ぎっくり腰」と呼ばれています。
重い物を持ち上げた、身体をひねった、前かがみから立ち上がったなどの動作をきっかけに発症することがあります。
一方で、朝起き上がったとき、椅子から立ったとき、くしゃみをしたときなど、日常的な軽い動作で起こることもあります。
はっきりしたきっかけがなく発症する場合もあります。
急性腰痛症は特定の一つの病気を表す名称ではありません。
腰の筋肉、筋膜、靱帯、椎間板、椎間関節、仙腸関節など、さまざまな組織が痛みに関係する可能性があります。
診察や一般的な画像検査を行っても、どの組織が痛みの原因なのかを一つに特定できないことも少なくありません。
このような、重い基礎疾患や明らかな神経障害を認めない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれることがあります。
多くの急性腰痛は、適切に痛みを調整しながら日常活動を維持することで、数日から数週間のうちに改善へ向かいます。
ただし、「ぎっくり腰だと思っていたら腰椎圧迫骨折だった」「椎間板ヘルニアによる麻痺が始まっていた」「感染症や腫瘍が隠れていた」という場合もあります。
特に、発熱、安静時痛、脚の麻痺、排尿・排便障害、強い外傷などを伴う場合には、単純なぎっくり腰として自己判断しないことが重要です。

腰の構造

腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの5個の椎骨で構成されています。
腰椎の下には仙骨と尾骨があります。
腰椎には、上半身の重さを支えながら、身体を前後左右へ曲げたり、ひねったりする役割があります。

椎体

椎骨の前方にある円柱状の骨です。
身体の重さを支えています。

椎間板

椎体と椎体の間にあるクッション状の組織です。
外側の線維輪と、中央の髄核で構成されています。
衝撃を吸収しながら、腰椎の動きを支えています。

椎間関節

椎骨後方にある左右一対の関節です。
腰椎を曲げる、反らす、ひねる動きを案内し、過度な動きを抑えています。

靱帯

椎骨同士をつなぎ、腰椎の安定性を保っています。
急激な動きや強い負荷によって、靱帯周辺に小さな損傷や炎症が起こる場合があります。

筋肉・筋膜

腰椎の周囲には、脊柱起立筋、多裂筋、腰方形筋、腹筋群などがあります。
これらの筋肉が協調して働くことで、姿勢と腰椎の安定性が保たれています。
筋肉や筋膜へ急激な負担が加わると、痛みや筋けいれんが起こる場合があります。

脊柱管と神経

椎骨の中央には脊柱管があり、その中を馬尾神経や神経根が通っています。
腰椎椎間板ヘルニアなどによって神経が圧迫されると、腰痛だけでなく、臀部から脚の痛み・しびれ・筋力低下などが現れます。

ぎっくり腰という名称について

「ぎっくり腰」は一般的な通称であり、医学的に一つの病態を示す名称ではありません。
「腰の骨が外れた」「背骨がずれた」「椎間板が飛び出した」という意味でもありません。
実際には、次のような病態が急性腰痛として現れる可能性があります。
・筋肉や筋膜の損傷
・靱帯の損傷
・椎間関節周囲の炎症
・椎間板への急激な負荷
・仙腸関節周囲の障害
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰椎圧迫骨折
・腰椎分離症
・感染症
・腫瘍
・内臓や血管の病気
そのため、「以前もぎっくり腰だったから今回も同じ」とは限りません。
症状がいつもと違う場合や、危険な徴候を伴う場合には、改めて診察を受ける必要があります。

主な発症のきっかけ

重い物を持ち上げる

床にある荷物を前かがみで持ち上げたときなどに、腰へ急激な負担が加わります。
荷物を身体から離して持つ、身体をひねりながら持ち上げると、腰への負担が大きくなります。

前かがみから立ち上がる

洗顔、掃除、靴を履く、物を拾うなどの動作から身体を起こした瞬間に痛みが出ることがあります。

身体をひねる

振り向く、荷物を横へ移動させる、スポーツで回旋するなどの動作がきっかけになる場合があります。

くしゃみ・咳

くしゃみや強い咳では、腹圧が急激に上がり、腰椎や椎間板、筋肉へ負担が加わります。
咳やくしゃみと同時に臀部から脚へ痛みが走った場合には、椎間板ヘルニアによる神経刺激も考えます。

