肘離断性骨軟骨炎
肘離断性骨軟骨炎について
肘離断性骨軟骨炎(ひじりだんせいこつなんこつえん)は、肘関節を構成する骨と関節軟骨の一部が傷み、周囲の骨から分離しやすくなる病気です。
肘では、上腕骨の外側にある「上腕骨小頭」という部分に多く発症します。
上腕骨小頭は、前腕の親指側にある橈骨の先端「橈骨頭」と接する部分です。肘を曲げ伸ばししたり、手のひらを上や下へ向けたりする際に、上腕骨小頭と橈骨頭の間には繰り返し圧力が加わります。
成長期に投球動作や体操競技などを繰り返すと、まだ発育途中にある上腕骨小頭の骨や軟骨へ負担が集中します。
その結果、軟骨の下にある骨への血流が低下したり、微細な損傷が繰り返されたりして、骨と軟骨の一部が周囲から分離することがあります。
初期には骨軟骨片が元の位置に保たれているため、運動後の軽い痛みや違和感しか現れない場合があります。
病気が進行すると、骨軟骨片が不安定になり、亀裂が入ったり、関節内へ剥がれ落ちたりします。
剥がれた骨軟骨片は「関節内遊離体」となり、肘の引っかかりやロッキングを起こすことがあります。
離断性骨軟骨炎は、早期に発見して肘への負担を減らすことで、自然に修復する可能性があります。
一方、痛みを我慢して投球やスポーツを続けると病変が進行し、手術が必要になったり、将来的に変形性肘関節症へ進行したりする可能性があります。
上腕骨小頭と橈骨頭の構造
肘関節は、上腕骨、尺骨、橈骨の3本の骨によって構成されています。
上腕骨小頭は、上腕骨の肘側にある丸い関節面で、橈骨頭と向かい合っています。
投球動作では、肘の内側が引っ張られる一方で、肘の外側にある上腕骨小頭と橈骨頭には圧迫する力が加わります。
この圧迫が繰り返されることで、成長期の上腕骨小頭に微細な損傷が蓄積すると考えられています。
上腕骨小頭の表面は、滑らかな関節軟骨で覆われています。
その下には軟骨下骨と呼ばれる骨があり、関節軟骨を支えています。
離断性骨軟骨炎では、この軟骨下骨が傷み、表面の関節軟骨とともに周囲から分離しやすくなります。
肘離断性骨軟骨炎の原因
肘離断性骨軟骨炎の原因は一つではありませんが、成長期の肘への繰り返す負担が大きく関係すると考えられています。
繰り返す投球動作
野球の投球では、肘を高速で曲げ伸ばしするため、肘の外側に繰り返し強い圧迫力が加わります。
特に、次のような状況では肘への負担が増える可能性があります。
・投球数が多い
・連日の試合や練習で休養が少ない
・複数のチームで投球している
・投手と捕手を兼任している
・痛みを我慢して投球を続けている
・全力投球の機会が多い
・疲労によって投球フォームが崩れている
・体幹や下半身を十分に使えず、腕だけで投げている
投手だけでなく、捕手や野手にも発症する可能性があります。
体操競技など腕で体重を支えるスポーツ
体操競技では、倒立、跳馬、鉄棒などで腕に体重がかかります。
肘を伸ばした状態で繰り返し体重を支えると、上腕骨小頭と橈骨頭の間に強い圧迫力が加わります。
チアリーディングや腕を使って身体を支える競技でも発症することがあります。
成長期の骨・軟骨の未成熟
成長期の骨や軟骨は、成人と比べて発育途中にあります。
上腕骨小頭への血流や骨の成熟には個人差があり、同じ運動量でも障害を起こしやすい子どもと起こしにくい子どもがいます。
投球フォームや身体機能の問題
肩関節、肩甲骨、体幹、股関節などの動きが不足していると、投球時の力が肘へ集中することがあります。
身体の成長に筋力や柔軟性が追いついていない場合や、疲労によってフォームが崩れている場合にも、肘への負担が増える可能性があります。
そのほかの要因
血流の低下、骨の成長、遺伝的な要素など、複数の要因が関係すると考えられています。
ただし、本人や保護者の努力不足だけで発症する病気ではありません。
