肘頭滑液包炎
肘頭滑液包炎について
肘頭滑液包炎は、肘の後方にある「肘頭滑液包」に炎症が起こり、液体がたまって腫れる病気です。
「肘頭滑液包炎」と呼ばれることもあります。
肘の後ろには、肘頭という硬い骨の出っ張りがあります。肘頭と皮膚の間には、薄い袋状の組織である肘頭滑液包が存在します。
滑液包には少量の液体が含まれており、皮膚や皮下組織が骨の表面を滑らかに動けるよう、クッションの役割を果たしています。
通常、肘頭滑液包は薄く平らな状態で、外から触れてもほとんど分かりません。
肘を硬い場所へ繰り返しつく、肘を強くぶつけるなどの刺激が加わると、滑液包の内部に液体が増え、肘の後ろがこぶのように腫れることがあります。
また、肘の傷から細菌が入り、滑液包内に感染を起こす場合があります。
感染を伴わない「非感染性滑液包炎」と、細菌感染による「感染性滑液包炎」では、必要な治療が異なります。
感染性滑液包炎を放置すると、膿がたまる、周囲の皮膚や皮下組織へ炎症が広がる、まれに全身へ感染が及ぶといった可能性があります。
肘後方の腫れに赤み、熱感、強い痛み、発熱などを伴う場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
滑液包とは
滑液包は、骨と皮膚、腱、筋肉などがこすれやすい場所に存在する袋状の組織です。
内部には少量の滑液があり、組織同士の摩擦を減らす働きがあります。
身体には複数の滑液包があり、肩、肘、股関節、膝、かかとなどに存在します。
肘頭滑液包は、肘を曲げ伸ばしした際に、肘頭の上を皮膚が滑らかに動くことを助けています。
肘頭は皮膚のすぐ下にあり、筋肉や脂肪による保護が少ないため、外部からの圧迫や打撲の影響を受けやすい部位です。
滑液包へ刺激が加わると、炎症反応によって液体が増えます。
液体の量が多くなると、肘の後ろが丸く盛り上がり、押したときの痛みや肘を深く曲げたときの圧迫感が現れます。
肘頭滑液包炎の種類
非感染性肘頭滑液包炎
細菌感染を伴わない滑液包炎です。
肘への繰り返す圧迫、打撲、スポーツ、結晶性関節炎などが原因となります。
肘の後ろが大きく腫れていても、痛みが軽く、赤みや発熱がない場合があります。
感染性肘頭滑液包炎
傷などから滑液包内へ細菌が入り、感染を起こした状態です。
肘後方の腫れに加えて、赤み、熱感、強い圧痛などが現れます。
発熱、悪寒、だるさなどの全身症状を伴うこともあります。
感染の有無は外見だけで判断できないことがあるため、症状に応じて滑液包液の検査や血液検査を行います。
肘頭滑液包炎の原因
肘を硬い場所へ繰り返しつく
机、床、肘掛けなどへ肘を長時間ついていると、肘頭滑液包に繰り返し圧力がかかります。
すぐには腫れず、数週間から数か月かけて徐々に大きくなる場合があります。
次のような方にみられることがあります。
・デスクワークで肘を机につく方
・運転中に肘を窓枠や肘掛けへ置く方
・床での作業が多い方
・配管、整備、清掃などで肘をつく作業が多い方
・頬杖をつく習慣がある方
・車椅子の肘掛けへ肘を置く時間が長い方
肘への打撲
転倒して肘を直接ぶつけた場合や、スポーツ中に肘へ衝撃が加わった場合に、滑液包内へ出血や炎症が起こることがあります。
受傷直後から腫れる場合もあれば、数時間から数日かけて腫れが大きくなる場合もあります。
強い外傷後には、肘頭骨折などを伴っていないかを確認する必要があります。
スポーツやトレーニング
プランク、腕立て伏せ、格闘技など、肘の後方へ繰り返し圧力や摩擦が加わる運動で発症することがあります。
床の硬さ、運動時間、フォームなども影響します。
傷からの細菌感染
肘頭周囲の擦り傷、切り傷、刺し傷、虫刺されなどから細菌が入り、感染性滑液包炎を起こすことがあります。
肘頭滑液包は皮膚のすぐ下にあるため、小さな傷からでも感染する可能性があります。
感染した滑液包内には濁った液体や膿がたまることがあります。
明らかな傷が見当たらなくても、感染性滑液包炎を起こす場合があります。
痛風・偽痛風
尿酸の結晶が沈着する痛風や、ピロリン酸カルシウム結晶が関係する偽痛風によって、滑液包に急性炎症が起こることがあります。
肘が急に赤く腫れ、強く痛む場合があります。
滑液包液を採取し、結晶の有無を調べることがあります。
関節リウマチなどの炎症性疾患