起き上がり・立ち上がり

ベッドから起き上がる、椅子から立つなどの軽い動作で発症することがあります。

長時間同じ姿勢を続けた後

長時間の運転、デスクワーク、中腰作業などの後に腰が固まり、姿勢を変えた瞬間に痛みが出る場合があります。

疲労や睡眠不足が重なったとき

筋肉の疲労、活動量の急な変化、睡眠不足、精神的な緊張などが、痛みの出現や感じ方に影響することがあります。
ただし、これらだけを腰痛の原因と断定することはできません。

主な症状

突然の強い腰痛

動作をした瞬間に、腰へ鋭い痛みが現れることがあります。
患者さまによっては、次のように表現します。
・腰に電気が走った
・腰が抜けた
・腰に力が入らない
・腰をつかまれたように痛む
・動くと激痛が走る
・身体をまっすぐにできない

動作時痛

次のような動作で痛みが強くなる傾向があります。
・寝返り
・起き上がり
・立ち上がり
・座る
・歩き始める
・前かがみ
・腰を反らす
・身体をひねる
・咳、くしゃみ
・靴下やズボンの着脱

腰の筋肉の緊張

痛みを避けようとして腰の筋肉が強く緊張し、腰を動かしにくくなることがあります。
痛みのため身体が左右や前方へ傾く場合もあります。

動き始めの痛み

同じ姿勢でしばらく休んだ後、最初に動くと強く痛むことがあります。
少し歩くと軽くなる場合と、動くほど悪化する場合があります。

臀部への痛み

腰から臀部へ痛みが広がることがあります。
腰の関節、筋肉、仙腸関節などから生じる関連痛でも臀部が痛む場合があります。

脚の痛み・しびれ

臀部から太もも、ふくらはぎ、足まで痛みやしびれが広がる場合には、腰椎椎間板ヘルニアなどによる神経根障害を考えます。
脚のしびれがあるからといって、必ず重症というわけではありません。
ただし、筋力低下、歩行障害、排尿・排便障害を伴う場合には、早急な評価が必要です。

急性腰痛症と非特異的腰痛

腰痛は、原因を明確に特定できる「特異的腰痛」と、診察や画像検査で一つの原因に特定できない「非特異的腰痛」に分けて考えることがあります。

非特異的腰痛

重い神経障害、骨折、感染症、腫瘍、内臓疾患などが確認されず、腰の筋肉、関節、椎間板などが複合的に関係すると考えられる腰痛です。
一般的な急性腰痛の多くが、この範囲に含まれます。

特異的腰痛

原因となる病気が明確な腰痛です。
代表的なものには次の病気があります。
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎圧迫骨折
・腰椎分離症
・化膿性脊椎炎
・脊椎腫瘍
・馬尾症候群
・内臓や血管の病気
治療方法や緊急性が異なるため、診察では特異的腰痛を示す徴候がないかを確認します。

単純なぎっくり腰とは考えにくい症状

次の症状がある場合には、筋肉や関節の一時的な障害だけではなく、神経障害、骨折、感染症、腫瘍などを考える必要があります。
・脚の筋力低下
・足首や足趾を動かしにくい
・両脚のしびれ
・会陰部の感覚低下
・排尿・排便障害
・安静にしても強く痛む
・夜間も痛みが続く
・発熱、悪寒
・原因不明の体重減少
・強い転倒や事故後の痛み
・軽い動作で発症した高齢者
・骨粗鬆症がある
・がんの既往がある
・ステロイド薬を長期間使用している
・免疫機能が低下している

腰椎椎間板ヘルニアとの違い

急性腰痛症では、腰の局所的な痛みが中心となります。
腰椎椎間板ヘルニアでは、突出した椎間板が神経根を刺激し、次のような症状が現れることがあります。
・臀部から脚へ走る痛み
・足のしびれ
・足首や足趾の筋力低下
・咳やくしゃみで脚の痛みが強くなる
・かかと歩きやつま先立ちが難しい
腰痛だけでなく、膝より下まで明確に広がる痛みやしびれがある場合には、神経学的な診察を行います。