早期に異常を発見し、適切に負担を調整することが大切です。
肘離断性骨軟骨炎の進行
離断性骨軟骨炎は、病変の安定性や骨軟骨片の状態によって、治療方法が異なります。
初期・安定期
骨や軟骨に変化が始まっていますが、表面の関節軟骨は保たれ、骨軟骨片も元の位置に安定している状態です。
この時期は症状が軽く、投球後の違和感や軽い痛みだけの場合があります。
成長の余地が十分にあり、病変が安定している場合には、投球や肘へ負担のかかる運動を中止することで修復が期待できます。
進行期
病変と正常な骨との境界がはっきりし、骨軟骨片に亀裂や分離が生じ始めた状態です。
肘の痛み、腫れ、可動域制限などが現れやすくなります。
病変が不安定になっている場合には、保存療法だけで治癒することが難しくなる場合があります。
終末期・遊離期
骨軟骨片が完全または部分的に剥がれ、関節内へ遊離した状態です。
肘の引っかかり、急に動かなくなるロッキング、曲げ伸ばしの制限などが現れます。
剥がれた骨軟骨片が関節内を移動し、正常な軟骨を傷つけることがあります。
この段階では手術治療が必要になる可能性が高くなります。
肘離断性骨軟骨炎の主な症状
投球時・運動時の肘外側痛
代表的な症状は、投球や運動をしたときの肘外側の痛みです。
初期には運動中よりも、投球後や練習後に痛みや違和感を感じることがあります。
症状が進行すると、投球のたびに痛みが現れ、日常生活でも痛むようになる場合があります。
痛みがない場合もある
離断性骨軟骨炎は、初期には明らかな痛みがないことがあります。
野球肘検診や、反対側との肘の曲げ伸ばしの差をきっかけとして発見される場合があります。
「痛くないから問題ない」とは限らないため、肘の動きに左右差がある場合や、過去に繰り返し肘を痛がっていた場合には注意が必要です。
肘が伸びにくい・曲げにくい
関節の炎症、腫れ、骨軟骨片などによって、肘の曲げ伸ばしが悪くなることがあります。
特に、肘を最後まで伸ばせないという症状がみられます。
左右の肘を伸ばした際に、痛い側だけ伸びきらない場合には、早めの診察をおすすめします。
肘の腫れ
運動後に肘関節が腫れることがあります。
関節内に液体がたまると、肘が重い、動かしにくいと感じる場合があります。
引っかかり・クリック感
肘を曲げ伸ばしした際に、関節の中で引っかかる、カクッとする、音がすると感じることがあります。
骨軟骨片が不安定になっていたり、遊離体が関節内に存在したりする可能性があります。
ロッキング
関節内遊離体が骨と骨の間に挟まると、肘が急に動かなくなることがあります。
肘がある角度で止まり、曲げることも伸ばすこともできなくなる状態をロッキングと呼びます。
少し動かした拍子に再び動くこともありますが、無理に肘を曲げ伸ばしすると、軟骨や周囲組織を傷つける可能性があります。
投球能力の低下
球速が落ちる、コントロールが悪くなる、投球後に肘が重くなるといった変化が現れることがあります。
痛みをかばってフォームが崩れ、肩や腰などほかの部位に負担がかかる場合もあります。
肘離断性骨軟骨炎の経過
早期に発見され、骨軟骨片が安定しており、成長の余地が残っている場合には、投球や肘に負担のかかる運動を休止することで治癒が期待できます。
ただし、痛みがなくなったことだけでは骨が治癒したとは判断できません。
症状が軽くなっても、X線検査や超音波検査、必要に応じてMRI検査などで病変の修復を確認する必要があります。
痛みだけを基準に自己判断で投球を再開すると、治りかけていた病変が再び悪化する可能性があります。
病変が不安定になった場合や、骨軟骨片が遊離した場合には、自然治癒が難しくなり、手術治療が必要になることがあります。
進行した状態を放置すると、関節軟骨の損傷範囲が広がり、肘の可動域制限や変形性肘関節症につながる可能性があります。