関節リウマチなどの全身性疾患に伴い、肘頭滑液包が腫れることがあります。
両側の肘が腫れる場合や、手指など複数の関節に痛みや腫れがある場合には、基礎疾患を確認します。
骨棘
肘頭の先端に骨棘と呼ばれる骨のとげが形成されていると、滑液包へ繰り返し刺激が加わり、肘頭滑液包炎を繰り返すことがあります。
X線検査で骨棘を確認できる場合があります。
糖尿病・免疫機能の低下
糖尿病、免疫機能を抑える薬の使用、慢性的な皮膚疾患などがある方では、感染を起こしやすくなる場合があります。
感染性滑液包炎が疑われる場合には、基礎疾患や服用中の薬も確認します。
肘頭滑液包炎の主な症状
肘後方の腫れ
最も代表的な症状は、肘の後ろに生じる丸い腫れです。
小さなふくらみから、鶏卵ほどの大きさまで腫れる場合があります。
皮膚の下に水がたまっているように柔らかく触れることもあれば、炎症が長期化して壁が厚くなり、硬く感じることもあります。
滑液包炎の初期には、痛みよりも腫れが先に目立つ場合があります。
肘をついたときの痛み
机や床へ肘をつくと、腫れた滑液包が骨と接触して痛みます。
非感染性では、肘をつかなければ痛みが少ないこともあります。
肘を曲げたときの圧迫感
腫れが大きくなると、肘を深く曲げた際に皮膚や滑液包が張り、痛みや圧迫感が現れます。
食事、洗顔、着替えなどで肘を曲げにくく感じることがあります。
赤み・熱感
感染性滑液包炎では、肘後方の皮膚が赤くなり、周囲より熱く感じることがあります。
非感染性の炎症でも軽い熱感や赤みが現れることはありますが、赤みが広がる、強い熱感がある、痛みが急激に強くなる場合には感染を疑います。
強い痛み
感染性滑液包炎や結晶性関節炎では、軽く触れただけでも強く痛むことがあります。
何もしていなくてもズキズキ痛む場合があります。
発熱・悪寒・全身倦怠感
感染が強い場合には、発熱、悪寒、だるさ、食欲低下などの全身症状が現れることがあります。
感染が周囲や血液中へ広がる可能性があるため、早急な診察が必要です。
傷・膿
肘頭周囲に傷がある場合や、腫れた部分から液体や膿が出ている場合には、感染性滑液包炎の可能性があります。
自分で膿を絞り出したり、針を刺したりしないでください。
肘の動きは保たれることが多い
肘頭滑液包炎では、炎症の中心が関節の外側にあるため、軽症であれば肘関節そのものの動きは比較的保たれます。
ただし、腫れが大きい場合には、深く曲げる動作が制限されることがあります。
肘を少し動かすだけでも関節内部が激しく痛む場合や、ほとんど動かせない場合には、化膿性関節炎、骨折など別の病気も確認する必要があります。
肘頭滑液包炎の経過
非感染性の肘頭滑液包炎は、肘への圧迫や負担を減らすことで、徐々に腫れが軽くなることがあります。
改善には数週間以上かかる場合があります。
液体が吸収されても、滑液包の壁が厚く残ったり、再び肘をつくことで腫れが再発したりすることがあります。
繰り返し穿刺して液体を抜いても、原因となる圧迫や刺激が続けば再び液体がたまることがあります。
感染性滑液包炎では、抗菌薬や穿刺などの治療が必要です。
感染を放置すると、膿が増える、皮膚が破れて排液する、周囲へ炎症が広がることがあります。
治療を行っても改善しない感染性滑液包炎や、何度も再発して生活に支障がある非感染性滑液包炎では、滑液包を切除する手術が検討されることがあります。
他の病気との違い
肘頭骨折との違い
肘頭骨折では、転倒や打撲後に肘後方へ強い痛みと腫れが現れます。
骨片のずれが大きい場合には、自分の力で肘を伸ばせないことがあります。
肘頭滑液包炎では皮膚の下に液体がたまった柔らかい腫れが中心ですが、打撲後には骨折と滑液包炎が同時に起こる場合もあります。
外傷後の強い痛み、骨の圧痛、皮下出血などがある場合には、X線検査を行います。
化膿性肘関節炎との違い
化膿性肘関節炎は、肘関節の内部に細菌感染が起こった状態です。
肘をわずかに動かすだけでも激しく痛み、関節全体の可動域が大きく制限されることがあります。
感染性肘頭滑液包炎は関節外の滑液包に起こりますが、症状だけでは区別が難しい場合があります。
いずれも早期治療が必要です。
蜂窩織炎との違い
蜂窩織炎は、皮膚や皮下組織に細菌感染が広がった状態です。
肘周囲の赤みが広範囲に広がり、境界がはっきりしない腫れや熱感がみられることがあります。