腰椎圧迫骨折との違い

骨粗鬆症のある高齢者では、転倒だけでなく、物を持つ、前かがみになる、くしゃみをするなどの軽い動作で腰椎を骨折することがあります。
圧迫骨折では、次のような特徴がみられる場合があります。
・寝返りや起き上がりで非常に強く痛む
・立つと痛く、横になると軽くなる
・背骨を軽くたたくと強く痛む
・軽い転倒や尻もち後から痛む
・身長低下や背中の丸まりがある
・骨粗鬆症や過去の骨折歴がある
受傷直後はX線で変形が目立たないこともあり、症状によってはMRIを検討します。

腰椎分離症との違い

成長期のスポーツ選手で腰を反らすと痛む場合には、腰椎分離症を考えます。
腰椎分離症は関節突起間部に生じる疲労骨折です。
発症初期にはX線で異常が見えないことがあります。
運動時の腰痛が続く場合には、単なるぎっくり腰として競技を続けず、MRIなどによる評価を検討します。

感染症との違い

化膿性脊椎炎や脊椎硬膜外膿瘍では、細菌感染によって腰椎や椎間板、脊柱管周囲に炎症が起こります。
次のような方では注意が必要です。
・発熱や悪寒がある
・安静時や夜間も強く痛む
・糖尿病がある
・透析を受けている
・免疫抑制薬を使用している
・最近、感染症や手術があった
・点滴やカテーテル治療を受けた
・脚の麻痺が進行している
感染症では発熱がはっきりしないこともあります。
基礎疾患や経過を含めた評価が必要です。

腫瘍との違い

脊椎腫瘍やがんの骨転移でも急な腰痛が現れることがあります。
次のような場合には詳しい検査を検討します。
・がんの既往がある
・安静時や夜間にも痛む
・痛みが日ごとに悪化している
・原因不明の体重減少がある
・食欲や全身状態が低下している
・軽い動作で骨折した可能性がある

内臓・血管由来の腰痛

腰痛は腰椎だけでなく、内臓や血管の病気によって起こる場合があります。

尿路結石

脇腹から腰、下腹部へ非常に強い痛みが現れます。
痛みの強さに波があり、吐き気や血尿を伴うことがあります。

腎盂腎炎

腰背部痛に加え、発熱、悪寒、排尿時痛、頻尿などが現れることがあります。

婦人科疾患

子宮や卵巣の病気、妊娠に関連する異常などによって、腰痛や下腹部痛が現れる場合があります。

消化器疾患

膵炎、胆のう炎、消化管疾患などが腰や背中の痛みとして感じられる場合があります。

腹部大動脈瘤・大動脈解離

突然の激しい腰痛・背部痛・腹痛として発症することがあります。
冷汗、めまい、意識障害、血圧低下、腹部の拍動などを伴う場合には緊急対応が必要です。

馬尾症候群

腰椎椎間板ヘルニアなどによって、脊柱管内の馬尾神経が強く圧迫される病気です。
まれですが、治療が遅れると排尿・排便障害や脚の麻痺が後遺症として残る可能性があります。
次の症状は緊急徴候です。
・尿が出にくい
・尿を出せない
・尿意を感じにくい
・尿を漏らす
・便を漏らす
・肛門や陰部の感覚が鈍い
・太ももの内側がしびれる
・トイレットペーパーが触れる感覚が分かりにくい
・両脚へ力が入りにくい
・両脚の痛みやしびれが急速に悪化した
・性機能に急な変化がある
このような場合には、翌日まで様子をみず、直ちに救急受診してください。

当院で行う検査

問診

急性腰痛の診察では、痛みの特徴だけでなく、重い病気の可能性がないかを確認します。
主に次のような点を確認します。
・いつから痛むか
・どのような動作で発症したか
・転倒、事故、打撲があったか
・腰のどこが痛むか
・臀部や脚へ痛みが広がるか
・脚のしびれや筋力低下があるか
・安静時にも痛むか
・夜間に目が覚めるか
・発熱、悪寒があるか
・尿や便に変化があるか
・腹痛、吐き気、血尿があるか
・骨粗鬆症や骨折歴があるか
・がん、感染症の既往があるか
・ステロイド薬を使用しているか
・抗凝固薬を服用しているか
・妊娠の可能性があるか