野球肘との関係
野球肘は、投球動作によって起こる肘障害の総称です。
障害が起こる場所によって、内側型、外側型、後方型などに分けられます。
肘離断性骨軟骨炎は、野球肘の外側型に含まれる代表的な病気です。
投球時には肘の内側が引っ張られると同時に、外側では上腕骨小頭と橈骨頭が圧迫されます。
成長期では肘内側の障害が比較的多くみられますが、外側の離断性骨軟骨炎は進行すると治療が長期化し、将来に影響を残す可能性があります。
肘の内側だけが痛いように見えても、外側の病変を同時に伴うことがあるため、肘全体を評価することが大切です。
パンナー病との違い
パンナー病は、上腕骨小頭に一時的な血流障害が起こり、骨化核が変化する病気です。
離断性骨軟骨炎と同じく肘外側に症状が現れますが、一般的には離断性骨軟骨炎よりも低年齢の子どもにみられます。
パンナー病では、上腕骨小頭の広い範囲に変化がみられますが、骨軟骨片が遊離することは一般的ではありません。
多くは保存療法で改善します。
年齢、X線所見、MRI所見などをもとに離断性骨軟骨炎と区別します。
ほかの病気との違い
上腕骨外側上顆炎との違い
上腕骨外側上顆炎では、肘外側に付着する腱が障害されます。
物を持つ、手首を反らす、タオルを絞るといった動作で痛みが出ます。
離断性骨軟骨炎では肘関節内部の上腕骨小頭が障害され、投球時痛、可動域制限、引っかかりなどを伴うことがあります。
成長期の肘外側痛を、成人に多いテニス肘と自己判断しないことが大切です。
上腕骨外顆骨折との違い
転倒後に肘外側が腫れ、強い痛みが現れた場合には、上腕骨外顆骨折などの可能性があります。
離断性骨軟骨炎は繰り返す負担によって徐々に起こることが多い一方、骨折は一度の外傷をきっかけとして発症します。
橈骨頭・頸部骨折との違い
転倒して手をついた後に肘外側が痛み、手のひらを上や下へ回しにくい場合には、橈骨頭または橈骨頸部骨折が疑われます。
外傷歴、腫れ、X線検査などから判断します。
変形性肘関節症との違い
変形性肘関節症は成人に多く、長年の重労働、スポーツ、骨折などを背景として、軟骨の摩耗や骨棘を生じます。
離断性骨軟骨炎が進行した場合、将来的に変形性肘関節症へつながることがあります。
高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニックで行う検査
問診・触診
年齢、競技、ポジション、練習量、症状が出る時期などを確認します。
次のような点について詳しくお伺いします。
・どのスポーツを行っているか
・投手や捕手を担当しているか
・週に何日練習しているか
・1日または1週間の投球数
・複数のチームで活動していないか
・肘のどの部分が痛むか
・投球中、投球後、翌日のどの時点で痛むか
・肘が最後まで伸びるか
・引っかかりやロッキングがあるか
・過去にも肘を痛めたことがあるか
・痛みを我慢して競技を続けていないか
・肩や腰、下肢にも痛みがないか
肘外側の上腕骨小頭周辺を触診し、圧痛、腫れ、熱感などを確認します。
身体検査
左右の肘を比較し、曲げ伸ばしの角度を確認します。
特に、肘が最後まで伸びるか、反対側と比べて伸展制限がないかを評価します。
手のひらを上・下へ向ける前腕の回旋運動も確認します。
肘外側へ圧迫がかかるような動作で痛みが現れるか、関節内に引っかかりがないかを慎重に評価します。
野球選手では、肘の内側側副靱帯、成長軟骨、肩関節、肩甲骨、体幹、股関節なども確認します。
肘だけではなく、投球動作に関係する全身の状態を評価することが大切です。
X線検査
X線検査は、離断性骨軟骨炎の診断や経過観察に重要です。
次のような変化を確認します。
・上腕骨小頭の平坦化
・骨の不整
・軟骨下骨の透亮像や硬化像