感染性滑液包炎と蜂窩織炎を同時に発症する場合もあります。
痛風・偽痛風との違い
痛風や偽痛風でも、肘が急に赤く腫れて強く痛むことがあります。
感染症と症状が似ているため、滑液包液の培養検査や結晶検査、血液検査などを行うことがあります。
尿酸値が高いだけで、感染を否定することはできません。
変形性肘関節症との違い
変形性肘関節症では、肘関節内部の痛み、曲げ伸ばしの制限、引っかかり、ロッキングなどが現れます。
肘頭滑液包炎では、肘後方の皮下の腫れが中心です。
変形性肘関節症による骨棘が滑液包を刺激し、両方を合併することもあります。
粉瘤・ガングリオン・軟部腫瘍との違い
肘後方のしこりがすべて滑液包炎とは限りません。
粉瘤、ガングリオン、脂肪腫、そのほかの軟部腫瘍などでも腫瘤が生じます。
滑液包炎では超音波検査で内部に液体が確認されることが多いですが、硬いしこり、徐々に大きくなる腫瘤、典型的ではない画像所見がある場合には、MRI検査や専門医療機関での評価を検討します。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
問診・視診
腫れが始まった時期、外傷や肘への圧迫、発熱などを確認します。
主に次のような点についてお伺いします。
・いつから肘が腫れているか
・転倒や打撲があったか
・仕事や生活で肘をつくことが多いか
・腫れが徐々に大きくなったか、急に現れたか
・肘が赤い、熱い、強く痛むか
・肘周囲に傷、虫刺され、かさぶたなどがあるか
・発熱、悪寒、だるさがあるか
・液体や膿が出ていないか
・痛風、関節リウマチ、糖尿病などがあるか
・同じ場所が以前にも腫れたことがあるか
・抗凝固薬や免疫を抑える薬を服用しているか
肘後方の腫れの大きさ、皮膚の赤み、傷、排液などを確認します。
触診・身体検査
腫れの硬さ、熱感、圧痛、液体がたまっている感覚などを確認します。
肘を曲げ伸ばしし、関節の動きが保たれているかを評価します。
次のような状態を確認します。
・肘を軽く動かすだけで強く痛まないか
・腫れが肘後方だけに限られているか
・赤みが前腕や上腕へ広がっていないか
・骨に限局した強い圧痛がないか
・肘を自分の力で伸ばせるか
・手指にしびれや筋力低下がないか
感染が疑われる腫れを強く揉んだり、何度も押したりはしません。
X線検査
X線検査では滑液包内の液体を直接詳しく確認することはできませんが、次のような状態を調べる際に役立ちます。
・肘頭骨折
・肘頭の骨棘
・変形性肘関節症
・関節内遊離体
・異物
・石灰沈着
・そのほかの骨の異常
転倒や打撲後の発症、骨に強い圧痛がある場合、繰り返す滑液包炎などではX線検査を行います。
超音波検査
超音波検査では、肘頭滑液包内にたまった液体を確認できます。
次のような状態を評価します。
・滑液包内の液体量
・滑液包壁の肥厚
・内部の隔壁や沈殿物
・血液や膿が疑われる複雑な液体
・周囲組織の炎症
・肘頭滑液包以外のしこり
・上腕三頭筋腱の状態
・肘関節内の液体貯留
見た目では滑液包炎に似ている腫瘤との鑑別にも役立ちます。
穿刺を行う場合には、必要に応じて超音波で滑液包、周囲の血管、針先などを確認しながら行います。
ただし、超音波画像だけで感染の有無を完全に判断することはできません。
皮膚所見、全身症状、血液検査、滑液包液検査などを合わせて判断します。
滑液包穿刺・滑液包液検査
感染、痛風、偽痛風などが疑われる場合には、注射針を用いて滑液包内の液体を採取することがあります。
採取した液体について、次のような検査を行います。
・液体の色や濁り
・細胞数
・細菌培養
・薬剤感受性
・尿酸結晶
・ピロリン酸カルシウム結晶
細菌培養では、感染の原因となる菌と、効果が期待できる抗菌薬を調べます。
穿刺によって滑液包内の圧力が下がり、張りや痛みが軽くなる場合があります。
一方、非感染性の滑液包炎であっても、穿刺後に再び液体がたまることがあります。
穿刺には出血や感染などのリスクがあるため、腫れているからといって必ず行うものではありません。
皮膚に感染や傷がある場所を通して安易に穿刺することはできません。
血液検査
感染性滑液包炎、痛風、関節リウマチなどが疑われる場合には、血液検査を行うことがあります。
炎症反応、白血球数、尿酸値、腎機能、血糖値などを、症状や基礎疾患に応じて確認します。