視診

立位や歩行時の姿勢を確認します。
痛みを避けるため、腰を曲げたままになったり、身体が左右へ傾いたりすることがあります。

腰椎の動き

前屈、後屈、左右への傾き、回旋などを確認します。
痛みが強い場合や骨折が疑われる場合には、無理に動かしません。

触診

背骨、腰の筋肉、骨盤周辺などを軽く触れ、圧痛や筋緊張を確認します。
強く押して痛みを再現する必要はありません。

神経学的検査

脚の症状がある場合には、次の項目を確認します。
・脚の筋力
・皮膚感覚
・膝蓋腱反射
・アキレス腱反射
・つま先歩き
・かかと歩き
・歩行状態
・下肢伸展挙上テスト
馬尾症候群が疑われる場合には、会陰部の感覚や排尿機能も確認します。

腹部・内臓の診察

腰椎以外の病気が疑われる場合には、腹部の圧痛、脈、発熱、尿の状態などを確認します。

X線検査

危険な徴候がなく、典型的な急性腰痛で、症状が改善傾向にある場合には、全員へ直ちにX線検査を行うとは限りません。
X線では筋肉、椎間板、神経などを直接詳しく見ることはできません。
次のような場合に検討します。
・転倒や交通事故などの外傷がある
・骨折が疑われる
・骨粗鬆症がある
・高齢者が軽い動作で発症した
・ステロイド薬を長期間使用している
・腰椎の変形やすべりが疑われる
・痛みが改善しない
・腫瘍などを疑う骨の変化がある
X線で骨折が確認できない場合でも、初期の圧迫骨折が隠れていることがあります。
当院では、診察所見から骨折や腰椎の変形などが疑われる場合に、院内でX線検査を行います。

MRI検査

MRIでは、椎間板、神経、脊柱管、骨髄、感染症、腫瘍などを評価できます。
次のような場合には、早期のMRIを検討します。
・脚の筋力低下がある
・麻痺が進行している
・馬尾症候群が疑われる
・感染症が疑われる
・腫瘍が疑われる
・X線で分からない骨折が疑われる
・強い症状が長期間改善しない
・手術など治療方法を決める必要がある
単純な急性腰痛で、危険な徴候や神経障害がない場合には、早期にMRIを撮影しても治療方法が変わらないことがあります。
また、MRIでは症状のない方にも椎間板の変性や膨隆がみられます。
画像上の変化だけで痛みの原因を決めることはできません。
当院でMRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

CT検査

CTは骨の形や骨折を詳しく確認できます。
次のような場合に検討します。
・外傷後の骨折が疑われる
・X線で骨折が分かりにくい
・骨棘や分離症を詳しく確認する
・MRIを受けられない
・手術方法を検討する
CTは放射線被ばくを伴うため、必要性を判断して行います。
当院でCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。

血液・尿検査

一般的な急性腰痛では、必ずしも血液検査が必要とは限りません。
次のような場合に行います。
・発熱や感染症が疑われる
・炎症性疾患が疑われる
・腫瘍が疑われる
・腎臓や尿路の病気が疑われる
・全身状態が悪い
・原因不明の腰痛が続いている

急性腰痛症の治療

危険な病気や重い神経障害が否定された場合には、痛みを調整しながら日常生活への復帰を目指します。
治療の目的は次のとおりです。
・痛みを軽減する
・安全に身体を動かせるようにする
・長期の寝たきりを防ぐ
・仕事や家事への復帰を支える
・腰痛の慢性化を防ぐ
・再発しにくい身体の使い方を身につける

安静について

痛みが非常に強いときには、一時的に楽な姿勢で休むことがあります。
ただし、長期間のベッド上安静は一般的には推奨されません。
横になり続けると、次のような問題が起こる可能性があります。
・筋力と体力の低下
・腰のこわばり
・睡眠リズムの乱れ
・仕事や生活への復帰の遅れ
・痛みに対する不安の増加
・高齢者の血栓症や肺炎
危険な病気が否定されている場合には、痛みが許す範囲で、トイレ、食事、短い歩行などの日常活動を続けます。
「痛みが完全になくなるまで一切動かない」という対応は避けます。
ただし、激痛を我慢して無理に運動する必要もありません。