・病変部の分離
・骨軟骨片のずれ
・関節内遊離体
・橈骨頭の肥大や変形
・そのほかの成長期の肘障害
初期の離断性骨軟骨炎では、一般的な方向からのX線撮影だけでは病変が分かりにくい場合があります。
必要に応じて複数の方向から撮影したり、反対側と比較したりします。
X線検査で異常がはっきりしなくても、症状や超音波所見から病変が疑われる場合には、MRI検査などを検討します。
超音波検査
超音波検査では、上腕骨小頭の骨表面や関節軟骨の一部を観察できます。
次のような所見を確認します。
・上腕骨小頭の骨表面の不整
・軟骨下骨の変化
・関節軟骨の形状
・関節液の貯留
・遊離体の可能性
・内側上顆や内側側副靱帯などの合併障害
放射線被ばくがなく、診察室で左右を比較できるため、成長期の野球肘の評価や検診で使用されることがあります。
一方、超音波だけで病変全体の大きさや骨軟骨片の安定性を完全に判断することはできません。
異常が疑われる場合には、X線検査やMRI検査を組み合わせます。
MRI検査
MRI検査では、X線で分かりにくい初期の骨変化、関節軟骨、病変の大きさ、骨軟骨片の安定性などを詳しく評価できます。
次のような場合にMRI検査を検討します。
・離断性骨軟骨炎が疑われる
・X線では異常がはっきりしない
・病変の大きさや範囲を確認する必要がある
・骨軟骨片が安定しているかを評価したい
・関節軟骨の亀裂や剥離が疑われる
・保存療法で治癒しているかを確認する
・手術治療を検討している
病変の後方に液体が入り込んでいる所見や、軟骨の連続性が失われている所見などがある場合には、病変が不安定である可能性があります。
当院にはMRI装置は設置しておりません。
MRI検査が必要と判断した場合には、提携医療機関をご案内し、そちらで撮影を受けていただきます。
CT検査
CT検査では、骨軟骨片、骨欠損、関節内遊離体の位置や大きさを詳しく確認できます。
次のような場合に検討します。
・遊離体が疑われる
・肘のロッキングがある
・病変部の骨の状態を詳しく確認したい
・手術方法を検討している
・X線では骨軟骨片の位置が分かりにくい
CT検査では骨の形を詳しく確認できますが、放射線被ばくを伴います。
年齢や必要性を考慮し、専門医療機関で適応を判断します。
肘離断性骨軟骨炎に対する治療
治療方法は、年齢、骨の成長の程度、病変の大きさ・位置、骨軟骨片の安定性、症状、スポーツ活動などによって異なります。
早期で病変が安定しており、成長の余地がある場合には、保存療法による治癒を目指します。
骨軟骨片が不安定な場合、遊離している場合、保存療法で改善しない場合には、手術治療を検討します。
投球・スポーツの休止
治療で最も重要なのは、病変部に繰り返し加わっている負担を止めることです。
野球選手では、原則として投球を休止します。
痛みを我慢した投球、軽いキャッチボール、近距離の投球であっても、上腕骨小頭に負担が加わる可能性があります。
体操競技などでは、倒立、跳馬、腕立て伏せなど、肘へ体重がかかる運動を休止します。
休止する範囲や期間は、病変の状態によって異なります。
痛みがなくなっただけで自己判断して再開せず、画像検査で修復状態を確認することが大切です。
日常生活での負担調整
通常の日常生活まで過度に制限する必要はありませんが、肘に痛みが出る動作は避けます。
重い物を持つ、腕立て伏せをする、ぶら下がるなど、肘外側に圧迫が加わる動作を控えます。
一時的な固定
痛みや関節炎が強い場合には、シーネや装具によって肘を短期間保護することがあります。
長期間固定すると肘が固くなり、筋力も低下するため、必要性と期間を慎重に判断します。
薬物療法
痛みがある場合には、症状に応じて消炎鎮痛薬や外用薬を使用することがあります。