血液検査だけで感染性か非感染性かを確定することはできないため、診察所見や滑液包液検査と合わせて判断します。
MRI検査
典型的な肘頭滑液包炎では、問診、診察、超音波検査、必要に応じたX線検査で評価できることが多く、MRI検査が必要になることは多くありません。
次のような場合にはMRI検査を検討します。
・腫れの原因がはっきりしない
・固い腫瘤がある
・深い部分まで感染が広がっている可能性がある
・上腕三頭筋腱などの損傷が疑われる
・治療を続けても改善しない
・軟部腫瘍との鑑別が必要である
・手術を検討している
当院にはMRI装置は設置しておりません。
MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内します。
肘頭滑液包炎に対する治療
治療方法は、感染の有無、腫れや痛みの程度、原因、再発回数などによって異なります。
非感染性滑液包炎では、肘への圧迫を避けることを中心に保存療法を行います。
感染性滑液包炎では、抗菌薬、穿刺・排液などが必要です。
感染が強い場合や保存療法で改善しない場合には、入院治療や手術が必要になることがあります。
非感染性肘頭滑液包炎の治療
肘への圧迫を避ける
肘頭滑液包炎の治療では、原因となる圧迫や刺激を減らすことが重要です。
次のような点を意識します。
・机へ肘を直接つかない
・頬杖を避ける
・運転中に肘を窓枠へ置かない
・床作業では肘当てを使用する
・肘をつくプランクなどを一時的に控える
・腫れた部分を繰り返し押さない
・きつい衣服やサポーターで圧迫しすぎない
肘当て・保護パッド
クッション性のある肘当てを使用し、滑液包への直接的な衝撃を減らします。
肘頭の真上を強く締めるものではなく、周囲を柔らかく保護できるものを使用します。
長時間装着する場合には、皮膚の赤み、しびれ、血流の変化がないかを確認します。
冷却
炎症や熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てることで、腫れや痛みが軽くなる場合があります。
皮膚へ直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないよう注意します。
薬物療法
痛みや炎症に対して、消炎鎮痛薬や外用薬などを使用することがあります。
薬の効果や副作用、胃腸・腎臓の状態、ほかに服用している薬などを確認して処方します。
薬物療法は症状を軽減するための治療であり、肘への圧迫が続けば再発する可能性があります。
一時的な固定
肘を曲げた際の痛みや皮膚の張りが強い場合には、短期間シーネや装具を使用して、肘を保護することがあります。
長期間固定すると肘が固くなり、筋力も低下するため、必要性を確認して使用します。
滑液包穿刺
腫れが大きく、張りや痛みによって日常生活に支障がある場合には、滑液包内の液体を抜く穿刺を検討することがあります。
液体を抜いても、滑液包壁の炎症や肘への圧迫が続くと、再び液体がたまる可能性があります。
穿刺には感染を引き起こすリスクもあるため、腫れがあるすべての方に行うわけではありません。
採取した液体に感染や結晶性関節炎が疑われる場合には、検査へ提出します。
ステロイド注射
感染が否定され、圧迫回避や薬物療法などを行っても腫れや痛みが続く場合には、穿刺後に滑液包内へステロイドを注射する方法が検討されることがあります。
ただし、ステロイド注射には感染、皮膚や皮下組織の萎縮、皮膚の色調変化、腱への影響などのリスクがあります。
肘頭滑液包は皮膚のすぐ下にあるため、適応を慎重に判断します。
感染が疑われる場合には、ステロイド注射は行いません。
リハビリテーション
単純な肘頭滑液包炎では、肘関節の動きが保たれていることが多く、積極的な筋力訓練が必要にならない場合があります。
肘を長期間動かさず可動域が低下している場合には、炎症が落ち着いた後に、痛みのない範囲で曲げ伸ばしを行います。
仕事やスポーツが原因となっている場合には、次のような点を確認します。
・肘をつく作業姿勢
・作業台や椅子の高さ
・肘当ての使用方法
・プランクや腕立て伏せのフォーム
・肘へ直接体重がかかる時間
・休憩の取り方
滑液包を強く揉む、押しつぶす、腫れを散らそうとしてマッサージすることは避けます。
