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スポーツ選手は痛みがなくなれば復帰していい?「競技復帰」の本当の基準

痛みがなくなれば復帰していい?

けがをしたスポーツ選手から、「もう痛くないので試合に出てもいいですか?」という質問を受けることがあります。

痛みがなくなることは非常に重要です。

しかし、「痛みがない=競技復帰できる」とは限りません。

組織が治ることと競技能力が戻ることは違う

けがをすると、痛みだけでなく、筋力、瞬発力、バランス、柔軟性、動作の正確性、持久力なども低下します。

痛みがなくなっても、これらが十分に戻っていなければ再受傷する可能性があります。

「○週間経ったから復帰」だけでも不十分

以前は、「肉離れなら○週間」「手術後○か月」という時間を中心に復帰を決めることもありました。

現在は、時間だけではなく実際の身体機能を確認する「criterion-based」、つまり基準を満たしたかどうかで判断する考え方が重要になっています。

スポーツ復帰に関するコンセンサスでも、競技復帰は単一の検査や日数だけで決定するものではないとされています。

筋力を測る

たとえば膝のけがであれば、大腿四頭筋やハムストリングなどの筋力を測定します。

「見た目では筋肉が戻っている」だけでは分からないため、ダイナモメーターなどを使用して数値化することが役立ちます。

ジャンプやスポーツ動作も確認する

膝のスポーツ障害では、片脚ジャンプ、着地、方向転換、ランニング、加速・減速なども重要です。

国際的な半月板リハビリテーションのコンセンサスでも、競技復帰の判断には関節可動域、腫れ、客観的筋力、hop testなどを利用することが提案されています。

競技によって必要な能力は違う

同じ膝のけがでも、ゴルフ、野球、サッカー、テニス、マラソンでは求められる能力が全く違います。

したがって、日常生活ができるようになった段階と、競技へ戻れる段階を分けて考える必要があります。

Return to SportからReturn to Performanceへ

近年は、Return to Participation(競技参加への復帰)、Return to Sport(スポーツ復帰)、Return to Performance(競技パフォーマンスへの復帰)という段階で考えることも重視されています。

練習に参加できることと、試合に出られること、さらにけがをする前のパフォーマンスを取り戻すことは同じではありません。

TGOCにおけるスポーツ復帰の考え方

スポーツ選手では、痛みだけではなく、筋力、関節可動域、左右差、バランス、ジャンプ、走行、競技特有の動作などを確認しながら復帰を進めます。

必要に応じて客観的な筋力測定や動作評価を行い、リハビリテーションの内容を調整します。

「痛くなくなったから終了」ではなく、再びスポーツで身体を使えるところまで戻すことが最終的な目標です。

まとめ

スポーツ復帰では、痛みがないことは重要ですが、それだけでは十分ではありません。

筋力、可動域、バランス、走行、ジャンプ、競技動作などを総合的に評価することが大切です。

復帰の日付だけを決めるのではなく、「何ができれば復帰できるのか」という基準を決めてリハビリを進めることが、より安全な競技復帰につながります。

文責:高輪ゲートウェイ駅前整形外科クリニック 院長 松﨑 時夫

<参考文献>
・Herring SA, et al. Return to Sport/Return to Play and the Team Physician: A Team Physician Consensus Statement-2023 Update. Curr Sports Med Rep. 2024;23:183-191.
・The Formal EU-US Meniscus Rehabilitation 2024 Consensus. Int J Sports Phys Ther. 2025.