薬物療法は痛みを軽減するためのものであり、分離しかけた骨軟骨片を修復する治療ではありません。
痛み止めによって症状を隠しながら投球や運動を続けることは避けてください。
注射治療について
離断性骨軟骨炎では、ステロイド注射やヒアルロン酸注射によって病変が治癒するわけではありません。
注射で一時的に痛みが軽減すると、治癒していない状態で競技へ戻ってしまう危険があります。
そのため、離断性骨軟骨炎そのものに対する一般的な治療として、注射を繰り返すことはありません。
理学療法・リハビリテーション
保存療法中は、患部を休ませるだけでなく、肘へ負担が集中した原因を確認します。
当院では、理学療法士が肩、肩甲骨、体幹、股関節、下肢の動きや筋力を評価し、競技復帰に向けたリハビリテーションを行います。
肘の可動域訓練
肘の腫れや痛みが落ち着いた後、痛みのない範囲で曲げ伸ばしを行います。
無理に肘を伸ばし切ったり、他人に強く押してもらったりすると、関節の炎症や軟骨損傷が悪化する可能性があります。
関節の状態に合わせて、必要な可動域を段階的に回復させます。
肩・肩甲骨の機能改善
肩関節や肩甲骨の動きが悪いと、投球時に肘へ負担が集中します。
肩の可動域、腱板、肩甲骨周囲の筋力を整えます。
体幹・股関節・下肢のトレーニング
投球は腕だけで行う動作ではありません。
下肢から体幹、肩、肘、手へ力を伝える全身運動です。
股関節や体幹が十分に使えない場合には、肘だけでボールを加速させることになり、負担が増えます。
保存療法中も、肘に負担をかけない範囲で下肢や体幹のトレーニングを行います。
投球フォームの確認
病変が治癒し、投球再開が許可された後は、投球フォームを確認します。
肘が下がる、身体の開きが早い、下半身を使えていないなど、肘へ負担がかかる動作を修正します。
定期的な画像検査
保存療法中は、症状だけでなく、X線検査などで病変の修復を確認します。
必要に応じて超音波検査やMRI検査を行います。
骨の修復には時間がかかるため、数週間で判断せず、数か月単位で経過を確認することがあります。
投球・スポーツへの復帰
競技復帰は、痛みがなくなったことだけで決めません。
一般的には、次のような点を確認します。
・日常生活で痛みがない
・肘の圧痛や腫れがない
・肘の可動域が回復している
・左右差が改善している
・画像上で病変の修復が確認できる
・肩、肩甲骨、体幹、下肢の機能が整っている
・主治医から投球再開の許可が出ている
投球は短い距離、少ない回数、軽い強度から開始し、段階的に増やします。
復帰途中で痛み、腫れ、可動域低下が現れた場合には、投球を中止して再評価します。
手術治療・専門医療機関への紹介
次のような場合には、手術治療を検討します。
・骨軟骨片が不安定である
・骨軟骨片が剥がれている
・関節内遊離体がある
・ロッキングを繰り返している
・病変が大きい
・病変が上腕骨小頭の外側まで広がっている
・成長が進み、自然治癒が期待しにくい
・十分な保存療法を行っても治癒しない
・痛みや可動域制限が続いている
・競技や日常生活に大きな支障がある
当院で手術治療が必要と判断した場合には、スポーツ整形外科、肘関節を専門とする医療機関へご紹介します。
手術後のリハビリテーション
手術後の固定期間やリハビリテーションは、行った手術方法によって異なります。
最初は手術した骨や軟骨を保護し、その後、肘の可動域訓練、筋力訓練へ段階的に進みます。
ドリリング、骨軟骨片固定、骨軟骨移植では、それぞれ骨が修復するまでに必要な期間が異なります。
自己判断で投球や腕立て伏せを再開せず、手術を行った医療機関の指示に従うことが大切です。
競技復帰前には、画像上の修復、肘の可動域、筋力、全身の動作などを確認します。
離断性骨軟骨炎を予防するために