感染性肘頭滑液包炎の治療
抗菌薬
感染性滑液包炎が疑われる場合には、抗菌薬を使用します。
症状が軽く全身状態が安定している場合には、内服の抗菌薬を使用することがあります。
発熱や全身症状がある、炎症が広範囲に広がっている、免疫機能が低下している場合などには、入院して点滴による抗菌薬治療が必要になることがあります。
可能であれば滑液包液を採取し、培養検査の結果に応じて抗菌薬を調整します。
穿刺・排液
感染した滑液包内に液体や膿がたまっている場合には、穿刺して排液することがあります。
排液によって内部の圧力を下げるとともに、培養検査へ提出して原因菌を確認します。
一度の穿刺だけでは十分に排液できず、複数回の処置が必要になることがあります。
切開排膿
膿が多い、穿刺では十分に排液できない、内部が複数の空間に分かれている場合などには、皮膚を切開して膿を排出する処置が必要になることがあります。
感染源となる傷の処置
肘周囲に傷、異物、壊死した皮膚などがある場合には、洗浄や傷の処置を行います。
自宅で傷を押したり、膿を絞ったりしないでください。
専門医療機関への紹介
次のような場合には、入院や手術が可能な医療機関へご紹介します。
・高熱や悪寒がある
・赤みや腫れが急速に広がっている
・膿が大量にたまっている
・内服抗菌薬で改善しない
・糖尿病や免疫機能の低下がある
・化膿性肘関節炎や骨髄炎が疑われる
・繰り返し排液しても感染が改善しない
・全身状態が悪い
自宅でのセルフケア
感染が疑われない軽度の肘頭滑液包炎では、肘への圧迫を避けることが基本です。
日常生活では、次の点を意識しましょう。
・机や床へ肘を直接つかない
・頬杖をつかない
・肘掛けへ長時間肘を置かない
・クッションや肘当てを使用する
・肘をつくプランクなどを控える
・腫れた部分を揉まない
・腫れを強く押しつぶさない
・針を刺して液体を抜かない
・傷やかさぶたを清潔に保つ
・肘の傷を放置しない
痛みや熱感がある場合には、タオルで包んだ保冷剤を短時間当てることで症状が軽くなることがあります。
市販のサポーターを使用する場合には、肘頭を強く圧迫しないものを選びます。
きつく巻きすぎると、皮膚障害、しびれ、血流障害などを起こす可能性があります。
肘後方の腫れを自分で針を刺して抜くことは、絶対に避けてください。
皮膚の細菌が滑液包内へ入り、感染性滑液包炎を起こす危険があります。
肘頭滑液包炎でお悩みの方へ
肘後方の腫れは、肘頭滑液包炎だけでなく、肘頭骨折、痛風、感染症、粉瘤、ガングリオン、軟部腫瘍などによっても起こります。
次のような症状がある場合は、早めにご相談ください。
・肘の後ろがこぶのように腫れている
・肘をつくと痛む
・肘を曲げると腫れが張る
・打撲後から腫れが続いている
・腫れが徐々に大きくなっている
・同じ場所の腫れを繰り返している
・仕事やスポーツに支障がある
・市販薬や圧迫回避で改善しない
・痛風や関節リウマチを指摘されている
特に、次のような症状がある場合には、感染性滑液包炎や骨折などが疑われます。
・肘が赤く熱を持っている
・軽く触れただけでも強く痛む
・発熱や悪寒がある
・赤みが前腕や上腕へ広がっている
・肘の傷から液体や膿が出ている
・急速に腫れが大きくなっている
・糖尿病や免疫機能の低下がある
・肘をほとんど動かせない
・転倒後から強い痛みがある
・自分の力で肘を伸ばせない
・手や指にしびれがある
・手が冷たい、白い、青紫色になっている
高熱、悪寒、急速に広がる赤み、意識がぼんやりするなどの症状がある場合には、感染が全身へ影響している可能性があります。速やかに救急医療機関を受診してください。
当院では、問診、身体検査、X線検査、超音波検査などによって、滑液包内の液体、骨折や骨棘、周囲組織の状態を評価します。
感染、痛風、偽痛風などが疑われる場合には、必要に応じて滑液包液検査や血液検査を行います。
抗菌薬の点滴、切開排膿、滑液包切除術、入院治療などが必要と判断した場合には、肘関節・上肢外科や感染症治療が可能な提携医療機関へ速やかにご紹介します。
肘への圧迫を避ける生活指導、薬物療法、必要に応じた穿刺・検査など、原因と症状に合わせた治療をご提案します。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