楽な姿勢

仰向け
膝の下にクッションや丸めた布団を入れ、股関節と膝を軽く曲げると楽になる場合があります。
横向き
膝を軽く曲げ、両膝の間にクッションを挟むと腰への負担を軽減できる場合があります。
椅子に座る
深く腰掛け、背もたれを利用します。
長時間座り続けず、痛みが許す範囲で姿勢を変えます。
どの姿勢が楽かには個人差があります。
腰を無理にまっすぐ伸ばす必要はありません。

起き上がり方

急性期に仰向けから勢いよく起き上がると、痛みが強くなることがあります。
一般的には次のように起き上がります。
1.両膝を軽く曲げる
2.肩と骨盤を一緒に動かして横向きになる
3.脚をベッドの外へ下ろす
4.腕でベッドを押しながら上半身を起こす
5.急に腰をひねらず座位になる
床に布団を敷いている場合には、椅子や壁など安定した物を利用して立ち上がります。
転倒しそうな場合には、周囲の方に介助を依頼してください。

冷却・温熱

発症直後で熱感や腫れを感じる場合には、タオルで包んだ保冷剤を短時間当てると楽になることがあります。
冷やしすぎによる凍傷に注意してください。
筋肉の緊張が強く、温めると楽になる場合には、入浴や蒸しタオルなどを利用できます。
急性腰痛では、冷却と温熱のどちらが必ず優れているとは限りません。
本人が心地よく、症状が悪化しない方法を選びます。
次の場合には自己判断で温めず、受診してください。
・発熱がある
・腰に赤みや腫れがある
・感染症が疑われる
・外傷直後で出血が疑われる

薬物療法

症状、年齢、基礎疾患、服用中の薬などに応じて鎮痛薬を使用します。

消炎鎮痛薬

腰痛を軽減するために使用することがあります。
次のような副作用に注意が必要です。
・胃炎、胃潰瘍
・腎機能障害
・血圧上昇
・むくみ
・心血管系への影響
・喘息症状
・出血傾向
高齢者、腎臓病、胃潰瘍、心臓病、抗凝固薬使用中の方などでは慎重に選択します。
必要な場合は、できるだけ少ない有効量を短期間使用します。

アセトアミノフェン

年齢や基礎疾患に応じて使用される場合があります。
肝機能障害や、風邪薬などに含まれる同じ成分との重複に注意します。

筋緊張を和らげる薬

筋肉のけいれんや緊張が強い場合に使用することがあります。
眠気、ふらつきなどに注意が必要です。

強い鎮痛薬

痛みが非常に強く、ほかの治療で管理できない場合に限り、症例を選んで短期間使用することがあります。
眠気、吐き気、便秘、呼吸抑制、依存などの問題があるため、自己判断で使用しません。
市販薬を使用する場合にも、複数の鎮痛薬や風邪薬を重ねて服用しないでください。

外用薬

貼り薬や塗り薬などを使用することがあります。
皮膚にかぶれ、傷、発疹がある場合には注意が必要です。
外用薬にも消炎鎮痛成分が含まれているため、内服薬との重複や基礎疾患を確認します。

そのほかの保存療法

コルセット

痛みが強く、起き上がりや歩行が難しい時期に、腰部コルセットを一時的に使用することがあります。
コルセットには、腰の動きを抑え、動作時の安心感を高める目的があります。
ただし、すべての急性腰痛に必要なものではありません。
コルセットで筋肉や靱帯の損傷が直接治るわけではなく、長期間常に使用すると、体幹筋の活動が低下する可能性があります。
使用目的と期間を確認し、痛みが改善した後も自己判断で長期間使用しないでください。

注射・神経ブロック

一般的な非特異的急性腰痛に対して、脊椎周囲への注射を一律に行うものではありません。
臀部から脚へ広がる強い神経痛があり、腰椎椎間板ヘルニアなどが疑われる場合には、症例を選んで神経根ブロックや硬膜外ブロックを検討することがあります。
注射には次のようなリスクがあります。
・感染
・出血、血腫
・神経損傷
・硬膜穿刺、頭痛
・薬剤アレルギー
・血糖値上昇
・一時的な脚の脱力
・効果がない、短期間で戻る
注射は痛みを軽減する治療であり、すべての急性腰痛の原因を治すものではありません。

リハビリテーション

急性の強い痛みが少し落ち着いた後は、腰を過度にかばい続けず、日常動作を段階的に再開します。
リハビリテーションでは、次の内容を行うことがあります。
・痛みを悪化させにくい寝返り・起き上がり
・安全な立ち上がり
・歩行練習
・股関節や胸椎の動きの改善
・体幹筋の機能訓練
・臀部・下肢の筋力訓練
・物の持ち上げ方の指導
・仕事や家事動作の調整
・再発予防の運動
発症直後から、強い腹筋運動や高負荷の筋力トレーニングを行う必要はありません。
運動は、痛みの程度と原因に合わせて段階的に進めます。
運動中に次の症状が現れた場合には中止してください。
・臀部から脚へ痛みが広がる
・脚のしびれが強くなる
・足へ力が入りにくくなる
・会陰部がしびれる
・排尿・排便に変化が出る
・腰痛が長時間大きく悪化する

ストレッチについて

急性期に痛みを我慢して腰を深く曲げたり、強く反らしたりするストレッチは避けます。
筋肉を伸ばせば必ずぎっくり腰が早く治るわけではありません。
腰を直接強く動かすのではなく、痛みの少ない範囲で股関節、臀部、太ももなどを軽く動かすことから始めます。
反動をつけず、症状が強くならない範囲で行います。

症状の経過

危険な病気や重い神経障害がない急性腰痛は、多くの場合、数日から数週間で徐々に改善します。
最初の数日は寝返りや起き上がりで強く痛んでも、少しずつ歩ける時間が増えていくことがあります。
回復の途中では、日によって痛みが強くなったり弱くなったりすることがあります。
痛みが一時的に増えたからといって、必ずしも腰が再び大きく傷ついたとは限りません。
一方、次のような場合には再評価が必要です。
・日ごとに痛みが強くなる
・安静時にも痛むようになった
・発熱や全身症状が出た
・脚のしびれや筋力低下が出た
・歩けなくなってきた
・排尿・排便に変化が出た
・数週間たってもほとんど改善しない

仕事・家事への復帰

危険な病気が否定されている場合には、痛みが完全になくなるまで仕事や家事をすべて休む必要はありません。
仕事内容に応じて、負担を一時的に調整します。

デスクワーク

・長時間座り続けない
・定期的に立ち上がる
・背もたれを利用する
・キーボードやモニターの位置を調整する
・座ることがつらい場合は立位作業を組み合わせる

立ち仕事

・同じ場所に立ち続けない
・片足を低い台へ交互に乗せる
・短い休憩を入れる
・腰を反らした姿勢を続けない

重量物作業

痛みが強い時期は、重量物の運搬を控えます。
復帰時には、荷物へ身体を近づけ、膝と股関節を使って持ち上げます。
腰をひねりながら持ち上げず、足の向きを変えて移動します。

介護・抱き上げ動作

介助する相手へできるだけ近づき、腰だけで持ち上げないようにします。
福祉用具や複数人での介助を利用します。

自動車の運転

強い痛みで身体を素早く動かせない場合や、鎮痛薬による眠気・ふらつきがある場合には運転を避けます。
長距離運転では、途中で休憩し、短時間歩きます。
乗り降りの際には、片脚ずつひねって降りるのではなく、身体と両脚の向きをそろえて動かします。

スポーツへの復帰

スポーツは段階的に再開します。
一般的には次の状態を確認します。
・安静時の強い痛みがない
・日常生活を行える
・歩行で痛みが大きく悪化しない
・腰と股関節を必要な範囲まで動かせる
・脚の筋力低下がない
・軽い競技動作で痛みが広がらない
・運動翌日に著しく悪化しない
歩行や軽い有酸素運動から始め、基礎的な筋力訓練、競技動作、通常練習へと段階的に進めます。
痛み止めで症状を隠したまま、いきなり試合や高負荷練習へ復帰することは避けます。

再発予防

ぎっくり腰の再発を完全に防ぐ方法はありませんが、次の対策によって腰への負担を調整できます。

活動量を維持する

痛みがない時期にも、歩行や軽い有酸素運動を続けます。

体幹・下肢筋力を保つ

腹筋だけでなく、背筋、臀筋、股関節周囲筋、脚の筋力をバランスよく保ちます。

急に負荷を増やさない

久しぶりの運動、大掃除、引っ越しなどで急に活動量を増やすと、腰へ負担が集中します。

荷物を身体へ近づける

腕を伸ばしたまま持つと、腰への負担が大きくなります。

腰だけで曲げない

床の物を取る際には、股関節と膝を使って身体を下げます。

ひねりながら持ち上げない

持ち上げた後は、腰をひねらず足を動かして方向を変えます。

長時間同じ姿勢を続けない

座位でも立位でも、定期的に姿勢を変えます。

睡眠・休養を確保する

疲労や睡眠不足が続くと、筋肉の回復や痛みへの対処が難しくなる場合があります。

喫煙を見直す

喫煙は椎間板の変性や腰痛の慢性化に関連する可能性があります。

自宅での注意点

危険な病気が否定され、自宅療養を行う場合には次の点に注意してください。
・長期間寝たままにならない
・痛みが許す範囲で短く歩く
・急に重い物を持たない
・腰を深くひねらない
・痛みを我慢して強いストレッチをしない
・処方薬、市販薬を重複して使用しない
・飲酒後の転倒に注意する
・脚の筋力としびれを確認する
・排尿・排便の変化を確認する
・発熱や夜間痛が出ていないか確認する
・日ごとの回復傾向を確認する

早めに受診すべき症状

次のような場合には、整形外科を受診してください。
・初めて経験する非常に強い腰痛
・立つ、歩くことが難しい
・痛みが数日たっても改善しない
・日ごとに痛みが悪化している
・臀部や脚へ痛み・しびれが広がる
・咳やくしゃみで脚へ痛みが走る
・足首や足趾へ力が入りにくい
・つまずきやすくなった
・転倒や打撲後から痛む
・骨粗鬆症がある
・ステロイド薬を長期間使用している
・がんの既往がある
・発熱や悪寒がある
・安静時や夜間にも強く痛む
・原因不明の体重減少がある
・血尿、排尿時痛、腹痛などを伴う

直ちに救急受診すべき症状

次の症状がある場合には、単純なぎっくり腰として様子をみず、直ちに救急受診してください。
・尿を出せない
・急に尿や便を漏らすようになった
・尿意や便意が分からなくなった
・肛門、陰部、臀部内側の感覚が鈍い
・トイレットペーパーが触れる感覚が分かりにくい
・両脚へ急に力が入らなくなった
・脚の麻痺が急速に進行している
・急に立てない、歩けない
・大きな交通事故や高所転落後である
・発熱と激しい腰痛がある
・意識がもうろうとしている
・突然の激しい腰痛や腹痛に冷汗・めまいを伴う
・腹部に強い拍動を感じる

急な腰痛でお困りの方へ

診察では、発症状況、痛みの特徴、脚の神経症状、発熱、外傷歴、骨粗鬆症、がんや感染症の既往などを確認します。
危険な徴候がなく、典型的な急性腰痛で改善傾向にある場合には、必ずしも直ちにX線やMRIを行う必要はありません。
一方、骨折、感染症、腫瘍、進行する神経障害、馬尾症候群などが疑われる場合には、X線、MRI、CT、血液検査などを速やかに検討します。
一般的な急性腰痛では、鎮痛薬、短期間の負担調整、日常活動の維持、必要に応じたリハビリテーションなどの保存療法を行います。
「痛いから一切動かない」「骨がずれたと思って強い矯正を受ける」といった対応ではなく、危険な病気がないことを確認したうえで、安全に身体を動かしていくことが大切です。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックでは、問診、身体診察、神経学的検査、X線検査などを行い、一般的な急性腰痛だけでなく、腰椎圧迫骨折、腰椎椎間板ヘルニア、感染症、腫瘍、馬尾症候群などの可能性を確認します。
症状に応じて、薬物療法、コルセット、リハビリテーション、日常生活や仕事動作の指導などを行います。
MRI検査やCT検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
進行する麻痺、排尿・排便障害、重い骨折、感染症などが疑われる場合には、救急医療や専門的治療に対応する医療機関へ速やかにご紹介します。
突然の腰痛で動くことが難しい場合や、脚の痛み・しびれを伴う場合には、自己判断で強い矯正や無理なストレッチを行わず、早めにご相談ください。

監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