すべての発症を完全に防ぐことはできませんが、肘への過剰な負担を減らすことが重要です。
投球数と休養日を守る
年齢に応じた投球数と休養日を守り、連日の過度な投球を避けます。
試合だけでなく、練習、ブルペン、キャッチボール、自主練習などを含めた総投球量を確認することが大切です。
複数チームでの投球量を共有する
学校、クラブチーム、地域チームなど複数の場所で活動している場合には、指導者同士で投球量や肘の状態を共有します。
それぞれのチームでは投球数が少なくても、合計すると過剰になっていることがあります。
痛みを我慢して投げない
投球時や投球後に肘が痛む場合には、投球を中止します。
「少しだけなら」「大会前だから」と無理をすると、初期病変が進行する可能性があります。
定期的に肘の動きを確認する
左右の肘を伸ばし、痛い側だけ伸びにくくなっていないかを確認します。
痛みがなくても可動域に左右差がある場合には、整形外科を受診してください。
投球フォームと全身機能を整える
肩、肩甲骨、体幹、股関節、下肢を適切に使える投球フォームを身につけます。
疲労によってフォームが崩れている場合には、練習を中止して休養します。
自宅でのセルフケア
肘離断性骨軟骨炎が疑われる場合には、まず投球や肘に体重がかかる運動を中止してください。
痛みを確かめるために何度も投げたり、強く肘を曲げ伸ばししたりしないでください。
日常生活では、次の点に注意します。
・投球や遠投を行わない
・腕立て伏せや倒立をしない
・鉄棒やうんていにぶら下がらない
・重い物を痛い側だけで持たない
・肘を強く伸ばし切らない
・ロッキング時に無理に動かさない
・痛み止めを使用して競技を続けない
・主治医の許可なく投球を再開しない
運動後に痛みや腫れがある場合には、タオルで包んだ保冷剤を短時間当てることで症状が軽くなることがあります。
ただし、冷却だけで病変が治癒するわけではありません。
痛みや腫れが軽くなっても、競技復帰については医師の判断を受けてください。
肘離断性骨軟骨炎でお悩みの方へ
成長期の肘外側痛や可動域制限は、離断性骨軟骨炎の可能性があります。
初期には痛みが軽い、または症状がない場合があるため、次のような変化にも注意してください。
・投球時や投球後に肘外側が痛む
・練習翌日まで痛みが残る
・肘が最後まで伸びない
・左右で肘の動きが違う
・肘が腫れる
・投球時に力が入らない
・球速やコントロールが低下した
・肘に引っかかりや音がある
・過去に繰り返し肘を痛がっていた
・野球肘検診で異常を指摘された
特に、次のような症状がある場合には、病変が進行している可能性があります。
・肘が急に動かなくなる
・ロッキングを繰り返している
・肘の曲げ伸ばしが徐々に悪くなっている
・日常生活でも痛む
・強い腫れが続いている
・休んでも痛みが改善しない
・投球を再開するとすぐに痛みが戻る
転倒や衝突後から強い痛みや腫れがある場合には、骨折や脱臼の可能性があります。
手が冷たい、白い、青紫色になっている、指を動かせない、強いしびれがある場合には、神経・血管損傷の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。
当院では、問診、身体検査、X線検査、超音波検査などによって、上腕骨小頭の状態、肘の可動域、合併する野球肘障害を評価します。
MRI検査、CT検査、手術を含めた専門的な治療が必要な場合には、提携医療機関や小児整形外科、スポーツ整形外科、肘関節を専門とする医療機関と連携して対応します。
早期の安定した病変では、投球休止と適切な経過観察によって治癒を目指せる可能性があります。
肘の痛みを我慢して競技を続けず、早めにご相談ください。
監修:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